クマにあったらどうするか の商品レビュー
かわいい表紙から、クマの生態を様々なエピソードで紹介して、クマに出会っちゃった時の対処も知る、みたいなカルイ読み物を想像していた。 ところがどっこい。 書かれていたのは、60年を越える長い時間を、アイヌ民族の最後の狩人として過ごした、ひとりの男性の骨太な半生だった。 派手さ...
かわいい表紙から、クマの生態を様々なエピソードで紹介して、クマに出会っちゃった時の対処も知る、みたいなカルイ読み物を想像していた。 ところがどっこい。 書かれていたのは、60年を越える長い時間を、アイヌ民族の最後の狩人として過ごした、ひとりの男性の骨太な半生だった。 派手さはまるでない。 周りの大人から生きる術を学びながら、懸命に生活した少年時代。 クマを師匠に狩人としての技術を身につけ、淡々と自然と対峙してきた狩人としての生き方。 時代の流れの中で、狩人としての知識を社会へと還元した晩年。 ひとりの男性の中にただ静かに眠っていた膨大な知識は、彼に魅せられたインタビュアーの根気強い問いかけによって、少しずつ発見され、整理されていく。 クマにも、彼にも大きな興味があるわけではない私には、大きな高揚や感動はない。 先を先をと焦る気持ちもない。 それでも、彼らの親密なやりとりに聞き耳を立てるうちに、もっと聞きたくなってくる。 最後まで必ず読まなければ、と使命感めいた気持ちが湧いてくる。 今、読み終わって思う。 これが、人が生きてきた半生の凄みか。 その凄みこそが、わたしを最後のページまで連れてきた。 規制をよしんば作っても、 クマの方は守るかもしれないけど、 人間の方は守らないでしょう。 何気なく口に出したであろう、彼の言葉が、苦い。
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地元で見つけた、究極の北海道本。新刊でもないのに何で平積み?と思ってたら、駅前にエゾシカ来るわ、町内でヒグマ出没!と街宣車は走るわで、読んで損しない内容。本州も同様なんでしょうね。
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第38回ビブリオバトル〜明石の陣〜テーマ「熊」で紹介された本です。オンライン開催。 2021.11.11
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
携帯する食料は布袋に入れて枕にすることもある米を5升、ゆでた切り干し大根かわかめを刻んで味噌と一緒に油でいためたもの、塩。クマの自分がつけた足跡の上を全く同じように踏んで戻る止め足に気をつける。クマは里の動物キムンカムイで人間をじっとみて観察している。クマに出会ったら逃げてはいけない。棒立ちに立ちウオーと腹の底から声を出す。腰が抜けて座っても相手から目をそらさない。クマを避ける方法はペットボトルを押してペコッペコと鳴らす。アイヌモシッタ ヤクサクペ シネプカ イサム(この世に無駄なものは一つもない)
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とても面白かった。 なぜなら、この本でしか知れない・読めない話ばかりだったから。 この先、こんな内容の本とか、こんな話を聞ける別の機会はないと思う。 アイヌ民族最後の狩人。 時代の変化の中で、狩猟に取り組み続け経験を積んだからこそ掴んだ感覚、話せること。 これはこの先同じように...
とても面白かった。 なぜなら、この本でしか知れない・読めない話ばかりだったから。 この先、こんな内容の本とか、こんな話を聞ける別の機会はないと思う。 アイヌ民族最後の狩人。 時代の変化の中で、狩猟に取り組み続け経験を積んだからこそ掴んだ感覚、話せること。 これはこの先同じように経験できる人がいない。 学術的にではなく、実地経験に基づく話なのですが、あまりにその経験が豊富で説得力を感じられました。 クマにあったらどうするか…本で語られる対応策を試す時はきっと自分にはやってこないと思うけれど、読んでよかった。そう思えるほどに読む前抱いていたクマに対する考えや見方がクマに関わった人から見ると違うということがよくわかった。 また、人間の愚かさをクマの話からも伺えることができるなんて。 しみじみ世界に、地球に、クマに申し訳なく思う。 クマはルールを守るけれど、人間は守らない、っていうのがなんとなく腑に落ちてしまう。 山に行く人全てがルールを守らない人ではないけれど、実際に守らない不届きものはいるし、その一握りでもやってしまう人が存在するだけでバランスが崩れていく。 姉崎さんも片山さんも、今はこの世にいないことが悲しい。 今の世の中のクマの状況を見たらどう思うんだろう…。 人を襲う一部のクマのイメージだけが多くの人に印象に残る報道が多く、深く追求されずセンセーショナルな暴力性だけが取り沙汰されるため、多くの人が誤解していると思う。多くの人にこの本を手に取ってほしい。 本編も濃厚で読み応えがあったけれど、あとがきもとてもよかった。 姉崎さんの野生の感性の素晴らしさに感心。自分で考えて行動できるのは、命も生活もかかっているから神経を研ぎ澄まして選びとった自分の行動なのかな。 生命の危機もほぼない、都会の中でのうのうと小さな電子画面の情報に踊らされる人たちは本当に生活力も自分の頭で考える力も鈍くなっているかもしれない。 でもその人たちの多くは悪いことを能動的にするわけではないし、一部の倫理観が崩壊していて他人への迷惑を顧みず衝動的に取り返しのつかない行動をする人をどうするか…は、すべての分野で共通なのかなと思えてきた。 犯罪にしても移民問題にしても、クマとか自然の話でも。 きっと簡単な解決方法はなくて、心が折れないように協力できる人と手を取り合って耐えつつ頑張り続けるしかないんだろうな。。 ちょこちょこ、ゴールデンカムイで読んだやつだ!!!と思えるものがあり、野田先生もこの本読んだのかな〜?となんだか嬉しくなることがあった。
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良書 HOWTO本というよりかは、動物と人間がいかに共存できるかがテーマ。「ともぐい」を読んだ後にこれを読んだことでより夢中になれた。
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読み進めるにつれて、クマという生き物の存在がリアルに感じられるようになりました。 人間の、隣にいる存在。 山よりも、里で暮らすことの方がしっくりくる存在。 むやみやたらに人間を襲う存在ではないこと。 それどころか人の近くにいて、人の気配に気づくと、そっと立ち去る存在であること...
読み進めるにつれて、クマという生き物の存在がリアルに感じられるようになりました。 人間の、隣にいる存在。 山よりも、里で暮らすことの方がしっくりくる存在。 むやみやたらに人間を襲う存在ではないこと。 それどころか人の近くにいて、人の気配に気づくと、そっと立ち去る存在であること。 大きなクマの方が安心であること。 それは、大きくなるまで生きてこられた、その生き方が信頼できるものであるから、ということ。 私が住む地域にはクマは住んでいないけれど、いつかクマが暮らす地域に行くときは、クマのことに考えを巡らせてみよう、と思うようになった一冊でした。
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クマ撃ちの愛犬の名前がリュウだったり、川に落ちた時は弾丸で火をつけたエピソードだったり、ゴールデンカムイを読んでいると「あ!この話見たぞ!」と思う箇所が盛りだくさんで楽しかった。 おそらく野田先生も読み込んでるんだろうなあ クマによる恐ろしい事件を変に聞きかじっていたせいで脳に...
クマ撃ちの愛犬の名前がリュウだったり、川に落ちた時は弾丸で火をつけたエピソードだったり、ゴールデンカムイを読んでいると「あ!この話見たぞ!」と思う箇所が盛りだくさんで楽しかった。 おそらく野田先生も読み込んでるんだろうなあ クマによる恐ろしい事件を変に聞きかじっていたせいで脳に植えついてしまった「クマは恐ろしい化け物」というイメージが、本書を読んだ事によって矯正された感じがある。でもやっぱり会いたくは…ないかも… クマとの共存には相互忌避、お互い興味のない隣人を目指す事が大事という事に、これから目指すべき姿勢を学べた。 インタビュー形式なのも知識欲が満たされて良い!面白かった!
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クマにあったらどうするか 姉崎等さん、アイヌ民族最後の狩人。日本人の父とアイヌ民族の母を持つ 。1923年生まれ、2013年没。 65年間狩猟生活を送る。以上が簡単な経歴ですが、このアイヌ民族最後のクマ撃ち猟師から貴重な経験談を聞き取りまとめたのがこの本です。 現在、各地でクマの...
クマにあったらどうするか 姉崎等さん、アイヌ民族最後の狩人。日本人の父とアイヌ民族の母を持つ 。1923年生まれ、2013年没。 65年間狩猟生活を送る。以上が簡単な経歴ですが、このアイヌ民族最後のクマ撃ち猟師から貴重な経験談を聞き取りまとめたのがこの本です。 現在、各地でクマの被害が多く取り上げられていますが、この本を読むとこれはあくまでも人間から見た観点で、クマから観たら「人間による被害」と言いたくなる思います。 姉崎さんは「クマを師匠だと本気で思っています」と発言していますが、ヒグマをキムンカムイ(山の神)として敬ってきた民族だからこその気持ちでしょう。子どもの頃から生計を支えてきた姉崎さんですから、山で生活する上での様々な知恵をクマから授かりました。現代人から見たらサバイバル生活とでも表現するのかもしれませんが、アイヌ民族伝統の知恵とクマの行動から学んだ狩猟生活の様子はとても興味深いものでした。 クマに遭遇したらどうするか?の答えもクマの生態を知り尽くしている姉崎さんだからこその答えです。 人間も自然の一部の筈が大いにはみ出し、生態系を壊す存在になってしまい 自然の脅威に慄く羽目になっています。里山でひっそり生きていたクマが仕方なしにヒトに出逢う事態になり、“クマの被害”と騒がれることこそクマにとっていい迷惑でしょう。 「アイヌモシッタ ヤクサクペ シネプカイサム」(この世に無駄なものは一つもない」とはアイヌ民族伝統の考え方ですが、納得です。
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山登りをするので熊に会ったら、は、気にかけています。実際に熊に出会ったときできるか?は、自信が無いけど、なんかとても説得力ある説明でした。 最近、熊など野生動物による被害が報道されますが、熊の進化論にまで及ぶ洞察力に感服しました。
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