雨のなまえ の商品レビュー
登場人物たちはみな必死にもがいている。家族って一体何だろう?ヒリヒリと今の自分に刺さってきて胸が痛い。
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*妻の妊娠中、逃げるように浮気をする男。パート先のアルバイト学生に焦がれる中年の主婦。不釣り合いな美しい女と結婚したサラリーマン。幼なじみの少女の死を引きずり続ける中学教師。まだ小さな息子とふたりで生きることを決めた女。満たされない思い。逃げ出したくなるような現実。殺伐としたこの日常を生きるすべての人に―。ヒリヒリするほど生々しい五人の物語* 静かな波紋がじわじわと広がり、いつまでも消えない・・そんな読後感。どの主人公も描写が細やかで、知らない内に共感を抱いてしまうので、短編なのに物語に入り込めてしまう。なのに、最後の最後で裏切られる。心地よい敗北感。一筋縄ではいかない物語を求める方に、是非。
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妻の妊娠中、逃げるように浮気をする男。 「雨の名前」 男が浮気をしたのは、目の前に機会があったから。そして彼女の倦怠に絡めとられてゆく。終わりがきたのは突然だった。妻の破水の連絡と同時に、彼女が薬物の過剰摂取で救急病院に搬送されたとの連絡が入ったのだった。 パート先のアルバイト学生に焦がれる中年の主婦 「記録的短時間大雨情報」 夫と息子と自分の生活の中に義母が入ってきた。義母は品があって美しく嫌いではなかったけれど、少しボケてきているのかもしれない。でも夫は義母の事も任せきりだ。パート先でアルバイトのイケメン学生とお昼を共にするのが楽しみだった。 ある日電話が鳴る。夫の子を身ごもったと言う女性からだった。でも夫と別れて生きて行く勇気も無い。 自分を慕っている様子を見せる学生のアパートを訪ねてみる気になったのは後悔したくなかったから。でもその結果は惨めだった。 不釣り合いな美しい女と結婚したサラリーマン 「雷放電」 誰もが憧れる美人の美津が、まさか俺に心を寄せてくれるとは思っていなかった。美津のためなら何でも出来る。何でもしよう。仕事の辛さ、対人関係の難しさにも耐えられる。 あの地震が起きて全て失ったけれど、美津は生き残った。辛さから逃げるように眠りに逃げ込む彼女だったが、美津さえいれば良かった。 仕事を終え自宅に戻る電車の中で、俺が経験したのは何だったのか。俺は妄想の中に生きていたのか。 幼なじみの少女の死を引きずり続ける中学教師 「ゆきひら」 妻は義父から虐待を受け、中学ではひどいいじめに遭い、だから結婚したら自分の事を誰も知らない場所で暮らしたいと言った。なので東京から離れた場所で教員採用試験を受け教師となった。自分のクラスはいじめがあった。幼なじみの少女がいじめに苦しんでいたのを助けてやれなかった後悔が、いじめの対象となっている少女に気持ちをかけさせるのかもしれない。 学校の集団登山の時にそれは起こった。グループリーダーの言葉に少女は集団から離れ山の中へ駈け入る。自分はそれを追った。山中で助けを待つ間に心が通ったと思ったのだが、助けがきた時に少女が言ったのは・・・ まだ小さな息子とふたりで生きることを決めた女 「あたたかい雨の降水過程」 子供が生まれて、夫といるのが息苦しく感じられるようになった。自分のわがままだと思ったけれど、どうしようもなかった。夫とは別居して、いま一人で息子を育てている。学校や学童保育のお母さんたちは苦手だ。けれど息子に母の気持ちは伝わらない。 地震が起きた時、真っ先に考えたのは息子のことだった。息子を迎えに行かなければ。ようやくの思いで息子の元へ辿り着いた時、息子はおかあさ~んと叫びながら胸に飛び込んできた。
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教育現場の描写がとてもリアル。イジメのシーンは気持ち悪くなるほど。 塾に通う子を、さりげなく批判的に書いてある点がいい。 母親同士の関わり方の煩わしさも、かなりリアルに描き込まれている。 老若男女、幅広い層の人物描写が見事だ。
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http://tacbook.hatenablog.com/entry/2015/07/25/235952
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2015/07/29 読了。 ついてなさすぎる、、、と落ち込む読後感。 「気録的短時間大雨情報」のおばはんは20年後の私になりうる怖さがある。 ラストに出てくる、どこの園でも学校でも見かけるみすぼらしいヤンママさんが少し素敵に感じた。
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短編一つ一つに人間臭さがあって今はまっている作者の一人。途中まで救いがあると思わせておいてどん底までたたきおとすえげつなさがすごい。
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どの話しも暗い。救いがない。 唯一最後のシングルマザーは変われる可能性がある終わり方だった。 あとは悪い方向にしかいかないかな。 「雷放電」は結局妄想だったの?
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「雨のなまえ」 悠太郎は小さい頃、母親の仕事や付き合う男が変わる度に 引っ越しをしていた。古ぼけたアパート、誰かの家の二階の一室 雑居ビルの屋上に建てられたプレハブ小屋、それが今は とびきり高級な低層マンションが今の住処、妻のちさとの お腹には悠太郎の子供がいる。そんな温かな家庭...
「雨のなまえ」 悠太郎は小さい頃、母親の仕事や付き合う男が変わる度に 引っ越しをしていた。古ぼけたアパート、誰かの家の二階の一室 雑居ビルの屋上に建てられたプレハブ小屋、それが今は とびきり高級な低層マンションが今の住処、妻のちさとの お腹には悠太郎の子供がいる。そんな温かな家庭があるのに 彼が深呼吸できるのは浮気相手のマリモのところ。 二人の女性に対して、中途半端な態度で相手と深く関われない 悠太郎にちょっとイライラ。 「記録的短時間大雨情報」 夫と息子、同じ家に暮らしているのに二人に対する気持ちは 冷めていてパート先の新人アルバイト柏木くんにほのかな思いを 抱く主婦のたみこ、突然一緒に暮し始めた義母の遠い 昔の切ない恋話を聞き、この先、死んだように生きていくなら 後悔の数は少ない方がいいのではないかと行動を起こしますが その起こした行動の事を後悔しないのかと心配になりました。 「雷放電」 大学一の美人、美津とぱっとしない男の出会いから 結婚生活が語られますが、男が語る美津との思い出話は 想像もしていなかった方へ向い唖然としてしまいました。 「ひきひら」 幼馴染のユキがイジメで自殺し、何もできなかったことを 後悔したまま、中学の教師になった臼井。自分の受持ちクラスに ユキに似た永坂みるくが転校してくる。彼女はクラスに溶け込めず 何かと気にしていたが、ある日の集団登山でみるくと 遭難してしまい、臼井が眠りから覚めた時、みるくは救助隊に 驚くべき言葉を発します。 「あたたかい雨の降水過程」 子供が生まれて3年たった頃、夫と暮らす事に息苦しくて たまらなくなり、一時的に別居する事になった。 家族が欲しくて、結婚をし、子供を産んで自分が望んだ事なのに ちっとも幸せじゃない。ひどいわがままだとも分かっている でもわが子とは暮らせても夫とは暮らせない 子供と二人で暮らし始めて子育ての不安、子供を取り巻く 新しい人間関係に馴染めず、親切にされているのに 追い詰められているような気がしてしまう ダメな自分とわがままな自分。共感できるところと 分からない所もあったけど、もっと力を抜いて甘えていいんだね 最後は笑い泣きで良かった。 切ない話、後味の悪い話、鬱々としてしまう話と 好みが分かれそうです。雨のなまえと素敵なタイトルとは 対照的な内容に、もやもや感は残りますが これが現実なのかも。
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