二〇世紀の歴史 の商品レビュー
タイトルが近代史ではなく二〇世紀の歴史であることがこの本の特徴だった。 歴史の単語としての帝国しか知らない私にとって、今もそれが帝国に当てはまるような動きがあることを知る機会になった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
20世紀を「長い20世紀」として捉え、帝国主義体制が広がった頃1870年代から冷戦が終結した1990年代までを描いた作品。当時の世界がどのような流れであったのか手に取るようにわかる作品
Posted by
本書では20世紀を「帝国主義の時代」と位置付けている。 帝国主義とは、「一つの国家または民族が自国の利益・領土・勢力の拡大を目指して、政治的・経済的・軍事的に他国や他民族を侵略・支配・抑圧し、強大な国家をつくろうとする運動・思想・政策」などと定義づけられている。第二次大戦前の日本...
本書では20世紀を「帝国主義の時代」と位置付けている。 帝国主義とは、「一つの国家または民族が自国の利益・領土・勢力の拡大を目指して、政治的・経済的・軍事的に他国や他民族を侵略・支配・抑圧し、強大な国家をつくろうとする運動・思想・政策」などと定義づけられている。第二次大戦前の日本は、韓国・台湾・中国、その他のアジアの国々を侵略・支配・抑圧しようとしており、自ら大日本帝国と名乗っていた通り、帝国主義国家であった。 20世紀が帝国主義の時代であったということであるが、帝国主義の流れ・動きは、実際の暦上の20世紀とは少しずれている。帝国主義的な動きは、まず、ヨーロッパ諸国がアフリカ諸国を分割・支配しようとした時に始まったとされる。フランスがチュニジアを植民地化したのは1881年、イギリスがエジプトを実質支配したのが1882年のことなので、帝国主義の時代は、暦上は、19世紀後半に始まっている。その動きは、アジアにも広がり、イギリスがビルマを植民地化したのが1886年、日本が台湾を植民地化したのが1895年である。 アフリカ・アジアの国々が植民地化した後は、大国間での領土をめぐる争いが起き始め、それはそのまま戦争に結びつく。第一次世界大戦、第二次世界大戦ともに、帝国間の覇権争いの結果起こったという解釈が成り立つのである。 第二次大戦後、旧植民地国での独立の動きが起き始める。1945年にはインドネシアが独立宣言を行い、1947年にはインドとパキスタンが分離独立する。1950年代に入ってからは、アフリカ、アルジェリアで独立戦争が起き、また、他のアフリカ諸国でも独立の動きが強まる。共産主義・社会主義諸国も実は、ソ連が帝国的に、東ドイツ、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、等といった国を支配していたという構造であったが、それも、1989年のベルリンの壁崩壊、1991年のソ連解体により、体制が崩壊する。このあたりをもって、帝国主義時代は終焉を迎えたとされており、それは、おおよそ100年強続いた時代だったというのが、本書が示している20世紀の時代の流れである。 そういう風な見方をすれば、確かに現代史の大きな流れを理解しやすい。 本書には、その間の出来事についての解説が多く書かれているが、各地の戦争や紛争、あるいは、アウシュビッツでのホロコースト等、世界での帝国主義的活動の結果失われた人命は気が遠くなるほどの規模になる。確かに第二次大戦時代に比べると、そのような活動で人命が犠牲になることは少なくなったが、今でも、ロシアのウクライナ侵攻を典型とした帝国主義的な活動の残渣はあちこちに見受けられる。人間は歴史から学んではいるが、学び方は十分ではないのだ。
Posted by
20世紀の歴史を帝国主義の視点から語られる論文 19世紀後半から20世紀にかけ、差別ー被差別、支配-被支配の関係の全世界の広がり、第一次世界大戦,第二次世界大戦、冷戦,脱植民地、帝国主義の解体と、近代史の大きな流れが語られています。 そして、その時代の定点観測として、アイルラン...
20世紀の歴史を帝国主義の視点から語られる論文 19世紀後半から20世紀にかけ、差別ー被差別、支配-被支配の関係の全世界の広がり、第一次世界大戦,第二次世界大戦、冷戦,脱植民地、帝国主義の解体と、近代史の大きな流れが語られています。 そして、その時代の定点観測として、アイルランド、南アフリカ、沖縄の状況が語られています。 学校で習った地域の近代史はまだしも、まったく知らないアフリカ大陸の歴史はちょっと新鮮でした。 日本のアジアに対する侵略、暴力事件については、ちょっと自分の歴史観とは違いました。 本書は教科書通りの記載でしたが... しかし、この時代の暴力、戦争において、本書で語られる亡くなった方々の人数はすさまじい数値! 20世紀は暴力と殺戮の時代だったということがわかります。
Posted by
2016年5月「眼横鼻直」 https://www.komazawa-u.ac.jp/facilities/library/plan-special-feature/gannoubichoku/2016/0506-3889.html
Posted by
19世紀末~20世紀終盤の帝国主義世界の動きなどを極めて分かりやすく大きな視点で紹介してくれている良書。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
帝国主義が中心となった長い20世紀を様々な角度から網羅的に記した一冊。 20世紀の歴史については解釈を巡って論争が絶えない部分であるが、 どのような意見であろうとも、とりあえず議論の叩き台になりうる良書であると思う。(逆に言えば、教科書的ではある。) 帝国主義諸国だけでなく、被支配側の視点も取り入れられており、 特に両者の性格を帯びたアイルランド・南アフリカ・沖縄を各章の最後に定点観測しているため、マクロな視点とミクロな視点を合わせて読んでいくことができる。
Posted by
歴史系の本って、実は地理的な感覚がとっても大切な気がしています。 この本について言えば、巨視的な地理は配慮していますが、ミクロな地理は、あまり重視しておらず、少し残念な印象を受けました。 二十世紀の捉え方として、帝国主義を中心とした捉え方があり、また、帝国主義の捉え方から、長い...
歴史系の本って、実は地理的な感覚がとっても大切な気がしています。 この本について言えば、巨視的な地理は配慮していますが、ミクロな地理は、あまり重視しておらず、少し残念な印象を受けました。 二十世紀の捉え方として、帝国主義を中心とした捉え方があり、また、帝国主義の捉え方から、長い二十世紀、短い二十世紀という捉え方があることに対しては、なるほど、と思いました。 実は並行して、『サピエンス全史』を読んでいるのですが、帝国に関する部分は、本書を読むにあたって、非常によい下敷きとなりました。
Posted by
1870年代以降の世界史を「長い20世紀」という枠組みから「帝国」と植民地・従属地域の支配・被支配関係の変容を軸に叙述している。エリック・ホブズボームの「短い20世紀」論が第一次世界大戦~冷戦終結までを「極端な時代」と規定し、それ以前の帝国主義形成期との「断絶」を重視するのに対...
1870年代以降の世界史を「長い20世紀」という枠組みから「帝国」と植民地・従属地域の支配・被支配関係の変容を軸に叙述している。エリック・ホブズボームの「短い20世紀」論が第一次世界大戦~冷戦終結までを「極端な時代」と規定し、それ以前の帝国主義形成期との「断絶」を重視するのに対して、本書の「長い20世紀」論は19世紀後半から第二次大戦までの「帝国世界」の連続性を強調し、大戦以後冷戦期の歴史を脱植民地化=「帝国」の解体過程と捉えているのが特色(それ故に20世紀末以降のアメリカを中心とする世界秩序に「帝国」概念を適応させる議論には否定的)。また、グローバル化と国民国家の形成を一体の関係とみなし、両者を対立的に捉える見方を否定しているのも興味深い。巨視的な通史と同時並行して、アイルランド、南アフリカ、沖縄を「帝国世界」の支配と被支配がせめぎ合う典型例として「定点観測」し、徴視的な地域史を組み合わせた叙述方法は、その3か国・地域が「定点」として相応しいかどうかは別として、世界史叙述の方法論の1つとして可能性を示したと言えよう。大国・強国中心ではない「支配される」側の視点を重んじた近・現代世界史の入門書としての価値がある。
Posted by
帝国主義という思想をベースに、帝国(中心)と植民地(周縁)との関係から、20世紀の歴史、特に帝国主義の現場=植民地の歴史を叙述した本。帝国主義の登場、強化から、反帝国主義≒民族自決思想の萌芽と普及、枢軸国の逸脱と崩壊、帝国の崩壊までがよく整理されている。その中で帝国主義における暴...
帝国主義という思想をベースに、帝国(中心)と植民地(周縁)との関係から、20世紀の歴史、特に帝国主義の現場=植民地の歴史を叙述した本。帝国主義の登場、強化から、反帝国主義≒民族自決思想の萌芽と普及、枢軸国の逸脱と崩壊、帝国の崩壊までがよく整理されている。その中で帝国主義における暴力の実相をえぐり出す。今まで読んだ20世紀の叙述の中で最も分かり易い。そして強烈である。戦後70年を考える上で貴重な一冊になるのは間違いない。
Posted by
- 1
- 2