街の人生 の商品レビュー
岸政彦さんの本は、これで三冊目。 「断片的なものの社会学」は、聞き取りの記録と岸さんの解説が半々。 「マンゴーと手榴弾」は、社会学的な理論が八割。 「街の人生」は、聞き取りの記録のみ。 図書館で借りて読み終わった後に、自分の分として買い直そうと思ったのは「断片的なも...
岸政彦さんの本は、これで三冊目。 「断片的なものの社会学」は、聞き取りの記録と岸さんの解説が半々。 「マンゴーと手榴弾」は、社会学的な理論が八割。 「街の人生」は、聞き取りの記録のみ。 図書館で借りて読み終わった後に、自分の分として買い直そうと思ったのは「断片的なものの社会学」。何度でも読み返したいし、読むたびに新しい気付きをもたらしてくれるような気がしている。 インタビューの書き起こしのみが記録されたこの本は、もう一度読みたいと思うほどではない(現時点では)けれど、それでもやっぱり、自分と全く違う人生を歩む人々の人生を覗き見しているような感覚を覚える。この感覚は、中毒性がある。自分の置かれている状況が実は全然当たり前じゃなくて、だから今が幸せだと少しでも感じているなら、きちんと感謝しないといけないんだよ、と諭されているような感覚。その諭しは、厚かましくなく、押し付けがましくなく、ふんわりとくる。そう、私はもっといろんなものに感謝して生きないといけない。岸さんの本を定期的に読むようになって、そういう思いがどんどん強くなっている。
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あの時、あの場所に、こんな人がいたんだというものが後世に残るのは価値のあることだと思う。100年後の人は、この本を読んだら、面白がってくれるのではないだろうか。
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読書開始日:2021年4月29日 読書終了日:2021年4月30日 所感 断片的なものの社会学を見ても思ったが、 どんな人も、自分と同じように、かの有名人と同じように、その時間を生きていることを感じさせられる。 読まなかったら絶対に知らずにいた、知らない人の生活史。 話す内容のな...
読書開始日:2021年4月29日 読書終了日:2021年4月30日 所感 断片的なものの社会学を見ても思ったが、 どんな人も、自分と同じように、かの有名人と同じように、その時間を生きていることを感じさせられる。 読まなかったら絶対に知らずにいた、知らない人の生活史。 話す内容のなまなましさと、インタビュー回答と妙な爽やかさに、その人がつけた折り合いを垣間見ることができる。 登場人物が言っていた「回復論」に寄るようでいたたまれないが、 それぞれ乗り越えるまでも、なんとか問題に立ち向かい、やり過ごしたのだと思う。 大中小みなそれぞれ問題を必ず抱えていて、それに少なからず立ち向かっている。 自分が物語を拾うことによってそれが固有の意味を持つことは間違い。それぞれの生活の物語がすでに固有。 自分は登場人物のような波乱万丈な人生ではない。 しかしながら立ち向かわなきゃいけない問題や癖がある。 下手な物語よりもよっぽど爽やかな作品だと思う。
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南米から移住してきた日系人のゲイ、ニューハーフにシングルマザーの風俗嬢など、社会的にマイノリティと言われる人達の語る人生。 なんかみんな語りの合間合間に笑ってる。 その笑いがホッとさせてくれる事もあり、逆に物哀しく感じる事もある。 サッと読めるけど、重くて軽くて、悲しくて面白い。...
南米から移住してきた日系人のゲイ、ニューハーフにシングルマザーの風俗嬢など、社会的にマイノリティと言われる人達の語る人生。 なんかみんな語りの合間合間に笑ってる。 その笑いがホッとさせてくれる事もあり、逆に物哀しく感じる事もある。 サッと読めるけど、重くて軽くて、悲しくて面白い。 そんな感じ。
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世間一般では「マイノリティ」と言われる人たちの「普通」の人生を聞き取った本。外国籍のゲイ、ニューハーフ、摂食障害、シングルマザーの風俗嬢、西成のホームレスの5人の人生が詰まっている。引き込まれて一気に読んでしまったが、読み終わって放心している。5人分の人生(の一部)に接したことで...
世間一般では「マイノリティ」と言われる人たちの「普通」の人生を聞き取った本。外国籍のゲイ、ニューハーフ、摂食障害、シングルマザーの風俗嬢、西成のホームレスの5人の人生が詰まっている。引き込まれて一気に読んでしまったが、読み終わって放心している。5人分の人生(の一部)に接したことで心がいっぱいになっている。
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ちょうどミランダ・ジュライのあなたを選んでくれるものを読み終わったあとに開始。ミランダは、実際の自分の人生とは決して交わらない所にいる人たちと話し、岸さんは友人たちの話という。立ち位置の違うふたりのとった人と交わる手法が近くて面白かった。
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本書にはいわゆる「マイノリティ」と呼ばれる人の生活史が記録されている。本当にただの生活史(生い立ちについてのインタビュー記録)である。著者自身が述べているが,「なるべくそのような編集(注:読みやすい文章に形を変えること)はせずに,もともとの会話をそのまま残すように」(p.ⅰ)した...
本書にはいわゆる「マイノリティ」と呼ばれる人の生活史が記録されている。本当にただの生活史(生い立ちについてのインタビュー記録)である。著者自身が述べているが,「なるべくそのような編集(注:読みやすい文章に形を変えること)はせずに,もともとの会話をそのまま残すように」(p.ⅰ)したことがよくわかる。なぜなら,「読みにくい」からである。 誤解のないように伝えておきたいが,「読みにくさ」を問題にしているのではない。会話を編集しないまま文字にするとはそういうことである。人の話を聞いてそれを文字に起こした経験のある人ならご存知のとおり,人の会話とは基本的にわかりづらい。聞き直してみると「あれ?なんかさっきと言っていること微妙に違うのでは?」「話噛み合っていないよね?」「それってどれ?」みたいな「齟齬」がいたるところにある。人との会話である生活史に最低限の編集しか加えていない本書にもそのような「齟齬」が見つかる。「齟齬」があればあるほど,本書が会話の記録であることを如実に物語る。 そのような本書の特徴は私たちに多くのことを教えてくれる。「マイノリティ」の生活は私たちの生活と地続きであること,隣人が「マイノリティ」かもしれないこと,その意味で「マイノリティ」と私たちは切れない存在であること,ドッペルゲンガー的な私たちであることを知る。しかし,逆説的に響くかもしれないが,「マイノリティ」と私たちは質的に違う存在であることも同時に知る。あくまでドッペルゲンガーでしかないことを知る。会話を読むことは他者との微細な齟齬を感じる訓練になるのかもしれない。 本書にはまた別の側面もある。それは生活史の教科書としての側面である。著者は『質的社会調査の方法』で生活史調査の方法を詳述しているが,同書で詳しく知ることができないことは,生活史調査中(インタビュー中)の様子である。生活史調査の実施前から後にかけて丁寧に説明してくれるものの,「では具体的にどうやったらいい?」という調査中の不安は同書を読むだけだとなかなか解消されない。しかし,本書を調査中の生の記録として捉えることで,「こういう風にインタビューがすすむのか」「最初に,お生まれは?と本当に尋ねるんだな」ということがわかる。別角度から質的社会調査(生活史)の方法を伝える書として本書を捉えることも可能であろう。
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解釈を示すことがはばかられるような語りの数々。どの人も必死に、強く、生きていた。固有の人生に直面して、もがいているという点で、恐らく人は多かれ少なかれ同士である。 ノンフィクションの読み物、あるいはライフヒストリーの調査を行う上での参考書籍として読むのが良いと思う。楽しんで読む...
解釈を示すことがはばかられるような語りの数々。どの人も必死に、強く、生きていた。固有の人生に直面して、もがいているという点で、恐らく人は多かれ少なかれ同士である。 ノンフィクションの読み物、あるいはライフヒストリーの調査を行う上での参考書籍として読むのが良いと思う。楽しんで読む本。
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「断片的なものの社会学」で知られる社会学者の岸雅彦氏が、彼の研究において最も重要な方法論の一つであるライフヒストリーの聞き取り調査を書籍化した一冊。本書では、実際に聞き取りを行った南米出身で日本で移民として暮らしている外国籍のゲイ、ニューハーフ、若いときから摂食障害に苦しめられて...
「断片的なものの社会学」で知られる社会学者の岸雅彦氏が、彼の研究において最も重要な方法論の一つであるライフヒストリーの聞き取り調査を書籍化した一冊。本書では、実際に聞き取りを行った南米出身で日本で移民として暮らしている外国籍のゲイ、ニューハーフ、若いときから摂食障害に苦しめられてきた女性、シングルマザーの風俗嬢、大阪の西成で暮らすホームレスの男性、という5人の聞き取り内容が、ほぼヒアリングそのままに収録されている。 Sly & The Family Stoneの有名な一節を借りるなら 「different strokes for different folks」とでも言うべきか、他者の人生をここまで深く追体験できるだけで十分に面白い。 個人的には職業柄、様々な業界・企業のエキスパートに対して、業界動向等をヒアリングする機会が多いが、インタビュアーとしての岸氏が相手の警戒感を解しつつ、自由闊達に話をさせる様子(話の展開のさせ方など)に関心させられた。
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前知識なく読みました。 冒頭の一文、 「我々が空想で描いて見る世界よりも、隠れた現実の方が遥かに物深い(柳田国男)」を踏まえて読み続けました。 ゲイ、ニューハーフ、摂食障害、シングルマザーの風俗嬢、元ホームレスの人生の記録が、インタビュー方式で淡々と記されていました。 生きる...
前知識なく読みました。 冒頭の一文、 「我々が空想で描いて見る世界よりも、隠れた現実の方が遥かに物深い(柳田国男)」を踏まえて読み続けました。 ゲイ、ニューハーフ、摂食障害、シングルマザーの風俗嬢、元ホームレスの人生の記録が、インタビュー方式で淡々と記されていました。 生きるためには都度選択肢を選び、そしてまた選びを綴ること。それが一つの命の灯火としてあり続けるのだと感じました。 私は生き様という言葉が大嫌いです(他人が使うべきではない言葉だと思う) 人には奥深さがあり、人の人生は言葉ひとつで語れるものじゃないなと思いました。
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