二〇世紀の歴史 の商品レビュー
20世紀とはどのような時代であったのか。 本書では1870年代~1990年代初頭までの「長い20世紀」を、支配-被支配関係を軸に、一つの際立った時代として描いていく。 支配-被支配関係で読み解いていく視角が、個人的にはとにかく分かりやすかった。受験世界史で学んだ出来事が、新たに...
20世紀とはどのような時代であったのか。 本書では1870年代~1990年代初頭までの「長い20世紀」を、支配-被支配関係を軸に、一つの際立った時代として描いていく。 支配-被支配関係で読み解いていく視角が、個人的にはとにかく分かりやすかった。受験世界史で学んだ出来事が、新たに有機的に結合していくような読書体験だった。個々に知っていたあの出来事この出来事が、次々と支配-被支配関係の論理に見事に乗っかってゆくのは、痛快でさえあった。 特に第二次世界大戦に突入していった日独伊の行為は、既にヴェルサイユ体制下にあって過去のものとなりつつあった帝国主義的な支配-被支配関係を、自分たちのために再構築しようとして行った「時代遅れな」取り組みだという見方は面白かった。 枢軸国側は歴史の流れからして、負けるべくして負けたのだという感じを抱いた。 新書サイズということで、当然網羅性は低いのだが、それゆえに「支配-被支配関係の拡大と崩壊」という本書の大きな物語が、一切ブレることなく明確に冒頭から末尾まで貫かれている。論理展開も明快。 一つの視角として自分の中に入れておきたい一冊だった。
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ヨーロッパ諸国によるアフリカ支配の始まる1870年代から冷戦の終了となる1990年代始めまでの間を「長い20世紀」と位置づけ、欧米列強の帝国主義から帝国主義的性格を持った米ソ両超大国の冷戦の終了までを位置付けた。 できるだけこの時代を多面的な視点で見ようと試みる著者の意欲がみられ...
ヨーロッパ諸国によるアフリカ支配の始まる1870年代から冷戦の終了となる1990年代始めまでの間を「長い20世紀」と位置づけ、欧米列強の帝国主義から帝国主義的性格を持った米ソ両超大国の冷戦の終了までを位置付けた。 できるだけこの時代を多面的な視点で見ようと試みる著者の意欲がみられる点、好感度の高い歴史概要書となっている。
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著者はイギリス帝国史を専門とする木畑洋一。 本書で扱う「20世紀」について、 起点: 世界が帝国的な支配構造で覆われるようになり始めた時=1870年代 終点: アフリカの各地域の独立(1990年ナミビア独立)、アパルトヘイト体制の終結、ソ連解体=1990年代初頭 としてい...
著者はイギリス帝国史を専門とする木畑洋一。 本書で扱う「20世紀」について、 起点: 世界が帝国的な支配構造で覆われるようになり始めた時=1870年代 終点: アフリカの各地域の独立(1990年ナミビア独立)、アパルトヘイト体制の終結、ソ連解体=1990年代初頭 としている。 暦の上での20世紀と異なる20世紀論として、ホブズボーム『極端な時代 短い20世紀 1814-1991年』がよく知られている(邦訳タイトルは『20世紀の歴史―極端な時代』)。 ホブズボームは第一次世界大戦の開始からソ連の崩壊までの期間を「短い20世紀」として位置付けた。木畑はこの「短い20世紀」論は、「あくまでもヨーロッパ世界を中心とした時代区分」であると論じる。 ――― 第一次世界大戦は、ヨーロッパにきわめて大きな衝撃を与え、激しい変動をもたらしたため、そこに眼をすえてみれば大戦に新しい時代の始まりを見ることは可能である。しかし、世界のそれ以外の地域、とりわけ植民地化されていた地域を広く視野に入れた場合には、その点は疑わしくなる。(7ページ) 木畑は、「短い20世紀」論に対し、暦の上での19世紀後半から20世紀初めにかけて作り上げられた世界の仕組みが、二つの世界大戦によって解体の道をたどり始め、第二次世界大戦後に本格的に解体していった過程として「長い20世紀」を描く。アフリカ分割や植民地拡大の暴力性が「長い20世紀」論の中心論題であり、重視されているのは、支配された側の状況である。 19世紀後半以降、帝国の競合によって世界が分割され、支配―被支配の関係が世界中に広がった。アフリカの分割、植民地の拡大、二度の世界大戦、冷戦の激化、独立抵抗運動の広がりという歴史をたどると、20世紀が戦争と暴力にみちた時代であり、(特に支配される側の)命があまりにも軽んじられていたことが分かる。 21世紀は暴力を絶つ時代となるのか。支配ー被支配の構造をどの程度脱するのか。現代は「長い20世紀」から分断された時代ではない。連続性の中に現在があること、そして、新たな暴力が世界中に顕在化している現況を考えると、近接する過去の歴史を学ぶことの重要性を強く感じる。
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こういう世界史の本というのは、図解雑学本なるビギナー向けの本か、プロ向けの専門書かに二極分化される傾向がある。それでも、本書は新書サイズで20世紀、特に帝国主義が勃興し終焉した1870年代から1990年代までの世界の歴史を(特に、国民国家体制を作り上げ、第1次世界大戦や第2次世...
こういう世界史の本というのは、図解雑学本なるビギナー向けの本か、プロ向けの専門書かに二極分化される傾向がある。それでも、本書は新書サイズで20世紀、特に帝国主義が勃興し終焉した1870年代から1990年代までの世界の歴史を(特に、国民国家体制を作り上げ、第1次世界大戦や第2次世界大戦などに代表される近代グローバリゼーションの波を)、コンパクトに概観できるようにまとめられている。更に、各時代の支配/被支配の様相について、南アフリカ、アイルランド、沖縄の様子を章末に定点観測という形で述べられている。 特に20世紀の世界史から、国際関係論やグローバル化、冷戦体制が崩壊してから現代的な問題として顕在化したテロリズムや地域紛争など、解決しなければならない問題を捉える上で、大いに参考になるだろう。
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本作は、20世紀を振り返る「世界史を一定程度鳥瞰する」というような一冊である。欧州諸国、アジア、アフリカ、米国、太平洋と広い話題を要領よく集めている。細々とした用語を覚えるようなことに四苦八苦するのではなく、こういうような「世界史の一時期を鳥瞰」という論に触れて、「私達が生きてい...
本作は、20世紀を振り返る「世界史を一定程度鳥瞰する」というような一冊である。欧州諸国、アジア、アフリカ、米国、太平洋と広い話題を要領よく集めている。細々とした用語を覚えるようなことに四苦八苦するのではなく、こういうような「世界史の一時期を鳥瞰」という論に触れて、「私達が生きている世界は、どういう経過で今のようになって来たのか?」と考えることが、「歴史を学んでみよう」とすることの“眼目”なのではなかろうか?そうした意味でも、多くの皆さんに本書をお奨めしたい。
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帝国主義における支配と被支配の観点で20世紀を総括する。僕自身全く知識がなくて恥ずかしいぐらいだが、かなり勉強になる。今の時代に生きているなら、できるだけ若いうちに読んでおいて損はない。
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ここでの二十世紀は暦のことではなく、帝国主義の時代を指している。1870年ころから1990年代前半までを対象としている。植民地の時代と置き換えてもいいかもしれない。 人と人が差別されて、支配と被支配の関係の時代だ。歴史には正義など存在しないことを再認識させられる一冊だ。
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帝国世界形成の過程では、各帝国の中心となった国の帝国主義国としての活動が国民国家としての凝集性を高めていくという機能をもったことに注意したい。 帝国世界は戦争と暴力に満ちた世界だった。本当にどうしようもないくらいの戦争と暴力が世界中であった。
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現代世界史が俯瞰できた。 定点観察もユニークだった。 ひとことで言うと、20世紀は人が人を大量に殺戮した時代だったんだな・・・ということかな。
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