日韓歴史認識問題とは何か の商品レビュー
著者とはかつて同じ恩師の下で政治学を学び、韓国旅行にも一緒に行った旧知の仲である。若い頃から矢継ぎ早に意欲的な韓国政治論を世に問い、今や最も信頼に足る韓国専門家の一人である。イデオロギーのフィルターを介さず、あくまで客観性・実証性を重視した事実認識への多面的なアプローチにはいつも...
著者とはかつて同じ恩師の下で政治学を学び、韓国旅行にも一緒に行った旧知の仲である。若い頃から矢継ぎ早に意欲的な韓国政治論を世に問い、今や最も信頼に足る韓国専門家の一人である。イデオロギーのフィルターを介さず、あくまで客観性・実証性を重視した事実認識への多面的なアプローチにはいつもながら舌を巻く。歴史認識問題を典型として、とかくイデオロギーや倫理観の対立のためにデッドロックに陥ってしまう日韓関係を一歩引いた地点から冷静に考える上で貴重な存在である。 著者の主張は明快である。歴史認識問題とは正しく「現在」を写す鏡である。日韓の歴史認識の違いは昔からあるが、かつては日韓関係が重要であるとの暗黙の了解のもとに、互いの政治エリートによる統制がこの問題が顕在化することを防いできた。冷戦の終焉による極東のパワーバランスの変化と韓国経済のグローバル市場への統合により、韓国にとって日本の重要性が相対的に低下したこと、加えて両国ともにポピュリズムの浸透がエリートによる政治統制を困難にしていること、これらにより、これまでの前提が根本的にそして不可逆的に崩れてしまった。してみると、日本の常識では理不尽としか思えない近年の韓国の対日外交姿勢も、韓国としては極めて自然で合理的なものであることがよくわかる。要するに韓国は少なくとも主観的には日本をそれほど必要としてないのだ。むしろこれまでの日韓の密接な関係は冷戦という特異な国際環境が生んだ例外的な事態と考えたほうがいい。悲しいかなこれが現実だ。 そんなはずはないと憤る向きも多いだろう。この点については、著者は本書では直接論じてないが、歴史的に韓国が置かれてきた宿命的な地政学的ポジションを踏まえる必要がある。大陸で覇を争った諸王朝(ロシアも含む)の狭間でより強い者につくことに民族の存亡を賭けてきたのがこの国の歴史である。今の中国を勝ち馬と考えて何の不思議もない。むしろ尖閣で大国中国と対立する日本のほうが、彼らから見ると常軌を逸している。それを事大主義と笑うことは簡単だ。しかし、事大主義は朝鮮半島に生きる人々の半ば以上は生存の条件であり、それを捨て去ることは不可能に近い。このことは大陸と海を隔てた我々にはどうしても理解の及ばないことだ。ここに明治以降の日韓関係のねじれと悲劇の根源がある。 以上を踏まえると、見通しは悲観的にならざるを得ない。歴史認識問題を双方が納得するかたちで結着するというおよそ不可能な試みに労力を費やすよりも、「過去」についての認識の違いが問題として顕在化することを回避するための「現在」の環境作りを優先すること、即ち「我々の重要性を相手に今一度理解させ、我々と協力するインセンティブを再構築」せよと著者は言う。しかしその提案が絶望的なまでに困難であることは誰よりも著者自身が自覚しているだろう。
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歴史認識問題とは、過去でなくすぐれて現代的な問題であるということがよくわかった。著者はさすがに冷静で公正なかきぶり。韓国現代史がつぎに勉強したい。宮澤です村山の謝罪が、うまく伝わらなかったのは残念。
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日韓の歴史認識問題に関するSNS上の感情的な発言を目の当たりにして、何故このような事態になっているのかと不思議に思ったため、イデオロギー性のなさそうな日韓歴史認識問題に関する書籍を探していたところ、この本に遭遇しました。 外交面の出来事だけではなく、日韓それぞれの内政状況が如何に...
日韓の歴史認識問題に関するSNS上の感情的な発言を目の当たりにして、何故このような事態になっているのかと不思議に思ったため、イデオロギー性のなさそうな日韓歴史認識問題に関する書籍を探していたところ、この本に遭遇しました。 外交面の出来事だけではなく、日韓それぞれの内政状況が如何に相互の反応に影響を与えていたかが緻密に分析されており、何故現況に至ったかがよくわかる良書でした。 しっかりと現在の日韓関係を認識したい人にお勧めします。
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今話題の日韓問題。 韓国が急成長するなかで、韓国のなかでの日本の位置づけ、意味合いが変わってきた。 それを韓国の政治制度(大統領制)などを絡めて、わかりやすく解説。 一見、難しそうな教科書的な本に見えるが、呼んでみるとまさにルポ。 私は、村山内閣などをリアルタイムで知らない...
今話題の日韓問題。 韓国が急成長するなかで、韓国のなかでの日本の位置づけ、意味合いが変わってきた。 それを韓国の政治制度(大統領制)などを絡めて、わかりやすく解説。 一見、難しそうな教科書的な本に見えるが、呼んでみるとまさにルポ。 私は、村山内閣などをリアルタイムで知らない世代だが、 知っている世代の人にとっては、「あ~あの時、そういうことが裏であったのか」 「そういう背景のもとでコトが進められていたのか」 と思わず納得、うなずいてしまうほどではないだろうか。 自分から手に取ることは中々ない一冊だとは思う。 (何より、表紙が教科書的で手に取りにくい) だが、内容は一読の価値あり。 少し前の本ではあるが、歴史認識ということについては、あまり問題なし。 最新のことを考えるうえでの基礎知識としても役に立つ。
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ヘビーそうな内容に尻込みして積読していたが、先日の日韓両政府の動きで慌てて読みだすと、意外にすらすら読める文章の巧みさと真摯な学究姿勢にあっという間に読み終えてしまった。 ◯◯のせいでこうなった、という単純な犯人は存在しない。
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極めて冷静かつ客観的な筆致で日韓歴史認識問題拡大の経緯がまとめられている。 相手国の状況に対する深い理解に基づかず、思い込み、信条、善意から起こした行動が、意図と全く逆の結果を生んでしまったというのは、今後に向けての大きな教訓とすべきだろう。 本書の構成上、打開策についても簡...
極めて冷静かつ客観的な筆致で日韓歴史認識問題拡大の経緯がまとめられている。 相手国の状況に対する深い理解に基づかず、思い込み、信条、善意から起こした行動が、意図と全く逆の結果を生んでしまったというのは、今後に向けての大きな教訓とすべきだろう。 本書の構成上、打開策についても簡単に触れられているが、事ここに至ってはなるようにしかならないというのが本当のところではないか。
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日韓歴史認識問題で取り上げられる「過去」の事実がどうだったのかを解明するのではなく、日韓歴史認識問題自体が「現在」に至るまでになぜこじれてしまったのかを解明している。 日韓歴史認識問題が、「過去」に関する問題である以上に、「現在」の問題であるということがよく理解できた。 韓国にお...
日韓歴史認識問題で取り上げられる「過去」の事実がどうだったのかを解明するのではなく、日韓歴史認識問題自体が「現在」に至るまでになぜこじれてしまったのかを解明している。 日韓歴史認識問題が、「過去」に関する問題である以上に、「現在」の問題であるということがよく理解できた。 韓国における日本の重要性の低下等の日韓歴史認識問題の背景は、不可逆的なものであると思われ、日韓歴史認識問題の完全解決はおそらく当分難しいと感じる。今後の日韓関係においては、日韓歴史認識問題の存在を前提にしつつ、これ以上こじらせないように互いに配慮し合うとともに、本書で指摘されるように、(日本が韓国との良好な関係を維持しようとするのなら、)日本は韓国に対して日本自身の重要性をアピールしていくことが必要なのだと思う。
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【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=all&category-mgz=all&m...
【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=all&category-mgz=all&materialid=11401772
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いやもう論文の教科書って感じ。ほんと論理的で理知的。 日韓双方の主張や立場がかなり整理されていて、「歴史問題」が何であったかが良く理解できる。 ただまあ、じゃあどう解決すればいいか、となるとわからんってのが正直なところだよね。本書もその部分はトーンダウンしちゃってる感じ。とかく...
いやもう論文の教科書って感じ。ほんと論理的で理知的。 日韓双方の主張や立場がかなり整理されていて、「歴史問題」が何であったかが良く理解できる。 ただまあ、じゃあどう解決すればいいか、となるとわからんってのが正直なところだよね。本書もその部分はトーンダウンしちゃってる感じ。とかく国際政治は難しい。
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日韓歴史認識問題について、その流れを概観する。歴史認識問題は、過去の事実に目が行きがちだが、実際はその過去の事実を見る現在の問題であるとしているのが、筆者のスタンス。この点は、本書を通じて、支持できると思った。 しかし、そうだとしても、歴史認識問題を乗り越えるのは難しいと思う。...
日韓歴史認識問題について、その流れを概観する。歴史認識問題は、過去の事実に目が行きがちだが、実際はその過去の事実を見る現在の問題であるとしているのが、筆者のスタンス。この点は、本書を通じて、支持できると思った。 しかし、そうだとしても、歴史認識問題を乗り越えるのは難しいと思う。なぜなら本書でも述べられている通り、歴史認識は、各国それぞれあるからだ。そんなもんだ、と考えるしかないのだろうか?
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