ゾウと旅した戦争の冬 の商品レビュー
老人養護施設にいる老女リジーは「むかし庭にゾウがいたのよ」と語るが、誰からも相手にされない。しかしその話に耳を傾けた親子に、リジーは過去の思い出を語り始めるのだった。 ドイツのドレスデンに暮らす16歳のエリーザベト(後のリジー)は、母(ムティ)と病弱な弟のカーリと暮らしていた。...
老人養護施設にいる老女リジーは「むかし庭にゾウがいたのよ」と語るが、誰からも相手にされない。しかしその話に耳を傾けた親子に、リジーは過去の思い出を語り始めるのだった。 ドイツのドレスデンに暮らす16歳のエリーザベト(後のリジー)は、母(ムティ)と病弱な弟のカーリと暮らしていた。父(パピ)は戦争に取られて帰ってこない。ムティは動物園で働き始めた。 ドイツの大きな都市であるケルンもベルリンもハンブルクも爆撃を受けていた。ドレスデンにも近いうちにかならず来るだろう。そうなったら動物園の猛獣たちは殺されることになっていた。ムティの世話している赤ちゃんゾウのマレーネも。 ムティは、マレーネを守るために自宅の裏庭に連れて帰る許可を得た。そしてある夜の散歩で、走り出したマレーネを追いかけるムティ、エリーザベト、カーリの背後で大きな爆音がする。自分たちがいた家、自分たちの住むドレスデンが空襲されたのだ。 帰る場所をなくした三人は、親戚の農場を頼ってひたすら前に進む。 たどり着いた農場だが、親戚は避難したあとで、納屋には連合国航空兵でカナダ人のペーターが隠れていた。 敵味方の憎しみを超えて、ペーターとリジーたちはともにアメリカ兵に保護を求めるために合流することにする。 こうして冬の森に、ゾウを連れたドイツ人家族と敵兵との旅が始まった。 === 戦争と動物園というと『かわいそうなゾウ』『ゾウ列車がやってくる』を思う。空襲の都市で猛獣を殺すというのは世界的で行われていた…(´・ω・`) 同じドイツ人でも政治思考や愛国の方向が違いから仲違いしすることもあるし、敵兵でも守ってくれる人もいる。国と国ではなく、人と人でわかり合えることもある。 父親が戦地から帰らない家庭、激しい空襲、空腹で食べ物を漁る様子など容赦ない現実と、家庭の庭にゾウがいた、ゾウと一緒に冬の森を旅する、という非日常の描写とが融合して、戦争の悲哀と人間の強さやユーモア、絆が書かれている。 しずかな語りを終えたリジーはいう。「こういう人生があったって、若い人たちに知ってほしいの。」
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老人ホームにいる主人公の思い出話という形で ストーリーが展開していきました。 戦時下では動物園の生き物が多く殺されてしまったという話は聞きましたので この象の話はありえなさそうで ありえるかもと 思いながら読みました。 戦争が進むにつれて 親戚同士でも 気持ちが異なり 仲違いしてしまう。 空襲によって 何も持たずに逃げてしまったけれど 家族と一緒という事が とっても大切。 家族プラス象だけど 助け合って 田舎に避難できた。 そして 敵兵との出会い。 敵も同じ人間という事を感じて 協力して逃げていく。 その先々で 色々な出会いもある。 最後に みんな離れてしまうのかと思ったけど それぞれ 再会できて 幸せになって 良かったです。 このお話は みんな助かったけど 実際の戦争はこうも上手くいかないでしょう。 戦争の事 語り繋ぐ大切さを このお話は訴えていると思いました。
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泣きました。寒さと飢えに耐えながらの逃避行。道々で手を差し伸べてくれる善意ある人たち。家族を守るため優しくも逞しいムティ。愛らしいマレーネとカーリ。そして誠実なペーター。お話の途中、窓の外から教会のやさしい鐘の音がきこえてきたのが印象的でした。パピが捕虜を解かれて帰宅し、リジーと...
泣きました。寒さと飢えに耐えながらの逃避行。道々で手を差し伸べてくれる善意ある人たち。家族を守るため優しくも逞しいムティ。愛らしいマレーネとカーリ。そして誠実なペーター。お話の途中、窓の外から教会のやさしい鐘の音がきこえてきたのが印象的でした。パピが捕虜を解かれて帰宅し、リジーとペーターがちゃんと結ばれる。生き別れになっていたマレーネとの再開。すべてを語り終えたリジーは、最後に「でもね、幸せだった。すばらしい人生だった。」と締め括ります。「こういう人生があったって、若い人たちに知ってほしいの。」いまもウクライナをはじめ世界各地で戦争や紛争が続いていますが、戦火にさらされている人たち一人ひとりに、それぞれの人生と幸せになる権利があることを忘れてはいけないと思いました
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介護施設に暮らす82歳の老女リジーは、自分の家の庭にゾウがいた、という話を施設の看護師たちにしていた。看護師たちは、彼女の話をぼけに嘘だと思い、真面目に取り合わなかった。施設の看護師である「わたし」の息子カールだけが、彼女の「庭にいたゾウ」の話を信じた。彼女は、第二次世界大戦下、戦火を逃れるために、ゾウとともドイツを横断した経験を二人に語った。 戦争の物語としては、とても新鮮な物語だった。リジーが語る戦争体験は、とても悲惨なものでありながら、明るさを失わない。戦争の悲惨さを、悲惨なままに伝えるのではなく、笑顔で過ごす瞬間もあったことが描かれる、その読後感は、『この世界の片隅で』などに似ていた。 第二次大戦当時、15歳であったリジーは、16歳の誕生日に動物園で働いていた母から、ゾウをプレゼントされる。しかし、その数日後、リジーとその母ムティ、弟のカーリの住むドレスデンの町は、空襲に遭い、家族はゾウとともに町を離れることを余儀なくされる。 印象に残ったのは、弟のカーリが、故郷から逃げのびるための苦しい旅の中でも、出会った人たちにゾウを見せびらかし、得意のジャグリングを自慢げに見せるシーンだ。夜通し歩き続け、食糧もなく、悲惨な旅でありながら、ゾウの存在が、家族に勇気を与える。 あらゆることが、ハッピーエンドへと向かうところは、ややご都合主義的に見える面もあるものの、それを超えて、余りあるいい話だった。
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第二次対戦中、ドレスデンに母と弟と住んでいたリジー。大空襲に遭い、侵攻してくるソ連軍から逃れるため母、弟そして動物園での射殺から救い出された子象と共に、夜毎歩き続ける旅をします。厳しい冬の夜に歩き続けなければならない親子の救いは穏やかな子象の存在。道中、心通わせられる人と出会える...
第二次対戦中、ドレスデンに母と弟と住んでいたリジー。大空襲に遭い、侵攻してくるソ連軍から逃れるため母、弟そして動物園での射殺から救い出された子象と共に、夜毎歩き続ける旅をします。厳しい冬の夜に歩き続けなければならない親子の救いは穏やかな子象の存在。道中、心通わせられる人と出会えるのが良かった。
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第二次世界大戦末期のドイツ、ブリスベン。爆撃を受けて逃げる親子と、象。 敵兵の青年との出会いと、過酷な逃亡の日々。伯爵夫人との出会い。 戦争は、敵味方関係なく、悲劇しか生まないことや、絶望の中にも希望はあることなど、施設に入った老婦人から身の上話を聞くという形ですんなり自分の中に...
第二次世界大戦末期のドイツ、ブリスベン。爆撃を受けて逃げる親子と、象。 敵兵の青年との出会いと、過酷な逃亡の日々。伯爵夫人との出会い。 戦争は、敵味方関係なく、悲劇しか生まないことや、絶望の中にも希望はあることなど、施設に入った老婦人から身の上話を聞くという形ですんなり自分の中に入ってくる。 著者モーパーゴさんの作品らしく、いたましさに胸を痛めながらも、安心して読み進められるのは嬉しい。 若い人たちに伝えたいこと、伝えていかなければいけないことがある。 読めてよかった作品の一つ。
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戦争てやっぱ怖いけど誰も死ななくてよかった! 200ページの一行目の「最後に残ったのが私」って言うのが気になりましたね、カーリは先に死んでしまったのかそれともピーターとリジーの中でピーターが先に死んでしまったと言う意味なのか、謎です
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第二次世界大戦中、ドイツでの物語。 リジーは母親と弟のカーリーと一緒にドイツ東部のドレスデンに住んでいた。父親は戦争でロシア戦線へ送られ、母は動物園で象の飼育員として働いていた。戦争が長引くにつれ、ドイツ軍は劣勢になってゆき、各地が爆撃されていった。動物園では猛獣達は殺処分され...
第二次世界大戦中、ドイツでの物語。 リジーは母親と弟のカーリーと一緒にドイツ東部のドレスデンに住んでいた。父親は戦争でロシア戦線へ送られ、母は動物園で象の飼育員として働いていた。戦争が長引くにつれ、ドイツ軍は劣勢になってゆき、各地が爆撃されていった。動物園では猛獣達は殺処分されるなか、母が世話をしていた子象マレーネは、母の熱い説得で、動物園から家に連れ帰ることができた。しかし、ドレスデンもついに爆撃ははじまり、リジーと母とカーリーは、マレーネを連れて、逃げる事となったのだ。 戦火を避けて、長い人の列ができ、リジーたちは何度も挫けそうになる。まずは田舎の叔父の家を訪ねるべく、難民の列からはずれ、森を行く。 過酷な旅を助けてくれたのは、一緒に逃げたマレーネだった。 老人の昔話からはじまる、子象マレーネとの旅。 戦争の悲惨さだけでなく、そこに生きた人々の姿に感動。敵味方どちらにも公平に描かれているのもいい。
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戦時中のドイツ・ドレスデンでかつて起きた出来事を語る、子どものための本です。 看護師の「わたし」はお年寄りの介護施設で働いています。そこで知り合った82歳のリジーは、少し気むずかしいところもありますが、「わたし」とはどこか気が合う、凛としたおばあさんです。 「わたし」は、週末、...
戦時中のドイツ・ドレスデンでかつて起きた出来事を語る、子どものための本です。 看護師の「わたし」はお年寄りの介護施設で働いています。そこで知り合った82歳のリジーは、少し気むずかしいところもありますが、「わたし」とはどこか気が合う、凛としたおばあさんです。 「わたし」は、週末、息子のカールの預け先が見つからず、職場である施設に連れてくることになります。リジーはカールをとても気に入り、昔、「庭でゾウを飼っていた」話をしてくれると言います。 リジーが呆けておかしなことを言っていると思っていた「わたし」ですが、カールはリジーを信じます。徐々に、二人の真剣さにつられ、「わたし」はリジーの話を信じ始めます。 そしてリジーは、「あの頃」のことを語り始めるのです。 戦争に行ってしまったパピ(父親)、動物園で飼育係として働くムティ(母親)、足が悪く、喘息持ちの弟、カーリ、そして当時はエリーザベトと呼ばれていたリジーは、ドレスデンに暮らす家族でした。 ムティは、担当する子ゾウのマレーネをとても可愛がっていました。ある日、ムティは、夜になると怯えるマレーネを家に連れ帰るようになります。 1945年2月13日、リジーの街、ドレスデンは恐ろしい運命を迎えます。街から逃げ出した一家は、子ゾウを連れて、長く苦しい逃避行を行うことになります。その途で出会ったペーターは、撃ち落とされた敵軍爆撃機の兵士でした。一度はペーターを殺そうとしたムティでしたが、不注意のために死にかけたカーリが、ペーターに命を救われたことから、彼に心を開いていきます。結局は皆は、ペーターの方位磁石を頼りに、ともに旅を続けることになります。 リジーは、ハイティーンで難しい年頃です。世の中に苛立ち、母ムティともぶつかります。家族や親戚も欠点がまったくない人々であるようには描かれません。ムティと姉妹のロッティ叔母さんとの間で、国の方針について激しい議論が行われたりもします。 逃避行の中で、いがみ合う人も助け合う人もいます。同国人でも敵対することもあれば、敵国人と助け合うこともあります。 作者のモーパーゴは、そうしたさまを思春期の女の子のみずみずしい感性を通して描いていきます。 全編を通じて浮かび上がってくるのは、戦争の中で、一方を悪者に仕立て上げるのではなく、戦争そのものが「悪」であるとする作者の姿勢です。 かわいい子ゾウ・マレーネは、お話の中で、子どもたちを和ませ、人と人との垣根を取り払います。そしてまた、お話を読む人にとっても、優れた導き手として、物語の最後まで連れて行ってくれるのです。 後半以降の展開はいささか「うまく」行き過ぎているようにも感じます。このお話を、どこか、おとぎ話めいたものにしてしまったようにも感じます。 しかし、これはある意味、作者が子どもたちに捧げる「祈り」のようなものなのかもしれません。 私たちは、互いの衝突を克服できるはずだ。私たちの心の中には、ペーターが持っていた方位磁石のように、正しい方向へと導くものがあるはずだ、と。 イギリスの作家として、英米軍がドイツを爆撃したエピソードを「敢えて」選んだ作者が、子どもたちに託す「希望」、それがこの明るい結末なのだとも思えてきます。 リジーは最後に、カールに方位磁石を託します。 この物語もまた、作者から子どもたちに贈られた、方位磁石であるのでしょう。 *対ドイツ空爆については、いずれまた別の本(ノンフィクション)を読んでみたいと思っています。 *動物園のゾウに関しては、モデルがいたようです。(*リンク先、英語です) http://www.belfasttelegraph.co.uk/life/books/baby-elephant-kept-in-belfast-backyard-is-inspiration-for-book-28543013.html ドレスデンではなく、ベルファストですが、戦時中、動物園で飼育を担当していたゾウを毎夜、自分の家に連れ帰っていた女性飼育員がいたとのこと。この話を知った作者は強いインスピレーションを得たようです。
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