ヤモリ、カエル、シジミチョウ の商品レビュー
2014/12読了。 久しぶりに読みたくて読むのがもったいなくて、穏やかな気持ちで読めた(しばらく読まなくてはいけないものばかり読んでいたから) 江國香織も間違いなくわたしの一部を作っているな、なんて思いながら読んだ。 キラキラの子どもの世界。もう忘れてしまった世界。
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ひらがな読みずらく飛ばした 身近に感じる心の揺れ 耕作はそーいう男だね何度もやるね それを乗り越えてこそ夫婦ですよ奈緒 私も子供を連れて菓子折を持って「主人がお世話になってますー」と行ったっけ 乗り越えたー今その主人と喧嘩もなく仲良く平和にすごしてます(^-^)
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良かった。安定の良さ。決して心地よい話ではないのに安らかな気持ちになる、江國さん独特の世界。 虫などの生き物と会話をすることができる、言葉の成長が遅い都築拓人。 弟の拓人が可愛くて仕方ないおませで時折取りつく島のない姉の育実。 そんな二人の母親であり旦那不在の不快感、不穏感の中を...
良かった。安定の良さ。決して心地よい話ではないのに安らかな気持ちになる、江國さん独特の世界。 虫などの生き物と会話をすることができる、言葉の成長が遅い都築拓人。 弟の拓人が可愛くて仕方ないおませで時折取りつく島のない姉の育実。 そんな二人の母親であり旦那不在の不快感、不穏感の中を葛藤しながら生活を送る奈緒。 常に恋を求める父親の耕作。 外壁には拓人の呼んだヤモリ。育実を愛するカエル。そしてシジミチョウ。 霊園で働くおじさんや、拓人と育実のピアノの先生、耕作の彼女の真雪、テレビを爆音で観る隣人だとかが絡みながら、都築一家は、とくに拓人は成長していく。 ある意味でとても穏やかな物語。たくとの一人称のひらがなとカタカナのページはなにかと読みづらかったけど、あれにはものすごい大切な意味が、描写があったんだなと最後じんわり。 幼少期の、ほんの一瞬。
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幼稚園に通う拓人は、人と接することが不得意で、言葉を発することも得意ではない。けれど、感受性豊かで、人や動植物たちの発するオーラやムシや動物たちと会話ができるちょっと不思議な男の子。 江國さんの世界観で粛々と淡々と語られる物語は、静かで心地よい。何気ない日常の中から、父親の浮気...
幼稚園に通う拓人は、人と接することが不得意で、言葉を発することも得意ではない。けれど、感受性豊かで、人や動植物たちの発するオーラやムシや動物たちと会話ができるちょっと不思議な男の子。 江國さんの世界観で粛々と淡々と語られる物語は、静かで心地よい。何気ない日常の中から、父親の浮気による家族のゆがみなどが、静粛な空気から、ひしひしと伝わってくる。拓人の語る部分は、ひらがなばかりで読みにくく苦労したけれど、ちゃんと意味もあって読み終わった後はよかった。話の展開は違和感なく読めたのだけれど、結末はちょっと腑に落ちない。
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すごくよかった。気に入った。 ヤモリやカエルやチョウと話ができる子どもがでてきて、その会話が出てきたり、その子どもの視点から見た文章が全部ひらがなだったり、虫が発する音だとか気配みたいなものが文字になっていたり、実験的ともいえそうで、わたしがいかにも苦手な感じなのに、全然イヤじゃ...
すごくよかった。気に入った。 ヤモリやカエルやチョウと話ができる子どもがでてきて、その会話が出てきたり、その子どもの視点から見た文章が全部ひらがなだったり、虫が発する音だとか気配みたいなものが文字になっていたり、実験的ともいえそうで、わたしがいかにも苦手な感じなのに、全然イヤじゃなかった。そういう、一見ファンタジーっぽいところが、(わたしにとっては)ファンタジーみたいな感じがしなくて、むしろ妙にリアルで説得力があって、ああヤモリとか虫とかそんなふうにしゃべりそう、とか思えて。こんなふうにそのへんのカエルとか虫がしゃべるのがきこえたらいいのに、楽しいのに、寂しくないのに、とかまで思ったり。 まったくうまく言葉にできないのだけれども、この世界のなりたち、とか、生と死、とか、ものすごくスケールの大きな、おおらかな、というか、やすらかな、というかそんなものを感じた。 普通の、大人たちの話ももちろんあるんだけど、それは普通にいつもの江國さんの感じで。 どうも、登場人物はそろったけれどもまだ話が進まない、という感じのまま終わるのだけれど。 いつまでも読んでいたいと思った。 続編とかあったらいいのになあ。
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かなり癖がある物語だということは本を開いた瞬間にわかる。 名詞を並べたタイトルは江國さんの他の作品にもあるが、それに似た構成で語り手がどんどん変わっていく。 物語の中心は幼稚園生の拓人とその家族である。 拓人は自分や周囲のひとを認識することが不得意で、虫やヤモリなどの生物を愛し...
かなり癖がある物語だということは本を開いた瞬間にわかる。 名詞を並べたタイトルは江國さんの他の作品にもあるが、それに似た構成で語り手がどんどん変わっていく。 物語の中心は幼稚園生の拓人とその家族である。 拓人は自分や周囲のひとを認識することが不得意で、虫やヤモリなどの生物を愛している。 その小さな生き物たちの言葉を聞き、交流することができる。また、ひとの心の声を聞くことができる子供だと描かれている。 拓人のパートはほとんどが平仮名で書かれていて、読むのに苦労するのだが、これが仕掛けのひとつであることが最後にわかる。 拓人の姉は対照的に知的で責任感が強く、風変わりな弟を愛し、彼のために尽くす。 母親の奈緒は拓人の個性に気後れしながらも子供たちを愛しているが、彼女の頭はほとんど夫のことで占められている。 一回り年上のテレビマンの夫は情熱的だが悪気もなく愛人を作り数週間家に帰ってこない。 だけれど家ではよき父であり夫で、奈緒は憎しみを持ちながらも夫のことを愛している。 家族4人の他に、きょうだいのピアノの先生やその母、きょうだいが遊びに行く霊園の管理人、隣の家の独居老女などが物語を紡いでいく。 いくつものエピソードは盛り込まれているが、全体のストーリーというものを起承転結で語ると、とても地味になってしまうのが江國香織の小説のような気がする。 更にこの物語は本筋が何かを捉えるのが難しかった。 しばらくは幼児と呼べるほど幼い少年の成長記かと思ったが、大人たちの恋愛模様が濃くなって、愛人の存在に苦しむ妻の話かと感じるようになる。 でも最後は、子供がほんの短い間だけ持つ魔法のような力の輝きを描いている気がした。 拓人とその家族に一体どんな結末が用意されているのか終盤まで予想がつかない。 ミステリだったら奈緒が夫か愛人を殺しかねないところだけれど、単純に物語は破滅へ向かわない。江國香織はずるい男とそれを赦す女を書くのがとてもうまい。 少年の世界に終わりが来たことを唐突に告げる。 拓人はきっと”ごく平凡な”少年になったであろうことがラストの数行で察せられる。 それが一番切ないかもしれない。 久しぶりに江國香織を読んで、この文体はどうやって生み出されるのだろうと本当に恍惚とした気持ちになる。 特に父親が久しぶりに帰ってきたときの家族の様子。 まるで舞台を見ているようにそれぞれの動きと思考が感じられる。 これほど文章に情報量の多い作家はほとんどいないな、と改めて思った。 物語の出来云々を超えて天才だと思う文章。
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