物語のおわり の商品レビュー
イヤミス作家の作品とは思えないほど爽やか。最近の湊さんはこういう作品も描くから楽しい。 さてさて。こちらは連作短編小説。片田舎で暮らすパン屋の娘絵美が本を通じて恋をし、小説家になりたいという夢を持つもの、結婚や仕事のしがらみなどで夢を追いかけるか断念するか、ラストが描かれない物語...
イヤミス作家の作品とは思えないほど爽やか。最近の湊さんはこういう作品も描くから楽しい。 さてさて。こちらは連作短編小説。片田舎で暮らすパン屋の娘絵美が本を通じて恋をし、小説家になりたいという夢を持つもの、結婚や仕事のしがらみなどで夢を追いかけるか断念するか、ラストが描かれない物語が人の手を渡って、それぞれの物語の終わりを旅をする。なかなかない連作短編小説だったし、爽やかだったのでとても読みやすかった。
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話の繋がりはよく練られていて面白かったし、各登場人物もわかりやすい設定で面白く読めました。湊作品でありがちな「こういう気持ちや感情は男にはわからないよね」みたいなことを読者に言わせなさそうなところもよかったです。大傑作ではないけど良作だと思います。
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とある短編が人から人に渡っていく事で紡ぎ出す物語。展開も構成も素晴らしいの一言なのですが、俺の読解力のなさのせいか、「街の灯り」の展開だけは腑に落ちませんでした。なぜ彼女が彼の事に気付いたのか、どなたか教えていただけませんか?
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初読。図書館。連作短編集。『山女日記』の感想に、今後が楽しみと書きましたが、期待に違わぬ新境地の発展形です。小さな町から山の向こうに出ていこうとする気持ちや行動には、小さな町育ちの私はたっぷり共感できちゃいます。いったいどんな結末をもってくるんだろうと、ワクワクしながら読みました。登場人物各々が未完の物語に自分なりの結末を描き出したうえで、湊さん自身もこの小説の結末をつくりあげます。結末のたくさんある小説で、なおかつ私たちにも空白の結末を与えてくれています。さて私の結末は・・・。
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一つの未完の物語が、旅人の手に渡りそれぞれが話を完結させることにより思考がまとまってくるあたりがよいです。 本当の物の結末は、湊かなえならではの終わり方。
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初章から中途半端な展開?!・・・と思いきや北海道を舞台に物語の帰結を旅する人々が自分の立場になったときにどう考えていくかを、個々人の人間模様を織り交ぜながら展開していく。 最後には、実は・・・の帰結が! 北海道が舞台になっていたこともあり、じっくり自分だったらどうしただろうと、...
初章から中途半端な展開?!・・・と思いきや北海道を舞台に物語の帰結を旅する人々が自分の立場になったときにどう考えていくかを、個々人の人間模様を織り交ぜながら展開していく。 最後には、実は・・・の帰結が! 北海道が舞台になっていたこともあり、じっくり自分だったらどうしただろうと、考えさせられながら読み入りました!
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冒頭─── あの山の向こうにはなにがあるのだろう。物心ついた頃にはすでに、わたしはぼんやりと遠い景色を眺めながら、そんなことばかり考えていました。深い山間の盆地にある、小さな町で生まれたわたしの目に映るのは、町を取り囲む大きな壁のような山とその上に広がる青い空ばかりです。両親は...
冒頭─── あの山の向こうにはなにがあるのだろう。物心ついた頃にはすでに、わたしはぼんやりと遠い景色を眺めながら、そんなことばかり考えていました。深い山間の盆地にある、小さな町で生まれたわたしの目に映るのは、町を取り囲む大きな壁のような山とその上に広がる青い空ばかりです。両親は夫婦二人で小さなパン屋を営んでおり、午前二時に起きてパンを作り、午前六時から午後六時まで店を開け、仕込みを終わらせて午後九時には床に就くという毎日を過ごしていました。店の名前は<ベーカリー・ラベンダー>。しかし、父も母も生まれたときからこの町で過ごし、旅行に出たこともなく、紫色の花が絨毯のように広がっているという北海道のラベンダー畑など見たこともありません。 ─── 湊かなえの一人称独白形式“ですます調”の語りを読み出すと、まだ物語の伏線も語られていないのに、何故か背筋がぞわぞわしてくる。 まるで、パブロフの犬の条件反射みたいに。 初めて読んだ『告白』の印象が強烈に残っているからだろう。 イヤミスの女王、湊かなえ。 その女王の作風がここ最近変わってきている。 この前作の「山女日記」も嫌な読後感とは程遠く、爽やかな物語だったし、最新作のこの作品も、心がほのぼのするような物語だった。 別にぼくは、これまで彼女のイヤミス作品を特に期待して読んできたわけではなかったから、作風が変わったからといって何の不満もない。 それどころか、どんな作品でも書ける才能を持った湊かなえという作家に憧憬の念を抱くだけだ。 誰が書いたのか分からない男女のささやかな恋愛『物語』。 何故かその話は肝心の結末まで書かれておらず、『物語』は途切れている。 女性は夢を叶えるために東京に旅立つのか? 彼女を駅前の停留所で待っていた恋人の思いとは? はたして、本当の結末はどうなったのか? そんな序章のもとに、この小説は始まる。 舞鶴からフェリーに乗っての北海道の旅。 その旅の途中で手渡されるのが、この一つの『物語』。 少女から、妊婦に。 妊婦から、写真家志望だった若者に。 若者から、テレビ番組制作会社に就職が決まった女子大生に。 女子大生から、進路問題で娘と喧嘩をした父親に。 父親から、今の自分の姿に疑問を抱く四十代の女性管理職に。 そして、女性から『物語』を手渡された最後の人物は───。 いろいろな別れや後悔を伴った思い出を胸に北海道の旅を続ける人々の手によって、その『物語』は次から次へと受け継がれていく。 この未完の『物語』を手にして読んだ人たちは、その人なりのエンディングを思い描くことで、自らの旅の目的に対する答えを見出す。 それは、未来に希望に満ちた暖かな光が射し込むようなものだった。 人生の曲がり角にはいろいろな選択肢がある。 夢を抱きながら、その度々、誰もが迷い悩む。 どちらが正解かなんて誰にも分かりはしない。 でも、自分が本当に求めているのは何かを真剣に考えれば、それが結果的には正しい選択だったということになるはずだ。 もちろん人間だから、後悔しない人生なんてありえないけれど。 闇の中に一筋の美しい光が射し込んでくるような物語。 ありきたりな言葉で締めくくりたくはないけれど、感動しました。
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冒頭の章に描かれたひとつの物語。 『空の彼方』という物語は作者不明、未完成な終わり方をしていた。 A4の用紙20枚ほどの紙の束のまま、 人から人へとその物語は読みつがれ、 読んだ人は何かしら、自分の人生と照らし合わせて、 人生においての重大な選択の決断をする。 最終的に『空の彼...
冒頭の章に描かれたひとつの物語。 『空の彼方』という物語は作者不明、未完成な終わり方をしていた。 A4の用紙20枚ほどの紙の束のまま、 人から人へとその物語は読みつがれ、 読んだ人は何かしら、自分の人生と照らし合わせて、 人生においての重大な選択の決断をする。 最終的に『空の彼方』は、もっとも納得のいくラストシーンを 加えられて、読者は落ち着くことになるのだが・・・。 小説の中で一つの物語に重大な役割を担わせ、 その物語にまつわる人々の人生に 大きな影響を与えてくるように仕組んだ構成力に圧倒された。 湊さんは、こういう非凡な小説の構成力の持ち主なんだなと あらためて実感した。 物語のおわりは、 型にはまったおわり方だけではない、と思う。 人それぞれに思っている、その物語のラストはさまざまだろう。 この作品に限らず、おわっている物語でも 必ずまだその先は続いていると思う。 自分なりのラストシーンを想像するのも読書の醍醐味。 自分なりの物語は、いくつでも作られていき、 読んではその先を作りだすのも、また楽しいものだと思った。
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小説を書くことが好きな人が書いた小説が北海道を訪れた人の手を渡り歩いて行く様が面白い。湊かなえも作風がだんだん変わってきた。
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結末のない物語を巡る連作集。 いわゆるアイテムを使ったバトンリレー小説で、このタイプの物語は大好きですし、3回しか行ってないですが、舞台となる北海道も大好きです。 あと、ちゃんと物語の終わりも用意されている親切さが良いです。 所々の伏線が結構読めてしまったのが残念ですが、湊さんとは思えない爽やかなラストです。 重箱の隅をつつくような不満は萌関係で二つありますが、詳細書くとネタバレしすぎかもしれないので、萌の問題の結末と世界文学全集の楽屋落ちと言っておきます。 いずれにしろ前作の「山女日記」に続いて、処女作から解放されたような作風が続いて、本作は完成度も高く、湊さんの転換期に来ているような気がします。
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