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ストーナー の商品レビュー

4.6

138件のお客様レビュー

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    80

  2. 4つ

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2020/03/10

3年ほど前にブクログのレビューを見て気になっていた本を、ついに手にとった。 時は20世紀前半、アメリカ中部の郊外に生まれ育った一人の男「ストーナー」の生涯を描いた小説。男は社会的にはごく平凡で(少なくとも自分には他者への穏やかさ、寛容さなど到底真似できない非凡な人にも思えるのだ...

3年ほど前にブクログのレビューを見て気になっていた本を、ついに手にとった。 時は20世紀前半、アメリカ中部の郊外に生まれ育った一人の男「ストーナー」の生涯を描いた小説。男は社会的にはごく平凡で(少なくとも自分には他者への穏やかさ、寛容さなど到底真似できない非凡な人にも思えるのだが)、一人の人間の生涯として何か特殊なことが起こるわけではない。目を見張るような出来事や概念、強烈な笑いや涙へといざなってくれるわけでもない。 けれども、この小説は外からではなく内から来る。私自身が自らの人生のなかで絶えず触れてきた、言葉にもならないような何かが引き出され、気がつけば自分自身であるかのように、ストーナーの人生を生きている。あらすじにすればごくシンプルな人生のイベントの一つ一つが自分のものとして体験され、ストーナーという男と魂を共にしている。 全く特殊な食材や調味料を使うことなく、すばらしく豊かな味わいを生み出しているこの手さばきを「格調」や「美」というのだろうか。多くの人が「美しい」と形容していたことに納得。 読後に訪れたのは、舞い上がるような興奮や感動ではなく、腹の底に静かにストーナーの生がおさまった、そんな感覚であった。きっと長いこと残るだろう。できればそんな読書がしたいと常々思っていても、なかなか難しい。感謝したい。

Posted byブクログ

2018/08/27

訳者あとがきに代えても含めて心に何かが残る一冊。 主人公のストーナーは社会的に見ても大成功した訳ではなく、本当に平凡な人物。ただ、置かれた環境の中で、時に理不尽を身に受けつつも、(波はあれども)勤勉なくらい自らの中には情熱を燃やし続けている。その先に望んだものが手に入らないこと...

訳者あとがきに代えても含めて心に何かが残る一冊。 主人公のストーナーは社会的に見ても大成功した訳ではなく、本当に平凡な人物。ただ、置かれた環境の中で、時に理不尽を身に受けつつも、(波はあれども)勤勉なくらい自らの中には情熱を燃やし続けている。その先に望んだものが手に入らないこともあったが、それを含めて自分なのだと最期は自分を肯定できた。 そんな生き方をできることは幸福なことなのではないかと思った。 「人は誰しも、思うにまかせぬ人生を懸命に生きている。人がひとり生きるのは、それ自体がすごいことなのだ。非凡も平凡も関係ない。」 何気ない日常を味わって生きたいと改めて思わせてくれる本でした。

Posted byブクログ

2018/08/23

小説は人の人生が描いてあるのが好きだ。決して長くない300ページ程で綺麗に1人の人生が描かれている。

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2018/07/15

1人の中年男性の生と死が洗練された文章で語られ、読者はその生の悲しみと束の間の煌めきを感じながら、彼の生涯を追体験する。そして読後には自分の人生は果たしてどうなるのだろうか?、ということを静かに一人で考えざるを得ない・・・。 本作は自身もデンヴァー大学で30年に渡り文学研究者、...

1人の中年男性の生と死が洗練された文章で語られ、読者はその生の悲しみと束の間の煌めきを感じながら、彼の生涯を追体験する。そして読後には自分の人生は果たしてどうなるのだろうか?、ということを静かに一人で考えざるを得ない・・・。 本作は自身もデンヴァー大学で30年に渡り文学研究者、そして教師として学生の指導にあたったジョン・ウィリアムズが1965年に発表した小説である。貧しい農家に生まれ、農学部の苦学生として大学に入学した主人公ストーナーが、ある教師との出会いにより文学に心を惹かれ、文学研究者・教師として自立する。愛のない結婚生活、大学という閉鎖的な空間での教師陣との学内政治とそこでの敗北、優秀な女学生との不倫といった出来事がストーナーの身に静かに降りかかり、彼は自らの体力と気力をすり減らして死に向かっていく。 一見、凡庸な生と死のように見えつつ、極めて美しく洗練された文章と抑制的な感情の描写により、読者はストーナーの一生と自らの一生の価値を比較し、考え込んでしまうだろう。 こんな素晴らしい作品であるにも関わらず、本作は1965年の発表時はそこまでの評価を受けず、再評価されたのは2006年の復刊と2011年にフランスの人気作家による翻訳されたことがきっかけであったという。日本では、柴田元幸、金原瑞人(「蛇にピアス」でデビューした作家、金原ひとみの父親)ら、日本の第一級の翻訳家・文学研究者らによる第1回日本翻訳大賞(恥ずかしながらこ、こういう賞があるのを今回始めて知ったが、この「ストーナー」が選出されたことからも、この賞に対する信頼感は極めて高いと感じる)を受賞している。 一見凡庸に見える一人の男の一生が、なぜここまで多くの人を惹き付けるのか。ぜひ多くの人に読まれて欲しい、読まれるべき完璧な作品であり、文学の面白さが凝縮されていると言っても過言ではない。

Posted byブクログ

2018/06/13

信頼できる読書家の友人が、必読の書として挙げていたので読んでみた。 さえない教師の一生の物語。 しかし、そのさえない人生の中に、読み手は人の一生に起きうることを認識することができる。 生まれも育ちも、仕事も人生も、主人公のそれとは全く異なる。しかし、彼の人生に起きることは、多分私...

信頼できる読書家の友人が、必読の書として挙げていたので読んでみた。 さえない教師の一生の物語。 しかし、そのさえない人生の中に、読み手は人の一生に起きうることを認識することができる。 生まれも育ちも、仕事も人生も、主人公のそれとは全く異なる。しかし、彼の人生に起きることは、多分私にも起きたことであり、起き得たことである。 自分がいま、社会人としての使命の最終章に入りつつあるいまだから、なんとなくそんな気持ちを実感持って覚えた。 さえない男の物語ではある。 しかし、何か本書には残るものがある。 私も本書はお勧めしても良いと思った。

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2018/03/15

なぜこんなにも感動するのか。ただただ地味な、世に名を残さなかった英文学者の一生を描いた作品。文章の力をとても感じた。衰えを感じるたびに、繰り返し読み返したい、忘れられない傑作。2018マイベスト候補。

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2018/02/15

人生は悲しみの連続であり悲しみとは人生そのものだ、そういう気持ちになる本でした。 主人公ストーナーは貧しい農家の息子として生まれたものの、持ち前の努力と勤労勤勉で大学講師としての地位を得て、十分な収入を得て、妻子を得て、広い住まいを得ました。そんなストーナーの、傍から見ると理想的...

人生は悲しみの連続であり悲しみとは人生そのものだ、そういう気持ちになる本でした。 主人公ストーナーは貧しい農家の息子として生まれたものの、持ち前の努力と勤労勤勉で大学講師としての地位を得て、十分な収入を得て、妻子を得て、広い住まいを得ました。そんなストーナーの、傍から見ると理想的で素晴らしいと思える人生が、どうしてこうも悲しいんだろう。 妻との不仲、子どもの教育方針についての意見の相違、大学での無益な派閥争い、ゼミで受け持つ学生の若さゆえの大胆で反逆的な主張とその若さへの羨望、国同士の戦争、禁じられた恋、老いによる身体の衰え、両親の死、友人の死、そして自分の死。彼の人生の悲しみそのものであるこの本は読者に「これは自分の人生にも起こり得る(もしくは既に起こっている)悲しみだ」との共感を呼び起こします。 読んでいると、悲しみがゆっくりと、本当にゆっくりと、しかし着実に心の底に沈みこんでいくような気分になりますが、翻訳された文章、言葉一つ一つがとても美しく、読者を悲しみの中に掴んで離さない、そんな本でした。 翻訳家ご自身がこの本の翻訳中に癌で闘病をされており、最後の1ページの翻訳作業を残して旅立たれたそうです。何としてもこの本の翻訳は仕上げる、と病に冒されながらも丁寧な翻訳作業を続けられていたそうで、この方のお気持ちが文章を通して伝わってきた気がしました。おすすめの本です。

Posted byブクログ

2018/02/07

きみは自分が何物であるか、何になる道を選んだかを、そして自分のしていることの重要性を思い出さなくてはならん。人類の営みの中には、武力によるものではない戦争もあり、敗北も勝利もあって、それは歴史書には記録されない。どうするかを決める際に、そのことも念頭に置いてくれ。 (本文より) ...

きみは自分が何物であるか、何になる道を選んだかを、そして自分のしていることの重要性を思い出さなくてはならん。人類の営みの中には、武力によるものではない戦争もあり、敗北も勝利もあって、それは歴史書には記録されない。どうするかを決める際に、そのことも念頭に置いてくれ。 (本文より) 小説を読んでてよかったと思えるほどに、悲しくも美しい。決して劇的とはいえないが、読んだ後はきっと世界が輝いて見えるはずだ。

Posted byブクログ

2018/02/06

名を残さず、大学で文学を教えて、結婚し、子どもを育て、老いて亡くなる。 ひとりの男性「ストーナー」の一生を、だれもわからなかった心の内とともに体験できる。 誰も波乱万丈ではないが、他人には言えない荒波があります。外から見るのと内から見るのとは、見えかたが180℃変わっ...

名を残さず、大学で文学を教えて、結婚し、子どもを育て、老いて亡くなる。 ひとりの男性「ストーナー」の一生を、だれもわからなかった心の内とともに体験できる。 誰も波乱万丈ではないが、他人には言えない荒波があります。外から見るのと内から見るのとは、見えかたが180℃変わってきます。何もないから、悲しい。ではなくて、最後の最後に自分で納得できる人生であることの嬉しさをこの本から教わりました。

Posted byブクログ

2018/01/22

主人公ウイリアム・ストーナーが貧しい農家に生まれ、大学で文学に出合い、教授として一生を終えるまでの物語。派手な起伏のない地味なストーリーだが、心に染み入る内容だった。 物語の序盤、つまり人生の前半では、文学に出会い、一目惚れした妻と結婚までこぎつけ、大学で教授職として学び続ける...

主人公ウイリアム・ストーナーが貧しい農家に生まれ、大学で文学に出合い、教授として一生を終えるまでの物語。派手な起伏のない地味なストーリーだが、心に染み入る内容だった。 物語の序盤、つまり人生の前半では、文学に出会い、一目惚れした妻と結婚までこぎつけ、大学で教授職として学び続けるチャンスも手にかけていた。いわゆる勝ち組人生だったかもしれない。 しかし、面倒な人間関係に巻き込まれて、人生の後半はただただ周囲に合わせてしまう疲れ果てたものだったように写る。だが、その人生を良い悪いと判断を下すのではなく、そういう人生だったと素直にストーナー自身が受け入れていたことに注目すべきだ。 こんなことは誰の人生にもあることであろう。成功している人の人生もある一面を捉えただけで、別の面から見てみると同情してしまうようなこともあることかもしれない。だから、ストーナーの人生はリアルなのだ。ストーナー=自分と言ってしまってもいいかもしれない。

Posted byブクログ