電子立国は、なぜ凋落したか の商品レビュー
泣いても笑っても、日本は「第2の太平洋戦争」(対米半導体戦争)に負けたのである。衰退した日本に、もう「第3の太平洋戦争」は考えられないが、もしあるとしても、また敗戦するのは必定。日本が従来のままのであるかぎり、何回やっても同じ失敗を繰り返すだろう、と言われている。日本が再興するた...
泣いても笑っても、日本は「第2の太平洋戦争」(対米半導体戦争)に負けたのである。衰退した日本に、もう「第3の太平洋戦争」は考えられないが、もしあるとしても、また敗戦するのは必定。日本が従来のままのであるかぎり、何回やっても同じ失敗を繰り返すだろう、と言われている。日本が再興するためには、識者からいろいろ指摘されている弱点、つまり『無戦略」「情報軽視」「無反省・無責任」「情緒的な甘え」「定型作業を好む」などを克服しなければならない。 前置きが長くなったが、著者の西村吉雄氏は、「日本電子産業のすさまじいまでの凋落」ぶりを簡明に説明している。西村氏は技術ジャーナリストになる前は「マイクロ波半導体デバイスや半導体レーザーの研究に従事」した経験があるから、合理的な考え方で論を展開している。「個々の企業の業績を超える構造変化が見えることがある」という「統計データ」を基にして分析をしている。日本電子工業崩壊の顛末を知る上で、細部において異論があるとしても、西村氏が示唆に富む諸考察を提供してくれるので、本書は大いに頼りになる。 日本の電子産業の経営者たちにおかれては、耳が痛い話ばかりであり、「エクスキューズ」をしたくなるだろうが、この度の悲惨な結果を招いた責任を絶対に免れることはできない。謙虚に本書を読み(併せて湯之上隆氏の本も読むとなおよろしい)、十分に反省をして残りの人生を有意義に全うされたい。 ところで、日本の自動車産業も雲行きが怪しくなってきたようだ。近い将来に日産が消滅し、トヨタが自動車産業のTSMCになるという悪夢が正夢にならないことを願う。 本書の目次は次のようである: まえがき 第1章 大きな産業が日本から消えようとしている 日本のICT(情報通信技術)産業の貿易赤字は「天然ガス」並み 第2章 わかっていたはずの「地デジ特需」終了 日本製テレビが盛んに輸出されていたのは1985年まで 第3章 100年ぶりの通信自由化がもたらしたもの 「自由化」「モバイル」「インターネット」の大波に翻弄された通信市場 第4章 鎖国のときは栄え、開国したら衰退 市場のグローバル化で精彩を失った日本のパソコン 第5章 「安すぎる」と非難され、やがて「高すぎて」売れなくなる 日本のDRAM産業の栄枯盛衰 第6章 日本の半導体産業、分業を嫌い続けた果てに衰退 半導体産業でも設計と製造の分業が進む 第7章 アップルにも鴻海にもなれなかった日本メーカー ファブレス・メーカーとEMSが製造業を再定義 第8章 イノベーションと研究を混同した日本電子産業 技術革新はイノベーションではない 大9章 成功体験から抜け出せるか 工本主義による保護は工業を元気にしない 【付録A】プログラム内蔵方式 【付録B】半導体 【付録C】パケット交換 引用・参考文献 あとがき
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水平分業を頑なに拒んだ日本企業の考察の中で、メインバンク制度の視点からの分析は参考になった。もう一つの見方として、日本人のコミュニケーション能力の問題も影響していると思う。水平分業で中国や台湾の会社と日々のコミュニケーションを必要とする事は、普通に日本教育を受けてきた日本人からす...
水平分業を頑なに拒んだ日本企業の考察の中で、メインバンク制度の視点からの分析は参考になった。もう一つの見方として、日本人のコミュニケーション能力の問題も影響していると思う。水平分業で中国や台湾の会社と日々のコミュニケーションを必要とする事は、普通に日本教育を受けてきた日本人からすると、酷でしかない。根本は教育じゃないのかな。 この敗北モデルを、日本の基幹産業である自動車分野でどう活かすべきか。EV化や業界水平分業化に対し、既に周回遅れであることは事実。日本のOEMは自社ブランドだけに拘らず、新興EVブランドの製造受託としての選択肢も進めるべき。日本の部品メーカーも含めた製造サプライチェーンの強さは生かせるはず。
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日本の電子産業が成功した理由(アメリカの戦後政策)と転落した理由(ガラパゴスに特化した産業構造、捨てられない成功体験、非効率な製造業の垂直的管理、など)細かく書かれている。 日本がなぜファブレス、ファウンドリーの流れに遅れたのか。ファウンドリーに特化していれば日本のプライドのもの...
日本の電子産業が成功した理由(アメリカの戦後政策)と転落した理由(ガラパゴスに特化した産業構造、捨てられない成功体験、非効率な製造業の垂直的管理、など)細かく書かれている。 日本がなぜファブレス、ファウンドリーの流れに遅れたのか。ファウンドリーに特化していれば日本のプライドのものづくりの文化が活かされたのではないか。日本の大企業の経営者の言動の矛盾がうまく書かれている。 イノベーションと基礎研究を混同してしまい、経済発展に関係のない基礎研究に投資してしまったことも書いてある。 ガラパゴスであるテレビ産業に大きな投資をして失敗した大企業たち。ガラケー(ガラパゴス携帯の略だったと初めて知った。)に頼って世界の競争から取り残されてしまったことも解説している。 日本の大企業の減価償却についての意識の低さがファブレス化を妨げていたことも興味深い。日本の企業の資本は銀行からもらっているため、担保として大きな固定資産を所持しておく必要があるなど。
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1991年、私が大学生だった頃に、NHKで「電子立国 日本の自叙伝」というドキュメンタリーが放送され、本にもなった。半導体という技術に、日本の官民が貪欲に取り組み、世界のトップに上り詰めたその過程が誇らしげに記録されていたものだ。 それから、20年以上立った現在、日本は電子立国...
1991年、私が大学生だった頃に、NHKで「電子立国 日本の自叙伝」というドキュメンタリーが放送され、本にもなった。半導体という技術に、日本の官民が貪欲に取り組み、世界のトップに上り詰めたその過程が誇らしげに記録されていたものだ。 それから、20年以上立った現在、日本は電子立国ではなくなってしまった。ハード的には、中国、韓国に完敗し、国内企業は存続すら怪しい。ソフト的には、欧米企業の競争相手ですらない。 誰がみても電子立国は凋落してしまった訳だが、そうした歴史に学ばなければ、唯一残っている自動車などの製造業も同じ道を辿っても不思議ではない。
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※このレビューにはネタバレを含みます
全体的に、いまいち。一言で言うと、垂直統合に閉じこもりイノベーションを起こせなかったから、というが、なぜそういう状態に陥ったのか、という点で掘り下げ不足。 自動車産業と情報産業の差は何だったのか、を知りたい。
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半導体など電子立国を支えた産業が何故凋落したかを元日経エレクトロニクス編集長だった著者が分析。 いやはや電機の一角の人間としては暗くなる。東芝も気がついたら死に体だし、これからどうなることやら。
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凄まじい本であった。凋落以前に勝ててたのか? ものづくりとか言う割に製造受託はしないのはどういうことだというのは完全に同意であるし、ものづくり神話を語られた時は使っていこう。
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それにしても凄まじい凋落だ.同一企業で製造と開発部門を維持していきたいという習性は,今の経営者は絶対持っていると思う.水平分業の考え方を取り入れられるだろうか.官僚も含めてこの現実を直視する必要があろう.
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一連の製造業敗退本の中では唯一、戦後の経済発展を冷戦、日米関係という視点から分析しており、この点に関しては面白い(主に前半)。80年代に起きた冷戦終結が少なからずテレビ、電話、パソコン・半導体全ての崩壊のトリガーになっており、この世界情勢の変化を無視して、技術や経営のあり方に敗退...
一連の製造業敗退本の中では唯一、戦後の経済発展を冷戦、日米関係という視点から分析しており、この点に関しては面白い(主に前半)。80年代に起きた冷戦終結が少なからずテレビ、電話、パソコン・半導体全ての崩壊のトリガーになっており、この世界情勢の変化を無視して、技術や経営のあり方に敗退の原因を求めていては、いつまでたっても産業復興はあり得ないのかもしれない。 テレビ産業敗退の陰に放送業界vsインターネット産業って見方も面白いし、この例を考えても、技術や経営というよりは政治・ロビー活動によって業界団体が間違った方向に旗を降ってきた罪が大きい気がする。ただ、電話にしろテレビにしろ、頑張って次を作ったら既に世間では無用の長物ってパターンがあまりにも多くて悲しくなった。 肝心の主題についての結論は佐野昌さんの「半導体衰退の原因と生き残りの鍵」に近く、垂直から水平への転換に失敗したという考え方で、この点について面白い議論はなかった。 関連して企業研究所(中央研究所)と基礎研究ブームについての批判も1つの章を設けて書かれている。「研究所は大切」派としては悔しいけど、僕自身も最近は「理学の研究は大切だけど、工学に研究は必要ないかも」と思い始めている。
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日本の電子産業の課題がとてもわかりやすく簡潔にまとまっている。日本のものづくり、経営を学ぶのにとても優れている。
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