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崩れゆく絆 の商品レビュー

4.2

37件のお客様レビュー

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2021/10/30

19世紀のナイジェリアが舞台。 独自の神を信じ崇め、家族・ムラという単位で生活していた共同体に、キリスト教伝道師の入植により植民地化していく様を描く。中盤までは、文化や生活、信仰などについて淡々と描かれていますが、その後の畳み掛けるような展開がすごい。 時代も国も違いますが、どこ...

19世紀のナイジェリアが舞台。 独自の神を信じ崇め、家族・ムラという単位で生活していた共同体に、キリスト教伝道師の入植により植民地化していく様を描く。中盤までは、文化や生活、信仰などについて淡々と描かれていますが、その後の畳み掛けるような展開がすごい。 時代も国も違いますが、どこか今の社会にも共通するような点があるようにも感じました。何かが変わっていく時、多くの犠牲が伴うこともあります。自分たちが守って疑わなかったことであれば尚更。四部作のようですが日本語訳がないのが残念です。最後の一文が辛い。

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2021/09/06

英語版で読んで面白かったので、翻訳も読んだ。英語版ではイボ語のままにしてある単語は意味を想像しながら読んだが、本書では日本語に訳してある。あとがきも詳しくて助かった。 主人公のオコンクォは日本にもってくると『枯木灘』の浜村龍造、在日社会にもっていくと『血と骨』の金俊平と同じタイプ...

英語版で読んで面白かったので、翻訳も読んだ。英語版ではイボ語のままにしてある単語は意味を想像しながら読んだが、本書では日本語に訳してある。あとがきも詳しくて助かった。 主人公のオコンクォは日本にもってくると『枯木灘』の浜村龍造、在日社会にもっていくと『血と骨』の金俊平と同じタイプ。粗暴で男尊女卑で経済的に成功している。こうした型の人間が、新しい時代とうまくいかずに破滅してしまうというのも、共通している。

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2021/02/23

・アフリカ文学史上最高と呼び名の高い小説 ・アフリカの村で一代で名声を築いた男が主人公 ・父親を反面教師に努力をする ・隣の村と戦争を起こす代わりに人質を捉えて自分の家で育てる ・村のならわし、神のおつげにより、自ら大事にしていた人質の子を殺めてしまう。そこから暫くは食事もせず。...

・アフリカ文学史上最高と呼び名の高い小説 ・アフリカの村で一代で名声を築いた男が主人公 ・父親を反面教師に努力をする ・隣の村と戦争を起こす代わりに人質を捉えて自分の家で育てる ・村のならわし、神のおつげにより、自ら大事にしていた人質の子を殺めてしまう。そこから暫くは食事もせず。 ・偶発的な事後で同族を殺してしまったことでオコンクウォは流刑されて、母親の親族の村で7年間過ごす ・そのかん、イギリスの植民地支配でキリスト教が蔓延。 ・オコンクウォが7年後に戻ってから、イギリス白人と村の一族との対立 ・オコンクウォは白人の首を跳ねて、後日に木に首を吊って自殺するという衝撃な最後。

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2021/01/06

アフリカ文学の在り方 黒人と白人の関係っていうのは今後も一生注目され続けるもので、こういった文学はその関係における事実とか考え方を継承するひとつの大切なもの

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2020/10/10

アフリカ文学の父と称されるアチェベの代表作。アチェベの名前、どこかで聞いたことがあると思ったら、コンラッドの「闇の奥」についての論争について読んだときに名前をみかけたようだった。 本書は19世紀のナイジェリア、イボの文化を描き出すとともに、それがイギリスによる植民地支配により崩れ...

アフリカ文学の父と称されるアチェベの代表作。アチェベの名前、どこかで聞いたことがあると思ったら、コンラッドの「闇の奥」についての論争について読んだときに名前をみかけたようだった。 本書は19世紀のナイジェリア、イボの文化を描き出すとともに、それがイギリスによる植民地支配により崩れ行くさまを、戦士として誇り高い地位にあった主人公、オコンクウォの転落に重ねて描き出す。前半のイボの文化は興味深いが、アフリカの独自性を描き出すというよりは、その中で葛藤する個人を描こうとしていると言える。その点ではオーソドックスな小説とも言えるが、それまでアフリカ人を主人公としてこなかった小説世界が、アフリカを舞台にオーソドックスな小説を構築できるのか、そこにチャレンジがあったということだと理解した。

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2020/08/23

「アフリカ文学」なるジャンルは初めて読んだ。使用言語は英語で、「英米文学」の欄に並んでた。 西洋文明への批判でありながら、宗主国の言語で書かないと伝えることができない、というのが「弱者」の立場を象徴しているような。 「宗教は脳の副作用である」(ジャレド ダイアモンドだったか)、「...

「アフリカ文学」なるジャンルは初めて読んだ。使用言語は英語で、「英米文学」の欄に並んでた。 西洋文明への批判でありながら、宗主国の言語で書かないと伝えることができない、というのが「弱者」の立場を象徴しているような。 「宗教は脳の副作用である」(ジャレド ダイアモンドだったか)、「神は妄想である」(リチャード ドーキンス)という言葉が好きな身としては、やっぱり一神教はろくなもんじゃねえ、と改めて思った。 アフリカの年寄りの言葉は含蓄が深いなあ。今の言葉で言うと、サステイナビリティファーストか。

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2020/07/06

◆石川直樹さんのおすすめ キリスト教が入ってきたときに 今現在虐げられてたり 今現在の価値観に疑問を持っている人たち (双子を堕胎しなければならなかった母親など) が改宗していったというところに なるほどなぁと思う もともといた人たちの世界観の中に 新しく場所を設けて 考えを...

◆石川直樹さんのおすすめ キリスト教が入ってきたときに 今現在虐げられてたり 今現在の価値観に疑問を持っている人たち (双子を堕胎しなければならなかった母親など) が改宗していったというところに なるほどなぁと思う もともといた人たちの世界観の中に 新しく場所を設けて 考えを拡げていく どちら目線かで全く変わってくるけれど 元いた方は「順番」の重要さを思って 後発の振る舞いを理不尽に感じるのも 仕方なく思う 後から入っていく方は 自分たちの「正しさ」を広めたいし 受け入れられたいし そのために尽力もするだろう なんだあれ?と思われるような 新しい考えは一見カルト的にも思えるだろう なにが後世に残るか? 残っているものの 「正しさ」なんて ほんとうのところ 誰にもジャッジはできない 排他的にならなければ たとえ脅威を感じていても 共存できるのだろうか?  

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2019/06/27

民族誌半分、物語半分。カメの昔話、家族の仕組み、ヤム芋の農業。歌や市場や巫女の存在意義、アフリカ文化の基礎知識がないから、珍しい。 キリスト教の西欧がアフリカの人々の信仰を無慈悲に蔑み侵入してきたのを当事者の目から書いた、アフリカの人々 可哀想、なだけで終わらない文学。 村人た...

民族誌半分、物語半分。カメの昔話、家族の仕組み、ヤム芋の農業。歌や市場や巫女の存在意義、アフリカ文化の基礎知識がないから、珍しい。 キリスト教の西欧がアフリカの人々の信仰を無慈悲に蔑み侵入してきたのを当事者の目から書いた、アフリカの人々 可哀想、なだけで終わらない文学。 村人たち、とくに主人公オコンクォが男らしく(横暴とも言う)自分勝手で他人の心情を解さない男で。伝統を重んじ自分の力で長になろうと努力した主人公が、自分の今までの行いから、自分の精霊(チ)の運命に逆らえず結局超えられない、というところに皮肉と悲哀を感じる。

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2019/01/05

「アフリカ文学の父」による最高傑作と言われる。 物語の前半は、徹底した労働により一代で名声を築く主人公オコンクウォの半生が語られる。彼の考える勇気の大切さ、怠惰への嫌悪などは息をのむほど。一方で、一夫多妻制の下での(現代の感覚から見れば)信じがたいほどの男尊女卑、子どもへの抑圧...

「アフリカ文学の父」による最高傑作と言われる。 物語の前半は、徹底した労働により一代で名声を築く主人公オコンクウォの半生が語られる。彼の考える勇気の大切さ、怠惰への嫌悪などは息をのむほど。一方で、一夫多妻制の下での(現代の感覚から見れば)信じがたいほどの男尊女卑、子どもへの抑圧、「迷信」と呼ばざるを得ないような呪術。同時に、争いを避けるために精霊たちが村人に与える平和への知恵。そして後半、ここにキリスト教の宣教師がやってくる。 初代宣教師は、村人のするどい突っ込みに受け答え、伝統的な慣習に理解を示しながら少しずつ信者を増やしていく(「神は一人といったり、神の息子がいると言ったりどっちなんだよ」といった質問から始まり、キリスト教を理解しようとするアフリカ人の合理的思考が胸を打つ。村の長老と宣教師の応酬は明らかに長老が勝っている)。 こうして、村人たちの中に「・・・(キリスト教にも)どうやら何かが、とんでもない狂気のなかにも、おぼろげながら理屈のようなものがありそうだ、という感覚が広まりつつあった」(P.266)。 厳格な父オコンクウォ(当然ながらキリスト教を激しく憎んでいる。)におびえながら生きる穏やかな息子ンウォイエが、讃美歌の響きに心揺さぶられるシーンは感動的。 しかし後任の宣教師は、(よくあることだが)ゼロからスタートでないだけにかえって「正しい教えが浸透していない。迷信が残っている」と村人と摩擦を引き起こす。村人の抵抗。それを「鎮圧」する英国の植民地官僚たち。その様子は、先住民暴動の「平定」として記録されていく。 「ライオンが自分の歴史家を持つようになるまでは、狩りの歴史はつねに猟師のものだ」 “Until the lions have their own historians, the history of the hunt will always glorify the hunter.” アチェベが好んで使った言葉だそうだ・・・。 (2015年11月のThe Economistより)

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2018/11/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ナイジェリア出身のイボ人作家 Chinua Achebe (1930-2013)による、アフリカ文学の金字塔と言われる作品です。 前半は、19世紀後半の植民地化前のイボ族の共同体が、複雑かつ精緻な統治、信仰、慣習システムにより運営されている様子が、主人公であるオコンクウオを中心に描かれています。後半では、それが白人の宣教師たちによるキリスト教布教を境に瓦解していく様へと進行していきます。このあたりが、題名である”崩れゆく絆”をよく体現しています。 この小説は1958年に出版されてますが、そのわずか2年後の1960年にナイジェリアが独立を果たしており、時代は違うものの過度期の不安定や焦燥といった気分が、当時の世相を反映していた、とも言われているようです。 しかし、この小説をそうした歴史的あるいは民族史的側面からよりも、私はオコンクウオという男一人の生き様からとらえるほうが、面白く読めるような気がしました。そして、守護神であるチが運命を先導しつつ、個人の努力にもある程度呼応していく、という宿命論と自力更生的考え方の対置など、自省を促すようなテーマも込められており、多面的な側面を持つストーリーで一気に読んでしまいました。

Posted byブクログ