イスラム国 テロリストが国家をつくる時 の商品レビュー
今まで私たちが知っていたテロリスト集団とISISとの大きな違いが、手法ではなく、目指すものにある、ということが分かったことで、全く理解不能の殺戮集団ととらえて足踏みしていた状態から、一歩抜け出すことができたと思う。そして、残虐な行為が、彼ら固有のものではなく、これまでもあちこちで...
今まで私たちが知っていたテロリスト集団とISISとの大きな違いが、手法ではなく、目指すものにある、ということが分かったことで、全く理解不能の殺戮集団ととらえて足踏みしていた状態から、一歩抜け出すことができたと思う。そして、残虐な行為が、彼ら固有のものではなく、これまでもあちこちで起きていて、ただ私が見過ごしていたことなのだということも気づき、恥じている。
Posted by
残虐なテロリスト集団のイメージが濃いISだけれど、彼らなりの理想を持っており、極めて戦略的に国家建設をしているとのこと。まるで悪党が一国一城の主人となり、法を作り、民を収めた南北朝から戦国時代みたいだけれど、まったく別のスケール。国連常任理事国間の政治的な亀裂をうまく突いて、シリ...
残虐なテロリスト集団のイメージが濃いISだけれど、彼らなりの理想を持っており、極めて戦略的に国家建設をしているとのこと。まるで悪党が一国一城の主人となり、法を作り、民を収めた南北朝から戦国時代みたいだけれど、まったく別のスケール。国連常任理事国間の政治的な亀裂をうまく突いて、シリアに安全拠点を置き、ネットを使って巧みにプロパガンダを広め、多くのスンニ派の若者を世界中から惹きつけている。これが本当だとしたら、いつしかアラブから北アフリカにかけての広大な国家として、正式に認めざるを得ない時がくるかも。
Posted by
シリア→ロシア イラク→アメリカ その狭間で勢力を拡大するイスラム国。 内部からの証言があるわけではないが、トップのバグダディと組織成立の軌跡を解かりやすく追っている。 一定の秩序を作れていることと、欧米に受け入れられなさそうであることはフセインを彷彿とさせるけれど、さらに不安...
シリア→ロシア イラク→アメリカ その狭間で勢力を拡大するイスラム国。 内部からの証言があるわけではないが、トップのバグダディと組織成立の軌跡を解かりやすく追っている。 一定の秩序を作れていることと、欧米に受け入れられなさそうであることはフセインを彷彿とさせるけれど、さらに不安定だろうな。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【132冊目】ゲロ吐くんじゃないかと思うぐらい面白かった。イスラム思想や、"IS"の前身・成り立ちに関する事実関係を知りたいならば、池内恵先生の「イスラーム国の衝撃」が良いと思う。他方、中東を含む現代国際政治環境、そしてスンニ派v.シーア派の宗派間対立という視点からは本書も負けないと思う。また、"IS"の戦略面についても池内先生の本とは少し違う視点もあるように思う。"IS"が近代国家システムへの挑戦であるという解釈については両者に共通しています。なお、池内先生の本の参考文献リストには本書が載っていることも申し添えておく方が公平でしょう。 既存の主権国家及びそれが作り出す環境がいかに"IS"を創造したのかという本書の視点は、国際政治学で言うところのrealismに分類されるものであると思います。各国政府への批判をするのであれば、こうした視点の取り方も十分納得の行くものです。そして、だからこそ、「まずはこの地域における新たなパワーの誕生を認識」しなければならないという一文は奇異に思えます。「パワー」と言ってしまうと、realist的な理論の一貫性がなくなってしまうよ。不満といえばそれぐらいか。
Posted by
ソーシャルメディアを活用して主張を拡散し、その経済的自立性と統治力を見れば、もはや中東地域ではISを国家と認めざるを得ない様相だ。アル・バグダティのひきいる組織は、明らかにIRAやPLO、そしてアルカイダといった従前のテロ集団とは違い、大いなる近代的進化を遂げている。その残虐極ま...
ソーシャルメディアを活用して主張を拡散し、その経済的自立性と統治力を見れば、もはや中東地域ではISを国家と認めざるを得ない様相だ。アル・バグダティのひきいる組織は、明らかにIRAやPLO、そしてアルカイダといった従前のテロ集団とは違い、大いなる近代的進化を遂げている。その残虐極まる行為は許しがたいものの、今日にいたる歴史において彼らに犯してきた欧米の行為ははるかに残虐であったし、現在なお利権により彼らを蹂躙していることは確かだ。自らを正当化し合うなかで、対する側の目から己を見つめる大切さを思う。
Posted by
ISIS、ISIL、イスラム国 様々な呼称で呼ばれている、アル・バグダディが率いる武装集団。なぜ、色々な名前で呼ばれるのか、それすら私にはわかっていなかった。 アルカイダは、その主たる戦場を海外に求めたが、イスラム国はシリアをベースに、イスラム国家を作ろうと活動をしている。 武力...
ISIS、ISIL、イスラム国 様々な呼称で呼ばれている、アル・バグダディが率いる武装集団。なぜ、色々な名前で呼ばれるのか、それすら私にはわかっていなかった。 アルカイダは、その主たる戦場を海外に求めたが、イスラム国はシリアをベースに、イスラム国家を作ろうと活動をしている。 武力、テロという形で土地を占領し、占領地域内では経済活動を行う。国を運営する。そして、さらにその勢力(国土)を獲得するために、武力による攻撃を積極的に進める。 国土の獲得方法こそ、欧米的視点からみたら異常ではあるが、自分たちの土地を勝手に分割されたと信じる彼らにとっては、武力に訴えた土地の獲得(そして、そこに彼らの国家を作ること)は自然でさえある。 そして、だからこそ欧米的視点では、彼らを国家として認めず、ないテロリスト集団として捉え続けようとしている。 イスラム「国」についてのニュースに接するときに、基礎知識として頭に入れておいたほうが良さそうな情報でした。
Posted by
中東の混乱を他国の介入で納めることができるのか。ましてや大国の代理戦争や資源争いの後遺症があった場合は。テロが許されることでないことは承知の上でそれでも命がけの行動に出ざるを得なかった人々がいる。暴力は暴力を生んでしまう。戦争の世紀を経たのだから、もう人類は暴力の空しさに気付きた...
中東の混乱を他国の介入で納めることができるのか。ましてや大国の代理戦争や資源争いの後遺症があった場合は。テロが許されることでないことは承知の上でそれでも命がけの行動に出ざるを得なかった人々がいる。暴力は暴力を生んでしまう。戦争の世紀を経たのだから、もう人類は暴力の空しさに気付きたい。
Posted by
「イスラム国」のとる各種の異常・残虐な行為を表面的に批判するのではなく,彼らの内在的な論理に沿いつつ,分析をしている。『イスラームの衝撃』とともに,「イスラム国問題」について,まずは読まれるべき1冊。
Posted by
「イスラム国」の呼称がいろんな意味で問題となっているが、著者によれば、多頭型代理戦争の間隙をつき、領土をとり、いち早く経済的自立を達成し、まさしくテロリストが史上初めての国家を作ろうとしている点が、従来のテロリストや単なる過激派とは相違するとの指摘が重たい。
Posted by
126p: どちらの軍隊も、自分たちの行動を正当化するために大義を掲げている。すると、次の疑問が湧いてくる。かつてのイスラム帝国の領土に過激なサラフィー主義を奉じるカリフ制国家を建設するという約束は、民主主義を広め、その過程で欧米の多国籍企業による市場経済植民地をつくるという意思...
126p: どちらの軍隊も、自分たちの行動を正当化するために大義を掲げている。すると、次の疑問が湧いてくる。かつてのイスラム帝国の領土に過激なサラフィー主義を奉じるカリフ制国家を建設するという約束は、民主主義を広め、その過程で欧米の多国籍企業による市場経済植民地をつくるという意思表示よりも、はるかに訴求力があるのではないか。
Posted by