生存者ゼロ の商品レビュー
「生存者ゼロ」 中山七里「中山七転八倒」でも登場した安生正の第11回「このミス」大賞受賞作。 北海道根室半島沖に浮かぶ基地で未知なる細菌感染による職員全員の壮絶死が発生した。この事件を引き金に北海道本島でも同じ惨劇が発生する。この未曾有の危機に感染症学者の富樫と廻田陸佐が立ち...
「生存者ゼロ」 中山七里「中山七転八倒」でも登場した安生正の第11回「このミス」大賞受賞作。 北海道根室半島沖に浮かぶ基地で未知なる細菌感染による職員全員の壮絶死が発生した。この事件を引き金に北海道本島でも同じ惨劇が発生する。この未曾有の危機に感染症学者の富樫と廻田陸佐が立ち向かう。 概ねこのようなあらすじ。未曾有のパンデミックが一度ならずに引き起こされる。バイオテロと見られるこの惨事の原因は掴めず、被害だけが拡大していく。このパンデミックの規模のデカさと細菌と〇〇(細菌の宿主)の組み合わせは、学術的知見を基にプロットされていると推察するが、リアリティがあるものになっている。おかげで〇〇は信じられないレベルに進化しても、多少のツッコミはあれど、そこまで横道に逸れた進化になっていない。 加えて特徴的なのは、無能さと傲慢さばかりを終始主張し、〇〇(Key person)に思うように操られる、首相を始めとする政治家達である。未曾有のパンデミックが発生したにも関わらず、原因も影響も対策も考えようとしないで、自らの立場だけを守ろうとする。現在社会の政治家達が、天災や未曾有の危機を目の前にした際に彼らをどうか再現しないでくれ!と願わざるを得ない。それくらい酷い。 そして一番のポイントは、主人公格の一人である富樫の変貌ぶり。王道のパンデミックであれば、あらすじ通り「立ち向かう」になるはず。しかし、富樫がそうはさせないところが、本書がパンデミックの亜種に感じる所。 富樫は、悲運の感染症学者からパウロの黙示録を信仰する薬物中毒者へと姿を変え、最終的には二つの顔を持ちながらも、パンデミックに向き合うことになる。同じく悲運を抱え、自衛隊としての使命を全うせんとする廻田が際立つのは勿論だが、この富樫の狂いながらの生き様は、廻田の存在感に負けていない。 また、パウロの黙示録を基にした神による世界の終わりと再生の要素も興味深い。最初は、バイオテロかと思わせながら、実は〇〇が本ボシで、更に人類が滅びるかも知れないという事態に宗教的な雰囲気に話が傾いていく。ここまでくると変な方向に行きそうな所だが、そこまで破綻することなく物語が収束していくのは、作者の力量が為す技なのかも知れない。 主人公格の異様ぶりに神話を思わせるストーリー転換と普通のパンデミックものには無い面白さがある一冊だった。
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素人だから構成や編集について偉そうなことは言えないけど、何か余計なものがあったり足りないものがあったりが多い気がする内容だった。 例えば、名前もあって性格や経歴の描写がある新たな人物が登場してきたかと思えば、数ページ後には死んでしまう。こちらとしては『この人物が物語のヒントを持っ...
素人だから構成や編集について偉そうなことは言えないけど、何か余計なものがあったり足りないものがあったりが多い気がする内容だった。 例えば、名前もあって性格や経歴の描写がある新たな人物が登場してきたかと思えば、数ページ後には死んでしまう。こちらとしては『この人物が物語のヒントを持っている』のかと思い力を入れて記憶したり人物像をイメージするのだけど数分後には無駄に終わってしまう。 逆に台詞に関しては書いた後でザックリと削り取ったような感じで時折意味が解らなかったり、飲み込むのにかなり時間を要したりした。会話として成り立っていないよ うなところもあって『こんな受け答えしたら怒られるんじゃないか?』と心配してしまう。 大まかなストーリーは面白そうと思ったが、読み終えたらどっと疲れた。 また、このようなストーリーに『役立たずな政治家や官僚』はありがちだけど、日本政府に恨みでもあるのか無能さを過剰にし過ぎて現実味が感じられなかった。さすがにそこまでバカだと・・・。
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細菌、蟻、兵器と、異なるジャンルの専門用語と細かい情報が散りばめられ、一見難しそうだけどその細かい設定が綿密に絡み合い、読了後の満足感がすごく高い。 蟻による侵攻シーンは現実離れしていて中々イメージが湧きづらかったけど、体外も体内もすべて蟻でいっぱいになるところを想像するとその狂気さはしっかり感じ取れた。 あとは政府の愚鈍さを表現する文章がなかなか。
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楽しかった‼ 未知なるウィルスを壊滅させる戦い 気持ち悪い箇所も多々あるが ストーリーにひきこまれた
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このミス大賞受賞の作品だそうな。 おもしろかった。デビュー作とは思えない文章のしっかりさだなと思ったけど、同賞の最年長記録だったそうでなんか納得。 なんかロリンズみたいでしたが、それよりはハリウッド感がなくて日本人が書いた書、って感じでよかった。
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北海道沖の石油プラントで職員全員が無残な死体となった。 First Impression → Biohazard? であったのだが、細菌学者の富樫が統合失調症っぽくなってから完全にSFになり、めぐりめぐって地球防衛軍であった。 テーマ:パウロの黙示録
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「このミステリーがすごい!」 大賞受賞作と言うことで、手に取りました♪♪ 感染もの・・・ なるほど!こーいう事も 無いとは限らないなぁ~と ハラハラドキドキしながら読み進めました。
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幕引きはまあまあ。ミス生物学者しか女性は出ないが、描写が男の理想目線過ぎかなと。ストーリー上、現場×政治家を対照的な存在と描写しているが、少々あらっぽい。今後に期待。
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一気読みした。街を壊滅に追い込む敵の正体は意外なヤツ。 「このミス」らしいスケールと圧倒的走り。 楽しかった。
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大学の先輩です。働きながらこんな本を書けるなんてすごすぎる!!面白すぎて徹夜小説になること間違いなし。こういうたぐいの本をもっと読みたいな。ということで、高野和明ジェノサイド読んでみます。
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