抱擁、あるいはライスには塩を(下) の商品レビュー
一家の日常を祖母、両親、叔父叔母そして3人の子どもそれぞれの物語が短編でしかもばらばらに散りばめられている。 ゆっくりと時間が進んでいる感じと、穏やかな流れでしかも感情の起伏が感じられないので、頭を休めたい時にまた読み直したい。 現実逃避とも言えるかぁ。。。
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上巻は楽しくウキウキと読んでたんだけどな。 下巻に入ってからいきなり物語が停滞し、特に興味深い展開もなく、登場人物が老人も女も男も子供も秘書も恋人も、なぜか途中から全員が同じ顔(=江國香織の顔)をしてきて、これは小説版「マルコヴィッチの穴」かと思った。 私は、今どきのネットにあ...
上巻は楽しくウキウキと読んでたんだけどな。 下巻に入ってからいきなり物語が停滞し、特に興味深い展開もなく、登場人物が老人も女も男も子供も秘書も恋人も、なぜか途中から全員が同じ顔(=江國香織の顔)をしてきて、これは小説版「マルコヴィッチの穴」かと思った。 私は、今どきのネットにあふれているようなヒステリックに不倫を糾弾する姿勢には「子供っぽいなぁ」としか思えないし、そうかと言って、「恋した人がたまたま既婚者だっただけ。私は自分に正直に生きる」とか言って自己陶酔している人の味方もしないが、この小説の不倫模様は、誰も彼も当事者がそろってお行儀が良すぎて、みんな暴露後にほっと安堵し、誰も去らず何も失わず代償すら支払う必要がないので、かなり白けてしまった。 みんないい人でみんなお互い認め合って調和し、一家が「ほしい」と言えば、自分が生んだ子供ですらアッサリ渡しちゃう。同じ顔だから、ケンカのしようがないのかな。 ちなみに、上巻で、「私は恥知らずじゃない」と正妻に言い返した菊乃は、開き直っていて普通に恥知らずだと私は思ったけどな~。 三世代100年にわたる物語、という触れ込みだけど、そんな壮大な時の流れのようなものは全然感じなかった。 まあ、登場人物全員、同じ顔だからかね・・・(←我ながらしつこい)
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下巻も面白かったです。 大家族のそれぞれの生き方。 物語の始まりでは同じ家に10人居たのに、最後は3人になってるのが時の流れを感じさせました。 桐叔父の死の章の次に桐叔父の過去の章があるの切ない。 そして一番切なくなったのは絹さんの章でした。絹さんが好きだったのはそちらか…。「ま...
下巻も面白かったです。 大家族のそれぞれの生き方。 物語の始まりでは同じ家に10人居たのに、最後は3人になってるのが時の流れを感じさせました。 桐叔父の死の章の次に桐叔父の過去の章があるの切ない。 そして一番切なくなったのは絹さんの章でした。絹さんが好きだったのはそちらか…。「まだ生きてるの?」って感覚、辛いです。 「でもね、歴史は過去ではないのよ。いまも私たちは歴史のただなかにいるの」という感覚も覚えておきたいです。 こんな家族と関わることになったら大変だろうなと思いつつ、なんだか全部セピア色でした。 「私は一人で大丈夫よ。謝られたり、後悔されたりするのは屈辱だわ」
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前巻とうってかわって静かな幸福、そして迫り来る変化と終わりに切なくなる後半でした。 特に2000年夏以降の3話、海外に暮らす安心感に共感。ここは遠いから海の向こうのことは現実味がなくて、向き合うには怖すぎる本質から逃げられる。陸子が本の世界に逃げるように。望が日本に帰る飛行機に乗...
前巻とうってかわって静かな幸福、そして迫り来る変化と終わりに切なくなる後半でした。 特に2000年夏以降の3話、海外に暮らす安心感に共感。ここは遠いから海の向こうのことは現実味がなくて、向き合うには怖すぎる本質から逃げられる。陸子が本の世界に逃げるように。望が日本に帰る飛行機に乗るときの気持ち、あるあるって思った。 そして絹さんが愛しそうに呼ぶ、あの人。あの人がいたからこの女性がたくましく生きぬき、この幸福な家族の物語ができたのですね。なんでもできるって思わせてくれる人っているよなあ、って思うのは女だけでしょうか。 1話ごとに誰が語り手なんだろう、ってわくわくしながら読めて、どの人も共感できる部分、愛しいと思えるところがあって、こんな長編も素敵だと思えました。
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時代と語り手によってタイムスリップを繰り返し、それぞれの人物から見える世界が語られる。この本とともに、ここに生きる人達とともに時間を日々を過ごした。 私という人間にもストーリーがあって本の世界と現実の世界、両方で生きることができる。 ほぼ初めての長編小説。面白さを教えてくれて感謝...
時代と語り手によってタイムスリップを繰り返し、それぞれの人物から見える世界が語られる。この本とともに、ここに生きる人達とともに時間を日々を過ごした。 私という人間にもストーリーがあって本の世界と現実の世界、両方で生きることができる。 ほぼ初めての長編小説。面白さを教えてくれて感謝。
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まったく現実的でないのに、ものすごくしっかりとした存在感のある一族。江國香織の筆力。ここに描き出されたストーリーのうしろ側にある、膨大な物語を思うと目が眩む。けれど本当はそれこそが、この小説の登場人物たちと私たちとの数少ない共通点のひとつなのかもしれない。
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10年ぶりくらいに江國さんを読んだ。言葉とか描写の雰囲気はやっぱり唯一無二のものがあるなぁ、としみじみ。ちょっと前に中上健次を読んだのもあって、同じ家族や血を描くのでもこうも違うのかと思う。中上が土着的な日本を描いているとしたら、この作品は明治以降、文明開化に接した後、欧風という...
10年ぶりくらいに江國さんを読んだ。言葉とか描写の雰囲気はやっぱり唯一無二のものがあるなぁ、としみじみ。ちょっと前に中上健次を読んだのもあって、同じ家族や血を描くのでもこうも違うのかと思う。中上が土着的な日本を描いているとしたら、この作品は明治以降、文明開化に接した後、欧風というものが入り込んだふわふわした家族。欧風という要素にあたる祖母がロシア出身なのがなんともいえないバランス感覚だと思う。これがフランスやアメリカ出身だったら、どこか萎えてしまうのは何故なのか。ロシアとソヴィエトというあいだ、西欧から極東まで広がる文化圏を持っているからこその絶妙な設定だと思った。野崎氏の解説もよかった。たぶん、作者の意図を完全に捉えている。タイトルの意味が愛、あるいは自由というのはまさしくその通りで、そのままタイトルにしたら安っぽくなるものをうまい言葉で表現したものだな、としみじみ思う。ただ、フランスと違ってロシア国旗には自由の意味はないらしい。ふむふむ。
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下巻は幼かった子供達が徐々に大人になり、別々の道へと進んでいく。 この家族の親戚になった様な気持ちで読んでいました。 大人になり変わっていくのは当たり前なのだけれど、変わらないで欲しいなぁと願っている自分がいました。 いずれは私の子供も巣立っていくんだなぁと想像し無性に淋しくなっ...
下巻は幼かった子供達が徐々に大人になり、別々の道へと進んでいく。 この家族の親戚になった様な気持ちで読んでいました。 大人になり変わっていくのは当たり前なのだけれど、変わらないで欲しいなぁと願っている自分がいました。 いずれは私の子供も巣立っていくんだなぁと想像し無性に淋しくなったり。 この本は姉が『面白いよ!』と言ってくれた本。 自ら手に取る事はなかったであろう一冊。 誰かの『面白い』を読むのもまた楽し。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
抱擁、あるいはライスには塩を。愛と自由。かわいそうなアレクセイエフとみじめなニジンスキー。言葉や行間の使い方が秀逸で、久しぶりに美しい文章に触れた。独特な家風で幸せと豊かさに包まれた柳島家が、ゆるゆると静かに解体していく様・・・その哀しさや寂しさまでも美しい。もう一度、ゆっくりと読み返したい、素晴らしい作品。
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独自の路線をゆっくり進む三世代の一家のお話。 読み終わっちゃった。ゆっくり読んだのにな。 時を行ったり来たり 語り手もその都度変わるので最初こそ戸惑えど慣れてしまえば楽しさにかわった。 三世代も住む洋館は何とも素敵で賑やかなのに、いつも何処かに孤独や切なさがうっすらとまとわりつい...
独自の路線をゆっくり進む三世代の一家のお話。 読み終わっちゃった。ゆっくり読んだのにな。 時を行ったり来たり 語り手もその都度変わるので最初こそ戸惑えど慣れてしまえば楽しさにかわった。 三世代も住む洋館は何とも素敵で賑やかなのに、いつも何処かに孤独や切なさがうっすらとまとわりついていた。 終盤にびっくりも。人に歴史あり。 抱擁、あるいはライスには塩を さすがタイトルの名手。 愛と自由
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