イスラム国 テロリストが国家をつくる時 の商品レビュー
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”タリバンの世界はコーランの教義と預言者の書物だけに基づいていたが、「イスラム国」を育んだのはグローバリゼーションと最新のテクノロジーである”と説く著者。この本を読むと欧米の政府が自身に都合の良い解釈をしようとしていることに気付く。
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[立ち昇る「異世界」]2014年の春から夏にかけてのイラクの諸都市への進撃で、国際社会が抱える問題の筆頭に一気に躍り出た「イスラム国」。過去のテロ組織との比較や資金管理の手法などを手がかりに、この集団の来し方と行く末を考察した作品です。著者は、北欧諸国政府において対テロリズムのコ...
[立ち昇る「異世界」]2014年の春から夏にかけてのイラクの諸都市への進撃で、国際社会が抱える問題の筆頭に一気に躍り出た「イスラム国」。過去のテロ組織との比較や資金管理の手法などを手がかりに、この集団の来し方と行く末を考察した作品です。著者は、北欧諸国政府において対テロリズムのコンサルタントを務めた経験を持つロレッタ・ナポレオーニ。訳者は、経済系の書籍翻訳も数多くなされている村井章子。原題は、『The Islamist Phoenex: The Islamic State and the Redrawing of the Middle East』。 ただでさえ分かりづらい中東の地図の上に突如現れた感のあるこの集団に早くから目をつけていた著者だけあり、幅広い角度から「イスラム国」の特徴が明らかにされています。特に「イスラム国」がどのように資金面や統治面で自立を果たしていったのかという説明は、この組織とその問題を他の集団と区別する際に大いに参考になるのではないかと思います。 また、欧米諸国にとっては、その存在のための所与の条件となる近代国家国民システムを脅かす(もしくはそのシステムの間隙や限界を突いた)という意味で、「イスラム国」が今までとは異なる次元の問題を提示していると感じました。本レビューの執筆時もいまだに「イスラム国」をめぐる情勢はあらゆるところで展開を続けていますが、その流れを先取りするようなことも書いてありますので、中東情勢やイスラームに関する諸問題に関心がある方にはぜひオススメです。 〜宗教に彩られた過去が時間を超越し、現代的な体制という新しい衣裳をまとって立ち現れる現象は繰り返されるようである。〜 本当に難しく深刻な問題だと再確認☆5つ
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ITを毛嫌いしていたタリバンと異なり、イスラム国はソーシャルメディアを活用して、リアルタイムにいろいろな情報発信を行っている。サイバー技術は中立であり、武装組織が宣伝する暴力的なメッセージを改変もしないし、誇張もしない。イスラム国のプロパガンダはプロの手でITを駆使して後世されて...
ITを毛嫌いしていたタリバンと異なり、イスラム国はソーシャルメディアを活用して、リアルタイムにいろいろな情報発信を行っている。サイバー技術は中立であり、武装組織が宣伝する暴力的なメッセージを改変もしないし、誇張もしない。イスラム国のプロパガンダはプロの手でITを駆使して後世されている。高等宇教育を受けた欧米出身者が関与していることは間違いないとの指摘もある 。
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著者のロレッタ・ナポリオーニ氏は対テロリズムのコンサルタントなどを務めている、国際関係と経済学出身の方。 解説は、私が大好き・池上彰さん。 書き始められたのが2014年6月。 邦訳版の出版が2015年1月。 刻々と情勢が変化する間に執筆されており、発行から半年過ぎた現在では、ま...
著者のロレッタ・ナポリオーニ氏は対テロリズムのコンサルタントなどを務めている、国際関係と経済学出身の方。 解説は、私が大好き・池上彰さん。 書き始められたのが2014年6月。 邦訳版の出版が2015年1月。 刻々と情勢が変化する間に執筆されており、発行から半年過ぎた現在では、また更に変わっていることは大前提として。 読み終わった本日(2015年7月21日)から3~4日以内でも、「ISが犯行声明を出しているテロ」と「ISとつながりがある組織が起こしたテロ」と「ISの犯行だと見られているテロ」が入り乱れていて、場所もイラクとシリアを中心にトルコのクルド人地区から中央アジア、そして西アフリカまで…。 関連するニュースを毎日追っているだけでも意味がわからなくなりそうな、中東とその周辺域で起きている問題を整理し、今まで断片的に持っていた中東問題の知識をつなぎ合わせていくために、この本はとてもわかりやすく手引きをしてくれた。 正直ニュースを見ていると、当のイスラム教スンニ派とシーア派だけでなく、それぞれの国家のその時の政府・ばんばん生まれる武装集団・更に中東情勢にかまう国や国際組織全般の思惑が重なって、報道のされ方や繋がりの有無まで瞬く間に書き換えられて行き、「今まで断片的に持っていた知識や読み取った繋がり」ですら役に立たない気持ちにさせられていくのだ。 その点本書では『ISの目的』『タリバンやアルカイダとの違い』、そして『7世紀から続く宗教戦争を装った政治権力闘争』と『便乗する代理戦争』を、今現在のそれぞれの思惑と国際情勢に惑わされずに理解するために、入門書としてすごくわかりやすかった。 読んでよかった。
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長年差別や屈辱に耐えてきたスンニ派の視点から見れば、イスラム国は希望である、ということについて、世の中でいかに欧米中心の見方が広まっているかを痛感する。国家を樹立する意気込みは、日本人からすると非常に驚くが、ユダヤ人がイスラエル建国を達成したように、イスラム主義者がカリフ国家を建...
長年差別や屈辱に耐えてきたスンニ派の視点から見れば、イスラム国は希望である、ということについて、世の中でいかに欧米中心の見方が広まっているかを痛感する。国家を樹立する意気込みは、日本人からすると非常に驚くが、ユダヤ人がイスラエル建国を達成したように、イスラム主義者がカリフ国家を建国するのもあり得ないことではないだろう。いずれ、イスラム国の代表が、ほかの国々の代表と肩を並べて集合写真を撮る日が来るのだろうか。今は想像もできないが、資本主義、社会主義ともに生きずまりつつある中、新たな秩序を求めてイスラム国が急成長するのかもしれない。著者はイスラム国を丁寧に分析しつつも、イスラム国台頭の処方箋を特に示していないので☆は4つ。
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この問題の一冊目として読みました。 突然現れたように見える彼らが、どうやって力を蓄えたか、そして、力を与えた者たちの構図がよくわかる一冊です。
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第一次世界大戦以降、初めて「フランスとイギリスが線引きした中東の地図」を書き換えているのがイスラム国だ。彼らの前身はアルカイダだが、戦術は最新鋭であり、その成長は「グローバリゼーションと最新テクノロジー」と切り離せない。 「イスラム国の指導者は、グローバル化し多極化した世界に...
第一次世界大戦以降、初めて「フランスとイギリスが線引きした中東の地図」を書き換えているのがイスラム国だ。彼らの前身はアルカイダだが、戦術は最新鋭であり、その成長は「グローバリゼーションと最新テクノロジー」と切り離せない。 「イスラム国の指導者は、グローバル化し多極化した世界において現代の大国が直面する限界を、驚くほど明確に理解している」。そのため、彼らはシリア内戦を巧みに利用し、ほとんど誰にも気づかれないうちに、どこからも資金提供を受けずにみずから新しい地域支配者を名乗る、初めての集団となった。 イスラム国の戦士は言う「アルカイダは1つの組織に過ぎないが、われわれは国家だ」と。彼らの目的は欧米へのテロを成功させることではなく、カリフ制(ムスリムの最高権威者が支配する)国家の再興だ。そのために経済的自立を果たし、SNSなどを巧みに利用して世界中から戦士(国民)を集め、制圧地域を「統治」してる。彼らは単なるテロリストではない。 9.11以降、欧米がイスラムに対して取った不実な強硬策の数々が、イスラム国に結実したのは疑い得い。「テロリズムの歴史における新しいシナリオ」に直面させられた近代国家は、どう動くのか。
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中東で勢力を拡大しているイスラム国(IS)の単なるテロ組織とは一線を画した組織的な機能性について知ることが出来る一冊。 ただ、宗教観の強くない者として、思想のためにあれ程の残虐行為に手を染める者たちの正義感については、まだ理解が出来ていない。 もう一度じっくり読みたい本である...
中東で勢力を拡大しているイスラム国(IS)の単なるテロ組織とは一線を画した組織的な機能性について知ることが出来る一冊。 ただ、宗教観の強くない者として、思想のためにあれ程の残虐行為に手を染める者たちの正義感については、まだ理解が出来ていない。 もう一度じっくり読みたい本である。
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良くも悪くもパンフレット。 短いのでしょうがないし、具体的な事象や前提となる歴史知識に触れ始めたら膨大なので、このアプローチは正解かも。 他の本を読んだら、ざっと読み返す。
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イスラム国が、どのような背景の元に発生したか(米ソ二極→利害多極化)、トリガーは何だったのか(米→イラク収容所の維持不可能、リリース)、資金源の変遷、統治の方法、宗教宗派の利用、戦士の募集(恐怖、暴力、ITを駆使)が非常に具体的でわかりやすく記載されている。ニュースだけではわからない事満載。
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