殺人犯はそこにいる の商品レビュー
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事件モノのノンフィクションは当たり外れが大きくて、例えば「東電OL」モノとか、「グリ永」モノとかはなんかちょっと乗り切れなかったりした。そんなこともあって「事実は小説より奇なり」やけど「小説は事実より読み応えがある」と思っている。今も原則そうである。 が、 この本はスゲー。読書関係の知り合い含め、絶賛する人が多かったので読むリストに入れてよーやく読んでみたのだけど、ノンフィクション避けをしていた自分を叱りたいくらいである。 道徳的に至極真っ当、絶対後ろ指刺されない人なんているんだろうか?お酒を飲んで乱れた事があったり、ちょっとエッチなお店にいってしまったり、博打にややのめり込んでしまったり、仕事をサボって喫茶店でビール呑んでしまったり、エロ本やエロDVDを観たり、ついつい浮気したり…、どれもこれも一切ないって人は安心かもしれないが…いや例えそれらが全くなくっても、親類縁者がそうだったら 警察はそこをついて、冤罪をデッチあげてくるかもしれない。冤罪なんて「なんか後ろ暗いことをしてる人が負うもの」と思っていた。でもそうじゃないとこの本は言う、「後ろ暗いこと」を警察は見つけ出してくるのである。「犯人の本性を暴く」という名目の元、火のないところに火をつけて煙を立てるのである。 それで真犯人を捕まえてくれるならいいが、間違った人を捕まえてしまうことがあるという現実。しかも間違ったことを修正しない、謝罪しない、あまつさえ無実の人を死刑にしてしまった可能性にさえ、この本は言及する。 警察は絶対ではない。この本を読めばそういうことが書いてあるし、尼崎の角田美代子の拘置所内自殺が物語っているのもそういうことだと思うし。 ただ、作者には悪いが、マスコミも正義ではない。雑誌が売れて視聴率が取れてスポンサーが喜んだら平気で嘘をついてはばからない。「まだまだ続くよ」といったCM明けに終わりのテロップ流す嘘が1日に何回も平気で流れている世界なんだから。 マスコミが言うてるから正しい、警察が動いたから正しい、みたいな盲信には十分気をつけなアカン。野次馬でおれるうちはエエけど、冤罪の矛先はいつ何時こっちに向くか分からんし、真犯人は捕まらないママで放置されている世の中なのだから。
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「ルパン」と呼ばれている男を逮捕するには、もう一度この男が誘拐・殺人をするしかないのか。 桶川ストーカー殺人事件を読み、こちらも是非、読まないとと思っていて、ようやくです。 桶川ストーカー事件とは、埼玉県警が不正をして、結果ある女性がストーカーに命を奪われた事件。それを当時雑...
「ルパン」と呼ばれている男を逮捕するには、もう一度この男が誘拐・殺人をするしかないのか。 桶川ストーカー殺人事件を読み、こちらも是非、読まないとと思っていて、ようやくです。 桶川ストーカー事件とは、埼玉県警が不正をして、結果ある女性がストーカーに命を奪われた事件。それを当時雑誌フォーカスの記者であった著者の清水さんが取材、それも現場、関係者への徹底的な取材により、警察よりも先に犯人を暴き、結果、実行犯の逮捕へ。そして主犯を追って― という内容は読んでくれ!という大好きな、というのも問題があるかもしれませんが強い思いが詰まっている本。 今回のテーマは北関東連続幼女誘拐殺人事件。覚えてます。横山ゆかりちゃんの事件は当時にニュースでよく見ていましたし、未解決事件もののテレビで再現映像を何度も見ていました。そして年齢的にも近い子もいるので、親に「知らない人について行ってはいけないよ」と引き合いに出されるようなそんな事件というイメージがありました。 栃木、というと新しく2005年にも事件がありましたが、これは別件で単独犯でした。 1979年から96年までに4人の女の子が殺され、1人は20年近く行方不明。 群馬、栃木と県をまたいでおりますが、その範囲はごく狭いもの。それは今年、私自身の経験として、最後の事件現場となった群馬県太田市に住んでいる友人の家に遊びに行き、足利市は渡良瀬橋周辺に連れてもらったことから、「近い」ということが実感できます。 車社会の群馬の子からすると、すぐ近くで夕飯を食べに行くような感覚でするりと連れていってもらいました。 渡良瀬橋の歌詞にも出てきて私も訪れた「八雲神社」。ここでも1人の女の子が姿を消していたのだ。 近い距離だけど「県境」というのが、捜査を阻むポイントであった。踊る大捜査線とかきらきらひかるで見たような、県境の川で警察が相手に押し付け合うような世界が本当にあり、情報が、捜査が、指示が、ばらばらになる。 前回の本の感想記事にも書きましたが、テレビドラマの刑事もので描かれる世界っていうのはあながち噓ではなく、「優秀な私が描く高尚な全体最適な未来のためには小さな個別事案では悪も辞さない」という人が、人たちは本当にいるんです。 前回は埼玉県警のひどい人たちが出てきたのですが、今回は科警研。科捜研の女、が都道府県ごとにいる組織だとしたらその中枢機関となるこの科警研が今回のガンです。 そのために、この本には犯人とおぼしき人物への、明らかに怪しいだろうというインタビューまで入っているわけですが、警察は捜査をしません。 今も、犯人と思しき人物は女の子と触れ合いながら、パチンコをしています。 この人物、この本では「ルパン」と呼ばれている男を逮捕するには、もう一度この男が誘拐・殺人をするしかないのか。それが今の日本の現状なのか。 そう思わざるを得ない、日本に生きていることが悲しくなってしまう本でもあるのですが、ここで暮らしていくことを選んでいますので、この事実を知り、その上で生きていきたいと思います。 そして多くの方に、この本を読んでもらいたいと思います。 北関東にお住いの親御さん、気をつけて。今は自衛するしかないのが悲しいですが。気をつけて。
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フィクションならよかったのになぁ……という現実。捜査当局のメンツと言うか、誤りを訂正しない姿勢が怖い。これが現実なのか。 大人のやることじゃあないよなぁという印象。 ただ、この本で犯人とされている人が犯人じゃない可能性もある訳で、その場合、地元ではちょっと辛かったりするん...
フィクションならよかったのになぁ……という現実。捜査当局のメンツと言うか、誤りを訂正しない姿勢が怖い。これが現実なのか。 大人のやることじゃあないよなぁという印象。 ただ、この本で犯人とされている人が犯人じゃない可能性もある訳で、その場合、地元ではちょっと辛かったりするんじゃないかなぁと少し思う。 そう言う訳で捜査当局の再捜査を願う。これが理由で時効になったとか無い。
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警察も検察も信じられなくなった。ひどい。あまりにひどい。菅谷さんは冤罪とわかって釈放されたけれど、5人の連続幼女殺人の真犯人がどこの誰だかわかっているのに(!)捜査に乗り出さない。だってそれをやると昔のDNA鑑定が間違っていたことを認めることになり、間違った鑑定ですでに死刑実行し...
警察も検察も信じられなくなった。ひどい。あまりにひどい。菅谷さんは冤罪とわかって釈放されたけれど、5人の連続幼女殺人の真犯人がどこの誰だかわかっているのに(!)捜査に乗り出さない。だってそれをやると昔のDNA鑑定が間違っていたことを認めることになり、間違った鑑定ですでに死刑実行してしまった他の事件が明るみに出るから。ムリクリな捜査で突然殺人犯に仕立て上げられ、あろうことか死刑が実行されてしまう…そんなことが今の日本で起こるなんて本当に恐ろしい。
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現在進行形なノンフィクション。敵はずらりと並ぶ国の最高機関たち。出版は2年前。さすがに解決してるだろうと思ったのに・・・。著者が毎日ツイートで警鐘を鳴らしていてリスペクトが止まらない。 出きるだけ多くの人に手にとって欲しい本です。そこらの本では得がたい体験ではあるはず。
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※このレビューにはネタバレを含みます
こういう本を読むと、何が真実なのか分からなくなる。菅谷さんが無実を勝ち取ったことに、こんなに尽力した人がいたとは知らなかった。 「弱い者を狙う犯罪が許せない。弱者の尊厳を平気で奪う事件に我慢がならない」という文章には、本当に同感。 DNA鑑定は、完璧だと思っていた。 警察や検察は面子なんていうしょーもないものは、さっさと捨てて、本当の正義を貫いて欲しい!
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菅谷さんの冤罪報道は知っている。でも、興味はなかった。私も、この本で書かれていた人のように「何もない人が逮捕なんかされないし、重大な判決なんか出ない」と思っていた。この本を読み、ことはそんな単純なモノじゃないと分かった。記者である著者の、魂を削るような事件への執念。冤罪を晴らすこ...
菅谷さんの冤罪報道は知っている。でも、興味はなかった。私も、この本で書かれていた人のように「何もない人が逮捕なんかされないし、重大な判決なんか出ない」と思っていた。この本を読み、ことはそんな単純なモノじゃないと分かった。記者である著者の、魂を削るような事件への執念。冤罪を晴らすことは目的へ辿り着くための手段のひとつであり、それがこの事件「北関東連続幼女誘拐殺人事件」のスタートになる。犯人は分かっているのになぜ捕まらないのか。警察は、国は、そして大手メディアはなぜ動かず、何を守るのか。軽快な筆致とともに憤りを抱きます。なぜ著者様はここまでこだわるのか。あとがきに涙があふれました。だからこそ、信用足りえる一冊です。
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[五人消え、そして消された]死刑判決が下っていながらも、その再審前に被告人の菅谷利家さんが釈放されるという前代未聞の展開を見せた足利事件。それだけでも世の中に大きな反響を及ぼした事件だったが、足利事件が振り出しに戻ることにより浮かび上がってきたのは、北関東で数年おきに失踪し、殺害...
[五人消え、そして消された]死刑判決が下っていながらも、その再審前に被告人の菅谷利家さんが釈放されるという前代未聞の展開を見せた足利事件。それだけでも世の中に大きな反響を及ぼした事件だったが、足利事件が振り出しに戻ることにより浮かび上がってきたのは、北関東で数年おきに失踪し、殺害された5人の少女たちと「ルパン」と呼ばれた謎の男の存在だった......。衝撃的という言葉に軽さすら覚えてしまうほどの衝撃的ノンフィクション。著者は、桶川ストーカー殺人事件に対する調査報道でも世間を驚嘆させた清水潔。 現時点で2015年の私的トップ3に間違いなく入ってくる作品(先日レビューを上げた『黒い迷宮』もそうですが、優れた事件モノの書籍に今年はよくぶつかっている気が......)。執念がそのまま具現化したかのような清水氏を始めとする方々の報道姿勢と、ドラマチックすぎるほどの事態の展開にページを繰る手が止まらなくなること間違いなしです。「とにかく読んでみればその素晴らしさがわかるから、とりあえず読んでみてください」という類の作品。 公権力に正しい道を歩んでほしいがために、その暗部をぐいっと抉り出す筆者の筆も圧巻。独力でここまで戦える正義感と、理性的に物事を見る眼、そして戦うための適切なタイミングで適切なカードを切る著者の判断力にも驚かされました。 〜ごめんなさいが言えなくてどうするの。〜 畑違いの自分ではありますが、報道の真髄を見せつけられた思いがしました☆5つ
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最も小さき声に耳を傾け、その声を報道するという著者の信条には感銘を覚える。そういうジャーナリストが一人でも多く存在することを願うばかりである。 この本は、冤罪とそれの発端となる警察や検察の体質について批判をしているがこれは難しい話だと思う。なぜなら一方では検挙率の低さも批判さ...
最も小さき声に耳を傾け、その声を報道するという著者の信条には感銘を覚える。そういうジャーナリストが一人でも多く存在することを願うばかりである。 この本は、冤罪とそれの発端となる警察や検察の体質について批判をしているがこれは難しい話だと思う。なぜなら一方では検挙率の低さも批判されるからである。検挙率も上げて冤罪もなくせというのは無理があるだろう。 ただし、冤罪というものが実際にあり得るということは意識したいと思った。上やマスコミからは犯人を挙げろとせっつかれ、犯人を挙げれば表彰され出世でき、挙げられなければ出世は遠のく。こういう状態であれば時に冤罪が起きたとしても何ら不思議ではない。
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信頼できると思っていたDNA鑑定で冤罪が生まれるとは驚きだった。それにしても最も信頼している組織によって隠喩されるってことが真実なら何を信じていいのかよくわからなくなった。
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