日本占領史(1945-1952) の商品レビュー
我が国の占領期の話。敗戦からサンフランシスコ平和条約までの通史である。副題のように、東京、ワシントン、沖縄のアクターについて書かれている。 現在における安全保障、沖縄の基地問題の起源を探るには簡潔に書かれており、良い本だと思う。しかし、東京とワシントンのアクターにのみ重きがあり、...
我が国の占領期の話。敗戦からサンフランシスコ平和条約までの通史である。副題のように、東京、ワシントン、沖縄のアクターについて書かれている。 現在における安全保障、沖縄の基地問題の起源を探るには簡潔に書かれており、良い本だと思う。しかし、東京とワシントンのアクターにのみ重きがあり、沖縄がオマケというように書かれている点が残念。もしかしたら、沖縄についてこれ以上書くことが無いのかもしれないが。
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昨今、本邦近代史の解説書は右か左に偏ったものが多い中で、中立的事実を淡々と記述した本書はむしろ占領下から現在へ続く日本の政治的動向を明らかにする。 護憲、護平和政党との自己宣伝が喧しい共産党は、戦後一貫して反米(=親中ロ)、反憲法の革命政党であった。(いつから護憲に変わったのか...
昨今、本邦近代史の解説書は右か左に偏ったものが多い中で、中立的事実を淡々と記述した本書はむしろ占領下から現在へ続く日本の政治的動向を明らかにする。 護憲、護平和政党との自己宣伝が喧しい共産党は、戦後一貫して反米(=親中ロ)、反憲法の革命政党であった。(いつから護憲に変わったのか?) 社会党は内部のイデオロギー闘争により、不毛な分裂を繰り返す。 米国の占領政策は単に場当たり的なものだったが、悪気も反省もない。 朝鮮戦争勃発時の某米高官のコメント「(朝鮮戦争が)日本人を憲法九条による牧歌的空想から目覚めさせる」を始め、60年以上前と何ら変化のない状況に驚かされる。
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アメリカの占領政策を政府、国会、官僚、市民運動家はどう捉えたか。 終戦前は大政翼賛会という形ではあるが、紛いなりにも国会は存続していた。終戦直後彼らが引き続き国政を担ったが、当然ながら急進的な占領政策を受け容れることはできなかった。 一方で、農地改革の前提となる小作人の窮乏は戦前...
アメリカの占領政策を政府、国会、官僚、市民運動家はどう捉えたか。 終戦前は大政翼賛会という形ではあるが、紛いなりにも国会は存続していた。終戦直後彼らが引き続き国政を担ったが、当然ながら急進的な占領政策を受け容れることはできなかった。 一方で、農地改革の前提となる小作人の窮乏は戦前から農水官僚らによって認識されていた問題であり、婦人参政権も平塚雷鳥らによって主張された問題であったと言う点で、戦前からの懸案を占領を背景として一掃したに過ぎないという見方もできる。 しかし、リベラルな占領改革はそういった人々の常識を超えていた。農地改革はより徹底して行われ、大企業は解体されようとした。一連の改革は片山哲社会党政権時にピークを迎える。 これらの改革は長続きするものでもなかった。アメリカからしてもこの改革は十二分にリベラルであり本国の反発が増大した他、吉田茂を中心として日本からの反発も強くなる。結局サンフランシスコ講和=日米安保という形で、自民党「保守」政治が形成されていく。 思うに、占領改革とその後の逆コースなど保守反動は一体であった。占領改革は日本における政策の選択肢を広げ、その後吉田茂らによって取捨選択が為された。そうして戦後体制が作られて行った。 終戦直後、という今でも(今だからこそ)真偽不明の怪情報が飛び交う時代について、抑制的に描いた参考すべき著作。
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敗戦・降伏からサンフランシスコ講和条約までを対象とする「占領期」の通史としては、神田文人『昭和の歴史8 占領と民主主義』(小学館、1983年)以来久々の傑作。憲法改正や農地改革をはじめとする占領下の諸変革の立案・実施過程、冷戦の進行に伴うアメリカの占領方針の変容過程を具体的に示...
敗戦・降伏からサンフランシスコ講和条約までを対象とする「占領期」の通史としては、神田文人『昭和の歴史8 占領と民主主義』(小学館、1983年)以来久々の傑作。憲法改正や農地改革をはじめとする占領下の諸変革の立案・実施過程、冷戦の進行に伴うアメリカの占領方針の変容過程を具体的に示し、その間の国際関係、アメリカ本国と占領軍との関係、占領軍内部の抗争と日本国内の政治抗争との関係を過不足なく説明している。狭義の政治史にとどまらず、経済の変動や労働運動の動向にも注意している点も評価できる。 特筆するべきは、副題に「東京・ワシントン・沖縄」とあるように、従来の占領史では無視されるか、あるいは日本本土とは完全別個に叙述されることが多かった沖縄の占領史を、本土の占領と並列的・同時進行的に叙述していること。これによって、「ポツダム宣言」に基づく特殊な間接統治であった本土の占領と、ハーグ陸戦規則に基づく直接統治であった沖縄の占領を対比することができ、沖縄の分離過程と占領政策の転換の関係が理解しやすくなっている。 近年の占領期関連の研究は、戦前と戦後の連続性を過度に強調して占領改革を過小評価したり、「戦後民主主義」への反感を投影した客観性を欠いた叙述であることもままあるが、本書は戦後日本の出発点として、制約や限界も含めて占領改革を正当に位置づけているのも好感が持てる。講和前後における在日コリアンの地位問題のような旧植民地にかかわる問題への言及が不足している点はマイナスだが、現状では占領期の歴史を学ぶ上でまず手にとるべき良書といえよう。
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労働組合法が公布された時点では、公務員の争議権が認められていたことをうっかりしていました。だから、政令201号が必要だったわけです。
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この一言に要約されるでしょう。「日本占領は連合国の占領でありながら、実質的にはマッカーサーによるアメリカの単独占領であった。」ところで、以前NHKの番組で終戦直後に進駐してきた米軍が、舗装されていない地方をトラックで走っているところが映っていたのですが、そのとき日本人のすべての人が、米軍に背を向けていたのがとても印象的でした。でも暫くしたら、日本人の米軍に対する態度は180度変わったのですね。なんか悲しいですね。戦後の米ソ冷戦構造が単独講和に向かわせたのですね。
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獨協大学教授(政治学)の福永文夫(1953-)による戦後占領期の国内政治史の概説。 【構成】 序章 占領した者とされた者 東京・ワシントン・沖縄 第1章 敗戦と占領 非軍事化、民主化へ 1 日本降伏からGHQの成立へ 2 戦後政治の起動 第2章 占領改革と政党政治の再出発 ...
獨協大学教授(政治学)の福永文夫(1953-)による戦後占領期の国内政治史の概説。 【構成】 序章 占領した者とされた者 東京・ワシントン・沖縄 第1章 敗戦と占領 非軍事化、民主化へ 1 日本降伏からGHQの成立へ 2 戦後政治の起動 第2章 占領改革と政党政治の再出発 1 日本国憲法の誕生 2 公職追放から新生会議へ 第3章 中道政権の軌跡 1 片山内閣の誕生 日米「改革派」連合の形成 2 動揺する中道政権 求められる経済安定 第4章 占領政策の転換 民主化から経済復興へ 1 中道政権の限界 片山内閣から芦田内閣へ 2 ドッジ・ライン 日米「保守派」連合の形成 第5章 サンフランシスコ講和 占領の終結 1 講和への道 全面講和か単独講和か 2 米軍駐留容認と朝鮮戦争の激化 3 二つの条約締結へ 講和と日米安保 終章 占領と戦後日本 GHQ-SCAPによる日本占領は1945年8月から1952年4月までの6年8か月に及んだ。この間の多岐にわたる政治・行政改革が、独立後の日本に多大な影響を及ぼしたことは広く知られている。 本書の特色は以下2点である。 1点目:本土-沖縄を対比させながら、占領期の地理的な多面性を描き出したこと。 2点目:政治史の中心を吉田茂および自由党(民自党)単独ではなく、中道政権(片山・芦田政権)の二軸で描いたこと。 占領政策を米英ソ中を中心とした国際政治の中で位置づける場合、沖縄に対する米国軍部の主張は当然外すことはできない。著者と同じ五百旗頭門下のエルドリッヂが『沖縄問題の起源』で論じたテーマである。 しかし、一方で、沖縄で展開された軍政の内容を紹介するというのは、政治外交史・国際政治史の視点からは外れることが多い。本書ではこれを本土の占領政策と対比させることで、アメリカ政府の本土-沖縄への対応の違い、本土-沖縄間の経済復興状況の違いを際立させる。沖縄の記述量が著者の目的に対して十分であったのかは意見が分かれるところであろうが、本土が「間接的」に占領されていた意味を改めて考える機会にはなった。 2点目の特色であるが、これはあとがきでも触れられているように、著者が戦後初期の中道政権に強く興味を持っていることの表れであろう。民政局のホイットニー、ケーディスを中心にして、社会党政権への期待とテコ入れが強く行われていたことは周知の事実であるが、著者は民政局-社会党政権を「日米「改革」派連合」と呼ぶ。 中道政権への期待の中身は、政治的中立(保守反動への抑制と共産化への牽制)と経済安定施策の実行であった。本書では、組閣後すぐにインフレに対応できなくなり支持急落のきっかけとなった点、傾斜生産方式は第一次吉田内閣を引き継いだものである点、に言及しながらなぜか片山政権の経済政策については及第点を与えている。(評者にはやや甘い評価に見える)。 この改革派連合のほころびをめぐり、労働政策を中心に論じているのは、核心をついているだろう。当時の労働運動は1946年2月にゼネストを敢行しようとした官公労が中心であり、彼らの労働権を規定する公務員法、そしてその後の政令201号の制定はGHQの労働政策の転換点であり、国内占領政策における民政局の影響力の陰りを象徴するものであった。そして、支持基盤である労働組合の足並みがそろわないなか、中道政権は動揺し、再び吉田茂が首班指名されることとなる。強烈な痛みを伴うドッジ・ライン実行にあたって、安定した「日米「保守派」連合」が組まれることになる。 サンフランシスコ体制への架け橋として占領期を論じるのであれば、第5章のボリュームでは物足りない気がするが、国内世論の分裂と、安保締結によって得たもの失ったものが簡潔に紹介されている。近年の旧安保締結に関する研究は日米関係だけでなく、米英関係、ソ連、中共、国府など関係各国の動向を絡めることで多面的立体的な叙述を目指しているように見えるが、本書では日本側の講和準備の記述が過半である。 これを日本国内政治史という切り口で概観するという点で、本書のように手軽に読める新書が出るのは大変喜ばしいことであるし、その目的を達するだけの記述がなされている。本書のあとがきに即して言えば、「憲法体制」がいかに構築されたという点は十分に書かれている。その一方で、米ソ冷戦、とりわけ米国の東アジア戦略の中での位置づけという点は記述が淡泊であり、戦後体制のもう一つの軸である「安保体制」構築の持つ意味の訴求という点ではやや弱いか。
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