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インドクリスタル の商品レビュー

4.1

47件のお客様レビュー

  1. 5つ

    16

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2015/05/13

インドの社会に含まれる一筋縄ではいかない諸要素、そこに関わる先進国のあり方、その社会で生きる人たちの姿、全て諸々を相当勉強し見事に描き出している一冊で読み応えがあった。旅行という短期ながらも実際に感じたインドの空気や独自の秩序に対する印象にフィットしていたので余計に入り込んで読ん...

インドの社会に含まれる一筋縄ではいかない諸要素、そこに関わる先進国のあり方、その社会で生きる人たちの姿、全て諸々を相当勉強し見事に描き出している一冊で読み応えがあった。旅行という短期ながらも実際に感じたインドの空気や独自の秩序に対する印象にフィットしていたので余計に入り込んで読んだ。篠田さんの他の作品も読んでみたくなった。

Posted byブクログ

2015/05/12

 デビュー当時は、面白い作家が出てきたと思って出る作品を次々と読んだものけれど、『女たちの聖戦(ジハード)』で直木賞を獲った辺りから、久しくこの作家から足が遠のいていた。  大体この作家のジャンルが、およそわかって来て、小説自体も新しみが失われてきたばかりか、ストーリーにダイナ...

 デビュー当時は、面白い作家が出てきたと思って出る作品を次々と読んだものけれど、『女たちの聖戦(ジハード)』で直木賞を獲った辺りから、久しくこの作家から足が遠のいていた。  大体この作家のジャンルが、およそわかって来て、小説自体も新しみが失われてきたばかりか、ストーリーにダイナミックさがなくなって堅実になったというか、もともとこの作家にぼくが求めていた面白さは、むしろ逆方向なわけで、人の向かないところに興味を見出すというところに魅力を感じていたので、それがある程度読めてきてしまうと、自然とこだわるべき理由がまくなったように感じられたというわけだ。  この作家のジャンルは広く、ホラー、芸術家小説、ホームドラマ、国際冒険小説と、ぼくは無理やり大別してしまうのであるが、本書はこの最後の国際冒険小説の流れの一冊である。『弥勒』『インコは戻ってきたか』『コンタクト・ゾーン』と続く第三世界を舞台にした日本との文明観の隔たりを材に取り、スリリングな非日常を描き出す物語作風となっているものである。  本書はタイトルの通り、人口でも産業でも最近新たな<大国><脅威>として注目されるようになったインドの物語。しかしインドと言えばカースト、その広さはヒマラヤの麓にまで及び、教育やカーストの埒外に置かれる先住民族的世界をすら抱合する。もちろん篠田節子が描くのはインドの近代的一面の方ではなく、辺境の物語の方だ。  国際冒険小説の巨匠・船戸与一であれば、辺境を描くときに日本人らしい日本人は描かず、敢えて日本に背を向けたはぐれ日本人を主人公に描くことが多いのだが、篠田節子の場合、あまりにも日本人らしい日本人を辺境に置くことによってその油断を衝いて現出する異質な文明観や価値観の隔たりを特化させた小説となる。日本人が不通だと思っているごく当たり前の価値観が、理解できない価値観で構築された別なる世界との軋轢を経て葛藤するのである。  本書はクリスタル、つまり水晶の原石を求めて辺境の村に鉱脈を開発する計画を持つ山梨在住の人工水晶開発会社の社長が、インドで経験してゆく商談、開発、欺瞞、暴力、裏切り、革命の物語である。大河ドラマと言っていいスケールであり、中でもこの小説で描かれるヒロイン、少女ロサの人物造形はインドの辺境文化そのものと言ってよく、彼女が西欧近代社会や日本文化と触れ合いつつ成長してゆく様子を物語の縦軸としながら、村そのものの成長と行く末を生きもののように活写してゆくドラマチックで壮大な展開がたまらない。  篠田節子版『闇の奥』とさえ言いたくなる本書のラストは圧巻。読みにくい展開のなか、最後までミステリアスで魅力的なヒロイン、ロサの存在感が圧倒的に光る一冊であり、篠田節子の最高傑作と言ってよさそうな力感たっぷりの巨編である。

Posted byブクログ

2015/05/10

541頁2段組の大作で、インドの現状をよく調べられた労作です。篠田さんはストーリーテラーなので、一気に読ませますが、彼女の描く日本人はシニカルですね。正論をかざして相手を糾弾するくせに、自分の落ち度は軽く認める程度、本人は気づいていないようですが人種偏見もあって、読んでいてストレ...

541頁2段組の大作で、インドの現状をよく調べられた労作です。篠田さんはストーリーテラーなので、一気に読ませますが、彼女の描く日本人はシニカルですね。正論をかざして相手を糾弾するくせに、自分の落ち度は軽く認める程度、本人は気づいていないようですが人種偏見もあって、読んでいてストレスです。インドについては、多くの発見がありました。カーストの闇は深いし、ビジネスで付き合っていくのも大変そうですね。

Posted byブクログ

2015/05/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 いまもなおインドに渦巻く深遠なるカオス。アーリア人と先住民、部族社会、地主と部族民、女性蔑視、カースト、宗教、地域格差、資本と搾取、無数にある言語と習慣が渦巻くインド社会。その奥深いところでは薄っぺらい民主主義、博愛主義などまったく通用しない。  そのインドにおいて少女ロサはやはり「邪の種」なのか、あるいは解放のマザークリスタルになるのか。深い闇のような色の肌と髪の毛、浮き立つ目白の中心にある漆黒の瞳は射抜くような光を放つ。  のほほんと日本に生まれ日本に生きるモノには知りえない世界が繰り広げられる。  底知れぬ奥深さをもつインドとそのカオス、そして放射線被曝の空恐ろしさを感じさせる2段組541頁の大作。   (内容紹介)  人工水晶の製造開発会社の社長・藤岡は、惑星探査機用の高性能水晶発信子を作るための人工水晶の核となるマザークリスタルを求め、インドの寒村に赴く。  宿泊先で使用人兼売春婦として働いていた謎めいた少女ロサとの出会いを機に、インドの闇の奥へと足を踏み入れてゆく。  商業倫理や契約概念のない部族相手のビジネスに悪戦苦闘しながら直面するのは、貧富の格差、男尊女卑、中央と地方の隔たり、資本と搾取の構造―まさに世界の縮図というべき過酷な現実だった。  やがて採掘に関わる人々に次々と災いが起こり始める。果たしてこれは現地民の言うような森の神の祟りなのか?古き因習と最先端ビジネスの狭間でうごめく巨大国家インドの奥深さを描き出す社会派エンターテインメント。

Posted byブクログ

2015/04/28

 インドって・・・。ロサに魅入られてしまった藤岡さん。いつか、ものすごく反省すると思いきや、あくまで上から目線でした。藤岡もイギリス人もインド人もどうしても自分の価値観でしか考えられない。それは、仕方がないことんんだなあと思う。

Posted byブクログ

2015/04/25

敵味方が二転三転する人間関係、信頼できない海千山千たち、次々と降りかかる難題に惹きこまれて一気に読めた。 インドの闇を見つめる社会派エンタメ。 綿密な取材があってこその説得力と深みが素晴らしい。

Posted byブクログ

2015/04/17

題材といい、舞台といい、キャラクターといい、まさに篠田節子氏の本領が存分に発揮された作品。 謎のヴェールに包まれた少女・ロサが登場してくるくだりでは、いかにも篠田氏らしいな、と思うのと同時に、ひょっとしたら硬質なはずの物語に水を差す結果になりはしないかな…と若干不安を抱いたものの...

題材といい、舞台といい、キャラクターといい、まさに篠田節子氏の本領が存分に発揮された作品。 謎のヴェールに包まれた少女・ロサが登場してくるくだりでは、いかにも篠田氏らしいな、と思うのと同時に、ひょっとしたら硬質なはずの物語に水を差す結果になりはしないかな…と若干不安を抱いたものの、まったくの杞憂に終わりホッとするとともに、最後のページまで堪能させていただいた。 水晶ビジネスやインド国内の通俗等の描写についても、緻密な取材に基づくものであろうことが窺い知れる。 西アジアの空気が醸し出す何某かの影響か、「弥勒」や「ゴサインタン」などを少し髣髴ともさせるが、今作は充分に救いが用意され、真っ暗なトンネルの先に一筋の光明が見える結びになっているのが印象的だ。

Posted byブクログ

2015/04/17

篠田さんらしい世界に目を向けた作品だったがインドの問題を描くのか不思議なちからを持つ少女を描くのかまたは日本の企業について描くのかちょっとどっち付かずかなぁ。 全く知らないインドのことはとても興味深く読めたけど。

Posted byブクログ

2015/04/13

数年前のインド旅行を思い出しながら読み進んだ。 巨大なインド、様々な民族、宗教、カースト、言語、・・・ 物語、作家軒からを感じさせる力作。

Posted byブクログ

2015/04/04

初めてこの作家さんの作品を読んだ。このページ数で上下段の構成なので、かなり重厚な印象を受けて読み始めたけど、盛り上がることなく読了してしまった…。インドの封建制や神秘性を強調してるとも思えないし、よくわからなかった。

Posted byブクログ