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時は乱れて の商品レビュー

4.3

19件のお客様レビュー

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2015/02/03

物語の大きな構造の真相は早めにわかる。その上でその理由や背景を押し知るべく登場人物の描写を読み取るのに力が入るのだが、いざ終盤で全てが明かされても、何か物足りなかったかなぁ

Posted byブクログ

2014/12/07
  • ネタバレ

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新聞の懸賞クイズ「火星人はどこに?」に2年連続で勝ち続け、クイズの賞金で生計を立てているレイグル・ガム。片田舎の小さいのどかな町で、妹夫婦と共に穏やかな日々を送っているガムは、しばしば自分を取り囲む現実が「現実ではない」という感覚に囚われていた。ある日、甥っ子が遺棄された空き地から拾ってきた古びた電話帳と古雑誌。電話帳に掲載された電話番号はどこにも繋がらず、雑誌のグラビアでは見知らぬ女優について報道されていた。疑惑を確信に変えたガムは、クイズを始めてから一度も出たことの無い町を出て真相を確認しようとする。彼の動きを監視するかのように振る舞う隣家の夫婦、何かを知っているらしい市民活動家の老婦人・・・自分は騙されているのか、それとも自分が狂っているのか?何度も困難にぶつかりながら真相に近づいて行くガムが、最後に見たものとは? 表紙のアートワークで盛大にネタバレしているのはまぁご愛嬌として(^_^; いやー、久々にやられました。やっぱりディックは面白い! この作品がSFだという予備知識なしに読み始めると、前半で描かれる米国地方都市の日常の風景、その中でこじんまりと展開される市井の人々の日常が実に「普通」で、本当は主流文学を目指していたディックの筆力を感じさせます。お隣同士の交流とちょっとした確執とか、ちょっとしたアバンチュールとか、そんな本当に「普通」の風景の中から薄皮をはがすように立ち現れてくる「非現実」。この過程の背筋が薄ら寒くなる怖さは、前半の日常風景の丁寧な描き方があってこそ。 少しずつ少しずつ、足元の現実が崩れ落ちて行き、それに追われるように真実へと突き進んで行きつつも実は自分が狂っているだけとの考えからも抜けきれないガムの焦燥感は、読んでいるこちらも本当にヒリヒリするほどサスペンスフル。ガムを取り囲む謎めいた登場人物達もキャラが立っており、物語にメリハリを付けています。 物語全体のスケール感は他のディック作品と比べるとかなりこじんまりしており、SFのアイディアとしてもそれほど特筆すべきものはないのですが、無駄の無いストーリー展開で一気読み必至!の洗練された作品ですね。

Posted byブクログ

2014/10/19

SFマガジンのPKD特集に再度刺激され、ディック祭り継続中。 57年の「虚空の目」と62年の「高い城の男」の間に位置する作品。何かが違っているように見えるのは自分が狂い始めているのか世界が本物なのか?普通小説にしか見えない出だしから、徐々に不安感が高まって・・・100ページ以内で...

SFマガジンのPKD特集に再度刺激され、ディック祭り継続中。 57年の「虚空の目」と62年の「高い城の男」の間に位置する作品。何かが違っているように見えるのは自分が狂い始めているのか世界が本物なのか?普通小説にしか見えない出だしから、徐々に不安感が高まって・・・100ページ以内でどちらがおかしいのかがわかってしまうのですが、それは何のため?という謎がじわじわと深まっていくサスペンスは強烈。一気読みです。 PGMにリゲティを流したところ、すがすがしい秋晴れの中で読んでも不安感MAX。実にディックな日となりました。やっぱりディックすげー。

Posted byブクログ

2014/08/24
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久しぶりのディック.今は亡きサンリオ文庫から出ていたものらしい. ディックお得意の「模造記憶」「泥沼化した戦争」「並行世界(ちょっと違うか?)」がキーワードだが,比較的前期の作品であるために,作者自身がパラノイア化したともいえる後期作品とは異なり,短編の延長のようで読みやすい. 「なぜ彼らの側についたんだ?彼らは女性や子どもを殺しているんだ−」 「それは彼らの方が正しいからだ.」 今の世の中でこんな台詞を読むとゾッとしないでもないが,何が「正しい」かは読んでからのお楽しみ.

Posted byブクログ

2014/06/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

知らないタイトルだったので購入。内容はディックではよくある現実崩壊~実は戦争やってた系。クイズの内容が訳わからないのがおもしろい。前半はいまいち乗りきれなかったのだが、中盤~後半にかけて、外に出ようとして妨害されるところとか、外の現実がわかってくるところとかはおもしろかった。何もルールがわからないまま現実世界に出て行った時がすごく怖かった。オチはよくわからなかった。戦争はまだ続くのか、主人公が終わらせに行くのか?

Posted byブクログ

2014/05/20

ディック流セカイ系SF。 主人公レイグル・ガムは、無職で独身の中年男だ。弟夫婦宅に居候している。 ディック先生お得意のダメ人間か...というとそうではない。レイグルは地元の有名人である。もちろんいい意味で。というのは、新聞の懸賞企画「火星人はどこへ?」に2年間も正解し続けている...

ディック流セカイ系SF。 主人公レイグル・ガムは、無職で独身の中年男だ。弟夫婦宅に居候している。 ディック先生お得意のダメ人間か...というとそうではない。レイグルは地元の有名人である。もちろんいい意味で。というのは、新聞の懸賞企画「火星人はどこへ?」に2年間も正解し続けているチャンピオンなのだ。 この懸賞は、ファミコン版ロックマンのパスワードが複雑になったみたいなものらしい。一般人は分からないが、レイグルだけが分かる法則性と天才的な勘で正解を導きだしている。 舞台は50年代後半のアメリカの小さな町。レイグルは平穏で満ち足りた日々をすごしていた。 ところが、しっくりこないことがたびたび起こる。電気のスイッチを間違えた(ボタン式なのに紐を探してしまった)。甥のサミーが、架空の電話帳を拾ってきた。同じくサミーが造った鉱石ラジオから、軍事機密のような通信が聞こえてきた。などなど、デジャビュや幻聴にしては、どうも生々しい間違いが多いのではないか。 レイグルは思い悩む。もしかしたら、仕事のしすぎて疲れているのか?いや、実は世界が...? レイグルの苦悩を追っていくと、SF的展開が広がっていく。さすがディック御大!面白い作品だった。 細かいところも面白い。例えば、ガムの隣人ブラック夫妻の掛け合い。夫ビルはホワイトカラーで、妻ジュニーは(言葉が悪いが)尻軽だ。当然、相性が悪い。お互いにすれ違う様子は、ひどくリアルである。もっとも、どうしてこんな不釣り合いな夫婦であるのかが、だんだん分かってくるのだが。

Posted byブクログ

2014/02/07

最近だと『叛逆の物語』に似ているが、半世紀前の本作の方が全然面白い。倦怠感、不気味さ、焦燥感、登場人物の凡人っぷり。初期の作品だけどディックの魅力十分。

Posted byブクログ

2014/02/06

初期の作品ではあるがディックのパラノイアの予兆のようなものを感じる。 得意の現実崩壊系の作品で、プロットが面白く・破綻も無くしっかりしていて珍しく綺麗にまとまっている。 良く言えばまとも、悪く言えばディックの良さが足りないかなと言ったところ。 でもこういう話はすごく好きですw

Posted byブクログ

2014/01/25

「与えられたものは信じるな、ってことなのかな」 蛹はそう言って、小さく首をかしげた。 「自分で掴んだものだけ信じろ、と?」 葉月も同じように、小さく首をかしげる。 「いや、それも疑っておいた方がいいんじゃないかな」 「……どっちなんですか」 ふたりは、蛹の家の居間にいた。 いつも...

「与えられたものは信じるな、ってことなのかな」 蛹はそう言って、小さく首をかしげた。 「自分で掴んだものだけ信じろ、と?」 葉月も同じように、小さく首をかしげる。 「いや、それも疑っておいた方がいいんじゃないかな」 「……どっちなんですか」 ふたりは、蛹の家の居間にいた。 いつものように、向かい合ったソファに、向かい合って座り、向かい合ってコーヒーを飲んでいる。 「例えば家族や友人が、あるいは住み慣れた家や歩き慣れた町が、誰かから与えられたものだとしたら、っていう話」 はあ、と、葉月は曖昧な相づちを打つ。 「それってつまり、幸せが、誰かから与えられたものだとしたら、ってことですか?」 「どうだろう? ここでは、そう言ってもいいかもしれないけど。その幸せから抜け出して、本来の自分のあり方を取り戻すことが正しいことなんだろうか、って」 「でも、別に記憶を消されたり、書き換えられたりしなくても、元々幸せってそういうものじゃないでしょうか」 「うん?」 「何が欲しいとか、何が心地よいとか、みんな人から与えられた価値でしょう? それで、幸せとか不幸せとか言っているでしょう?」 それを聞いて、蛹が笑った。 「そういう幸せなら、いらないかもね。でも、正しさもいらないんだ」 そして、その話題にはそれ以上、突っ込まなかった。 「それにしても」 と、葉月は独り言のように言う。 「こっちは西暦二千年も過ぎたというのに、宇宙戦争どころか、地球から出ることもままならないんですよねえ」 「描かれた未来が現実よりも先を行っていたなら、それは想像力の勝ちじゃないかな。悪くないよ」 「ああ、それはそうかもしれませんね」 「それと、実際に宇宙戦争になったら、月は敵に回さない方がいいという教訓もある」 「月を制するものは、地球を制す?」 「石と砂の世界から青い地球を見下ろすのは、どんな気分だろうね」 これは単なる思考遊びだ。 粘土をこねるように、頭の中の現実をこねる遊びだった。 そして、それは休日の午後の過ごし方としては悪くないと葉月は思った。

Posted byブクログ