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贈与論 他二篇 の商品レビュー

3.8

16件のお客様レビュー

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2023/07/07

武器としての哲学の推薦本であった。哲学ではなくフィールドワークである。ポトラッチについての説明である。アジアでは中国についてわずかのページが割かれているのにすぎないので、日本では柳田の本を読んだ方がいいであろう。

Posted byブクログ

2023/10/03

相手から助けてもらう。自分は相手を助けていない。相手からものを貰う。自分は相手に何もあげていない。他人からの贈り物に「お返し」をしないとなんだか気持ち悪い。他人からの贈り物には霊力が込められている。マルセル・モース『贈与論』1925 人から何か贈り物をもらったら、お返ししないと...

相手から助けてもらう。自分は相手を助けていない。相手からものを貰う。自分は相手に何もあげていない。他人からの贈り物に「お返し」をしないとなんだか気持ち悪い。他人からの贈り物には霊力が込められている。マルセル・モース『贈与論』1925 人から何か贈り物をもらったら、お返ししないと気持ちが悪い。人は贈与と返礼を繰り返している。それにより社会は変化し続ける。人間の社会で何かを手に入れたいのなら、こちらがまず相手に与えなければならない。レヴィ=ストロース『親族の基本構造』1949 援助や好意を受けたら、相手にお返しをする。もらいっぱなしよりも返す方が結局は自分の利益になるし、そうしないと社会で孤立するかもしれない。グールドナー1960 他人が欲しいものを自分しか持っていない場合、相手は自分に依存せざるを得ないため、持ってる側(自分)に権力が生まれる。エマソン1962

Posted byブクログ

2023/02/27

 数か月前に柄谷行人の『世界史の構造』を読んだ。これは、マルクスの生産様式ではなく交換様式に着目し、それをもとに世界の歴史を紐解いていくのだが、その際マルクスの『資本論』と同じくらい重視されたのが今回読了したマルセル・モースの『贈与論』である。『世界史の構造』を読み終えて「贈与」...

 数か月前に柄谷行人の『世界史の構造』を読んだ。これは、マルクスの生産様式ではなく交換様式に着目し、それをもとに世界の歴史を紐解いていくのだが、その際マルクスの『資本論』と同じくらい重視されたのが今回読了したマルセル・モースの『贈与論』である。『世界史の構造』を読み終えて「贈与」という概念に興味を持ち始めたため、それに関連した新書を何冊か読んでいたが、今回、本腰を入れて、本書を読むことにした。  「贈与」にまつわる話で、モースは①与える義務②受け取る義務③お返しをする義務の三つを取り上げる。これらの義務において、贈与特有の不可思議な力が潜んでいることが読み取れる。また、訳者の解説が本書全体の要点がまとまっているので、先にこちらを読んだ方が良いのかもしれない。以下、要点を書き上げる。  まず「交換」と「贈与」の違いを解説すると、前者は相手に何かを渡した場合、その見返りを正当に要求できる権利を有するのに対し、後者はその見返りを求めることが認められないのである。この二つの概念は一見同じように見えて、実は微妙な違いがあることが確認できるが、社会ではこの二つが混ざりあっているとモースは指摘する。次に、この二つの混ざったもの、すなわち「贈与=交換」には、平和性と暴力性を有するということである。 最後に、モースは本書で「贈与=交換」に、贈与されてはならない財があることに言及する。以上が本書の大まかな要約である。  それにしても、モースの偉大な功績なところは、古今東西で確認される膨大な贈与の歴史をこの一冊にまとめあげたところであろう。これらは資本主義社会が浸透する以前の時代、地域の社会システムであり、現代ではあまり目撃されない摩訶不思議な現象を知ることができる。そのため単純に歴史書として読んでも面白い。ただそれ以上に、現状の資本主義を打開するための指南書としても読めるのではないだろうかと思う。現在、新自由主義的価値観のもとで、徹底的な効率重視、無駄の削減などとにかく非合理なものが排除される。そのため、合理的思考を当然と見なすのが昨今の傾向である。そんなときに、本書を読むと、過去の人間たちが必ずしも理性的ではなかったものの、共同体同士の絶妙な関係が持続して成り立ったことが見て取れる。このようなことをふまえると、現状の資本主義社会を克服するうえで、「贈与」という概念を今後ますます考察する価値があるのではないだろうか。 

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2022/10/31

贈与は資本経済とは違う軸で動く、という新たな視点、そして贈与に係る様々な「なにか」を強く感じられ、とてもよかった。現代でも贈与が残る理由がよくわかり、そして自分たちがとるべき行動や今何も考えずとっている行動について再考する良いきっかけになった。

Posted byブクログ

2022/07/21

リベラルアーツはいつも理解ができず興味を持ちたくてもなかなか持てない分野であるが、今回の贈与論はイメージしやすかったことと、知らなかったことも多くとても興味が湧いた。 自分のできることであれば、何かを与えたいと感じるのは人間の当たり前の感情だと思っていたし、もらったものに対して...

リベラルアーツはいつも理解ができず興味を持ちたくてもなかなか持てない分野であるが、今回の贈与論はイメージしやすかったことと、知らなかったことも多くとても興味が湧いた。 自分のできることであれば、何かを与えたいと感じるのは人間の当たり前の感情だと思っていたし、もらったものに対してお礼やお返しをしたいと思うことも当たり前だと思っていた。 ただ古代から近代のいろいろな民族の風習や文化を知ると、贈与とその前後にあたる行為に、何か見えざる力やエネルギーのようなものがあり、それを避けるがために贈与やお返しをすると言う行為があるのだと分かった。 そのような考えが長い年月によって今の私たちのDNAというか、何かに組み込まれ、贈与と言う重いものではなくプレゼントと言うライトな行為にも結びついているのではないかと感じた。 ==== ジャンル:リベラルアーツ 出版社:筑摩書房 定価:1,320円(税込) 出版日:2009年02月10日 ==== マルセル・モース(Marcel Mauss) 1872‐1950、フランス・ロレーヌ出身 社会学者、民族学者。ボルドー大学で叔父のデュルケムに哲学を学び、その後高等学術研究院、コレージュ・ド・フランスで教鞭を執る 関心領域は極めて広範で、社会、宗教はもとより経済、呪術、身体論にまで及んだ 「社会学年報」の編集にも携わり、実証的かつ科学的な研究を特徴とするフランス学派の礎を築いた ==== flier要約 https://www.flierinc.com/summary/3054

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2022/04/03

表題ほか短いふたつの論文を発表順に収録。いずれも「全体的給付」を共通の主要テーマとしている。本編は約440ページ、巻末に訳注と訳者解説あり。論文だけあって原注のボリュームが非常に多く、数ページにわたって注釈がつづく箇所もあり、かなりの紙数を占めている。 三篇の論文に共通して何度...

表題ほか短いふたつの論文を発表順に収録。いずれも「全体的給付」を共通の主要テーマとしている。本編は約440ページ、巻末に訳注と訳者解説あり。論文だけあって原注のボリュームが非常に多く、数ページにわたって注釈がつづく箇所もあり、かなりの紙数を占めている。 三篇の論文に共通して何度も登場するのが、アメリカ北西部とメラネシアにとくに分布する「ポトラッチ」という儀礼・慣習であり、それは競覇的な性格を備えた贈答だという。「ポトラッチ」の大きな特徴としては、「プレゼントを純粋に無償で贈与するという装いをまとっている」にもかかわらず、「さらに何かを上乗せしてお返しすることが義務づけられるようになること」にある。このような贈答の応酬で最終的に返礼できなかった側がヒエラルキーの下位に立つ。かつ、場合によっては破壊にいたるケースもあるという。そういった意味で競覇型の全体的給付とされる「ポトラッチ」が本書内でもっとも重要な鍵として扱われる。 このような贈与のあり方は厳密に「ポトラッチ」が確認される地域に限らなければ、過去において世界各地に見られた風習だとし、いくつかの地域での例を順に確認していく。著者によれば、このような贈与経済に対する価値観が現代の経済であり、それは贈与経済を範経済的だとしたローマ人とギリシア人によって生み出されて現在にいたるとする。 このほか、贈与経済の社会にある特徴として、共同体のあり方がもっと集団的であったことや、物と魂とが融合的に捉えられていたことを挙げて、現代社会との大きな違いとして示唆したうえで、現代のような価値観が浸透したのはそれほど遠い過去ではないことも指摘する。そのうえで、現代の資本主義社会に対して、贈与経済の社会にみることができる「全体的給付」のあり方は振り返って見直されるべきという主張もなされる。政治的には、社会主義的な社会を望ましいとするのが著者の立場のようだ。 原注を省いた、かなりざっくりした読み方になった。「ポトラッチ」の贈答競争のあり方から、「ギフト」という言葉が元来「贈り物」と「毒」という二つの意味をもつことを納得した。人間の価値観としては、古代から名誉が重視されてきたという事実も興味深い。

Posted byブクログ

2023/10/26

「贈与」 贈る義務、受け取る義務、返還する義務が存在する。 はるか昔から、人間社会の基底に存在してきた贈与というシステム。 そのシステムは様々な社会関係を安定化させ、発展することに寄与してきた。 確かに、資本主義というシステムが世界中を席巻する現代においても、システムとしての「...

「贈与」 贈る義務、受け取る義務、返還する義務が存在する。 はるか昔から、人間社会の基底に存在してきた贈与というシステム。 そのシステムは様々な社会関係を安定化させ、発展することに寄与してきた。 確かに、資本主義というシステムが世界中を席巻する現代においても、システムとしての「贈与」は存在しているように思う。 しかし、その存在の仕方は、現代社会のシステム全体においてはあくまで細い支流の1つ程度のもので、贈与というシステム単体で、資本主義そのものを脅かすほどの存在ではないだろう。 ただし、近年は、産業化の過剰がもたらす環境問題やグローバル化による市場のカオス化、格差拡大など既存の資本主義システムが新しい展開を迎えており、人間社会の基底システムとしての贈与に再度着目する意義は大いにあると感じる。

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2021/09/12

何もかもが独立、分裂している今日の西洋的な社会とは対称的に、このような何もかもがつながり、循環している社会もあるのだ知ることができたのが、この本を読んでのなによりの収穫だった。 この社会に住む人々にとって、幸福とは富を限りなく増やしていくことではなく、増やし蓄えた富を皆と分かち合...

何もかもが独立、分裂している今日の西洋的な社会とは対称的に、このような何もかもがつながり、循環している社会もあるのだ知ることができたのが、この本を読んでのなによりの収穫だった。 この社会に住む人々にとって、幸福とは富を限りなく増やしていくことではなく、増やし蓄えた富を皆と分かち合ったその先にあるものなのだ。みんなが自分の一部を誰かに分け与えあい、モノ、ヒト、さらに霊や魂、神までひっくるめて文字通り大きな輪になっているのには感動すら覚えた。

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2021/07/11

お金にならない価値の「価値」を言語化したくて読んだ。 読後の結論は、 お金にならない価値の「価値」は、人と人との繋がりを生む、という価値である。金銭での等価交換は、一回きりであり、繋がりや関係性を関係性を生むことはない。 という点に収まった。納得。 *** 贈与と返礼は、人...

お金にならない価値の「価値」を言語化したくて読んだ。 読後の結論は、 お金にならない価値の「価値」は、人と人との繋がりを生む、という価値である。金銭での等価交換は、一回きりであり、繋がりや関係性を関係性を生むことはない。 という点に収まった。納得。 *** 贈与と返礼は、人間社会の特徴の一つ。 人間は、贈与を受けると、お返ししなければ、という気持ちになる。(なぜそうなるのか本書では明かされていないが、人間の特性として備わっているようである。)そして、この贈与とお返しは、お返しに対するお返し、そしてさらにそのお返しに対するお返し、というように、やりとりに連続性が生まれ、贈与者と被贈与者を結びつける。従って、贈与(と返礼)には、紐帯を生む力がある。金銭での等価交換のやり取りは都度都度一回切りの交換であり、繋がりはうまない。 一方で、贈与は、相手が「受け取らない」(=つながりの拒否)態度をとる場合は、争いの元になったり、過度な贈与・お返し合戦という競争や争いも生んだりもする。贈与は、連繫と一体化を生む可能性も、一方で争いを生む可能性も、両方を内包している。 現代の市場経済(贈与ではなく、商人の購入売却)、契約社会(倫理的な義務感ではなく契約的な義務)においても、人間にインストールされた贈与経済的な倫理観は顔を出したりする。 「今日では、古いさまざまな原理が抵抗を起こし、現代の私たちの法規範が持つ冷厳さや非人間性に抗している」

Posted byブクログ

2020/12/25

読了。 注書きのとても多い本。注書きをほぼ飛ばして、本文を読んだ。ポトラッチは体に染み込んでいると実感。

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