夢のなかの夢 の商品レビュー
総勢20人の人物の“夢”の断章集という形をとる。著者のアントニオ・タブッキは序文「覚え書」で否定しようとしているけれども、これは“夢”を描く体による“人物批評”と思う。20人のうち、私の知っている人物の断章は、その人物の功績・作品に関連した幻想譚であった(私の知らない人物の断章も...
総勢20人の人物の“夢”の断章集という形をとる。著者のアントニオ・タブッキは序文「覚え書」で否定しようとしているけれども、これは“夢”を描く体による“人物批評”と思う。20人のうち、私の知っている人物の断章は、その人物の功績・作品に関連した幻想譚であった(私の知らない人物の断章も、たぶん同様なのだろう)。この人物はこんな事をした人だから、こんな夢の話を…といった具合に、人物とその“夢”とがキッチリ繋がっていて、私の時折見る「夢」の特徴―突拍子のなさ―を感じない。また、最後に置かれたのが「他人の夢の解釈者、ジークムント・フロイトの夢」であって、これが最も批評性が強いように感じる点も、この感想を強くする。
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タブッキ好みの作家や詩人や革命家(なぜかみな男性)が見たかもしれない夢が20篇。 何年何月何日、彼はこういう夢を見ました。夢を見たことは事実として提示されている。有無を言わせないところがいい。多くは、夢を見たあとに、過去の自分を悔いたり(でももう手遅れ)、直近の未来に決定的な出来...
タブッキ好みの作家や詩人や革命家(なぜかみな男性)が見たかもしれない夢が20篇。 何年何月何日、彼はこういう夢を見ました。夢を見たことは事実として提示されている。有無を言わせないところがいい。多くは、夢を見たあとに、過去の自分を悔いたり(でももう手遅れ)、直近の未来に決定的な出来事が待ち構えていたりする。 ランボーは、切断された自分の片脚を抱えながら、セクシュアルな体験をする。アンジョリエーリは、シエナの大聖堂で猫になっている自分を発見し、スティーヴンソンは、気がつくと天翔ける帆船に乗っている。ロートレックは、女性たちに囲まれて、背が瞬間的に伸びるのを経験する(確かに、彼に見せてあげたいような夢だ)。……そして最後の最後は夢判断の、あのフロイト。まさか彼がドーラになるとは。 どの夢も、なぜかとてもリアルに感じられる。そのリアルさに、驚きを通り越して感動すら覚える。
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タブッキの愛する芸術家たちの想像する夢を綴った20の夢の物語。ヴィヨン、ランボー、チューホフ、ドビュッシー、ペソアなどそれぞれの幻想的で耽美で甘美な夢世界が美しく、豊かな想像に触れてこちらの感性もまたきらめく。静謐な漂い。(2024年2月4日読了)
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久々のタブッキ。須賀敦子さんでない方の訳で読むのは初めてです。タブッキが愛娘からもらった手帖に、過去の巨匠が見たかもしれない夢を綴った連作短編集。 とても幻想的で夢らしい内容で、それぞれが短いけれど余韻がとても長引くお話でした。 全20篇のうちでは、やはり冒頭のダイダロスの夢が一...
久々のタブッキ。須賀敦子さんでない方の訳で読むのは初めてです。タブッキが愛娘からもらった手帖に、過去の巨匠が見たかもしれない夢を綴った連作短編集。 とても幻想的で夢らしい内容で、それぞれが短いけれど余韻がとても長引くお話でした。 全20篇のうちでは、やはり冒頭のダイダロスの夢が一番素敵でしたね。 訳者解説に、各章の夢の主が生前著した作品に、この夢(物語)を対比させて読むのでない限り、これはただの瀟洒な夢物語としか映らないだろう、というようなことが書いてありましたが、私はほとんどの章を、瀟洒な夢物語として読み、楽しみました。 カラバッジョ、ゴヤ、ランボーは多少なりとも作品を知ってたので、少しは対比したところもありましたが… 巨匠たちの作品を知って読むも良し、知らずに美しい夢の話として読むも良し、どちらにしても素晴らしいものだと思います!
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各人物への著者による解説が、著者がその人物をどう思っているかを端的に表していて面白い。経歴からの後付け感があるせいか夢本来の荒唐無稽さはさほど感じない。他のタブッキ作品を読んで戻って来たら、もっと深く考えられるかもしれない。
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現代イタリアの作家タブッキ(1943ー2012)が、歴史上の芸術家がかつて見ていたかもしれない夢を想像し作品化した連作短編集、1992年。 □ 夢にまつわる著述家というと、真っ先に思い浮かぶのは『夢判断』のフロイトと『夢の本』のボルヘスの二人。しかし、この二人では夢に関心を向...
現代イタリアの作家タブッキ(1943ー2012)が、歴史上の芸術家がかつて見ていたかもしれない夢を想像し作品化した連作短編集、1992年。 □ 夢にまつわる著述家というと、真っ先に思い浮かぶのは『夢判断』のフロイトと『夢の本』のボルヘスの二人。しかし、この二人では夢に関心を向ける動機、夢から先への進み方が全く異なっているように感じられる。 フロイトは、夢を性的なものと結びつけて解釈しようとする、夢を足掛かりにして人間の内部に向かって沈潜していこうとする。夢というもののなかに、夢見る当人の存在が高密度の一点として凝縮されてしまっている感がある。 それに対してボルヘスは、夢を人間の外部へと通じる秘密の抜け穴のようなものとして捉えているのではないかと思われる。人間の外部にある《永遠客体》へと通じていく回路として。それは、ボルヘスの文章を読んでいて感じる、人間のスケールを超えて時間的にも空間的にも遠くに高まっていく「高度の感覚」、その「高度」において人間が自己という一個性を消失して中空に発散していってしまうような感覚、に通じるのではないかと思う。 ではタブッキの本書。率直に言って、読んでいて想像の広がりが惹き起こされることはあまりなかった。「歴史上の芸術家がかつて見ていたかもしれない夢」の作品化という試みからして、夢へのボルヘス的なアプローチを期待して読んでしまったのだが、読後感はあの「高度の感覚」「消失と発散の感覚」とは異なるものだった。「夢」の内容が巻末「この書物の中で夢みる人びと」の略歴をなぞるようなものであったこと、いくつかの「夢」に露骨な性的描写が含まれていたこと、がその理由かもしれない。その意味では期待外れであったし、期待を裏切る面白さというのも感じることができなかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
著名な文化人が見た夢を空想膨らませて描いたショートショート集。ただし楽しむにはそれなりに知識が必要。個人的にはカラヴァッジョ、ゴヤ、ドビュッシー、チェーホフ、ロートレックあたりが面白かった。特にカラヴァッジョ「マタイの召命」に引っ掛けた夢の話はいかにもで秀逸に思った。
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有名な芸術家、著述家たちの夢を創り出し物語にした作品集。それぞれの人となりを現すように創作された夢の話は、想像の世界ではあっても、ビビッドに描写されていて、とても楽しめる作品になっている。久々に良い作品に出合いました。
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カバー絵のシャヴァンヌからしてステキだし、中身も、一篇ずつは短いながら、それぞれに鋭い、あるいはフワフワした味わいがある。むしろ、一篇はこれくらいの短さがちょうど良いのだろう。他人の夢の話など、長々と聞かされたら退屈でたまらない。寝る前にちょっと読むとよいのかも。
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タブッキ初心者にオススメ。と同時に、訳者の和田さんが言うように、これはタブッキによる物書きの批評だから、ベテラン読者にもオススメ。シャヴァンヌの表紙も相まって優しく、淡い。ちなみに和田さんがあとがきで「『精神分析入門』は精巧な小説としても読める」とあったのが気になって、いまさらフ...
タブッキ初心者にオススメ。と同時に、訳者の和田さんが言うように、これはタブッキによる物書きの批評だから、ベテラン読者にもオススメ。シャヴァンヌの表紙も相まって優しく、淡い。ちなみに和田さんがあとがきで「『精神分析入門』は精巧な小説としても読める」とあったのが気になって、いまさらフロイトに手を出してみた。
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