21世紀の資本 の商品レビュー
19世紀から20世紀にかけての世界のお金の流れを、今までにない規模でのデータから集約、分析し、資本主義のなかで拡大する格差に歯止めが必要であると訴える書。 ふとしたきっかけから手にした、ピケティ『21世紀の資本』。 本文、およそ600ページ。 経済の話、苦手だし……、読んでもわ...
19世紀から20世紀にかけての世界のお金の流れを、今までにない規模でのデータから集約、分析し、資本主義のなかで拡大する格差に歯止めが必要であると訴える書。 ふとしたきっかけから手にした、ピケティ『21世紀の資本』。 本文、およそ600ページ。 経済の話、苦手だし……、読んでもわからないかもしれないし……。 読まない理由はいくつもあったけれど、2010年代を代表するベストセラー、せっかくならどんな本か知りたい!と1ページ目から体当たりしていくことにしました。 さいしょは「資本」とか「所得」の用語が出てくるたびに、意味が頭に定着していないから、いちいち立ち止まっていました。 ノートにメモをとって、付箋をはって見返して。 くりかえしていくごとに、少しずつ定着して、第2部あたりからは、わからないなりにもなんとなく本のリズムにのって目を動かせるように。 基本的に、集約したデータの結果をグラフで示して、その内容を解説していく形式なので、経済に詳しくなくても案外(?)読めるな、というのが途中からの感想。 けっきょく、議論の詳細や深みを追うことはできなかったけれど、世界を流れているお金の量や、階層ごとの格差の規模感は、なんとなく肌で感じることができました。 とくに、上位1%の人々が所持している資産って、莫大だなあ。 これだけ資産があったら、好きな本を値段を気にせずいくらでも買えるかしら。 本書(5500円+税)をネットで注文したとき、クリックする手がふるえた本読みとしては、うらやましいかぎりです。 「あらゆる市民たちは、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に、真剣な興味を抱くべきだと思うのだ。お金を大量に持つ人々は、必ず自分の利益をしっかり守ろうとする。数字との取り組みを拒絶したところで、それが最も恵まれない人の利益にかなうことなど、まずあり得ないのだ。」 最後を締めくくるこの言葉が身に沁みる。 とりあえず、私は経済のもう少し基礎的な部分を学べる本をまた探して読んでみよう。
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かつて、カール・マルクスは資本主義社会についてその階級格差と成長の限界によって瓦解するとし、またケインズは逆に適切な自由競争にさらされることで富の分配がなされ安定に向かうとした。本書の著者ピケティはそのどちらの意見にも賛同することはなく、あくまで数世紀間に及ぶ(18世紀から21世...
かつて、カール・マルクスは資本主義社会についてその階級格差と成長の限界によって瓦解するとし、またケインズは逆に適切な自由競争にさらされることで富の分配がなされ安定に向かうとした。本書の著者ピケティはそのどちらの意見にも賛同することはなく、あくまで数世紀間に及ぶ(18世紀から21世紀)の間に蓄積させた膨大なデータを元に資本主義体制が行き着く新たな見解を示す。 資本主義社会に属する私たちは漠然と格差が生じるのはあくまで個人の能力によるものである、だから貧乏は耐えなければならないし、金持ちは快楽を享受する権利があるんだ。そう考える事があると思う。少なくとも私はそんなふうに考えていた。しかし国家の富を上位数%の人間が独占する体制化においてはその資本による利益によって益々利益を拡大する人間がいるのに対して、逆に益々貧乏になっていく者がいる。そう言った構造を理解することが出来た。 経済成長率よりも、資本による利益回収率が高ければ格差は拡大する。この理論についてをデータや簡単な数式を用いて説明されるのだが正直まだよく理解できていないところがあるので、誰かに聞いてみます。
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※このレビューにはネタバレを含みます
分厚いし難しい。 r>g 資本収益率は経済成長率を上回る。 投資の重要性を再認識した。 貧富の格差を是正するための方法が詳らかに書かれていたのが印象的。 累進資本課税というのが出てきたが、現在の日本で施行されている累進課税ではだめなのか疑問。
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8年ぶり再読。2024年現在の状況は日経平均最高値更新、なかなか増えない名目賃金とまさにr>gの世界であり、ますます本書の指摘通りとなっている。
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この本の3分の1は、「21世紀の資本」という本の代名詞のようになっている r > g(資本利益は経済利益を上まわる)という式の解説である。残りの3分の2は、格差と資本集中の解消に資本に対する累進課税と、相続税への課税の有効性、政治と経済の関係についての考察である。とくに終わ...
この本の3分の1は、「21世紀の資本」という本の代名詞のようになっている r > g(資本利益は経済利益を上まわる)という式の解説である。残りの3分の2は、格差と資本集中の解消に資本に対する累進課税と、相続税への課税の有効性、政治と経済の関係についての考察である。とくに終わりにちかい50ページについては、EUの抱える問題点に言及がある。経済というと、様々な数式や、理論があるが、現実はどうだったのか。資料を集め精査し、経済理論の様々な色眼鏡を外してみると、事実が見えてきた。というかんじなのだ。いくつか、象徴的だと感じる瞬間が読んでいてある。たとえば、累進課税方式が格差をなくすための知恵の産物かと思いきや、大戦の戦費の穴埋めの目的で導入された事実などは、そう考えるとその結果は、偶然に近いものなのではないか。中間層があるのは、なにも、社会が進歩したというわけではない。放っておけば、いつかはもとの格差にもどるということなのか。考えることは、たくさんある。この本は、あまりに厚い。ここに書ききれないほどたくさん興味深いことが書かれているし、それぞれについて考えるとおもしろそうだ。私は、一回に読む量を小項目2こまでとし、一冊よみあげるまでに、ガイド本を2冊読んだ。途中で読んだ内容が、書かれている内容を読み取れているか、不安になったからだ。今、ウクライナとロシアの戦争は、経済に打撃と影響を与えているけれども、ピケテイは、どんなふうに考えるのだろう。
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トマピケティの代表的な名著 資本主義はいずれ資本の均等化、貧富の差は縮まるとするクズネッツ仮説を否定して、富めるものはより富み、貧するものは永久に貧する事を膨大なデータにより(r>g)証明せしめた、いわば現代の黙示録である。
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トマ・ピケティ(1971年~)は、フランスの経済学者。2002年にフランス最優秀若手経済学者賞を受賞。パリ経済学院設立の中心人物、教授。社会科学高等研究院の研究部門代表者。 本書は、2013年にフランス語で発表され、2014年4月に英語版が発売されるやベストセラーとなり、同年12...
トマ・ピケティ(1971年~)は、フランスの経済学者。2002年にフランス最優秀若手経済学者賞を受賞。パリ経済学院設立の中心人物、教授。社会科学高等研究院の研究部門代表者。 本書は、2013年にフランス語で発表され、2014年4月に英語版が発売されるやベストセラーとなり、同年12月には日本語版が出版されブームとなった。30ヶ国以上で翻訳され、経済学書では異例の300万部以上を売り上げている。また、2019年には、ピケティ本人が出演するドキュメンタリー映画が公開された。 私は従前より、世界中で格差を広げる資本主義に問題意識を持っており、これまでも、ジョセフ・スティグリッツ、水野和夫、広井良典(社会学者)らの本を読んできたが、近年の斎藤幸平のベストセラー『人新世の「資本論」』を読むに至り、あまりの大部であるがために敬遠していた本書を手に取ってみた。実際には、予めネットで本書のポイントを押さえ、その部分を中心に飛ばし読みをしたが、著者の言いたいことは極めて明確なので十分だったように思う。 論旨は概ね以下である。 ◆長期的なデータによると、資本収益率(r)は概ね4~5%、先進国の国民所得の成長率(g)は1.5%程度であり、r>gである。これは、資本(不動産や金融商品)の増加率は所得の増加率を上回っている、即ち、資本で稼ぐ人と所得で稼ぐ人の格差は広がっていることを示し、これが資本主義の根本的矛盾である。また、<資本主義の第1基本法則>資本分配率(α)=r×資本ストック(β)なので、先進国のβを概ね国民所得の6倍程度であり、r=5%とすると、α=30%となり、国民所得の分配は、労働による所得:資本による所得=70%:30%となる。 ◆また、<資本主義の第2基本法則>β=貯蓄率(s)/gなので、国民所得の成長率(g)が低くなるほど資本ストック(β)は増え、資本分配率が上がり、格差が拡大する。 ◆格差の拡大という矛盾を解消するためには、(ユートピア的提案ではあるが)保有資産の透明化や、巨額の資産への世界共通の累進資本課税が必要である。 本書の特徴は、著者が15年をかけて収集した20ヶ国/300年分のビッグデータ(このデータだけでノーベル賞の価値があるという研究者すらいる)に基づく分析にある。理論的ではないとの批判もあるようだが、著者は、経済学者の多くが数理的な理論の研究に偏りがちであることに疑問を呈し、「(歴史的に)実際の数値はどうだったのか」を知ることに立ち戻るべきと語っており、まさにその点が本書の狙いだったのだ。 また、『資本論』を想起させる題名にもかかわらず、マルクスの主張とは大きく異なる(資本主義には不平等が内在しているという点のみ共通している)ものであるし、資本主義システム自体を否定してもいない。しかし、格差の拡大という資本主義の抱える最大の問題のひとつをデータで明らかにしており、ジョセフ・スティグリッツ、ポール・クルーグマンらニューケインジアン左派の経済学者の主張に近く(実際に本書は彼らからも称賛されている)、延いては『人新世の「資本論」』とも親和性があると言えるだろう。 資本主義の矛盾・限界と、修正のアプローチの一つとして、概要だけでも知っておく意味はある。
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才能ある人に大きな報酬を与えて才能を開花してもらえば、社会の生産性が高まり経済が発展して、結果として最下層の人々にも恩恵がある(クズネッツ)というわけではない。80年代以降、先進国の経済成長率は低下している。賃金は経済成長率と同じくらいしか増加しない。一方、金融や不動産など、資産...
才能ある人に大きな報酬を与えて才能を開花してもらえば、社会の生産性が高まり経済が発展して、結果として最下層の人々にも恩恵がある(クズネッツ)というわけではない。80年代以降、先進国の経済成長率は低下している。賃金は経済成長率と同じくらいしか増加しない。一方、金融や不動産など、資産を投資して得られる収益率は増大している。経済成長率が、資産からの収益率よりも低ければ、収入格差は広がっていく。労働者が経済成長によって得る所得の増加幅よりも、資本家土地や株式で得る利益の方が常に大きいので、不平等が拡大した。資本の格差は相続によって固定されている。所得(フローへの課税だけでなく、資本(ストック)への課税を増やすべき。トマス・ピケティ『21世紀の資本』2013 *********** 日本と米国は、1900年~1940年まで、上位0.1%の所得シェアは8%前後と高かった。その後、1950年~1970年まで、日本と米国の上位0.1%の所得シェアは2%前後になった。その後、1980年~2012年まで日本の上位0.1%の所得シェアは2%前後を維持している。一方、米国では1980年~2012年まで、上位0.1%の所得シェアは急上昇を始め、9%を越えた。森口千晶
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現代の教養といっても過言ではない名著だが分厚くて避けてきた本。「裕福な人 (資産を持っている人) はより裕福になり、労働でしか富を得られない人は相対的にいつまでも裕福になれない」ので、資産課税しようよというのを18世紀から現代に至る数字を用いて提案される。 詳細は下記 http...
現代の教養といっても過言ではない名著だが分厚くて避けてきた本。「裕福な人 (資産を持っている人) はより裕福になり、労働でしか富を得られない人は相対的にいつまでも裕福になれない」ので、資産課税しようよというのを18世紀から現代に至る数字を用いて提案される。 詳細は下記 https://note.com/t06901ky/n/n9ec3ca9dbc0c
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データを集めること。そのためにも各国各企業が透明性のあるようにすること。そして、稼いだお金でなく所有するお金に累進課税をかけるべきだということ。恐慌、大戦のショックで経済に多くの影響を与えたこと。そして持ち直ししたが、19世紀とは比べられないくらいに複雑になったこと。インフレは2...
データを集めること。そのためにも各国各企業が透明性のあるようにすること。そして、稼いだお金でなく所有するお金に累進課税をかけるべきだということ。恐慌、大戦のショックで経済に多くの影響を与えたこと。そして持ち直ししたが、19世紀とは比べられないくらいに複雑になったこと。インフレは20世紀に発明されたものであること。数字に細かくならないこと。民主的に解決すべきであること。経済学は歴史学、政治学、人類学、文学などと共に立ち上がらなければならないこと。 以上、頭に残っていること。
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