たった、それだけ の商品レビュー
望月正幸が会社で贈賄の容疑を受け失踪します。 望月正幸に関わる人間を巡る連作短編集です。 失踪は十数年に渡り、家族である妻の可南子と娘の涙(ルイ)は母ひとり子ひとりでルイの父親である正幸を探して転々としています。 妻の可南子は言います。 「神様は耐えられない試練は与えないらしいよ...
望月正幸が会社で贈賄の容疑を受け失踪します。 望月正幸に関わる人間を巡る連作短編集です。 失踪は十数年に渡り、家族である妻の可南子と娘の涙(ルイ)は母ひとり子ひとりでルイの父親である正幸を探して転々としています。 妻の可南子は言います。 「神様は耐えられない試練は与えないらしいよ」。 第六話に登場する介護士の仕事をしている人物が言った言葉が心に残りました。 「でも好きな人と好きな映画を観た。短い間だったけど、一緒に暮らした。たったそれだけです。その記憶だけで、生きていけるんです。もう決して触れてはいけない幸福な記憶です」 ラストシーンには希望がみえます。 贈賄事件の時効は何年くらいなのかと思いました。
Posted by
共感できるのはルイルイだけ。ルイの出てこない3話までがキツかった。賄賂容疑で突如逃げた男を巡る連作短編。それにしても女は何故、こんな男を庇うのか、待つのか、愛するのか。保護欲や母性を掻き立てるのだろうか?私はそんな男好きじゃない。ただ作中の心の機微の表現は上手いなぁと。登場人物は...
共感できるのはルイルイだけ。ルイの出てこない3話までがキツかった。賄賂容疑で突如逃げた男を巡る連作短編。それにしても女は何故、こんな男を庇うのか、待つのか、愛するのか。保護欲や母性を掻き立てるのだろうか?私はそんな男好きじゃない。ただ作中の心の機微の表現は上手いなぁと。登場人物は皆、裏切っているようで助けている・優しいようで優しくない・逃げているようで追いかけている。そんな曖昧なバランス感覚で成り立っていて、ラストはどんな人生もまだ終わってないよと教えてくれるような。何が言いたいのかよくわからない感想だ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
評価は4. 内容(BOOKデーターベース) 贈賄の罪が明るみに出る前に失踪した男と、その妻、姉、娘、浮気相手。考え抜いたそれぞれの胸の内からこぼれでた“たった、それだけ”のこと。本屋大賞ノミネート作『誰かが足りない』の感動ふたたび。人の弱さを見つめ、強さを信じる、著者の新たなる傑作! 全体的に暗い話だけどのんびりと話が進むので、読み終えた後はほっこり。短編集だが絡み合う人たちの話・・しかし、解決しそうで結局何も解決しないで終わる。でも、ほっこり。
Posted by
P77 辞めることと、あきらめることと、逃げること。ほんとうはそれぞれ別々のことかもしれないのに、ちゃんと考えたくなくて、全部ごちゃまぜにしてしまっている。ほんとうに逃げたのは私だ。 P123 お前はお前だと誰かが救いのひとことをかけてくれていたらと思う。幼い頃に出会う学校の先...
P77 辞めることと、あきらめることと、逃げること。ほんとうはそれぞれ別々のことかもしれないのに、ちゃんと考えたくなくて、全部ごちゃまぜにしてしまっている。ほんとうに逃げたのは私だ。 P123 お前はお前だと誰かが救いのひとことをかけてくれていたらと思う。幼い頃に出会う学校の先生になら、それができるかもしれない。俺が欲しくてももらえなかったひとことを俺が誰かにあげられるかもしれない。そう考えて小学校の先生を志したのだ。
Posted by
賄賂の罪で失踪した男と、その愛人、妻、姉、娘達。それぞれの立場から見た彼と、彼の存在を通して生きていく彼女たち。 ギリギリの状態でなんとか持ちこたえている人に対して、共に生きる我々は一体何ができるのか。 そして、残された側はどう明日を繋いでいけばいいのか。 過去や環境に絶望せず...
賄賂の罪で失踪した男と、その愛人、妻、姉、娘達。それぞれの立場から見た彼と、彼の存在を通して生きていく彼女たち。 ギリギリの状態でなんとか持ちこたえている人に対して、共に生きる我々は一体何ができるのか。 そして、残された側はどう明日を繋いでいけばいいのか。 過去や環境に絶望せず、縛られずに「自分は自分」と捉えることで、前向きに生きていくたくましさも、「好きなものをずっと好きなままでいたい」と変化に抗って立ち止まってしまう脆さもどちらも人間らしく美しい。
Posted by
誰にでもいい顔する人って、人当たりが良くて人気があるのかもしれないけれど、なんだか信用できないわ。 そんなにゆったりと誰に対しても均等に接することができるなんて嘘くさい。ってあたしができないから、そう思うだけなのかしら……。
Posted by
失踪した男、妻、姉、娘、浮気相手。物語は、互いに連鎖して続いていきます。 働いて、働いて父を待つ母。だめな父、だめな母、だめな愛。それを理解できたとき、ルイは自分の人生を生きていくことが出来るのかもしれない。 最後に、失踪した父が、妻を、家族を愛していて大切に思っていたことがわか...
失踪した男、妻、姉、娘、浮気相手。物語は、互いに連鎖して続いていきます。 働いて、働いて父を待つ母。だめな父、だめな母、だめな愛。それを理解できたとき、ルイは自分の人生を生きていくことが出来るのかもしれない。 最後に、失踪した父が、妻を、家族を愛していて大切に思っていたことがわかって 救われました。 逃げる事はあるかもしれない、人はその幸福な記憶だけで生きていけるのだろうか。 宮下奈都さんらしく、非常に繊細に人の気持ちを紡いでいきます。味わい深い小説。
Posted by
くらい。でも好き。 オムニバスかと思ったが、話が章ごとにつながっている! その、「つながり」をあれこれ考える工程?作業?が楽しかった。 ひょっとして、『羊と・・』より楽しめたかも。 もう少し読んでみよう。宮下さんの本。
Posted by
いい作品には音がある。 それは時に魔法のようで、時に呪文のようで。 耳元でこそこそ話をされているような心地よいリズムが流れる。 そして、少々張りつめていた心の奥が何となくゆるむ。 「たった、それだけ」とささやかれることで、 だれかとのつながりを感じる。 「たった、それだけ」とささ...
いい作品には音がある。 それは時に魔法のようで、時に呪文のようで。 耳元でこそこそ話をされているような心地よいリズムが流れる。 そして、少々張りつめていた心の奥が何となくゆるむ。 「たった、それだけ」とささやかれることで、 だれかとのつながりを感じる。 「たった、それだけ」とささやかれることで、 ほんの些細なことが刺激的な何かに変わる。 そしてそこには心地よいリズムが流れる。 何かにつまずいた時、何かに打ちのめされた時、 またこの作品を手に取るだろう。 心地よいリズムを求めて。 いい作品には音がある。
Posted by
相変わらず、きれいな文章。深くないけど深い。辛い、ひどい、灯、そして暖かさ。個人的に好きなストーリー。
Posted by