カラマーゾフの妹 の商品レビュー
2021/1/30 読了 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の後に読んでみると(まぁ、これが大変ですが)、その設定、描写を、本格推理小説の如くに巧く伏線として取り入れているのが分かる。物語としても、イワンが己のトラウマに向き合い、『大審問官』を克服するという成長・再生が描かれ...
2021/1/30 読了 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の後に読んでみると(まぁ、これが大変ですが)、その設定、描写を、本格推理小説の如くに巧く伏線として取り入れているのが分かる。物語としても、イワンが己のトラウマに向き合い、『大審問官』を克服するという成長・再生が描かれている。ドストエフスキーは本当にこんな続編を構想していたのではないか、と思うのは褒め過ぎか?
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再読でしたが 充分面白かった。 とは言っても 『カラマーゾフの兄弟』 そのものを読破出来ないままなので 面白さは半減しているかも しれませんが。 あの文豪ドストエフスキーの原作から "13年後"という設定で 「父殺し」の謎に迫るという 何とも向こうみずな...
再読でしたが 充分面白かった。 とは言っても 『カラマーゾフの兄弟』 そのものを読破出来ないままなので 面白さは半減しているかも しれませんが。 あの文豪ドストエフスキーの原作から "13年後"という設定で 「父殺し」の謎に迫るという 何とも向こうみずな続編。 人間性の複雑さ 猥雑さ 卑小さ それでも生きていくーという 薄い希望の光。 タイトルが 「妹」であることの意味。 江戸川乱歩賞に ほぼハズレなし。
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原典を読んでいないのですが、それでも面白かったです。 普段、日本の作品ばかりを読んでいるのでカタカナの地名・人名に慣れるのに少し時間がかかりましたが、それを過ぎた後は、引き込まれるように読みました。 選評を読むと、既存の小説を基にしている点に賛否があったようですが他人が作った...
原典を読んでいないのですが、それでも面白かったです。 普段、日本の作品ばかりを読んでいるのでカタカナの地名・人名に慣れるのに少し時間がかかりましたが、それを過ぎた後は、引き込まれるように読みました。 選評を読むと、既存の小説を基にしている点に賛否があったようですが他人が作ったものを殺さずに、それを活かし、より高めるということはオリジナルでゼロから作り上げるよりも、時にハードルが高いものです。 私は評価に値すると思いますし、読了後、久しぶりの満足感を味わえた一冊です。 2016年2冊目。
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第58回江戸川乱歩賞受賞作で、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」から、幻の13年後の続編を書き上げたミステリー。原作の不可解な父殺し事件の内容をたどりながら、真相がいかなるものだったのか、次男のイワンが解決に挑む。が正直少し無理を感じた。
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『カラマーゾフの兄弟』はドストエフスキーが死の直前まで執筆していて、本来は続編が予定されていたという。これを日本人の著者が独自に読み解き、解釈し、勝手に続編を書いたのが『カラマーゾフの妹』だ。と言っても、ドストエフスキー自身が構想していたとされる設定も引き継がれている(アレクセイ...
『カラマーゾフの兄弟』はドストエフスキーが死の直前まで執筆していて、本来は続編が予定されていたという。これを日本人の著者が独自に読み解き、解釈し、勝手に続編を書いたのが『カラマーゾフの妹』だ。と言っても、ドストエフスキー自身が構想していたとされる設定も引き継がれている(アレクセイが革命家を志しているとか) 『兄弟』で描かれた「カラマーゾフ殺人事件」から13年後、捜査官となったイワンが再び事件の真相に迫る中で新たな事件が起こる展開。ミステリーとしても面白いし、多重人格者や異常なフェティシズムなどサイコな面も描かれつつ、更にはスチームパンク得意の”ディファレンス・エンジン”が登場し、その計算能力によって、ロケット・ランチャーや宇宙船を開発するなどという、トンデモ系SF的な展開も盛り込まれている。(ここは好みが分かれるところだろう) この小説は語り手が”著者自身"であることも面白い。著者がドストエフスキーを前任者と呼びながら、これを執筆した経緯や、前任者の意図を解説するようなメタ視点が書かれている。「『兄弟』では、なぜ無駄なシーンが長々と描かれたのか?」とかサラっとディスってたりするのも楽しい。(その無駄なシーンを伏線として活かしている。勝手に) ちなみに『兄弟』の要約も書かれていて優秀。(あんなにわかりにくい小説をわかりやすくおさらいしてくれる)
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本家ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は高校生の頃に読んで 大人というか、大台超えた60代の2005年になってから読み直したのと 追ってすぐ亀山新訳の話題に引かれ2008年にまた読んだのと 都合3回読んでいる 高校生の頃はわかったのか?わからないままでも 登場人物たちの饒...
本家ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は高校生の頃に読んで 大人というか、大台超えた60代の2005年になってから読み直したのと 追ってすぐ亀山新訳の話題に引かれ2008年にまた読んだのと 都合3回読んでいる 高校生の頃はわかったのか?わからないままでも 登場人物たちの饒舌な会話が気にいったものだった 若いときの読書なんて感性で読むものかもしれない 2回目の読書術もこなれすぎたあたりの感想は ストーリーの物語性(エンターティンメント性)に感心してしまって ドストエフスキーの言わんとするところなどはスルーしている そして亀山新訳を読むに至って またわかったようなわからないような気分になった なぜなら 亀山氏が訳書の終わりにお書きになったり 新書版「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」などで 続編がある、あるとキャンペーンを張るので やっと小説のはじめにかかげてある「著者より」の文章に気が付いて 読めば、そういわれればそう、と... でも その空想を小説にしてしまうそら恐ろしい作家がいらっしゃるとは というわけで高野文緒『カラマーゾフの妹』を読んだ 本家に劣らぬミステリーだからネタバレになると困るので 現代風の読み応えのある、文章も抑えた力量があるという感想のみ言う だいたいこの本のタイトルがしゃれてい過ぎる 「父殺しの真犯人は本家大団円で解決済みではなかったのだ」という カラマーゾフ兄弟に妹が居るならば...って思うじゃない?
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2020/03/22読了 #このミス作品20冊目 ドストエフスキー"カラマーゾフの兄弟" の未完作の続編とした代筆作。 時代背景的にドストエフスキーが描こうと していたエンディングとは異なるであろう 大胆かつ奇抜な展開です。
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「カラマーゾフの妹」高野文緒著、講談社文庫、2014.08.12 402p ¥788 C0193 (2020.01.26読了) 【目次】 著者より イワン・カラマーゾフの帰省 再捜査に向けて 『カラマーゾフ事件』とは何か 弟との再会、父との再会、そして多重人格 アリョーシャの失...
「カラマーゾフの妹」高野文緒著、講談社文庫、2014.08.12 402p ¥788 C0193 (2020.01.26読了) 【目次】 著者より イワン・カラマーゾフの帰省 再捜査に向けて 『カラマーゾフ事件』とは何か 弟との再会、父との再会、そして多重人格 アリョーシャの失踪 バベッジの計算機械 フェティシズムとサイコパス コスミズムと宇宙船 ヘルマシニャー 最後の事件、そして最後の解答 エピローグ 鼎談 『カラマーゾフの兄弟』と『カラマーゾフの妹』を語りつくす 高野文緒・亀山郁夫・沼野允義 ☆関連図書(既読) 「カラマーゾフの兄弟(上)」ドストエフスキー著・原卓也訳、新潮文庫、1978.07.20 「カラマーゾフの兄弟(中)」ドストエフスキー著・原卓也訳、新潮文庫、1978.07.20 「カラマーゾフの兄弟(下)」ドストエフスキー著・原卓也訳、新潮文庫、1978.07.20 「ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』」亀山郁夫著、NHK出版、2019.12.01 内容紹介(amazon) カラマーゾフ事件から十三年後。モスクワで内務省未解決事件課の特別捜査官として活躍するカラマーゾフ家の次男、イワンが、事件以来はじめて帰郷した。兄ドミートリーの無罪を証明し、事件の真相を確かめたい――再捜査を開始するイワンの前に新たな事件が起こる。十三年前の真犯人は誰なのか。新たな事件は誰が、何のために起こしているのか、そして、謎解きの向こうに見えてくるものとは。息詰まる展開、そして驚愕の結末!
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読みたいと思って待っていたらやっと回ってきた。昔読んだがぼんやりしか覚えていない「カラマーゾフの兄弟」。今あらためて読んでも大丈夫解るのだろうか。先にアノ長い長い本編を読んだほうがいいのだろうか。迷っているうちに手元に来てしまった。 こういうのを杞憂と言うのだろう。読んでみたら、...
読みたいと思って待っていたらやっと回ってきた。昔読んだがぼんやりしか覚えていない「カラマーゾフの兄弟」。今あらためて読んでも大丈夫解るのだろうか。先にアノ長い長い本編を読んだほうがいいのだろうか。迷っているうちに手元に来てしまった。 こういうのを杞憂と言うのだろう。読んでみたら、もう面白くて最後まで読んでしまわないと眠れない、久々に読書の楽しみを実感した。 作者がこの本を書いたのはとても勇気がある。驚いたのは隅々まで読み込んで、原作(前作)のポイントは必ず抑えてある。その上で新しい展開をたっぷり読ませてくれる。なんといっても事件の13年後。あの事件は解決済みで犯人に審判もくだり、関係者もそれぞれの生活に戻っている。そこからどうなったか。 三男のイワンは事件のときにはモスクワに発っていた。だが大審判の折には父フョードルを殺害したのは長男のドーミートリー(ミーチャ)だという判決を受けいれていた。法廷で人格を疑われるほど錯乱し暴言を吐いたことも今では「忘れられていった。 頭脳明晰だったイワンは内務省に勤め、未解決事件の特別捜査官になっている。 その後も頭痛と幻覚、記憶が途切れるという症状に悩まされ、原因は心の深いところにある何かのストレスだろう、時々現れる謎の記憶の断片も繋がりがあるのかも知れないと、うすうす自覚はしている。 次の調査地はを13年前の「カラマーゾフ事件」にして、故郷(スコトプリゴニエスク、、わたしはここが一口にいえないので故郷とする;;)に帰ってきた。 そこには以前オデッサの事件の折の通訳、トロヤノフスキーが来ていた。彼はイワンが調べ始めた「カラマーゾフ事件」に深い関心を持っていたし、心理学者として、イワンの症状にも関心があった。 そして、過去の事件を現代の捜査法に照らして、謎を解いていく。 当時この事件のゴシップで仕事を増やし、名士になってしまっているラキーチンもいた。予審判事ネリュードフ。そして今も天使のような弟、アレクセイ(アリョーシャ)は結婚して故郷に残り、教会の仕事をしながら子供たちの育成につとめ、人々から尊敬されている。 事件の発端から、13年前の時間を掘り起こし、イワンの心の底に沈んでいる出来事から、長兄ドミートリー(ミーシャ)の冤罪が姿を現してくる。しかし彼はイワンの努力で20年の刑が減刑され13年になったのだが、シベリアの過酷な生活で亡くなっていた。 悪の分身のような私生児で異母兄弟のスメルジャコフは裁判の前日に自殺していた。 順調に調査が進んでいるとき、ラキーチンと、ネリュードフが撲殺される。凶器は父親フョードルのときのもに酷似していた。 イワンは、頭痛が酷くなり時々人格が分離する、そして自覚がないままに悪魔的人格に変異する。「悪魔だ」と名乗りそばにいるトロヤノフスキーに語りかける。 一度は幼い少女の人格が出た。 以前の大審判の暴言も、他人格が現れて暴れたのではなかっただろうか、イワンは思い乱れていく。 記憶にないが思い出すと嫌悪感が溢れてくる遠い領地、そんな中でイワンは譲られた土地を見に行く。そこには領主用の家もあったが何の記憶もなく、やはり過去には別人格が来ていたらしい。村人は彼を見知っていて、そのときの出来事を思い出し始める。当時そこには母も生まれたばかりの妹も兄弟もいて、すぐに亡くなってしまった妹の葬儀をして教会の墓に埋めていた。その妹も彼の記憶の底の底に眠っていた。 それは彼の多重人格の証明であり、今も頭痛になって現れる根源的なストレスの痕跡だった。 こうして過去に戻り、資料に当たり、事件当時見逃していた時間のずれを発見する。 そして。当時兄弟が全員で憎み、誰が殺してもおかしくない状態の中で、父親の撲殺時間に時間的にかなう人物が浮かび上がる。 原点を読み込んでミステリにした、そもそもの原点の読み込みがすばらしい。作者の文章力にも脱帽する。 その上、アレクセイが、愛国思想の実現のために組政治犯の仲間に入り、ロケットや砲弾を作る地下組織で働く、電算機を使った速度や燃料消化に従う重量の変化や軌道演算の部分、計算上可能だと思われるロケット打ち上げ構想を実現しようとする、SF的部分も今風で面白い。 イワンがトロヤノフスキーと知り合うオデッサの事件には、イギリスからホームズも参加していたらしいという、ウフッとなるサービス記述もある。 面白かった。
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設定は『カラマーゾフの兄弟』から13年後の続編という体裁をとっている。当然のことながら、本編の下敷きは、『カラマーゾフの兄弟』である。著者が作中でいうところの「前任者」(=ドストエフスキー)が、本来書くべきだった続編を、執筆前に亡くなったので、自分が書いた、という設定である。 テ...
設定は『カラマーゾフの兄弟』から13年後の続編という体裁をとっている。当然のことながら、本編の下敷きは、『カラマーゾフの兄弟』である。著者が作中でいうところの「前任者」(=ドストエフスキー)が、本来書くべきだった続編を、執筆前に亡くなったので、自分が書いた、という設定である。 テーマは、前作で書かれた父殺しの裁判が果たして正しい判断だったのか、という懐疑から始まるミステリーだ。作者は、心理学、精神医学、SF(空想科学)、そして当時のロシア社会といったさまざまな要素を駆使して、『カラマーゾフ事件』の13年後を描いて見せる。ついには、「前任者」が書き上げた『カラマーゾフの兄弟』の話を破綻させることなく、かつ、自身の物語も矛盾せずに、意外な結末へと我々を導いてくれる。さらには、裁判直前にイワン・カラマーゾフがさいなまれたメランコリーの原因までひも解いてみせる。実に念入りなプロットで描かれた物語であった。 本作は、「前任者」が著した『カラマーゾフの兄弟』を読んでいなくとも、本作だけでも充分楽しめるであろう(そのために、著者は、作中で一章を割いて前作をふり返る念の入れようだ)。しかし、前作を読了したうえで本作を読めば、その味わいはさらに広がる。どうやら著者は、江戸川乱歩賞に本作を応募するにあたり、規定枚数まで内容を削ったという。それでもやられた。十分に楽しめた。いつか、削る前のオリジナルの物語を読む機会が与えられたら、すぐにでも再読するだろう。
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