土 の商品レビュー
農民文学最高の作品といわれる本作。 「土」といタイトルが実に似つかわしい。 土にまみれ育ち、土の恩恵をうけ、そして土に縛られる貧しい農民の姿が描き出されている。 物語として、決して面白い作品ではない。話言葉は終始、鬼怒川地方の方言で語られてるために分かりづらいし、魅力的な人物が...
農民文学最高の作品といわれる本作。 「土」といタイトルが実に似つかわしい。 土にまみれ育ち、土の恩恵をうけ、そして土に縛られる貧しい農民の姿が描き出されている。 物語として、決して面白い作品ではない。話言葉は終始、鬼怒川地方の方言で語られてるために分かりづらいし、魅力的な人物が出てくるわけでもない。ただひたすらに、農民の一家の重苦しいほどに貧しい営みがつづられているだけである。 しかし、その生活を取り巻く自然の描写が見事だった。日本の美しき自然を描写した作品はいくつも読んだけれど、それは視覚的なものがほとんどで、せいぜい聴覚で感じた表現をする程度だった。 この作品の自然描写は、嗅覚や触覚までも感じ、人間の感覚すべてを働かせて文字にしたような表現がいくつも見られた。この時代の農民たちの自然=土との近さを、しみじみと感じた。 この作品を推挙した漱石は、面白いのではなく苦しいから、娘が年ごろになったら読ませようと思う、と書いている。 確かに、苦しさや重さを感じる作品だ。でも、「読ませよう」と漱石が感じた力のある作品であることは、間違いない、と私も思った。
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どうにも盗みがやめられない最悪の親父とか、なんとなーく親父との近親相姦を仄めかされた娘とか、暗くじめついた内容と人間関係。読んでると気が滅入ります。人間って哀しい生き物なのよ。
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漱石絶賛。 自然の厳しさ。 自然の美しさ。 自然の素朴さ。 これぞ、 リアルの、 農民文学。 土にのめり込んでいく……。
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藤沢周平の「白き瓶」という長塚節伝を読んだ後に読むと、わかりやすいかも。 非常に読みづらい小説だが、読み終えた後に夏目漱石の解説を読むと非常に得心がいく。
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学生時代に読み終えるのが結構大変だった記憶がある。ただ、タイトルと作者名は記憶しているので何か琴線に触れる点があったんだろうと思う。
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読みにくい本です。会話文は方言が激しいのであまり理解できません。風景描写がじっくりなされていることもあり、ストーリーがなかなか進みません。 ということで、この本の内容をどれだけ理解できているのか疑問はあります。ただ、生きるか死ぬかの生活を送る農民を題材とした日本の小説を今まで読ん...
読みにくい本です。会話文は方言が激しいのであまり理解できません。風景描写がじっくりなされていることもあり、ストーリーがなかなか進みません。 ということで、この本の内容をどれだけ理解できているのか疑問はあります。ただ、生きるか死ぬかの生活を送る農民を題材とした日本の小説を今まで読んだことが無いような気がしていて、そんな小説にめぐりあえたことに驚きです。
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漱石の依頼によって、「東京朝日新聞」に151回にわたって連載される。作者の郷里、鬼怒川あたりの農村が舞台で、客観的な事象を精密に写生することで、自然の背後にあるものを引き出している。内容は菩提心・宗教心が強く、日本の農民が土によって抱える問題を提示している。節が歌作で達成できなか...
漱石の依頼によって、「東京朝日新聞」に151回にわたって連載される。作者の郷里、鬼怒川あたりの農村が舞台で、客観的な事象を精密に写生することで、自然の背後にあるものを引き出している。内容は菩提心・宗教心が強く、日本の農民が土によって抱える問題を提示している。節が歌作で達成できなかった主観・客観の融合が達成された作品とされる。
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