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時は乱れて の商品レビュー

4.3

19件のお客様レビュー

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2024/05/12

「我々が見ているこの世界は、本当に現実なんだろうか?」というテーマを、映画のマトリックスが仮想現実を描いたような表現方法で描いているかと思ったら、1959年に発刊された本書で描いた方法は、正直ぶっ飛んでいて驚きました。また、ジャンルはSFですが、まるで良質なミステリー小説を読んで...

「我々が見ているこの世界は、本当に現実なんだろうか?」というテーマを、映画のマトリックスが仮想現実を描いたような表現方法で描いているかと思ったら、1959年に発刊された本書で描いた方法は、正直ぶっ飛んでいて驚きました。また、ジャンルはSFですが、まるで良質なミステリー小説を読んでいるようで、とても楽しむことができました。以下あらすじ。 主人公のレイグル・ガムは、新聞の懸賞クイズ〈火星人はどこへ?〉で2年間勝ち続けているチャンピオン。彼は、他の人が外に働きに出かけているときに、一日中懸賞の研究と回答に費やす日々を送っていました。そのような暮らしを続けているうちに、ときどき自分が見ている世界に違和感を感じたり、自分が自分ではない感覚を覚えるようになります。 ある日、妹夫婦の息子のサミーが、廃墟になっている空き地から古い電話帳と雑誌、紙切れを拾ってきます(このP90のやりとりが面白い)。掲載されている電話番号はどこも繋がらず、雑誌のグラビアは有名女優らしいが名前がわからない。なんとなく既視感があれども、どうしても思い出せない。何か陰謀めいたものを感じた彼は、町を出る決意をしますが、ことごとく失敗します。 そんな時、妹の夫ヴィックと協力して町から出ることに成功しますが、そこで彼らが見た世界とは…というお話し。 覚え書き 車のタッカー(映画『タッカー』で有名)。 小説ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』、ハリエット・ビーチャー・ストウ『アンクル・トムの小屋』、ダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』。女優マリリン・モンロー。

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2021/02/15

今目に見えている世界は本当に現実なのか?自分は誰なのか?わずかなきっかけから浮かんだ疑問が次々とピースを呼び寄せ、少しずつ真実が明らかになっていく。ミステリー小説のようなスピード感ある展開にページをめくる手が止まらなかった。これは問答無用に面白い! あの映画のタイトルを上げてしま...

今目に見えている世界は本当に現実なのか?自分は誰なのか?わずかなきっかけから浮かんだ疑問が次々とピースを呼び寄せ、少しずつ真実が明らかになっていく。ミステリー小説のようなスピード感ある展開にページをめくる手が止まらなかった。これは問答無用に面白い! あの映画のタイトルを上げてしまうとそれだけでネタバレになってしまうので伏せるが、1959年出版の本作が元ネタなのだろうか? ラスト付近、特定の年代にノスタルジーを感じる姿には共感してしまった。自分はYouTubeで80年代の映像ばかり見てるので……。

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2020/04/14

新聞の懸賞クイズ〝火星人はどこへ?〟で全国チャンピオンの座を維持する有名人レイグル・ガムが、オ-ルド・タウンという田舎町で妹夫婦と住んでいました。レイグルは、事あるごとにディシャブ(既視感)の体験を重ねていて、本当の自分はいったい何者で、どこから来たのかと苦悩するようになります。...

新聞の懸賞クイズ〝火星人はどこへ?〟で全国チャンピオンの座を維持する有名人レイグル・ガムが、オ-ルド・タウンという田舎町で妹夫婦と住んでいました。レイグルは、事あるごとにディシャブ(既視感)の体験を重ねていて、本当の自分はいったい何者で、どこから来たのかと苦悩するようになります。物語は1959年に生きるレイグルが、40年後の未来の記憶に目覚め始め、読者をタイムパラドックスの世界に誘っていきます。時間軸の歪みに呑み込まれ、闘争社会に蠢く人間の精神的不均衡を描いた【P.K.ディック】初期のSF小説です。

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2019/02/02

いま自分がいるところは、本当に自分の居場所なのだろうか。 このような不安を微かに(しかし確実に)感じながら生きている男の物語。 上記の不安は、作者が以後の作品で反映させていく不安群――たとえば、自分が記憶していることは、本当に自分の記憶なのだろうかという不安――の一つと考えてよ...

いま自分がいるところは、本当に自分の居場所なのだろうか。 このような不安を微かに(しかし確実に)感じながら生きている男の物語。 上記の不安は、作者が以後の作品で反映させていく不安群――たとえば、自分が記憶していることは、本当に自分の記憶なのだろうかという不安――の一つと考えてよいでしょう。 戦後アメリカが舞台ということで、共産圏に対する不安や敵意なども描かれていて、SFという要素以外でも知れるところがあります。

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2019/01/02

SFとかミステリーとか全ジャンルを含めて考えても、P.K.ディックは私のなかで特異で特別な作家。 彼の場合は、小説という創作物の「出来が良くない」方が、時として「読者としての満足感が得られる」事が多いという、グラフでイメージすれば反比例の曲線を持つ、珍しい作家。 起承転結がう...

SFとかミステリーとか全ジャンルを含めて考えても、P.K.ディックは私のなかで特異で特別な作家。 彼の場合は、小説という創作物の「出来が良くない」方が、時として「読者としての満足感が得られる」事が多いという、グラフでイメージすれば反比例の曲線を持つ、珍しい作家。 起承転結がうまくいっている作品とか、終盤の締めが鮮やかな作品は、実は、この作家に期待する「禍々しさ」「絶無のカオス感」に乏しかったりする。失敗作でも(むしろ失敗作こそ)価値を生んでしまう、失敗作の至芸とでも云うべきか。 本作は、うまくいっちゃってるサイドの傑作。普段の生活空間が異世界に傾いていく過程が鮮やかで、P.K.=粗雑で上等、という前提として読むと面食らうかも知れない。

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2018/12/20

他の作品と文体が違うので戸惑うが、読み進めればいつものディック小説。映画「トゥルーマン・ショー」がインスパイアされた物語。

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2016/11/25

ハードカバーを見て、表紙のかっこよさで読んでみたいと思った本。 洋物なのに大変読みやすく、内容もすごく面白かった。30年前の本だというのが驚きです。 ただ、後半の急展開になかなか付いていけなかった。終わり方もここで終わり!?て感じで、もう少し先を読みたかった。

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2016/09/28

すごい!すごくおもしろかった!! 少しずつ増えていく謎に「この世界は一体何なんだろう…」とレイグルたちと一緒に謎に満ちた冒険をしているような気でいたら、最後の1/5で全てのピースがはまってゆき、SFだからこそできる大きな問いかけを残して、ぴったりと着地した! すごい! ちなみに...

すごい!すごくおもしろかった!! 少しずつ増えていく謎に「この世界は一体何なんだろう…」とレイグルたちと一緒に謎に満ちた冒険をしているような気でいたら、最後の1/5で全てのピースがはまってゆき、SFだからこそできる大きな問いかけを残して、ぴったりと着地した! すごい! ちなみに、SFだからこそできる問いかけ、とは、私は 『エンタテイメントの形を取って「戦争とはどのようにして起こるのか」「何故起こるのか」を考えることができる』ことだと思っている。 私は、p.371の「彼らはみな、みずからの信じていることに忠誠を果たしてきた」結果が戦争だと思っているからだ。 その意味で、本書のp.371は大切な問いなのだと思っている。 自身の信じる道をそれぞれが行く、これは正しいことなのに、理想主義的すぎて最大の犠牲を払い、現実に得られるものは何もない… 何を得たいのか、誰が何を主張しているのか、見極め、落としどころをはかるのが、知恵なんだろうな…と、私はやっぱり思っている。

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2016/02/14

映画ブレードランナーの原作SF作家として有名なヒィリップKディックの作品。初ディック。 新聞の懸賞クイズに2年間勝ち続けている男が、日常の存在感に違和感を感じるところから物語が始まる。最初は古いアメリカンファミリーの日常描写かなと思っていたら、段々とSFになっていくあたりの展開が...

映画ブレードランナーの原作SF作家として有名なヒィリップKディックの作品。初ディック。 新聞の懸賞クイズに2年間勝ち続けている男が、日常の存在感に違和感を感じるところから物語が始まる。最初は古いアメリカンファミリーの日常描写かなと思っていたら、段々とSFになっていくあたりの展開がうまいと思った。映画にもしやすいような展開だ。ソ連やら核戦争のことを起こる可能性が高い前提で書かれているところが時代を感じる。ただし古臭い感じはあまりなく、すっきり読めた。 ブレードランナー原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」も読んでみようと思う。

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2023/08/10

自分の周りの世界に違和感を覚える主人公レイグル・ガム。単なる神経症的な妄想なのか、それともこの世界は本当につくられた偽物なのか。傍受した通信を聞いたレイグルは街から脱出することを決意する。辿り着いた先で彼はすべてを思い出し決断するのであった。キャラクターどうしの生き生きとした掛け...

自分の周りの世界に違和感を覚える主人公レイグル・ガム。単なる神経症的な妄想なのか、それともこの世界は本当につくられた偽物なのか。傍受した通信を聞いたレイグルは街から脱出することを決意する。辿り着いた先で彼はすべてを思い出し決断するのであった。キャラクターどうしの生き生きとした掛け合い、それらが作り出していた日常感と街の外との落差がよく描かれていると思う。

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