海賊女王(下) の商品レビュー
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読み始めたらひきこまれるおもしろさ。 16世紀アイルランドの女海賊グローニャの生き様を従者アランの目線で追った物語。 上巻では若き彼女の瑞々しくも勇ましい様子が描かれ、 下巻ではイングランドとゲールとの戦禍が拡がる渦中の人々の様子が描かれる。 静かな結末が印象的。 下巻で明かされる“謎”がそれまでどこか自分の人生は二の次だったアランに絡んでくるあたりは、唸る。
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●エリザベス1世が英国を統治する時代。アイルランドでおのれの氏族を守るべく海で陸で闘うグラニュエルを、少年の頃彼女の従者となったアランの視点から主として描く物語。 皆川博子作品ですが耽美度は低め。 ロンドンで暗躍するロバート・セシルの趣味の地下活動描写くらいですかねえ? ●グラニュエル=グローニャは美人で賢くてセクシーで、好きな男とも好きじゃない男ともひょいひょい寝ちゃう現実的な策略家ですが、いざ戦闘となると先頭に立って切り込みたがる猪突猛進タイプなおかしらで、毎回周囲のアランやオシーンに止められる可愛いヒロイン。どうしようビジュアルイメージがアンジーになってまう。新規のええ女優さん求む。 概ね青年まんがの原作でもいいくらいの活劇ぶりではあるものの、グラニュエルが老境(と言っていいでしょう)に至るまで続くので、適宜盛り上がったあたりで終わらないと連載はむずかしいでしょうな。 わたくしの上からご意見では、トイリーがアランの下を離れる理由&その後のエピソードとか、オーランド・バードがセシルの従者になる経緯やなんやかやを膨らませつつやったらよろしいんじゃないかと。うむ。 ●皆川博子の新作が出るたびに執筆年齢をチェックするのは悪いクセだがやらずにはいられないで賞。 本作は2009年~2013年連載ですから御年79~83歳の頃の作品ですね。 上下巻約1000Pの質量にも敬服するが、作品も登場人物造形も枯れた老大家の筆致ではなくいまだにみずみずしいのが青年に似た味わいで感銘しきり。すごいや! まだいい作品が読めそうです。たのしみだなあ♪
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苦手な歴史活劇。でもこれは、残酷で、端正で、唯一無二の皆川ワールドなのだった。ページの中で、本当に時間が流れている。参りました。
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どっしりしたフルコースをいただいた気分。面白かったけど、気合い入れて読まなきゃ物語に置いていかれちゃう…。堪能しました。(・v・)ノ
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後半は部族間の争いからイングランドとの争いに比重が移っていく。前半以上に権謀術数が蠢く先が読めない状況。グラニュエルもときには女の武器を使いつつ、その中で生き残りを計る。 皆川さんの作品はミステリー系、耽美系、ホラー系、歴史系など多岐にわたるが、本書は『総統の子ら』、『聖餐城』...
後半は部族間の争いからイングランドとの争いに比重が移っていく。前半以上に権謀術数が蠢く先が読めない状況。グラニュエルもときには女の武器を使いつつ、その中で生き残りを計る。 皆川さんの作品はミステリー系、耽美系、ホラー系、歴史系など多岐にわたるが、本書は『総統の子ら』、『聖餐城』などに並ぶ歴史系の作品。 話の展開、主人公の魅力、脇役たちの面白さといった点で、歴史系の中でも魅力的な作品になった。皆川さんの最高傑作といってもいいかもしれない。
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久しぶりに時間をかけて長編を堪能できて満足。 下巻を読みながら、上巻に戻ったり、地図を眺めたり、人物を確認したり・・・(この際人物関係など うまくつながり過ぎだとしても気にしない、楽しむ) 死刑や、戦争での殺し方の残酷さは半端ではないが、読後感はかなりよかった。
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グローニャは勿論のこと、アランの生き様に感動しました。 殺戮に満ちた生涯を送りながら、どこかおっとりとして、純粋で深い愛情を失わないでいられる強さが素晴らしい。 惚れる。
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グローニャ、アラン・ロイ、オシーン、エリザベス女王・・・。 上下巻とも500ページを超え、巻頭の登場人物一覧に70人以上が載っている大作。 「開かせていただき光栄です」で虜になり、今回手に取る。 この浸れる感じが好き。 色や匂いを感じるような気がしてくる。 ラストで涙が溢れた...
グローニャ、アラン・ロイ、オシーン、エリザベス女王・・・。 上下巻とも500ページを超え、巻頭の登場人物一覧に70人以上が載っている大作。 「開かせていただき光栄です」で虜になり、今回手に取る。 この浸れる感じが好き。 色や匂いを感じるような気がしてくる。 ラストで涙が溢れた。
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時が経ち、属国支配を強めるイングランドに対してアイルランドは氏族同士の内輪もめを繰り返す。イングランドを退けるより互いの領土を切り取ろうとする族長たち。グローニャも己の領土とアイルランドを守るために権謀術数のかぎりを尽くさねばならなかった… 下巻を読み始めた時は話が加速してちょっ...
時が経ち、属国支配を強めるイングランドに対してアイルランドは氏族同士の内輪もめを繰り返す。イングランドを退けるより互いの領土を切り取ろうとする族長たち。グローニャも己の領土とアイルランドを守るために権謀術数のかぎりを尽くさねばならなかった… 下巻を読み始めた時は話が加速してちょっとあらすじっぽくなったかなと思ったものの、すぐにそんなことは気にならなくなるくらい波瀾万丈な物語だった。一つ一つのエピソードを丁寧に描けばグインサーガをも凌ぐのではないかと思うくらい密度の濃いストーリーを作者は淡々と描いているのだが、それでもそれぞれのキャラクタが本の間から立ち上がってきそうな勢いで、ラストは感極まって涙した。これで作者が1930年生まれというのだからすごい。 欲を言えば、エリザベス女王とグローニャという傑出した二人の女性が出会うところはもう少し何かドラマがあるのかと思ったら、わりとあっさりとしていてちょっと残念。
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実在した女海賊の戦いの物語。作中では60年の長き時間が経過する。上巻では水軍の設立を経て、戦いと殺戮を繰り返しながら、氏族のテリトリーを拡げる様がヴィヴィッドに描かれる。下巻に入ると、そのテリトリーを死守するための政治的な駆け引きが中心となる。相手も敵対する氏族ではなくイングラン...
実在した女海賊の戦いの物語。作中では60年の長き時間が経過する。上巻では水軍の設立を経て、戦いと殺戮を繰り返しながら、氏族のテリトリーを拡げる様がヴィヴィッドに描かれる。下巻に入ると、そのテリトリーを死守するための政治的な駆け引きが中心となる。相手も敵対する氏族ではなくイングランドという国家になるため、上巻の躍動的な世界観からは一転して陰謀や裏切りのテイストが濃くなり、読んでるこちらもかなりの緊迫感を強いられた。 作者のことを、“幻想文学の女王”と評してあるそうだが、なるほど言い得て妙だなと思う。グローニャを筆頭に、エリザベス一世や当時の閣僚など実在の人物が多数登場するが、皆川ワールドにコントロールされれば、史実であってもどこか幻想的に映ってしまう。それでいて作者は至って冷静で、過剰な山場は作らず、虐殺シーンも重要キャラの死も同じ温度でテンポ良く進めていく。意図せずとも、読者が自然と作中の世界観に支配されてしまうパターンは重厚な翻訳ミステリのそれと酷似しているので、途中何度か訳者を確認しようとする失態をやらかしてしまった。こういう錯覚を起こさせる国内作家はなかなかいないよね。 登場人物への感情移入が凄まじく、最終章では堪えきれずに感涙しきり。グローニャやアランたちの戦いの人生を読みながら、自分も徐々に消耗していたんだと思う。戦いから解放された彼らに共鳴するかのように、ある種の安堵感を覚えて、久々に読後に涙が溢れ出した。皆川さんのエネルギッシュさはグローニャとタブります。脱帽。
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