竜が最後に帰る場所 の商品レビュー
『風を放つ』 『迷走のオルネラ』 『夜行の冬』 『鸚鵡幻想曲』 『ゴロンド』 の5編からなる短編集 『風を放つ』では、あるあると共感できる人間味や日常のなかにちょっとだけ出てくる不思議な存在の表現がうまいと思いました。上手に余韻を残す終わり方がおおい恒川さんですが、この作品の終...
『風を放つ』 『迷走のオルネラ』 『夜行の冬』 『鸚鵡幻想曲』 『ゴロンド』 の5編からなる短編集 『風を放つ』では、あるあると共感できる人間味や日常のなかにちょっとだけ出てくる不思議な存在の表現がうまいと思いました。上手に余韻を残す終わり方がおおい恒川さんですが、この作品の終わり方には少しインパクトが少なすぎると感じる方も多いかも。 『迷走のオルネラ』は恒川さんらしからぬミステリチックな作品で、他作では『蛸漁師(南の子供が夜行く所)』に近い感じだと思います。主人公の行いを善とするか悪とするか…ゾクゾクさせられる作品。ぜひ作中の漫画を読んでみたい…。 『夜行の冬』はパラレルワールドの出現するSF的な物語なのですが、近代的な機械などが出てくる訳ではなく、恒川さんらしい『風の古道(夜市)』のような幻想的な雰囲気、ダークファンタジー的な要素がある作品で、今までにない作品だったと思います。 『鸚鵡幻想曲』は上の3つの作品に比べ、イメージ的に明るくなってきます。開放する者によって、人間を止めなければならなくなった主人公が、鸚鵡として生きる。人間の主人公が一転鸚鵡になって物語が進んでいくスタイル、終わり方まで、素晴らしい作品だと思います。 『ゴロンド』は人間ではない、伝説の生物のお話。物語に目的らしいものはなく、成長してゆく様子や自然界の生死をリアルに表現してあって、もしかして本当にいるのではないかと思わせてくれる様な素敵な作品。 少しづつ人間から離れた話になり、少しづつ明るい話になっています。作者の意図を思案しながら余韻に浸れる良い作品でした。
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五編入った幻想短編集。今回は特に奇想が目立ち、バリエーション豊かな作品集になっている。 「風を放つ」 どう解釈してよいのか戸惑う話ではある。現実から踏み出さずにすんだ物語。妙な余韻を残す作品。 「迷走のオルネラ」 力と正義を問いかける強いテーマ性のある物語。インパクトあります...
五編入った幻想短編集。今回は特に奇想が目立ち、バリエーション豊かな作品集になっている。 「風を放つ」 どう解釈してよいのか戸惑う話ではある。現実から踏み出さずにすんだ物語。妙な余韻を残す作品。 「迷走のオルネラ」 力と正義を問いかける強いテーマ性のある物語。インパクトありますね。復讐譚で、ダークヒーローの物語でもある。こんな作品も書くんだなぁ。主人公の恋人となるコジマアヤカが、主人公と全く異なる考えを持っていて主人公に与える影響も含めて魅力的。恒川作品ではこういう普通の人として魅力的なキャラクターは珍しいんでないかな。 「夜行の冬」 見てはいけない夜行様に着いていくとその先には。平行世界を扱ったSFホラー。現象と、新しい世界に惹かれていってしまう主人公たちの姿に怖さともの悲しさを感じた。これ好きです。 「鸚鵡幻想曲」 偽装集合体とそれを解体できる男という面白い設定で、前半だけでもショートショートとして完成しているのですが、後半が予想つかない幻想的な物語でこれまた面白い。読後感も非常によくお気に入りの作品。 「竜が最後に帰る場所」 謎の生物の主観で、誕生からのサバイバルをドキュメンタリー風味に描くおとぎ話。読んでるだけで楽しい系の作品ですね。
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いやぁ~、ひさびさの恒川さんだったけど やっぱこの人の作品にハズレなし。 文章が上手いから淀みなくスラスラ読めるし、 情景描写もしっかりしてるから 読むと必ず絵が浮かび上がるし、 よくある設定であっても 必ず予想の斜め上をゆく展開を用意して オリジナリティを毎回感じさせてくれる...
いやぁ~、ひさびさの恒川さんだったけど やっぱこの人の作品にハズレなし。 文章が上手いから淀みなくスラスラ読めるし、 情景描写もしっかりしてるから 読むと必ず絵が浮かび上がるし、 よくある設定であっても 必ず予想の斜め上をゆく展開を用意して オリジナリティを毎回感じさせてくれるし、 なんで世間一般でイマイチこの人がブレイクしないのか ちょっと不思議なくらい(笑) 過小評価な作家の一人だと思う(‥;) (同じテイストの作家で言えば、朱川湊人さんもそう) 本作はデビューから ホラー、伝奇もの、ファンタジー、SF、妖怪ものなど 「不思議」でちょっとコワい世界を描いてきた恒川さん自らが 「もっとも自分らしい物語の揃った特別な自信作」と言い切るのも頷ける出来映えです。 真偽のほどは分からない、 恨んだ相手を殺すことのできる「精霊を封じ込めた小瓶」の話に幻惑される男を描いた 『風を放つ』、 母の恋人による壮絶なDVによって幼少期の心に深い傷を負った「私」の壮大な復讐劇がコワい! 「アンブレイカブル」やバットマンの「ダークナイト」、 「オールド・ボーイ」「コピーキャット」「メメント」など 様々な映画を下敷きにし、 正義とは何かを読む者に問う構成もお見事! 『迷走のオルネラ』、 現(うつつ)と幻の境をさ迷う 夜行(やぎょう)の一団。 好奇心から参加してしまった男の苦悩を描き、 背後の闇の中で脱落者を待ち受ける異形の群れの描写に震えた! 『夜行の冬』、 この世界に存在する様々なモノに化けた「擬装集合体」なるもの。 この「擬装集合体」を見破って「拡散」させ、 本来の姿を露わにする特殊な力を持った男。 この独創的で素晴らしい設定だけで軽くご飯三杯は食べれるくらいだけど(笑)、 さらに驚愕のストーリー展開が待ち受ける 『鸚鵡(おうむ)幻想曲』、 ある想像上の生き物の誕生から旅立ちまでを描いた幻想小説。 生きることを謳歌し生まれた意味を知り、「キュハリラ」と鳴く美しいキュワワに恋するゴロンドの純粋さに涙… 『ゴロンド』、 など現実社会、異世界、人間のいない世界と全五編に様々な舞台を用意し、 惚れ惚れするほど完成度の高い珠玉の短編集となっております。 特に印象的だったのは 『迷走のオルネラ』の 「君はどう思う?」が口癖で 本を愛す議論好きなコジマアヤカの魅力的なキャラ設定! そして真剣に読んでみたくなるほど架空の漫画「月猫」の世界観が いい。 あとは恒川さんの本領発揮と言える『夜行の冬』のパラレルワールドの怖さとラストの後味の悪さ(笑)、 異世界へジャンプするために夜行するという設定の秀逸さ。 そしてラストを飾る『ゴロンド』はゴロンドが可愛すぎて悶絶したし(笑)、 個人的にもっとも好きな一編でした。 タモリの「世にも奇妙な物語」や 異世界ファンタジーが好きな人、 パラレルワールドの存在を信じてる人、 (僕はもちろん信じてます!笑) UMAや心霊番組をついつい観ちゃう人、 面白い短編集を探してる人にオススメしまーす。
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5作の作品が収録されている。最初は現実的なストリーで、後半に進むにつれて、非現実的な話になっていく。ストーリーのおちより、ストーリーの切り口勝負な作品が多い。例えば、4作目の鸚鵡幻想曲は、べつのなにかが寄り集まって何かに化けている擬装集合体という話、5作目は龍が生まれてから厳しい...
5作の作品が収録されている。最初は現実的なストリーで、後半に進むにつれて、非現実的な話になっていく。ストーリーのおちより、ストーリーの切り口勝負な作品が多い。例えば、4作目の鸚鵡幻想曲は、べつのなにかが寄り集まって何かに化けている擬装集合体という話、5作目は龍が生まれてから厳しい自然界を生き抜いていく話で、もはやファンタジーに近い作風であった。個人的には、怖い日本昔話のような印象を受ける「夜行の冬」(3作目)と、前述した「鸚鵡幻想曲」(4作目)がお気に入り。作品ごとに触れ方は異なるが、いろいろな角度から”死”について触れられている点も、特徴的であった。
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短編集。この中ではゴロンドがとても好き。生物が成長するということ、そのことを描くというのはなんとすごい視点
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初めて読む作家さん。SF?ホラー??ファンタジー??? 「風を放つ」 モヤモヤともするし、すっきりともするし、不思議な読後感。 「迷走のオルネラ」 プロローグにすっかり騙されてしまった! 作中作「月猫」とコジマアヤノが魅力的。 彼らの進む先にあるものが希望なのかもわからない。...
初めて読む作家さん。SF?ホラー??ファンタジー??? 「風を放つ」 モヤモヤともするし、すっきりともするし、不思議な読後感。 「迷走のオルネラ」 プロローグにすっかり騙されてしまった! 作中作「月猫」とコジマアヤノが魅力的。 彼らの進む先にあるものが希望なのかもわからない。 「夜行の冬」 ホラーのようで時折ぞっとしてしまう。 この世界の生活以外のものがあったら、確かに一つの人生で満足は出来なくなってしまうだろうなあ。 ぞくぞくした。 「鸚鵡幻想曲」 終わりの読めなさが楽しめた。 (宏が鸚鵡に「解放」させられたところで物語が終わるかと思った) アサノはこれからも「疑似集合体」を開放し続けるのだろうか? 「私」はこれからどのような人生を歩むのだろうか? 物語の「その後」も気になってしまう。 「ゴロンド」 義理とか人情に影響されない生き物の生き方は、私から見ると非常にも思えるけれど、すっきりとしていて爽快かもしれない。
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恒川さんの世界。ゴロンドのお話がなんだか意味深でよかった。夜行の冬、一体脱落者はどこに行っちゃうんだろう。不思議でどきどきした。鸚鵡幻想曲が一番不思議で面白かった。迷走のオルネラは、まじめに考えると恐ろしい話だよね・・・。
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これはよかった。 全編よかった。 まさに珠玉の短編集。 第1206回 てるぞう賞(短編部門)受賞。
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タイトル買いしました。 ミステリアスなファンタジー。 甘くてふわっとしたファンタジーでなく、ドキドキはするけれども深く考えてしまうものも。 モチーフに取り上げられているキーが個人的に好みでした。 謎めいた小瓶、雪の道行、鸚鵡、竜。
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