日本占領史(1945-1952) の商品レビュー
1945年10月のGHQの発足から51年9月のサンフランシスコ条約発効による独立回復までのGHQによる占領に関する新書。占領改革によって日本の「国体」が一方的に改造されて、GHQ謹製の日本国憲法を一方的に押し付けられたという「占領史観」が一部には根強いが、必ずしもそうではなく、婦...
1945年10月のGHQの発足から51年9月のサンフランシスコ条約発効による独立回復までのGHQによる占領に関する新書。占領改革によって日本の「国体」が一方的に改造されて、GHQ謹製の日本国憲法を一方的に押し付けられたという「占領史観」が一部には根強いが、必ずしもそうではなく、婦人参政権の付与、労働組合法、農地改革などの改革は、戦前からの懸案であり、GHQに先んじて日本側からも改革が志向された。日米の合作で戦後史が始まったといえる。 ①ワシントンとGHQ、またGHQ内の対立 マッカーサーの統治は「アメリカによる占領」として一枚岩に捉えられがちであるが、それは必ずしも正しくない。占領国の最高政策決定機関としてワシントンに極東委員会が設置されていたが、極東委員会は憲法改正など日本の政治形態の基本的変更は含んでおらず、マッカーサーと憲法改正問題で激しく対立した。またGHQ内の抗争として民政局とG2の対立がよく取り上げられるが、民政局と経済科学局も対立していたようだ。 ②象徴天皇制と戦争放棄 当時の極東委員会は天皇制の廃止を求めていたが、マッカーサーは、天皇の存在が占領を円滑に進めるために必要と考え、天皇制の存続を求めていた。天皇制の存続は当時の幣原喜重郎首相と吉田茂外相の希望であり、また彼らは日本の再軍備を当時は望んでいなかった。幣原・吉田とマッカーサーの考えが一致した結果として天皇制の存続と戦争放棄がバーター交換されたのが実情のようだ。 ③ドッジ・ラインー「中間安定論」から「一挙安定論」へ 戦後の経済環境においてインフレが大きな問題となった。経済再建を巡っては2つの意見があり、インフレ抑制に主眼を置き一挙に安定実現をめざす「一挙安定論」と、引き続き生産増大に重点を置き、徐々にインフレ克服を目指す「中間安定論」との論争が展開されていた。当時の芦田内閣とそれを支持するGHQは「中間安定論」をとっていたが、ワシントンは「一挙安定論」に傾いており、中間指令のかたちで「経済安定九原則」を日本政府に実施させるようGHQに伝達している。それに伴い、ワシントンからジョゼフ・ドッジが来日、いわゆる「超緊縮財政」のドッジ・ラインが行われた。最近、ある本の中で「GHQが日本に緊縮財政を押し付けた」という趣旨のことが書かれていたが、「緊縮財政」はワシントンがGHQの頭越しに日本に押し付けていたものであり、説得力のある史観であるとは全く思えない。 他のレビューで書かれてあるとおりに、記述は淡々として面白みに欠き、副題は「東京・ワシントン・沖縄」であるが、沖縄のことはあまり書かれていない。そこが欠点だが、記述は概ね公平で内容は幅広い。これを読んでおけば大体の占領史の流れが理解できると思う。
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まじめに史実を語っている。教科書的。しかし、戦後の7年間という、劇的に変化した時代を語るには多くのページ数が必要だろう。このころの日本の首相や各大臣は大変な思いをしてやっていたのだろう。
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占領した者とされた者―東京・ワシントン・沖縄 第1章 敗戦と占領―非軍事化、民主化へ(日本降伏からGHQの成立へ;戦後政治の起動) 第2章 占領改革と政党政治の再出発(日本国憲法の誕生;公職追放から新生議会へ) 第3章 中道政権の軌跡―改革の転換点(片山内閣の誕生―日米「改...
占領した者とされた者―東京・ワシントン・沖縄 第1章 敗戦と占領―非軍事化、民主化へ(日本降伏からGHQの成立へ;戦後政治の起動) 第2章 占領改革と政党政治の再出発(日本国憲法の誕生;公職追放から新生議会へ) 第3章 中道政権の軌跡―改革の転換点(片山内閣の誕生―日米「改革派」連合の形成;動揺する中道政権―求められる経済安定) 第4章 占領政策の転換―民主化から経済復興へ(中道政権の限界―片山内閣から芦田内閣へ;ドッジ・ライン―日米「保守派」連合の形成) 第5章 サンフランシスコ講和―占領の終結(講和への道―全面講和か単独講和か;米軍駐留容認と朝鮮戦争の激化;二つの条約締結へ―講和と日米安保) 占領と戦後日本 著者:福永文夫(1953-、兵庫県、政治学)
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福永文夫『日本占領史』中公新書 読了。戦後日本を基礎づけた降伏から講和までの7年間を簡潔ながらも多面的に描く。占領ー被占領の双方向のみならず、各々の内部で牽制し合ったことで民主国家へ歩んだ占領当時の立体像が浮かび上がる。講和により本土ー沖縄両者の分離が決定的となる終盤も印象的だ。...
福永文夫『日本占領史』中公新書 読了。戦後日本を基礎づけた降伏から講和までの7年間を簡潔ながらも多面的に描く。占領ー被占領の双方向のみならず、各々の内部で牽制し合ったことで民主国家へ歩んだ占領当時の立体像が浮かび上がる。講和により本土ー沖縄両者の分離が決定的となる終盤も印象的だ。 2016/01/06
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【由来】 ・ 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】
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日本占領が米国の占領行政の成功例というよりも、あくまでも「貴重な例外」であるんだなと認識を改めた。そして、戦後処理では無く戦争中の軍事占領にはじまり、(その初期の数年間は)既得権益の維持以外何も考えないまま軍事占領が継続された沖縄の扱いはあまりにも酷いなあと同情した。(だが、現在...
日本占領が米国の占領行政の成功例というよりも、あくまでも「貴重な例外」であるんだなと認識を改めた。そして、戦後処理では無く戦争中の軍事占領にはじまり、(その初期の数年間は)既得権益の維持以外何も考えないまま軍事占領が継続された沖縄の扱いはあまりにも酷いなあと同情した。(だが、現在の沖縄政界やマスコミの態度を正当化できるとは思わない)初期の民政局主導の民主化と後期のワシントン直轄の復興のいいとこ取りできたのは日本人にとってこの上ない幸いだったなと。(当時の日本人ががんばったのは承知の上で、敢えて『幸いだった』と思う。外部要因によるものが大きいので)そして、さらに言うと、ドッジ・ラインによる副作用を受けない時代に生まれ、改革の果実のみを受け取った世代に生まれて幸いだったなと。 そして、総合的に意味が無かったとは言わないし、日本人はそれを上手く使ってきた面が大きいとは思うが、それでもやっぱり素人が数日間ででっち上げた原案に基づく最高法規って何よ?とはやはり思う。
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1945年から52年まで7年間におよぶ日本占領期の歴史。 当時の沖縄がどんな状況にあったかについてかなりページを割いており,役立つ。 占領期に日本の政治家がいかに主体的に行動したかも従来のイメージよりも強調されているように思われる。とくに片山哲とか芦田均とか西尾末広とか。中道...
1945年から52年まで7年間におよぶ日本占領期の歴史。 当時の沖縄がどんな状況にあったかについてかなりページを割いており,役立つ。 占領期に日本の政治家がいかに主体的に行動したかも従来のイメージよりも強調されているように思われる。とくに片山哲とか芦田均とか西尾末広とか。中道から左派勢力の動きは非常に大事。 地味と言えば地味だが良書。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
講和(ほんとうの戦争終結を決定する取り決め)の部分では、講和する時期がちょうど朝鮮戦争と同時期なためのせいか、アメリカは日本の再軍備の意志を探っていたようだ。日本が再軍備してアメリカの軍事行動に随伴することを望んでいたようだった。最終的には吉田茂首相は、アメリカにおされるような感じで保安隊の創設を口にするけれども、軍国主義者がまた権力を握る危険性などを考えて、再軍備はしないという憲法の方針のままを貫こうとする。でも、アメリカは将来の軍備も容認するという寛容な講和条件をだすんですよねえ。ということは、いままで日本が軍隊を持たずにやってきたのは、なにもアメリカによる圧力によるようなものではなくて、日本人たちが自ら戦争の放棄を護ってきたことの表れなんですよね。まるで、再軍備しない要因がアメリカなどの西側諸国にあるかのような言説もあったように思うのだけれど、そうではないみたい。日本の再軍備に反対していたのはオーストラリア、ニュージーランド、フィリピンといった国々だったと。なるほどね。それでいまや、韓国や中国なんかが警戒しているってことなんだけれど、アメリカは日本の再軍備を容認の姿勢のままなんだろうか。別段、気にしてなさげではありますが。やっぱり、日本の周辺国が、かつてのように軍国主義化、全体主義化、帝国主義化した日本が、侵略をはじめて、虐殺をしてまわることを不安に感じているというのがあって、そこを考えて軍備しないというのはあるのでしょうが、この占領当時から、日本国憲法にしても、牧歌的なものだとアメリカの官僚なんかは言っていたみたいです。
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確か日経新聞で好評だったから買った、のだと思う。 淡々とした事実の並びから、アメリカの都合と支配層の性善説と、日本の天然ぶりがよく見える。公職追放の影響度は甚大も、敵対的買収された先の管理職層がクビになったと考えれば全くおかしくない。それで堂々返り咲く鳩山家の生命力こそ異常。 ...
確か日経新聞で好評だったから買った、のだと思う。 淡々とした事実の並びから、アメリカの都合と支配層の性善説と、日本の天然ぶりがよく見える。公職追放の影響度は甚大も、敵対的買収された先の管理職層がクビになったと考えれば全くおかしくない。それで堂々返り咲く鳩山家の生命力こそ異常。 もうひとつ、本書の特徴は沖縄の状況についても淡々と併記していること。2013年に現安倍内閣が定めた「主権回復の日」。本書では「サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日、日本から分離された沖縄は、この日を「屈辱の日」として記憶することになった」。そりゃ沖縄の人は怒るわ。
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「戦後レジームからの脱却」という文言が流布しています。「戦後長きにわたり続いてきた諸制度を原点にさかのぼって大胆に見直す改革」として安倍首相が掲げた指針です(第168回国会衆議院本会議、2007年9月10日)。おそらく、ここで言われる「原点」とは敗戦直後の占領期のことかと思われま...
「戦後レジームからの脱却」という文言が流布しています。「戦後長きにわたり続いてきた諸制度を原点にさかのぼって大胆に見直す改革」として安倍首相が掲げた指針です(第168回国会衆議院本会議、2007年9月10日)。おそらく、ここで言われる「原点」とは敗戦直後の占領期のことかと思われます。 この占領期を概観したのが本書になります。東京(日本本土)‐ワシントン‐沖縄という三つの視点から、錯綜した当時の様子が複眼的に描かれています。〝戦前・戦時期の日本政治と戦後の占領改革の連続性/断絶性〟や〝占領改革が戦後体制の形成に及ぼした影響〟といった論点も考察の課題とされています。筆者の言葉を借りるなら、「『押し付けられた』戦後像からの脱却の試み」(8頁)とも概括できることでしょう。 アジア・太平洋戦争前後の歴史の捉え方が政治的言論を方向づける様を今日あまた見て取れます。そうした現況において、現存する史資料に立脚しながら当時を再構成する試みは、如何なる 方向に考えを展開するにしても思考の一助となるように思われます。 (ラーニング・アドバイザー/国際 OYAMA) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1627862
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