天国旅行 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
自殺や、心中といった『死』がテーマの短編集。 私が好きなのは「初盆の客」 若く戦死した夫と、再婚した夫。 二人の夫を愛し続けて、二人の死に方をなぞったウメおばあさん。 そのウメおばあさんの初盆に現れた、ウメおばあさんと前夫との息子である緑生。 ウメおばあさんの孫である私と、緑生との間で交わされるちょっと不思議な会話。 『死』がテーマなのに、ちょっと心が温かくなる内容でした。 他の物語も全て『死』がテーマ。 それなのに、あまり重苦しくはならない。 『死』の裏側にある『生』が感じられるからかな。 最後の「SINK」も『希望』が見える結末。 『死』と『愛』が同時に描かれているからなのか。。。 三浦しをんさんの本は初めて読んだけど、他の小説も読んでみたくなりました。
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死を「解放」にしたい気持ち。 死が「解放」にならない現実。 どちらも巧みに描き出していると思う。 死んで救われるとも、死ぬなとも言わない。 押し付けがましくないところが好きだ。 「死のう死のうと口癖のように言い、 もう少しで実践しそうになりながらも なんとなく流れ...
死を「解放」にしたい気持ち。 死が「解放」にならない現実。 どちらも巧みに描き出していると思う。 死んで救われるとも、死ぬなとも言わない。 押し付けがましくないところが好きだ。 「死のう死のうと口癖のように言い、 もう少しで実践しそうになりながらも なんとなく流れと雰囲気で踏みとどまった我々は いまや海苔の佃煮の瓶蓋を開けるのにも苦労し わずかな段差を上がるのすら膝が痛んでならぬ」 / 遺言
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死にまつわる話を集めた短編集。 三浦しをんと言えばかの傑作『まほろ駅前多田便利軒』が思い浮かぶ。 天国旅行というタイトルとイエモンの天国旅行の詩の一説が書いてある、 ただそれだけで手に取って読んでみたという安易な理由だが、 なるほど、これはこれでしっかり物語としてズシンとくるもの...
死にまつわる話を集めた短編集。 三浦しをんと言えばかの傑作『まほろ駅前多田便利軒』が思い浮かぶ。 天国旅行というタイトルとイエモンの天国旅行の詩の一説が書いてある、 ただそれだけで手に取って読んでみたという安易な理由だが、 なるほど、これはこれでしっかり物語としてズシンとくるものがあった。 死という、なにかイメージで言えばとても直視できない重苦しいものだが 意外にも、そこまでズシンと心の底まで重く圧し掛かるものはなかった。 とは言え、多種多様な内容であることは変わりない。 ポップなものもあれば、イイ意味で後味が悪いものもあったり。 この作品に共通してあるのは愛するということなのかもしれない。 死というものと直面して、それでも拭いきれないものとして愛がある。 だがしかし、決して甘っちょろいものではなく苦味も痛みもそこにはある。 こういう描き方が非常に上手な小説家だなと思った。 心の奥底にある死への恐怖と憧れ。それは愛に似ているのかもしれない。
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27冊目に借りた本。 『きみはポラリス』を読んでいる途中にこれ続きだから、とお借りした。 初めて、三浦しをんの小説のテクニックがわかった気がする。 漫画の趣味の合う友達がエッセイを面白いと言っていたのに、どの小説を読んでも”さらさらしていて内容もキャラクターも何の印象も残さない...
27冊目に借りた本。 『きみはポラリス』を読んでいる途中にこれ続きだから、とお借りした。 初めて、三浦しをんの小説のテクニックがわかった気がする。 漫画の趣味の合う友達がエッセイを面白いと言っていたのに、どの小説を読んでも”さらさらしていて内容もキャラクターも何の印象も残さない”と感じ、そんなはずは無い、そんなはずは無い、と読み続けてやっとわかった! どの話も、よかった。 「森の奥」樹海に自殺をしに行った男の話 「遺言」若気の至りを経て妻の小言に耐えながらも愛情のこもった遺言を書き続ける夫の話。 「初盆の客」2年身籠った祖母の話。 「君は夜」昼と夜とで違う人生を生きていた少女が夜の、過去の人生に侵食されていく話。全く違う人生を完全に生きるという感覚がすごく面白かった。最後の方はありがちだったけど。 「炎」先輩の焼身自殺をきっかけに秘密に進行する凡庸な少女と美少女との友情の話 「星屑ドライブ」死んでしまった彼女と変わらず暮らす話 「SHINK」心中の生き残りの男性の話。 それにしても死にまつわる話がおおいなぁと思っていたら心中がテーマだったとのことで納得。 死んだ人が何を考えていたか、どころか身近な生きている人でさえ本当は何を考えているかわからない。 結局、いつでも人は自分以外の他人の考えや行動について想像するだけ。確かにそれなら自分の都合の良いように変えてもいいのかもしれない。 それが真実だと思えば、真実になるものなのかもしれない。 ウメお祖母さんはの修一の子どもを産んだし、お母さんは長男を助けたし、先輩は母を捨てた木下への抗議で死んだ。 それにしても、「星屑のドライブ」死んでしまった彼女に対して、一緒に寝るなら冬の寒さ対策はいつもよりしっかり、とか、ちょっと冷たくなっただけで勃たなくなるなんて、俺って根性なし。とか考えてるのに笑ってしまった。
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自殺に纏わる短編集。死にたいと願っても恋愛、家族、友情など、生きているとどこかに愛は存在する。死にたいと思ってもやっぱり生きたいと願うのはこの存在がどこかにあるからだと思う。生きていかなければいけない。
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7話の短編はどれも、自殺または心中がテーマにあるが、それぞれ趣が異なっていて飽きることはない。 前半の3篇、特に冒頭の話は爽やかさが読後に残るが、後半4篇はほんのちょっと後味が悪い。といっても、本当にごくわずか。それが狙いなのかわからないけれど、最後にほんのりとぬめっとした感覚が...
7話の短編はどれも、自殺または心中がテーマにあるが、それぞれ趣が異なっていて飽きることはない。 前半の3篇、特に冒頭の話は爽やかさが読後に残るが、後半4篇はほんのちょっと後味が悪い。といっても、本当にごくわずか。それが狙いなのかわからないけれど、最後にほんのりとぬめっとした感覚が残る。それがテーマになっている「死」の感触なのかもしれない。
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死というものは遠い存在であり、それでいて生と何と近いものであろう。 死にたい死にたいと言うが、その心の奥底にある生きたいという願望。意識すらしない突然の死に戸惑う心。近しいものの死に整理できない気持ち。本書には死にまつわる短編が綴られている。 短編それぞれに異なる死を描いている...
死というものは遠い存在であり、それでいて生と何と近いものであろう。 死にたい死にたいと言うが、その心の奥底にある生きたいという願望。意識すらしない突然の死に戸惑う心。近しいものの死に整理できない気持ち。本書には死にまつわる短編が綴られている。 短編それぞれに異なる死を描いているが、全編を通してなんとなく前向きに死を捉えられる。そんな小説。
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心中をテーマにした短編集。死を、そして生を美化しない、けれど「もう少し生きていてもいいかも」という気持ちになる一冊。 「遺言」と「初盆の客」が好きだなぁ。 2013.08.31
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心中がテーマの短編集。 暗い。絶望感しか感じない話もある。 でもこれが生きるということのような気もする。 最後に何か好転する兆しが見える訳でもない。 でもそうやってこれからも生きていく(もしくはそうやって生きてきた)んだなと感じた。どうしようもないんだけど。
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心中を扱った短編集。それぞれの話が偏ることなく、違った視点から書かれていたので、なかなか読み応えもあった。暗くなりがちなテーマなのにそういった雰囲気はあまりなく、幽霊も登場するがファンタジーな感じはしない。読了後はその話について思いを巡らせて、考えてしまうものばかりだ。はっきりと...
心中を扱った短編集。それぞれの話が偏ることなく、違った視点から書かれていたので、なかなか読み応えもあった。暗くなりがちなテーマなのにそういった雰囲気はあまりなく、幽霊も登場するがファンタジーな感じはしない。読了後はその話について思いを巡らせて、考えてしまうものばかりだ。はっきりと白黒つけない終わり方が多いので、もやもやする人もいるかもしれない。どちらかというと私はそういったものが好きなので、彼らはこの後どうなるのだろうとか、自分だったらこうするだろうなあとか考えてみるのも面白かった。中でも「星くずドライブ」は突拍子もなく始まったかと思うとなかなかヘビーな問い掛けが待ち受けており、こういった心中もあるのかと唖然としてしまった。やっぱりこの作家さんはすごい。
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