ストーナー の商品レビュー
人生は悲しみの連続であり悲しみとは人生そのものだ、そういう気持ちになる本でした。 主人公ストーナーは貧しい農家の息子として生まれたものの、持ち前の努力と勤労勤勉で大学講師としての地位を得て、十分な収入を得て、妻子を得て、広い住まいを得ました。そんなストーナーの、傍から見ると理想的...
人生は悲しみの連続であり悲しみとは人生そのものだ、そういう気持ちになる本でした。 主人公ストーナーは貧しい農家の息子として生まれたものの、持ち前の努力と勤労勤勉で大学講師としての地位を得て、十分な収入を得て、妻子を得て、広い住まいを得ました。そんなストーナーの、傍から見ると理想的で素晴らしいと思える人生が、どうしてこうも悲しいんだろう。 妻との不仲、子どもの教育方針についての意見の相違、大学での無益な派閥争い、ゼミで受け持つ学生の若さゆえの大胆で反逆的な主張とその若さへの羨望、国同士の戦争、禁じられた恋、老いによる身体の衰え、両親の死、友人の死、そして自分の死。彼の人生の悲しみそのものであるこの本は読者に「これは自分の人生にも起こり得る(もしくは既に起こっている)悲しみだ」との共感を呼び起こします。 読んでいると、悲しみがゆっくりと、本当にゆっくりと、しかし着実に心の底に沈みこんでいくような気分になりますが、翻訳された文章、言葉一つ一つがとても美しく、読者を悲しみの中に掴んで離さない、そんな本でした。 翻訳家ご自身がこの本の翻訳中に癌で闘病をされており、最後の1ページの翻訳作業を残して旅立たれたそうです。何としてもこの本の翻訳は仕上げる、と病に冒されながらも丁寧な翻訳作業を続けられていたそうで、この方のお気持ちが文章を通して伝わってきた気がしました。おすすめの本です。
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きみは自分が何物であるか、何になる道を選んだかを、そして自分のしていることの重要性を思い出さなくてはならん。人類の営みの中には、武力によるものではない戦争もあり、敗北も勝利もあって、それは歴史書には記録されない。どうするかを決める際に、そのことも念頭に置いてくれ。 (本文より) ...
きみは自分が何物であるか、何になる道を選んだかを、そして自分のしていることの重要性を思い出さなくてはならん。人類の営みの中には、武力によるものではない戦争もあり、敗北も勝利もあって、それは歴史書には記録されない。どうするかを決める際に、そのことも念頭に置いてくれ。 (本文より) 小説を読んでてよかったと思えるほどに、悲しくも美しい。決して劇的とはいえないが、読んだ後はきっと世界が輝いて見えるはずだ。
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名を残さず、大学で文学を教えて、結婚し、子どもを育て、老いて亡くなる。 ひとりの男性「ストーナー」の一生を、だれもわからなかった心の内とともに体験できる。 誰も波乱万丈ではないが、他人には言えない荒波があります。外から見るのと内から見るのとは、見えかたが180℃変わっ...
名を残さず、大学で文学を教えて、結婚し、子どもを育て、老いて亡くなる。 ひとりの男性「ストーナー」の一生を、だれもわからなかった心の内とともに体験できる。 誰も波乱万丈ではないが、他人には言えない荒波があります。外から見るのと内から見るのとは、見えかたが180℃変わってきます。何もないから、悲しい。ではなくて、最後の最後に自分で納得できる人生であることの嬉しさをこの本から教わりました。
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主人公ウイリアム・ストーナーが貧しい農家に生まれ、大学で文学に出合い、教授として一生を終えるまでの物語。派手な起伏のない地味なストーリーだが、心に染み入る内容だった。 物語の序盤、つまり人生の前半では、文学に出会い、一目惚れした妻と結婚までこぎつけ、大学で教授職として学び続ける...
主人公ウイリアム・ストーナーが貧しい農家に生まれ、大学で文学に出合い、教授として一生を終えるまでの物語。派手な起伏のない地味なストーリーだが、心に染み入る内容だった。 物語の序盤、つまり人生の前半では、文学に出会い、一目惚れした妻と結婚までこぎつけ、大学で教授職として学び続けるチャンスも手にかけていた。いわゆる勝ち組人生だったかもしれない。 しかし、面倒な人間関係に巻き込まれて、人生の後半はただただ周囲に合わせてしまう疲れ果てたものだったように写る。だが、その人生を良い悪いと判断を下すのではなく、そういう人生だったと素直にストーナー自身が受け入れていたことに注目すべきだ。 こんなことは誰の人生にもあることであろう。成功している人の人生もある一面を捉えただけで、別の面から見てみると同情してしまうようなこともあることかもしれない。だから、ストーナーの人生はリアルなのだ。ストーナー=自分と言ってしまってもいいかもしれない。
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写真を生業としているので言葉の表現範囲の限界を超えなければと常に思っています。 自分が今まで感じた言葉の表現範囲を大幅に超えていて、言葉でここまで行けるのならば写真表現はさらに先に行かなくては!と自分の考える写真表現のハードルがかなり上がりました。文章の一つ一つが美しく、読み進め...
写真を生業としているので言葉の表現範囲の限界を超えなければと常に思っています。 自分が今まで感じた言葉の表現範囲を大幅に超えていて、言葉でここまで行けるのならば写真表現はさらに先に行かなくては!と自分の考える写真表現のハードルがかなり上がりました。文章の一つ一つが美しく、読み進めたい気持ちともったいない気持ちが葛藤しました。借りる本ではなく持つべき一冊だと思います。20年30年後も確実に読み続ける事になりそうです。 翻訳者に心から感謝します。
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「訳者あとがきにかえて」より、「人は誰しも、思うにまかせぬ人生を懸命に生きている。人がひとり生きるのは、それ自体がすごいことなのだ。非凡も平凡も関係ない。」 そうなのだ、そういうことが書いてある。 ストーナーは本当に懸命に生きた。 しかし、イーディスはストーナーが隠していたあれ...
「訳者あとがきにかえて」より、「人は誰しも、思うにまかせぬ人生を懸命に生きている。人がひとり生きるのは、それ自体がすごいことなのだ。非凡も平凡も関係ない。」 そうなのだ、そういうことが書いてある。 ストーナーは本当に懸命に生きた。 しかし、イーディスはストーナーが隠していたあれやこれやをいったいどうやって知ったのだろうか? とても気になる。
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最初の数ページを読んだだけで、これは大切に読み進める価値があると確信した。そんな本にはそうそう出会えない。読み進めるうち惹き込まれることはあるが。 1人の平凡と言っていいだろう男の半生が描かれているだけなのに、静かに静かに心の奥に浸み込んでくる。読書以外では味わえない素晴らしい...
最初の数ページを読んだだけで、これは大切に読み進める価値があると確信した。そんな本にはそうそう出会えない。読み進めるうち惹き込まれることはあるが。 1人の平凡と言っていいだろう男の半生が描かれているだけなのに、静かに静かに心の奥に浸み込んでくる。読書以外では味わえない素晴らしい時間になった。
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1人の男の人生を見せられた。なんというか、こう、この物語の良さを感じるには自分はまだ若すぎる気がした。再読はもっと齢を重ねてからにする。
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話題になったときには興味を持たずにいた。映画化すると聞いて読んでみようと思ったのは少々ミーハーな気持ちもあったのかも。しかし、こんなに早く一気読みに近く読み終わるなんて思ってもみなかった。ストーナーはただ人生を生きているわけで、ワタシは読むという行為でそこに参加させてもらっただけ...
話題になったときには興味を持たずにいた。映画化すると聞いて読んでみようと思ったのは少々ミーハーな気持ちもあったのかも。しかし、こんなに早く一気読みに近く読み終わるなんて思ってもみなかった。ストーナーはただ人生を生きているわけで、ワタシは読むという行為でそこに参加させてもらっただけだ。恋や仕事、家族のこと、挫折や失敗にまみれても、普通に明日は来る。人生を生きた。ただそれだけなんだと思う。ちなみにワタシはケイシー・アフレックより、ジェレミー・アイアンズのイメージですけどね、ストーナーは。読み終わる前から友だちに強く薦めたら友だちも今日本屋に買いに行きました。それくらい強い気持ちになる。特に何が起こるわけでもないのが、人生です。
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事実は小説よりも奇なりというが、何気ないありふれた一生の果てにこそ、ドラマティックな人生にはない美しさというものがあるのだと感じられる一冊。実直で温厚なストーナーが生きる不遇な人生を通して、あらためてこれからの自分の人生を大切にしようという気持ちになることができた。また読み返すこ...
事実は小説よりも奇なりというが、何気ないありふれた一生の果てにこそ、ドラマティックな人生にはない美しさというものがあるのだと感じられる一冊。実直で温厚なストーナーが生きる不遇な人生を通して、あらためてこれからの自分の人生を大切にしようという気持ちになることができた。また読み返すことがあると思う。
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