れるられる の商品レビュー
平凡な人生が、思いがけないタイミングで変転することはだれにでもきっとありえるのでしょう。「れる」側がだったのが、「られる」側へ、あるいはその逆へ、もしくはその境目を漂うようにもなるのでしょう。 だからこそ、どちら側へも見渡せる眼を持たなくてはいけないし、知らなくてはいけない。い...
平凡な人生が、思いがけないタイミングで変転することはだれにでもきっとありえるのでしょう。「れる」側がだったのが、「られる」側へ、あるいはその逆へ、もしくはその境目を漂うようにもなるのでしょう。 だからこそ、どちら側へも見渡せる眼を持たなくてはいけないし、知らなくてはいけない。いつどうなっても、できるだけ正しく自分自身であるために、少しでもそう考えて生きなくてはいけない、ということを考えました。 自分は眼に対して強い不安を常に持っているので、「聞く・聞かれる」の章で描かれている盲目となった方の話や展示の取り組みに強く興味を抱きました。116ページにある、「かろうじて光に支えられているだけの存在」という表現は、今、かなり実感として感じます。その有難さを慈しみながら、自分が知らないうちに引いている境界線について、考えてみようと思いました。
Posted by
タイトルからとっさに日本語の表現の本かと思って予約したが、いい意味で裏切られた。 私は、他人のちょっとしたケガも直視できないくせに、ミステリーや推理ドラマが好きで、ドラマだからと遺体を見ても何の感情もわかないのだが、実際災害救助の現場で活動されている自衛官や消防士への心のケアが...
タイトルからとっさに日本語の表現の本かと思って予約したが、いい意味で裏切られた。 私は、他人のちょっとしたケガも直視できないくせに、ミステリーや推理ドラマが好きで、ドラマだからと遺体を見ても何の感情もわかないのだが、実際災害救助の現場で活動されている自衛官や消防士への心のケアがここまで必要なことだとは、本書を読むまで知らなかった。 第2章 支える・支えられる 人を「してもらう/してあげる」関係に区分けするとはなんと切ないことか。しかし災害多発国であるこの国の頼もしさは、その切なさを知る人々がたくさんいるということなのかもしれない。強い国とは、軍事力でも経済力でもなくそういう国をいうのではないか。第一次世界大戦下のフランスに派遣されて献身的な看護活動を行った赤十字救護看護婦、竹田ハツメの言葉にあるように、きらびやかな「飾り石」ではなく、目立たずとも人の役に立つ「裏石」のごとく地道な支援活動を続ける人々を通して、私はそう感じている。 第5章 聞く・聞かれる 私たちは文字を聞くのではない。言葉を交わす時、人が相手に聞いて欲しいのは文字情報だけではない。メールですれ違っても、会ってみたら誤解が解けたことは何度もある。言い淀んでいるのか、ため息まじりなのか、はずんでいるのか、微笑みながらなのか、しかめっ面なのか、あせっているのか、怒っているのか、相づちや沈黙、目の表情もまた、その人の存在そのものがコミュニケーションである。 私たちに必要なのは聞くことと聞いてもらうこと。 耳を閉じることはできないにもかかわらず、聞く耳がなければ聞こえない。言葉にしてもらわなければわからないといわれても、聞く耳がなければ聞こえない。聞く耳があって初めて聞こえる。聞き始めると聞かずにはいられなくなる。聞いてばかりいると狂い出す。
Posted by
著者の著作は本作が初読み。出生前診断についての章が最も心に残った。技術の進歩により出生前診断は容易に可能になった。しかし「診断を依頼した」という事実だけでも、母は罪悪感に苦しむ場合もある。だからと言って障害を持って生まれる児を全て歓迎する、と言うのは無責任には言えない綺麗事。一組...
著者の著作は本作が初読み。出生前診断についての章が最も心に残った。技術の進歩により出生前診断は容易に可能になった。しかし「診断を依頼した」という事実だけでも、母は罪悪感に苦しむ場合もある。だからと言って障害を持って生まれる児を全て歓迎する、と言うのは無責任には言えない綺麗事。一組の夫婦で担うにはあまりに重い生命倫理の問題。でも、誰しもが直面する可能性がある。 この他の章のテーマである問題も、どれも「れる/られる」の境界は実は非常に薄く、自分が「られる」側に転じることもある。そのことを想像する力は、常に養っておきたい。
Posted by
6つの動詞の能動態・受動態、様々なエピソードをセラピストのお立場から深い思慮にて語られていて、読みがいがありました。
Posted by
【収録作品】第1章 生む・生まれる/第2章 支える・支えられる/第3章 狂う・狂わされる/第4章 絶つ・絶たれる/第5章 聞く・聞かれる/第6章 愛する・愛される *テーマを巡るいろいろな考え方に向き合いつつ、真摯であろうとする筆者の立ち位置が好ましい。当事者を置き去りにしてはい...
【収録作品】第1章 生む・生まれる/第2章 支える・支えられる/第3章 狂う・狂わされる/第4章 絶つ・絶たれる/第5章 聞く・聞かれる/第6章 愛する・愛される *テーマを巡るいろいろな考え方に向き合いつつ、真摯であろうとする筆者の立ち位置が好ましい。当事者を置き去りにしてはいけない、そう思える第三者が増えることが必要。
Posted by
「生む・生まれる」「正気・狂気」相反するものがあること、ある時を境に逆になるかもしれない。それは紙一重であり、誰にでもおとづれる可能性はある。中でも東日本大震災で支える側にいた自衛隊員が、過酷な状況の中では一歩踏み違えばPTSDになり支えられる側になるのだという話が印象に残った。...
「生む・生まれる」「正気・狂気」相反するものがあること、ある時を境に逆になるかもしれない。それは紙一重であり、誰にでもおとづれる可能性はある。中でも東日本大震災で支える側にいた自衛隊員が、過酷な状況の中では一歩踏み違えばPTSDになり支えられる側になるのだという話が印象に残った。全て丁寧な取材に基づくものだが、章が進むにつれ難解な言葉になり、興味が薄らいだのが残念。
Posted by
講談社ノンフィクション賞、小学館ノンフィクション大賞を受賞している作家・最相葉月が、岩波書店のシリーズ『ここで生きる』の第九巻として書き下ろした作品。 同シリーズは、「立ち止まる。考える。生きること。私たちのこと。」をテーマとしているが、本書では、著者が、身近な人々やライターとし...
講談社ノンフィクション賞、小学館ノンフィクション大賞を受賞している作家・最相葉月が、岩波書店のシリーズ『ここで生きる』の第九巻として書き下ろした作品。 同シリーズは、「立ち止まる。考える。生きること。私たちのこと。」をテーマとしているが、本書では、著者が、身近な人々やライターとして接した人々の生き方を通して考えた、人生の様々な局面・事象における「・・・れる人(こと)と・・・られる人(こと)」について綴られている。 医学の進歩によって広まった出生前診断の問題を取り上げた「生む・生まれる」、東日本大震災などの様々な災害・事件を通して考えた「支える・支えられる」、友人及び著者自身の精神疾患を踏まえた「狂う・狂わされる」、科学研究の現場で働く人々の苦悩を語った「絶つ・絶たれる」、著者の父の終末期などから感じた「聞く・聞かれる」、昭和の作家・田宮虎彦と妻のエピソードへの思いを綴った「愛する・愛される」の6篇は、いずれも著者の深い洞察を通した重みのあるものとなっている。 著者の作品からは、初期のエッセイ集『なんといふ空』(2001年発刊、2014年復刊)の当時から、他のライターには見られない不器用なほどの正直さ・誠実さが伝わってくるが、本書もその著者だからこそ書き得た、心を打つ作品集と思う。 (2015年4月了)
Posted by
つい 見過ごしてしまいがちなこと つい 見落としてしまいがちなこと つい すどおりしてしまいがとなこと つい 邪魔くさがってしまいがちなこと そんな ひとつ ひとつ に ちゃんと 焦点を当てて きちんと「思考」することの 大切さを指摘させられた気がします 私たちは 生きている限...
つい 見過ごしてしまいがちなこと つい 見落としてしまいがちなこと つい すどおりしてしまいがとなこと つい 邪魔くさがってしまいがちなこと そんな ひとつ ひとつ に ちゃんと 焦点を当てて きちんと「思考」することの 大切さを指摘させられた気がします 私たちは 生きている限り 常に どこかにいて 常に 誰かと向き合って 常に 何かを考えて 常に 何かと関わっている そんな存在なのでしょう 自分が どこに 立っているのか 思わず 考えさせられてしまう そんな 一冊です
Posted by
オリンピックのエンブレムだの、新国立競技場だの、そんなのやってる場合じゃないでしょって言わざるおえない。ほんとちゃんとして!って訴えたい気持ちになる本でした。若い人々、高校生とかに是非読んでほしい良書です。
Posted by
著者が最相さんで、岩波書店のこのシリーズで、このタイトル。これだけ取っても、絶対おもしろいやろうなぁと思って読んだ。 「れる/られる」、どちらかに落ちるときが、ある。個人的には支える、支えられるが反転するという鷲田清一さんの言っている話が好きなので、この本もそういうふうに読めた。...
著者が最相さんで、岩波書店のこのシリーズで、このタイトル。これだけ取っても、絶対おもしろいやろうなぁと思って読んだ。 「れる/られる」、どちらかに落ちるときが、ある。個人的には支える、支えられるが反転するという鷲田清一さんの言っている話が好きなので、この本もそういうふうに読めた。 きれいな感性をしているひとじゃないと、この内容、このタイトルで本は書けへんなぁと思う。
Posted by
- 1
- 2