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2022/03/06

優れた人格者が貧困から努力して世に出ていく話でもなく、主人公が大きな不幸によって破滅していく話でもない。 特別でもなんでもない、田舎の貧しい一家の話である。 貧しさだけでなく、父と娘、義父と娘婿、主人と小作人など複雑な人間関係や、それぞれの持つずるさ、利己心、嫉妬などはとてもリア...

優れた人格者が貧困から努力して世に出ていく話でもなく、主人公が大きな不幸によって破滅していく話でもない。 特別でもなんでもない、田舎の貧しい一家の話である。 貧しさだけでなく、父と娘、義父と娘婿、主人と小作人など複雑な人間関係や、それぞれの持つずるさ、利己心、嫉妬などはとてもリアルである。 心を入れ替えたように見えても、また元の卑屈で卑怯で矮小な心が見え隠れしそうになるところも人間心のリアルであり、清々しさはないが、それがまた土とともに生きる農民の姿を嘘偽りなく伝えているのかもしれない。

Posted byブクログ

2022/01/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

小さな旅を、終えたような気分である。 解説を含めて、450ページくらいの文庫本を、読了するのに二週間くらいかかった。 活字の密度にもよるが、僕は大体文庫本1ページ1分で読む計算だが、この作品は地の文の密度が濃い上に、方言や田舎言葉が多く出て来るので、読むのに通常の倍近くかかったようである。 この作品を知ったのは、恐らく高校の国語か歴史の文学史だろうと思う。 若い頃だったら、まず、手は出さないし、興味さえ抱かなかったかもしれない。 たまたま最近、新潮文庫のマイナーな近代作家を読んでいて、その流れで、この作品を選んだ。 僕自身は、農作業の経験はほとんど無いし、知識も無いが、両親が昔借りていた家の庭で野菜を育てたり、近くに畑を借りてじゃがいもを植えたりしていたので、まるっきり農業に無縁でも無い。 子供の頃は、近くに田んぼや畑、雑木林やいわゆる里山なども、普通にあった。 だから、現代の都会で暮らしている若者が読むよりは、作品世界に実感を持って入り込める部分もあった。 最初の方で、お品という農家の女房が、三人目の子供を自分で無理やり堕胎して、それが原因で死んでしまう。 夫の勘次は小作だけでは暮らせず、出稼ぎに出ていたが、お品が亡くなって、娘のおつぎと息子の与吉と三人で、小作だけで暮らさなければならなくなる。 年頃になったおつぎへの、束縛と干渉。 お品が生きていた頃から折り合いの悪かった義父卯平との関係。 勘次の盗癖がバレての一悶着。 勘次と疎遠である姉との関係。 そして、最後に勘次の留守に、卯平と与吉が過って火を出してしまい、勘次の家も、雇い主の家も全焼してしまう。 卯平と与吉は幸い助かるが、更に卯平は自殺しようとして失敗して、寒中倒れているのを発見され、またも命は取り留める。 最後に卯平と勘次の関係が修復され、雇い主の家にお詫び方々訪ねて、また小作を続けていくところで作品は終わる。 どのエピソードも何かの伏線で次に繋がっているのではなく、起きたことを順次並べている感じ。 勘次が再婚することもなく、おつぎは大恋愛して駆け落ちするでもなく、勘次が盗癖で捕まっても結局、逮捕されることもない。 折り合いの悪い義父のせいで、過失とはいえ、火事で家を失ったのに、最後は和解している。 そこに僕は、小作農たちの素朴さや、単純で結局は善であるのを感じた。 ストーリーに引き込まれるとか、描写が素晴らしいとかとは違う魅力を感じたのは確かである。

Posted byブクログ

2021/12/28

夏目漱石の小説と比較して読むと面白い。漱石の小説は親の遺産で生活する恵まれた都会の人々のどちらかと言えばひ弱な生活を描いているのに対し、「土」は土にまみれてたくましく生きる百姓の暮らしが描かれている。漱石は「土」を娘に読ませたい小説だと書いているが、上から目線のようで…。漱石の小...

夏目漱石の小説と比較して読むと面白い。漱石の小説は親の遺産で生活する恵まれた都会の人々のどちらかと言えばひ弱な生活を描いているのに対し、「土」は土にまみれてたくましく生きる百姓の暮らしが描かれている。漱石は「土」を娘に読ませたい小説だと書いているが、上から目線のようで…。漱石の小説は面白いが、何故か馴染めない理由がこの辺にあるのかも。(漱石の悪口ばかりでごめんなさい) とにかく、「土」は日本人なら一度は読んでおくべき小説だと思う。(これも上から目線か…)

Posted byブクログ

2021/11/26

50年前、中学校の現国の先生が授業中に薦めて下さった本でした。長編で尚且つ難読な方言のため、何度挫折してきたかわかりません。やっと読み終えました。多分、また何度か読みたくなるような気がします。

Posted byブクログ

2021/05/02

方言が読みにくくて困った。 明治の農民の暮らしがよくわかる。 みんなそれなりに、一生懸命生きている。

Posted byブクログ

2020/12/13

確かに漱石の言うように、長塚節しか書けない。もはや高度経済成長後には妥当しないが、曾祖母くらいの代には、日本の農村にこんな時代があったことは、記録され記憶されるべきである。読むのが辛く、構成もうまくない。写生についても、他の文豪には劣るだろう。だが、そのリアリズムと背景にある、あ...

確かに漱石の言うように、長塚節しか書けない。もはや高度経済成長後には妥当しないが、曾祖母くらいの代には、日本の農村にこんな時代があったことは、記録され記憶されるべきである。読むのが辛く、構成もうまくない。写生についても、他の文豪には劣るだろう。だが、そのリアリズムと背景にある、ある種の愛情は心を打つところがある。

Posted byブクログ

2020/02/26

明治時代、小作人である勘次は貧窮の状態の中、生きていた 貧乏ゆえに貪欲であり、狡猾になり、利己的で品性がない生き方をしてしまう というのが主題の小説 作者はその農民生活を凄絶なリアリズムの筆致で描き 四季折々、自然の描写が俳画的巧みで、普遍的名作というのは再確認したが そん...

明治時代、小作人である勘次は貧窮の状態の中、生きていた 貧乏ゆえに貪欲であり、狡猾になり、利己的で品性がない生き方をしてしまう というのが主題の小説 作者はその農民生活を凄絶なリアリズムの筆致で描き 四季折々、自然の描写が俳画的巧みで、普遍的名作というのは再確認したが そんなことより わたしが一昔前に感想をいうなら 豪農があって、小作制度というものがあって きっと「その社会の仕組みが悪い」との感想になったのかもしれない そんなのは短慮であると今では思う 実際、父の実家は庄屋だったので 戦後の農地改革で田畑をすっかり失い見る影もなくなり 父の兄は夜間高校のしがない教師で何とか生きたのであったが その村の田畑は郊外住宅地となり町になってしまった 土地の売り買いで農家がなくなってしまたのはどうよ 『土』に描かれている人間のどうしょうもない愚かさは 貧しいとか、豊かであるとかは関係ないのではないとしみじみ思わされた ひとより少しでも早くいい情報を入手したがり、それを隠す (それを知らないのは自己責任であると言う) 自分が少しでも得をするように画策するし、騙す (競争社会だもの当然であると言う) 自分より少しでもいい状態のひとを羨む、嫉む (そのいい状態は何か悪いことをしてなったのであると言う) ひとのしあわせは嬉しくない (ひとの不幸は蜜の味であると言う) 当時夏目漱石さんはこの小説を絶賛して ご自分の娘や息子たちが年頃になって 観劇だの音楽会だのに行きたがりだしたら そうしてそれに行くために着ていく着物だ洋服だ バックや靴などおしゃれなものを欲しがり はては美味しいものや贅沢な物に目を奪われだしたら この本を読ませたいとおっしゃった そう、昔はそれでよかった 今は現実がそのるつぼであるからしてその必要はない 利己的な生き方をしないと生きられない世の中 勘次を憐れんだり笑ったりしてはいられないんだ

Posted byブクログ

2019/07/17

鬼怒川のほとりの農村を舞台に、貧しい農民たちの暮し、四季の自然、村の風俗行事などを驚くべき綿密さで描写した農民文学の傑作。

Posted byブクログ

2018/12/13

明治。極貧農家一家の顛末の話。読みづらく、面白いかといわれるとそうではないが、揺さぶられるものがあり最後まで読んでしまった。あとがきに人の獣性を書いた作品とあったが、まさにその通りで。ただ、そういう意味では話が進むにつれ人間に近づいていった気はした。

Posted byブクログ

2018/07/16

勘次一家の小作農の貧しさと、自然の風物を、細かな描写で描いていきます。 明治の農民文学の名作です。 ストーリーは遅々として進みませんが、四季折々の自然もストーリーの一つです。 慣れない方言の意味がよく分からないところもありますが、重厚な文学作品です。 漱石にして、「作としての『土...

勘次一家の小作農の貧しさと、自然の風物を、細かな描写で描いていきます。 明治の農民文学の名作です。 ストーリーは遅々として進みませんが、四季折々の自然もストーリーの一つです。 慣れない方言の意味がよく分からないところもありますが、重厚な文学作品です。 漱石にして、「作としての『土』は、寧ろ苦しい読みものである。決して面白いから読めとは言い悪い。」と言わしめます。 しかし一方で、「余の娘が年頃になって、音楽会がどうだの、帝国座がどうだのと云い募る時分になったら、余は是非この『土』を読ましたいと思っている」と言わせる作品です。

Posted byブクログ