サイレンと犀 の商品レビュー
“グレゴール・ザムザは蟲になれたのに僕には同じ朝ばかり来る” “FMのDJはなぜ雨の日を黙って受け入れられないのだろう”(p.64)
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学生時代に読んでから数年ぶりの再読。当時もめちゃくちゃ良い歌集…と思ったけど改めて読んでもとても素敵な歌集だった。個人的に木下龍也さんの『オールアラウンドユー』と並ぶくらい、始まりの一首からあとがきまで余すことなく大好きな一冊。 きれいな言葉を使ってきれいにしたような町できれ...
学生時代に読んでから数年ぶりの再読。当時もめちゃくちゃ良い歌集…と思ったけど改めて読んでもとても素敵な歌集だった。個人的に木下龍也さんの『オールアラウンドユー』と並ぶくらい、始まりの一首からあとがきまで余すことなく大好きな一冊。 きれいな言葉を使ってきれいにしたような町できれいにぼくは育った 青空とブルーシートにはさまれてサンドイッチのたねだねぼくら かなしみを遠くはなれて見つめたら意外といける光景だった ここじゃない何処かへいけばここじゃない何処かがここになるだけだろう 袖口を嗅ぐだけで眠たくなれる部屋着で過ごすうつくしい日々
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感想 死を待つ心持ち。だけど胸には爽やかな風が吹き抜ける。諦めでも開き直りでも無い。これが見栄で固まった私の唯一の本音。心地よい仕事終わり。
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歌人、岡野大嗣の第一歌集。著者は2014年に短歌研究新人賞次席を獲得。昨年は、NHK短歌の選者も務めていて現代短歌界を代表する歌人の一人と言える。 著者は、昔『短歌ください』に投稿していて、そこに掲載されていた短歌を単行本で読んでとても面白いなと気になっていた。いくつか、この歌...
歌人、岡野大嗣の第一歌集。著者は2014年に短歌研究新人賞次席を獲得。昨年は、NHK短歌の選者も務めていて現代短歌界を代表する歌人の一人と言える。 著者は、昔『短歌ください』に投稿していて、そこに掲載されていた短歌を単行本で読んでとても面白いなと気になっていた。いくつか、この歌集の短歌を紹介したい。 図書券で買ったジャンプのその釣りを生まれたての犬で返されかける (この短歌は、作り話じゃないような気がする。わからないが。) 地下街は地下道になるいつしかにBGMが消えたあたりで (確かに、BGMがあるかどうかが「街」と「道」の違いかもしれない) ねるまえに奥歯の奥で今朝食べたうどんの七味息ふきかえす もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい 消しゴムも筆記用具であることを希望と呼んではおかしいですか (もし消しゴムがなかったら、失敗してもやり直すことができない) 生きるべき命がそこにあることを示して浮かぶ夜行腕章 トピックス欄に訃報が現れてきらきら点るNEW!のアイコン 春空に千鳥格子の鳥たちを逃がしてつくる無地のスカート
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ふとすれ違うひともこういう詩を読んでいるかもしれないなんて思ったら多分誰にでもやさしくなれる気がする 本当に好きな歌集
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微笑ましくて、エモい。 この人の短歌をもっと読みたいと思った。 道ばたで死を待ちながら本物の風に初めて会う扇風機 いつか、自分と重なりそうな気がした一首。
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あたたかさと寂しさの共存 味を付けるならベースは甘いけど塩味も苦味も入ってるような感じ。好きでした。 好きな歌 ・友達の遺品のメガネに付いていた指紋を癖で拭いてしまった ・さみしさを体現したい風船のトイプードルがしぼむみたいに
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「もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい」 をSNSで見かけて岡野さんの短歌にとても興味が湧いて買ってみた本。 よくわからないものも多かったけど、うしろの解説を読んでなるほど!!ってなるものが多くて、あぁ私はまだまだ情景を読み取る力が弱い……と落ち込んだ...
「もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい」 をSNSで見かけて岡野さんの短歌にとても興味が湧いて買ってみた本。 よくわからないものも多かったけど、うしろの解説を読んでなるほど!!ってなるものが多くて、あぁ私はまだまだ情景を読み取る力が弱い……と落ち込んだ。 岡野さんは取るに足らない日常が気になって仕方がない、と解説されていたが本当に取るに足らない日常を切り取るのがうまいなぁと思った。 また将来読み直してみたい一冊。 読む時の自分の置かれている環境によって刺さる短歌も変わるんだろうなと楽しみ。
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X(旧Twitter)でよくイラストとともに一首ずつ流れているのが「なごむなあ」と思い衝動買いした一冊。 これを読んだ日は、ちょっと疲れていて、何も読みたくなかったけれど手持無沙汰だったので、この歌集なら読めるかもと思い手に取りました。 拝読してみるとなごむ歌ばかりではなかっ...
X(旧Twitter)でよくイラストとともに一首ずつ流れているのが「なごむなあ」と思い衝動買いした一冊。 これを読んだ日は、ちょっと疲れていて、何も読みたくなかったけれど手持無沙汰だったので、この歌集なら読めるかもと思い手に取りました。 拝読してみるとなごむ歌ばかりではなかったのですが、疲れていても読める範囲内でした。 イラストの無垢な感じも手伝ってくれているのかもしれません。 軽妙に飄々と詠まれている感じですが、泣ける歌もありました。 <散髪の帰りの道で会う風が風のなかではいちばん好きだ> <ともだちはみんな雑巾ぼくだけが父の肌着で窓を拭いてる> <ゴッホでもミレーでもない僕がいて蒔きたい種を探す夕暮れ> <ポケットの硬貨2枚をネクターに変えて五月の風のなか飲む> <本棚のむこうでアンネ・フランクが焦がれたような今日の青空> <マーガレットとマーガレットに似た白い花をあるだけ全部ください> <もう声は思い出せない でも確か 誕生日はたしか昨日だったね> <もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい> <実行犯が億人組でそのうちのひとりが僕である可能性> <あかねさすIKEAへゆこうふたりして家具を棺のように運ぼう>
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NHK短歌選者で、穏やかな中にも真摯にゲストの話を聞く姿にグッとくる。 あとがきに「自分が忘れたくないと思った何かを、見知らぬ誰かにも伝えたいという願いから」との思いがこもった歌集。どの歌も、生活のふとしたそこまで特別でない場面を切り取って説得力のある歌でじんわりと伝わる。 ...
NHK短歌選者で、穏やかな中にも真摯にゲストの話を聞く姿にグッとくる。 あとがきに「自分が忘れたくないと思った何かを、見知らぬ誰かにも伝えたいという願いから」との思いがこもった歌集。どの歌も、生活のふとしたそこまで特別でない場面を切り取って説得力のある歌でじんわりと伝わる。 身近な音楽やショッピングモールの連作、ワクワクしてはしゃいだあとの我に返る切なさも残る。句読点、クエスチョンマーク、カタカナが多用されて独特の調べと語感、行間になっている。目で読むのと音読するとでは雰囲気が変わる気がする。 開くたびに気になる歌が違う。 春だから母が掃除機かける音聴きたくなって耳をすませる え、七時なのにこんなに明るいの?うん、と七時が答えれば夏 ゴッホでもミレーでもない僕がいて蒔きたい種を探す夕暮れ 抜けるほど青い空って絶望と希望を足して2で割った色? じいさんがゆっくり逃げるばあさんをゆっくりとゆっくりと追いかける さかさまの洗面器からざぱーんと水。さようなら今日のできごと 踏んづけた蜂は生きてたあの夏のプールサイドのバケツのなかで 僕ひとり乗せた車で僕はいま僕の命を預かっている ショッピング・カートにねむる子らのまなうらにバーコードの万華鏡 アンコール良かったね、ってひとしきりひたってもまだはしゃいでる耳 日めくりがぼそっと落ちて現れた画鋲の穴の闇が深いよ 僕を切り売りするような感覚で切り取る分割証明写真
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