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夜の木の下で の商品レビュー

3.7

34件のお客様レビュー

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2024/09/18

6篇を収録。 若者の物語だけどその若者が大人になり過去を振り返るという形をとっている(最後に収録されている表題作は別) 10代特有の瑞々しさがある。50を目前にした私の感覚は乾涸びた枯葉で靴底で粉々になるけど、私にもこんな年齢の時があったなぁと思い出させてくれる。心に響く。 ...

6篇を収録。 若者の物語だけどその若者が大人になり過去を振り返るという形をとっている(最後に収録されている表題作は別) 10代特有の瑞々しさがある。50を目前にした私の感覚は乾涸びた枯葉で靴底で粉々になるけど、私にもこんな年齢の時があったなぁと思い出させてくれる。心に響く。 重過ぎず、優しく胸に届く感じが良い。美しさを感じるのも、良い。 装丁も素敵。

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2024/01/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

かつて通り過ぎてきた時間、今やもう思い返すしかできない過去、そういったものに対する愛着、後悔、懐かしさをやわらかく掘り起こすような読感。”私”だけの特別の思い出、”私”を形成するささやかながら永久にしこりとなる痛みを感じさせる。「マジック・フルート」が非常に良かった。

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2020/10/11

六つの物語をおさめた短編集。 nejidon さんのレビューで知った、湯本香樹実さん、初読です。 ありがとうございました。 反発と夢と不安と愛情の芽のようなもの、大人になってもまだ名付けられない想いを、かたちの定まらないままに大切にすくいとったような。 静かな痛みと寂しさと...

六つの物語をおさめた短編集。 nejidon さんのレビューで知った、湯本香樹実さん、初読です。 ありがとうございました。 反発と夢と不安と愛情の芽のようなもの、大人になってもまだ名付けられない想いを、かたちの定まらないままに大切にすくいとったような。 静かな痛みと寂しさと、爽やかな救いがありました。 家族の中で庇護されて生きていることに何の疑問も持たず、ただ愛情に包まれていると感じて成長してゆけたら、なんて幸せなんだろう。 庇護されていることが安心感に繋がらず、『養われている』ことを息苦しく感じさせる、自分の無力を何かにつけて思い知らされる関係だったなら… そういうことを感じとってしまう者にとっては、ごくごく薄められた毒を飲まざるをえない場所で生きているようなものなのか… どの物語も良かったけれど、「焼却炉」「マジック・フルート」「リターン・マッチ」が、うまく説明することもできないけれど、私にとても近いものを感じました。

Posted byブクログ

2018/01/25

過ぎ去った時間は取り戻せない。悔やんでみてもどうにもならない。時の流れは、なんて残酷なのでしょう。 6つの短編は、それぞれ趣の異なる内容なのですが、静かな語り口に心の奥底がそっと揺さぶられるような気がしました。哀しいでもなく、せつないでもなく、やるせないでもなく、それやこれやをす...

過ぎ去った時間は取り戻せない。悔やんでみてもどうにもならない。時の流れは、なんて残酷なのでしょう。 6つの短編は、それぞれ趣の異なる内容なのですが、静かな語り口に心の奥底がそっと揺さぶられるような気がしました。哀しいでもなく、せつないでもなく、やるせないでもなく、それやこれやをすべてひっくるめて平らかにしたような、なんともいえない余韻の漂うお話でした。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え” http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

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2017/11/30

「緑の洞窟」「焼却炉」「私のサドル」「リターン・マッチ」「マジック・フルート」「夜の木の下で」の6編。 これまでの湯本さんの作品、例えば「夏の庭」のように少年・少女を主人公に置くのではなく、多くは既に大人になった主人公が自分の子供から青春時代に感じた怒りや理不尽さ、未来への諦念な...

「緑の洞窟」「焼却炉」「私のサドル」「リターン・マッチ」「マジック・フルート」「夜の木の下で」の6編。 これまでの湯本さんの作品、例えば「夏の庭」のように少年・少女を主人公に置くのではなく、多くは既に大人になった主人公が自分の子供から青春時代に感じた怒りや理不尽さ、未来への諦念などを思い起こす形で描かれています。 そこに登場するのは純粋で繊細で儚い者たちです(対照として異常な母親が出てくるのも特徴かもしれません)。 ですから筆致はやや暗く重い。そしてどこか哀しみが含まれてます。 それにしても引き込まれていく文章です。静寂。小川洋子さんの硬質な静謐感とは少し違い、どこか柔らかさのある静寂感の中で語られる物語です。

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2017/11/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

青春期のほろ苦さ、自分の気持ちを上手く言い表せないもどかしさやジレンマ…大人の誰もがかつて辿ってきた道が6本の短編のあちらこちらに、静かに淡々と描かれている。 ふと胸が苦しくなり切なくなって泣けてくる。 人はみな色んなものを亡くし、それを振り返り思いを馳せながら、それでも生きていく。 湯本さんの描く物語にはよく大きな木が出てくる。 青春真っ只中の彼らをそっと見守ってきた木。本人が大人になっても、木だけは何ら変わることなく同じ所にそっと佇んでくれている。 どっしりとした大きな木があるだけでほっと安らぐみたい。 あの頃の焦れったい自分を思い出させてくれる優しい短編集だった。

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2017/02/23

この本の装丁にぴったりの 短編が詰まった一冊でした。 大切な記憶の欠片を、 どこか薄暗く濃密な場所から 呼び戻してくるような。

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2016/12/22

小説らしい小説だと思う。作者が丁寧に言葉を選んでいるのがわかる。 そのため、濃密な、気配のある小説になった。

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2016/10/11

「緑の洞窟」、「焼却炉」、「私のサドル」、「リターン・マッチ」、「マジック・フルート」、「夜の木の下で」 登場人物もストーリーも無関係だけれどなんとなく共通のトーンを感じる6つの短編。 思春期の心の痛みだとか、友達や家族への思い、取り戻すことのできない時間。せつなく辛い物語の中に...

「緑の洞窟」、「焼却炉」、「私のサドル」、「リターン・マッチ」、「マジック・フルート」、「夜の木の下で」 登場人物もストーリーも無関係だけれどなんとなく共通のトーンを感じる6つの短編。 思春期の心の痛みだとか、友達や家族への思い、取り戻すことのできない時間。せつなく辛い物語の中にも、どこか愛情が感じられたり可笑しみもあって‥人と関わること、生きることに希望を感じる読後感。

Posted byブクログ

2016/07/18

「夏の庭」でおじいさんの死んでゆくのを観察したぼく、「春のオルガン」でオンボロバスに立て篭もるわたし…そんなこどもたちが成長したらこんなふうになるのだろうと思わずにはいられない短篇集。 〜湯本さんおひさしぶりです!ずいぶんと時が経ってしまいましたがこの柔らかな過ぎ去った時へのレク...

「夏の庭」でおじいさんの死んでゆくのを観察したぼく、「春のオルガン」でオンボロバスに立て篭もるわたし…そんなこどもたちが成長したらこんなふうになるのだろうと思わずにはいられない短篇集。 〜湯本さんおひさしぶりです!ずいぶんと時が経ってしまいましたがこの柔らかな過ぎ去った時へのレクイエムが心に響くのは木山やともみが私たちのなかに生き続けている証しなのでしょう〜 どれもみな素晴らしいのだが敢えてのイチオシは過去の作品から持って来た「マジックフルート」、この思春期の少年が年上の女性に抱く淡く儚い恋心はどれだけ草臥れた男の胸にもときめきを思い出させてくれるだろう

Posted byブクログ