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その日東京駅五時二十五分発 の商品レビュー

3.7

27件のお客様レビュー

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2015/12/09

戦争文学の新境地だと思った作品。 作者の叔父の実体験が元になっているそうです。 主人公は戦争末期に徴兵され、通信兵となる(敵の暗号を解読したりする仕事)。理不尽な上官にいじめられることも、敵の弾が飛んでくることもなく淡々と日々は過ぎていく。 そして迎えたあの日。 主人公は仕事の...

戦争文学の新境地だと思った作品。 作者の叔父の実体験が元になっているそうです。 主人公は戦争末期に徴兵され、通信兵となる(敵の暗号を解読したりする仕事)。理不尽な上官にいじめられることも、敵の弾が飛んでくることもなく淡々と日々は過ぎていく。 そして迎えたあの日。 主人公は仕事の性質上、一般国民より一足早く終戦を知る。隊は解散となり、主人公は故郷の広島へと帰っていく。 これまでの戦争文学って、最近流行った百田尚樹の「永遠の0」もそうだったけど、戦時下のドラマチックで悲劇的な面を描くことが多かったと思うのです。でもこの作品にはそんな側面が一切なくて。ある書評が「静謐」という言葉を使って論じておられましたが、まさにこの言葉がピッタリ。ひたすら静かに静かに物語は進んでいき、終わっていきます。でも読み終わった後に「確かに、これも戦争だったんだな」と不思議な納得感を得られました。

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2015/04/30

西川美和が“聞いた”戦争の話。 戦争を知らない世代にとって戦争は遠い話だけれども、当時を生きた人であっても戦争をいくらか遠くに、それでもやはり近くに感じていた。そんな戦争との距離を考えさせられる話。最前線ではなく無線部隊にいた作者のの叔父から聞いた話を元にしている。 少年の目線...

西川美和が“聞いた”戦争の話。 戦争を知らない世代にとって戦争は遠い話だけれども、当時を生きた人であっても戦争をいくらか遠くに、それでもやはり近くに感じていた。そんな戦争との距離を考えさせられる話。最前線ではなく無線部隊にいた作者のの叔父から聞いた話を元にしている。 少年の目線で描かれているが、自分自身もいざ戦争になってしまったらその程度の目線しか持ち得ないのだろうと考えた。戦後70年の節目になるタイミングで読めてよかったのだと思う。 新宿紀伊国屋で購入。なんか急いでいて決め打ちで買った。

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2015/01/24

作者の伯父の体験をもとにした小説。 通信兵を務めた主人公は他の人よりも早く敗戦を知ってしまった。東京5時25分発の列車に乗って広島へ向かう話。

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2018/05/04

終戦直前に通信兵になり特殊情報部に配属された主人公。その任務ゆえ一早く終戦を知った部隊は、終戦前日に解散し、隊員は各自故郷を目指す。 著者の伯父の体験をもとに書かれた小説です。 物語としての面白さと言うより、記録文学的な興味があります。終戦という激動にもかかわらず、更には故郷・広...

終戦直前に通信兵になり特殊情報部に配属された主人公。その任務ゆえ一早く終戦を知った部隊は、終戦前日に解散し、隊員は各自故郷を目指す。 著者の伯父の体験をもとに書かれた小説です。 物語としての面白さと言うより、記録文学的な興味があります。終戦という激動にもかかわらず、更には故郷・広島が原爆によって壊滅状態であることを知りつつも、何処かサラリと受け流してしまう、或いは実感の乏しいままそれを受け入れてしまう主人公達。終戦の物語といえば、どうしてもパラダイムシフトを受けた人間像が描かれる事が多いのですが、現実レベルではこの主人公の様に淡々と受け入れた人も意外に多かったのかもしれません。 とても大きな字の100ページ余の短い小説ですが、読み応えがありました。

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2015/01/18

非常に短い物語で淡々としている。 戦争を描いた小説…というくことで、なにかしら激しいモノに触れることになるのかと思ったけれど、決してそうではなかった。 あの時代のひとは兵隊もそうでないひとも、ただ時代に翻弄されたのだなぁと感じた。そして、そうやって人生の一時期を終えてしまうのはや...

非常に短い物語で淡々としている。 戦争を描いた小説…というくことで、なにかしら激しいモノに触れることになるのかと思ったけれど、決してそうではなかった。 あの時代のひとは兵隊もそうでないひとも、ただ時代に翻弄されたのだなぁと感じた。そして、そうやって人生の一時期を終えてしまうのはやはり、悲しいことだと思う。

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2015/01/17

終戦の日(になった日)、東京駅から故郷の広島へと帰る少年兵のロードムービー。 「あの戦争」を語るには穏やかすぎるくらいの文章で、そこには怒号も慟哭もない。 主人公は「終戦」という未来を知るには早すぎて、すでに焦土と化した故郷に辿り着くには遅すぎた。あるのは、そうした宙ぶらりんの...

終戦の日(になった日)、東京駅から故郷の広島へと帰る少年兵のロードムービー。 「あの戦争」を語るには穏やかすぎるくらいの文章で、そこには怒号も慟哭もない。 主人公は「終戦」という未来を知るには早すぎて、すでに焦土と化した故郷に辿り着くには遅すぎた。あるのは、そうした宙ぶらりんの虚無感と喪失感。「中空」と言い換えれば、何とも現代的ではないか。 故郷を目指す主人公の旅は、彼の過去の回想をさしはさんで進んでいく。過去と今、絡み合う二つの時間軸の先に浮かび上がるのは、もう一つの「その日」である。 過去を見つめなければ現在は見えない。 現在を見つめなければ過去は見えない。

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2015/01/12

叔父の体験談をもとに書かれたということで、リアルな描写が入っていた。陸軍の特殊情報部というのはとても貴重な体験であまり聞いたことがなかった。無駄な部分をそぎ落として余計な脚色をせず、変に感動させようとしない全く欲のない文体に好感が持てた。

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