社会はなぜ左と右にわかれるのか の商品レビュー
息子へ) これもまた研修の課題図書。 お父さんの好みのタイトルから読んできたせいか、 課題図書のうち読み残っている本は、お父さんにとっては馴染みなく、かなりの難読書ばかりだ。 それでも、この本は、一応、読み切った。 タイトルにもあるように左派と右派についての解説が、 メイン...
息子へ) これもまた研修の課題図書。 お父さんの好みのタイトルから読んできたせいか、 課題図書のうち読み残っている本は、お父さんにとっては馴染みなく、かなりの難読書ばかりだ。 それでも、この本は、一応、読み切った。 タイトルにもあるように左派と右派についての解説が、 メインテーマのひとつだが、そもそも、左と右の概念がお父さんにはない。 あるときのフランス議会で、左側に座った党が、リベラル。右側に座った党が、保守。 このときの座った位置にちなんで、左と右とされている。 で、アメリカの2大政党が、 左ーリベラルー民主党ーオバマ 右ー保守ー共和党ートランプ と、関連付けられる。 ここまできて、既に、お父さんの頭は混乱。 じっくり考え抜いて、思い出して、やっと、これを関連づけられる。 さらに、左と右の思想。 左ーリベラルーケア・自由・公正 右ー保守ー忠誠・権威・神聖・愛国主義・ファシズム・保護貿易 などなど、紐づけられるようだ。 戦後の日本で育てられたお父さんには、その対立思想の枠組みが難しい。 左と右の区別はさておき、道徳心理学者の筆者からは、 興味深いことを教えてもらった。 各自の道徳に基づく思考は、まず、直観判断。その後、後付けで理屈を並べるということ。 「道徳は人を結びつけると同時に盲目にする」ということだ。そして、直観判断は、遺伝的・生得的なものに大きく形付けられるということ。 (*)学習による形付けられる道徳も否定されてはいない。 ちなみに、我々、人類は、 利己的な割合が、90% 利他的な割合が、10%。 人数の割合であると同時に、各自の中に存在する割合でもある。 これらを踏まえて筆者の結論は、 異なる道徳心をもつ人が存在することは当然であり、ここで異なる道徳心をもつ人を論破し、自己の主張を守ろうとするのではなく、異なる道徳についても誠実な関心を持つことが重要だ。と、本書を締めくくる。 この結論は、 研修で学んでいる、 対立軸となるAでもなくBでもない、そのジレンマを解決するCを目指す。という思考法に通じるものがあると感じた。 難しい本は難しい本なりに、全てを理解しようとできなくても、部分的にだけでも学ぶべきことを見つけ出す作業をすれば、読む価値はある。もう少し難読書にも挑戦しつづけよう。 お父さんの本の買い方) 大田区図書館 読め、もしくは、読むな)読みたければ読め 君が・・・歳のころに) 道徳とは?と疑問をもったときに。
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何故保守とリベラルは分断されて相互理解が難しいのか、道徳心理学と進化心理学の視点から読み解く書。学術書ではなく一般向けで読みやすい。 5年ほど前に一度読んだが、今読むとより実感が湧きやすい。 各々が重視する正義の基盤が違うという説明で、日本の政党の演説を見比べてみると参政党と立...
何故保守とリベラルは分断されて相互理解が難しいのか、道徳心理学と進化心理学の視点から読み解く書。学術書ではなく一般向けで読みやすい。 5年ほど前に一度読んだが、今読むとより実感が湧きやすい。 各々が重視する正義の基盤が違うという説明で、日本の政党の演説を見比べてみると参政党と立憲民主党がそれぞれ右派左派の説明通りになっていて面白い。
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アメリカの大統領選と、それに続く世界の分断のような状態が気になる昨今に、とても良い思索や勉強になりました。本書の邦題になっている「社会はなぜ左と右にわかれるのか」という疑問に対する回答は、どうやら「私たちの心は自集団に資する正義を志向するよう設計されているから」であるようです。...
アメリカの大統領選と、それに続く世界の分断のような状態が気になる昨今に、とても良い思索や勉強になりました。本書の邦題になっている「社会はなぜ左と右にわかれるのか」という疑問に対する回答は、どうやら「私たちの心は自集団に資する正義を志向するよう設計されているから」であるようです。そしてショッキングなことに、人がリベラルと保守のどちら寄りになるかはある程度、個々人の遺伝に織り込まれているとのことです。 本書を読んでいて自分は悲しくつらくなるような気分がしました。というのは、「理性の持つ力が世界を覆って世界がもっと良くなったらいいな」「くだらない感情、表層的な直感に左右されないように生きたいな」というような、自分が漠然と持っている理想のイメージが打ち壊されるように感じたからです。本書によれば、道徳的な思考、論理的な判断というものは多くの場合に後付けである。判断を行うのはもっぱら情動。人は滅多に道徳的判断を変えない。道徳的な思考は政治家の票集めに近い「ポーズ」にすぎない。私たちの正義心はたやすく戦闘モードに入る。思考はどんな結論にも導いてくれてしまう。など、理性への憧れを粉々に砕くような言説と証拠が並べられています。ただ、組織に多様性があれば、個人の直感がそのまま集団の直感にならないので思考の余地ができる、ということは、多様性が望ましいことの根拠としてわかりやすく、覚えておきたいです。 面白いのは著者が民主党寄りでありながら、共和党の方が主張のバランスが良いとか、理想の高いリベラルが道徳資本を食い潰すとか、リベラルの素朴な幻想を批判していることです。また、自分のすぐ周りに帰属意識を持てて安心できる小集団があるからこそ、人は頑なになって万人に対する闘争状態に入るようなことなく世界を愛せる、というのは、なるほど現実的にはそうなのかと思いました。リトル・イタリアやチャイナ・タウンはNYCにも必要ということです。日本人が世界で愛される良き世界市民であれるとしたら、それは日本という閉鎖社会が足元にあるからにほかならないのかもしれません。 世界を良くする方法は理想で考えるのではなくて、現実的に考えないといけませんね、と思いました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
紀伊国屋書店のノンフィクション特集として平積みされていて興味があったので読んだ。選挙のたびに自分の肌感覚と結果の違いに驚くことが多く、たとえば先日の都知事選での石丸候補の躍進などは想像していないことであった。もはや分断が当たり前の世界において、右派、左派の原点を科学的な視点で見つめ直す一冊で非常に有用であった。正直、本著の内容をすべて信用していいのかという点はなんとも言えないが、どうして左派が今窮地にあるのかは理解できた。 タイトルにもなっている議題に至るまでの前提となる知識の解説に十二章あるうち十章を割いている。主には「道徳とは何か?」というテーマについて、哲学、心理学、生物学、社会学といった様々な学問からアプローチを行い、「正しい」と各人が感じるプロセスやどのように思想が形成されていくか、膨大な引用とともに説明がなされている。本文中の注釈だけで60ページもあるし、トータル500ページオーバー。著者自身もToo muchだという認識はあるようで、章末に毎回まとめが用意されており論点を整理してくれているのはありがたかった。ただそれでも自分の脳のキャパでは、全部の議論をフォローできていない気がする。 メインの主張がいくつかある中で興味深かったのは、直感と理性に対する、象と乗り手のアナロジーであった。我々は理性的で考えた結果、判断や結論を下していると考えがちだが、実態は逆で本能的に結論を決めつけ、その後に理性で判断理由を補強しているという主張であった。つまり象が先に動き出していて、乗り手はあくまで微調整でしかないということ。また道徳的な問題に関して考えを変える可能性のある手段は人との対話のみ、という主張はそれこそ直感と一致した。同じようにシニカルな視点として、グラウコンの「私たちは、真に正しくあるよりも正しく見えることに配慮する傾向を持つ」という話もSNSで個人が意見を発信しやすくなった今こそ重要な主張だと感じた。哲学は本当に古びることのない偉大な学問よ… 本の命題に答えている内容としては、六つの道徳基盤による右派、左派に対する分析が挙げられる。ケア/危害、自由/抑圧、公正/欺瞞、忠誠/背信、権威/転覆、神聖/堕落といった六軸の中で右派、左派が重要視しているものは何か?左派はこのうちケア/危害、自由/抑圧を大事にしているが、残りの項目をおざなりにしている。それに対して右派はそれぞれをバランスよく大事にしているので、票を集める観点で見れば広く抑えることが可能だろうのことだった。具体的にオバマが大統領に当選した際のムーヴを例に挙げながら解説してくれており分かりやすかった。社会の構成員の思想として右派、左派ともに両極に振り切れた人よりもグラデーションがある中で広く感情を捉えるアプローチが必要であることがよくわかった。合理的な政策の議論ももちろん大切だが、情動の部分が大きく作用していることは否定し難い事実としてある。最終章になって、やっと具体的に右派、左派について深く考察していて、ここはかなり読み応えがあった。結論としては「根本的に悪い人はいない。両方言い分があり、それぞれの良いところを活かして社会を前進させるしかない」というある種、玉虫色にも見える結論ではある。しかし、本来政治とはそれぞれの主張をぶつけ合い、妥協点を見出していく作業のことであり、今は一歩も譲らないことが是とされてしまうことに問題がある。本著がたくさんの人に読まれて、右派、左派が歩み寄れる時代が来て欲しい。いや来ないのか…
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「人を傷つけない」が道徳の主軸ではない。 人は、「なんかやだな」に後付けで理屈をつけがち。 情熱は理性の主人。情熱が死ねば、理性も死ぬ。 直感が思考を開始させる。 情動は直観の一部。 直観と理性は、別個の対立するものではなく、同じプロセスのちがう位置関係の存在。 直観が象...
「人を傷つけない」が道徳の主軸ではない。 人は、「なんかやだな」に後付けで理屈をつけがち。 情熱は理性の主人。情熱が死ねば、理性も死ぬ。 直感が思考を開始させる。 情動は直観の一部。 直観と理性は、別個の対立するものではなく、同じプロセスのちがう位置関係の存在。 直観が象で、理性が乗り手。 乗り手は象に仕える存在。 情動を含めて、直観は認知の一種(自動的なプロセス)で、思考の一種(理性にコントロールされたプロセス)ではない。 サイコパスは思考するが感じない。 IQは、「包括的で公平な検討」よりも「自分の主張の補強」に使われる傾向がある 人によってバランスのちがう、5つの道徳基盤。 左派は2つ、右派は5つに訴える。 新奇好みと新奇嫌悪が共存する、雑食動物のジレンマ。 そりゃ右左は分かれるし、右が有利? 自然選択は「集団志向性」のレベルが上昇する方向に作用する。蜜蜂で言うところの「巣」が、人間で言うところの「規範や制度、神を素材にした道徳共同体」。それを死守するために殺し合う。「集団による虚構の共有力」のパワーがめっちゃ強いし、共有された末のアウトプットを守ることへの執着もめっちゃ強い。 戦場では、国や理想より、むしろ仲間の兵士のために自らの命を危険にさらす。 熱狂的な踊りは、集団の団結を図るための、ほとんど普遍的な「バイオテクノロジー」。「筋肉の結束」の一形態。「集合的沸騰」 最善の社会を築き、個別の状況を考慮した上で最大の幸福を追求することが、現代の保守主義の真の目的 という主張。「保守主義=宗教信仰=科学」の否定ではない。 保守主義とリベラルの、隠と陽という捉え方。 でも、実際の今の状況は、マニ教的な二極化。道徳は、人を結びつけ、盲目にする。自陣営があらゆる戦いに勝利することに世界の運命がかかっているかのごとく争うイデオロギー集団に、わたしたちを結びつける。 多様性の高い人種が集まる環境のもとで暮らす人々は「頑なになる」、つまりカメのようにひきこもってしまうらしい。多様性は人々を内向きかつ利己主義的にし、地域社会の貢献に対する関心をそぐ。 差異を強調することは、人種主義を緩和するのではなく強化する。
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タイトルからは政治のにおいが香るが、理性や感情、意識や無意識といった、人間の内面に関わることに興味のあるあらゆる人に勧められる素晴らしい一冊。「本書は、皆で仲良くやっていくことが、なぜかくも困難なのかを考える本だ」「道徳は文明の発達を可能にしてきた、人類の類まれなる能力であること...
タイトルからは政治のにおいが香るが、理性や感情、意識や無意識といった、人間の内面に関わることに興味のあるあらゆる人に勧められる素晴らしい一冊。「本書は、皆で仲良くやっていくことが、なぜかくも困難なのかを考える本だ」「道徳は文明の発達を可能にしてきた、人類の類まれなる能力であることを本書で示したい」らしい。直観と理性の関係、道徳の起源、人間の持つ政治の道徳的基盤、私たちが集団を志向する理由などが、論理的かつ明快に説明される。個人的には、リチャード・ドーキンスやダニエル・デネットといった新無神論者が否定する宗教に存在意義を見出しているところ、集団選択を肯定しているところがおもしろかった。 印象に残ったところメモ。 ・成功の秘訣をたった一つあげるとすれば、それは他者の考えを把握して、自分の視点からと同程度に、他人の視点からものごとを見通す能力だ。 ・悪臭を嗅ぎながら他人を裁くと、より厳しい判断をする。 ・乳児は、社会環境を理解する能力を先天的に備えている。→人間はけっして、空白の石板として生まれてくるわけではない。 ・人間は、他人の言葉に異を唱えるのには長けていても、ことが自らの信念になると、ほとんど自分の子どものごとく扱い、疑ったり、失う危険を冒したりはせずに、なんとか守ろうとする。 ・私たちは何かを信じたいとき、「それは信じられるものなのか?」と自分自身に問う。これに対し、何かを信じたくない場合には、自分自身に「それは信じなければならないものなのか?」と尋ねる。 ・自然の畏敬を感じると、集団志向のスイッチがオンになる。 ・世俗的なコミューンの9%、宗教的なコミューンの39%が長期間存続した。後者の圧倒的な勝利。 ・新無神論者が高コスト、非効率、不合理として捨て去る儀式の実践こそは、人類が直面するもっとも困難な課題の一つをつまり親族関係なくしていかに協力が可能かという問題を解決してくれるのだ。
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大げさでなく、全人類が読むべき良書。価値観とは何か、道徳とは何か、正義とは何か、宗教とは何か、すっきり理解できる。バイアスに関する本を複数読んだ後に本書を読んだが、とても理解が深まった。2014年初版だが、まったく古びていない。 本文486pの大作だが、読み手の心(象)に配慮して...
大げさでなく、全人類が読むべき良書。価値観とは何か、道徳とは何か、正義とは何か、宗教とは何か、すっきり理解できる。バイアスに関する本を複数読んだ後に本書を読んだが、とても理解が深まった。2014年初版だが、まったく古びていない。 本文486pの大作だが、読み手の心(象)に配慮して書かれているので、このページ数の必要があったことを強く感じさせる。はじめに本論は出さず、読み手が受け入れられるようになるまで辛抱強くエピソードやストーリーの説明を続ける。 建設的な話をするためにはこの過程が事前に必要だということであれば、わかりあうためには人がお互いに長時間をついやさなければならない。(本の厚さにめげず、読み続けようとした人だけが理解できる。) その壁を越え、ぜひ多くの人に読まれてほしい。
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道徳的価値観、良いことがどうか、正しいかどうかについて、単一の答えはあるのだろうか? もしあるとすれば、今の国家間の対立、政治的対立は、どちらかが頭が悪い、ということになってしまう。一方で、善悪は所詮人それぞれ、感じ方次第としてしまうと、集団の善悪は権威か多数の力で決めざるを得...
道徳的価値観、良いことがどうか、正しいかどうかについて、単一の答えはあるのだろうか? もしあるとすれば、今の国家間の対立、政治的対立は、どちらかが頭が悪い、ということになってしまう。一方で、善悪は所詮人それぞれ、感じ方次第としてしまうと、集団の善悪は権威か多数の力で決めざるを得なくなり、あまり幸せな感じがしない… 本書は、このようなテーマを扱う道徳心理学に光を当て、人類学的な観察に遺伝学の知見を取り入れ、悟るか逃げるしかなかった道徳の問題について、共通理解の可能性を啓く、世の中を良くしたいと考える人の必読書だ。 本書のポイントは、味覚受容器に例えられる6つの道徳基盤である。人類が進化的に獲得した道徳感情の源泉を明らかにし、所謂左派と右派は道徳基盤の強弱が要因だとする。不規則に人それぞれとすると相対主義になり、同意と解決の道は閉ざされてしまう。だが道徳基盤のバランスだとすると、共通理解のスタートになる。 論理的な説得力もあるし、世界を良くする実用的な意義もある理論であり、あらゆる社会性に関わる人のリテラシーとして必要だと感じた。
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田舎在住ですが、最近都市からUターンで戻ってきた年配の方が、地域の祭りや習慣を否定する発言を繰り返し、コミュニティが混乱しているところです。 家族以外の集団が価値観を共有するための仕組みとして機能してきたものが否定されていくと、その先には繋がりの崩壊もあるのかもしれません。 個人...
田舎在住ですが、最近都市からUターンで戻ってきた年配の方が、地域の祭りや習慣を否定する発言を繰り返し、コミュニティが混乱しているところです。 家族以外の集団が価値観を共有するための仕組みとして機能してきたものが否定されていくと、その先には繋がりの崩壊もあるのかもしれません。 個人的にはリベラルな考えをもっていると自覚していますが、道徳的な価値について考えるよい機会になりました。
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内容を端的に示すフレーズ「心は乗り手と象に分かれ、象が99%のプロセスを占め、乗り手の仕事は象使える事だ」など幾つもあった。 人の行動・思考の仕組みについて面白い意見があり、考えさせられる点が多くある。
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