近代の呪い の商品レビュー
近代以降の世界において、われわれはインターステートの体系に所属せざるをえない。近代において人権や生活水準の向上が進んだことは事実であって、そのことは絶対的に良い方向なのだが、代わって個人は否応なしにインターステート・システムに取り込まれてしまい、ヒトどうしや自然との交感を喪失し、...
近代以降の世界において、われわれはインターステートの体系に所属せざるをえない。近代において人権や生活水準の向上が進んだことは事実であって、そのことは絶対的に良い方向なのだが、代わって個人は否応なしにインターステート・システムに取り込まれてしまい、ヒトどうしや自然との交感を喪失し、自分の身近な生活空間を意識することができずに経済成長ばかりを追い求めることとなってしまっている。 講義録であって読みやすいが、内容は、煎じつめると歴史教養の紹介+上記の慨嘆というもの。瞠目する提言があるというのではないが、そういう賢しらげな態度で読むべき本ではないと思う。むしろ心の奥底で渡辺のいうことにいちいちうなずく自分を感じる。
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新書である事に気概を感じる一冊でした。 著者はかつての社会にあった美徳を顕彰するだけでなく、その至らなさも同時に検証し、同様に近代に対しても批判的な視座のみを持つのではなく、その功利も冷静に見つめています。 個人的には自由や平等という言葉のうちの過度の漂白を疑う良い機会になり...
新書である事に気概を感じる一冊でした。 著者はかつての社会にあった美徳を顕彰するだけでなく、その至らなさも同時に検証し、同様に近代に対しても批判的な視座のみを持つのではなく、その功利も冷静に見つめています。 個人的には自由や平等という言葉のうちの過度の漂白を疑う良い機会になりました。また、社会の両義性を改めて実感し、その面白さ、困難さに打ち拉がれてもしまいました。
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「近代」とは何かを根源的に問い続けている著者の講演録。講演録なので、平易な言葉で語られており、読みやすい。近代の成果は人々を豊かにし幸福にしたが、それによって「インターステイトシステム」と「世界の人工化」という2つの呪いに呪縛されているというのが、著者の歴史観。そこから脱却してい...
「近代」とは何かを根源的に問い続けている著者の講演録。講演録なので、平易な言葉で語られており、読みやすい。近代の成果は人々を豊かにし幸福にしたが、それによって「インターステイトシステム」と「世界の人工化」という2つの呪いに呪縛されているというのが、著者の歴史観。そこから脱却していくために生活のゆたかさの意味を新しく位置づける必要を説いてる。その際のキーワードは、「自立的民衆世界」=“人が人らしく生きうる共同社会”の探究である。
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