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ひとりの体で(下) の商品レビュー

3.9

15件のお客様レビュー

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2022/02/17

バイ・セクシャルである主人公ビルはゲイからもストレートからも異質と見なされてきた。そんな中で、周囲の人からの愛、時には(それがほとんどだったかもしれないが)分かり会えない人からの言葉を浴びながらも生きていくビルの強さを感じた。 この作品を通して、自分を表現できない。そしてそれが故...

バイ・セクシャルである主人公ビルはゲイからもストレートからも異質と見なされてきた。そんな中で、周囲の人からの愛、時には(それがほとんどだったかもしれないが)分かり会えない人からの言葉を浴びながらも生きていくビルの強さを感じた。 この作品を通して、自分を表現できない。そしてそれが故に理解されない社会がいかに生きづらく辛いものか痛いほど心に刺さった。 性の感じ方が違えど愛し愛される資格は誰にでもある。自身も、他人の性をカテゴライズして悦に浸るような人間にだけはならないようにしよう。 誰もが奔放に生きられる社会になればいいな。

Posted byブクログ

2016/11/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1960年代のアメリカ。 ゲイもバイセクシャルも忌むべき存在として、異常人格として扱われていた。 主人公は比較的恵まれていたと思う。 女装癖のある祖父。偏見を持たずに接してくれる義父。こだわりなくなんでも話せる幼なじみの少女。 ビルは美貌の図書館司書ミス・フロストに恋をし、レスリング部のエース・キトリッジに惹かれる。 それを受け入れられない母との確執。 悩みながらも自分の気持ちを誤魔化さずに受け入れるビル。 なかなかアメリカ的であり、かつハードな青春小説だった前半からうって変わって、エイズの蔓延により知人がどんどん亡くなっていく後半の、なんとも言えない喪失感が息苦しい。 知人が死んでいくこと。 自分も死ぬかもしれないこと。 最初は遠巻きに、傍観者のようにエイズ患者と接していたビルも、学生時代の友人の死を前にした姿を見、目を逸らすことができなくなる。 少年だった頃、さまざまな偏見から彼を守ってくれたミス・フロスト。 自分は誰かを守ったことがあるだろうか。 ミス・フロストに恥ずかしくない人生を送ったと言えるだろうか。 有名作家であるビルは60歳を過ぎて、母校の教師となる。 後輩である子どもたちを守り支えるために。 ミス・フロストもキトリッジも、会えなくなってからもずっと心の中に生き続けて…その割に最後があっさり過ぎて肩すかしだったけど、人生ってそんなものか。 父親との関係も、小説だからいくらでも濃密にやり直せると思うんだけど、そうならないところがアーヴィングなんだろうか。 あっさり過ぎて、逆に後を引く読後感。 “ねえ君、僕にレッテルを貼らないでくれないか。僕のことを知りもしないうちから分類しないでくれ!”

Posted byブクログ

2014/10/19

後半にいきなり、ジーという綺麗なジュリエットが出てきてなんだろうって思ったら、この作品はゲイを告白した息子のために書いた作品だそう。 実のお父さんとの再会やミス・フロストとの永遠の別れが唐突で感動する間もなく物語がどんどん進んで行った。さすが!アーヴィング‼ 次作もあると、解...

後半にいきなり、ジーという綺麗なジュリエットが出てきてなんだろうって思ったら、この作品はゲイを告白した息子のために書いた作品だそう。 実のお父さんとの再会やミス・フロストとの永遠の別れが唐突で感動する間もなく物語がどんどん進んで行った。さすが!アーヴィング‼ 次作もあると、解説に書いていたので楽しみ!

Posted byブクログ

2014/09/30

自分は何者なのか、悟り始めたビリー。作家となり、ニューヨークで暮らすようになるが、友人や元恋人たちにエイズ禍が…。大切な人々を病や事故、自殺などで次々と失い、自身も老いを迎えヴァーモントへ戻るビリー。継父の教え子と出会い、その保護者的役割を引き受けたり、セクシャルマイノリティの若...

自分は何者なのか、悟り始めたビリー。作家となり、ニューヨークで暮らすようになるが、友人や元恋人たちにエイズ禍が…。大切な人々を病や事故、自殺などで次々と失い、自身も老いを迎えヴァーモントへ戻るビリー。継父の教え子と出会い、その保護者的役割を引き受けたり、セクシャルマイノリティの若者たちのため、政治的活動にも参加するようになる…。若き日には自己のアイデンティティを確立しようと、自分のことばかりにかまけてきた彼は60代になり初めて他者や社会としっかり向き合うようになった。 作家の生涯を自伝形式で赤裸々に描き、性的志向をまず分類化しようとする大衆からの好奇の目や差別、マイノリティであるがゆえの葛藤などを綴った本作はアーヴィングにとって「政治的な」作品となった。 この作品を発表した後、彼の息子が同性愛をカミングアウトしたそう。けして彼のために描かれた訳ではないそうだが、こういった作品がLGBTの人々に寄り添ったものであることを感じる。

Posted byブクログ

2014/08/17

性と個人のあり方を詳細に書き込んでいるところがいいです。LGBT、HIV、若き日のことと過去の邂逅。すべて鮮やかです。一般受けはしないですが、素晴らしい作品です。

Posted byブクログ

2014/06/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

バイセクシャルの老作家の回顧形式の小説。 舞台はバーモンド州の片田舎で、物語の2/3は高校卒業までで、主人公の性愛が目覚めるまでをじっくり描いて、自分もその時代は同性にも友情だけでなく恋愛感情が混じっていたかもと思ってしまいました。 後半は、エイズによる死をはじめとし、次々と登場人物やその周りの人たちが亡くなっていきます。 たしかにエピローグ的な勢いで、自然的原因ではない死の連続です。 回顧小説ゆえにか時間軸があちこち飛び交うだけでなく、後半は主人公以外の登場人物が幽霊を見たりして現実空間からも少しずれたりしますが、その異常な性や生がそこにあると感じさせる圧倒的な筆力はさすがです。 アイテムも北米田舎町、図書館、小説家、寄宿学校、レスリング、演劇、逃げた父親などのおなじみのものも含めてうまく使われています。 LGBTは自分個人としては生理的に受け入れられないのですが、この小説を読むと寛容になるべきと思わされます。 寛容的と思われる米国でもこのような歴史やいまだ残る偏見があるのに対し、日本はさらに非寛容すぎる気もします。 ただ、人類的に見て、その寛容性は正しい方向なのかということも考えさせられます。 久しぶりにすごい小説に出会いました。

Posted byブクログ

2014/04/29

バイセクシャルであるビリーの回想録は時間も場所もあっちこっちいくのでちょっと混乱した。マジョリティの中でマイノリティがいることさえ黙殺されていた時代から現代の中で忘れていたAIDSの恐怖が生々しかった。彼が投げつけられ言われてきた多くの言葉たちと彼が培った姿勢「僕たちは、すでにこ...

バイセクシャルであるビリーの回想録は時間も場所もあっちこっちいくのでちょっと混乱した。マジョリティの中でマイノリティがいることさえ黙殺されていた時代から現代の中で忘れていたAIDSの恐怖が生々しかった。彼が投げつけられ言われてきた多くの言葉たちと彼が培った姿勢「僕たちは、すでにこういう僕たちなんだ、違うかな?」「ねぇ君、僕にレッテルを貼らないでくれないか――僕のことを知りもしないうちから分類しないでくれ!」が心に残った。

Posted byブクログ

2014/04/17

最近のアーヴィングの小説には読んでいて思わずはっとして、目がページから離せなくなってしまうような瞬間というものがなかったけれど、この本にはある。最後のアンチクライマックス的な、しかし静かに物語を閉じていく最後も心に残る。

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2014/03/17

悩みに悩み様々な人と知り合い、自分のセクシャリティを確立したビリーはやがて小説家になる。当時AIDSは未知の病で為す術もなくかつての恋人達や知り合いが亡くなっていく。アーヴィングは、死を描くのも性を描くのと等しく丁寧に綴っていく。上巻であまり印象が良くない登場人物にも、それぞれに...

悩みに悩み様々な人と知り合い、自分のセクシャリティを確立したビリーはやがて小説家になる。当時AIDSは未知の病で為す術もなくかつての恋人達や知り合いが亡くなっていく。アーヴィングは、死を描くのも性を描くのと等しく丁寧に綴っていく。上巻であまり印象が良くない登場人物にも、それぞれに幕引きがあるのがとても良かった。ビリーが教えられ与えられ得た事は、作中の若者達や私達に瑞々しく力強く伝わった。

Posted byブクログ

2014/02/26

やむなく途中で2か月程中断していたが、それだけ空いても内容を覚えていられるのはアーヴィングだけ。しかし今回の小説のテーマはゲイで、さらに全編を通じてシェイクスピアが絡んでくる。シェイクスピア劇の登場人物を知らなければ、完全には理解できない。何より、自分がシェイクスピアにも芝居にも...

やむなく途中で2か月程中断していたが、それだけ空いても内容を覚えていられるのはアーヴィングだけ。しかし今回の小説のテーマはゲイで、さらに全編を通じてシェイクスピアが絡んでくる。シェイクスピア劇の登場人物を知らなければ、完全には理解できない。何より、自分がシェイクスピアにも芝居にもゲイにも全く興味がないので、読み進めるのに苦労した。面白くないわけではないのだが、興味がない事柄が重なってしまって引き込まれる部分がなく、個人的には退屈に思えてしまった。

Posted byブクログ