時を生きる種族 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
時間SFをテーマにしたアンソロジー。本書では「真鍮の都」と「努力」の二編が特に印象に残りました。 なかでも「努力」は群を抜いて素晴らしい一編です。 あらゆる場所の過去を映し出せるビデオカメラを発明した二人の男の物語で、犯罪の瞬間を撮影して恐喝に使い資金を集め、やがてアレクサンドロス大王などの偉人の映像を用いた伝記映画を制作する、という「実際の歴史を映像コンテンツにする」という発想が秀逸でした。 当初は金儲けしか考えていなかった二人が、映像の持つ圧倒的な影響力に触れることで、世界を変え、戦争そのものをなくそうという理想へと突き動かされていく。壮大なスケールに広がっていく物語が面白かったです。 <真鍮の都> 22世紀から来た時間旅行者が、偉人の複製を作る目的でシェヘラザードを連れ帰ろうとするものの、誰もいない遥か未来へ飛ばされてしまう物語。 こんな奇抜な設定でよく書き切ったな感心させられました。 時間を超えた恋愛譚としてよくまとまっており、互いを「自分より身分が高いVIP」だと思い込んだまま進む恋愛模様が巧みです。身分差を軸にした恋物語としても楽しめました。 特に印象的なのは、シェヘラザードの機転と話術です。 持ち前の口八丁で次々と危機を切り抜けていくキャラ造形が面白く、古典的な設定を見事に現代的に昇華させていました。 <努力> 本作が書かれたのは1940年代であり、現代のCG技術が発達した世界では、もはや描けない発想だと感じました。その意味でも、非常に稀有な短編です。 映画制作によって影響力を得た後、第二次世界大戦を裏で推し進めていた者たちを暴露するという行動力が凄まじいですね。 過去を映せるカメラを世界中にばらまくことで、隠蔽を不可能にし、戦争を根絶できる――その理屈自体は非常に魅力的です。 しかし作中では、その理想が実現する前に核によってカメラが消滅してしまいます。それでもなお、人々はその消失を信じないでしょう。カメラが存在しないことを証明するには、皮肉にもカメラが必要なのですから。 おそらくこの物語の後、存在しないはずのカメラを巡って、新たな戦争が始まったのでしょう。 戦争をなくすための「努力」が、結果として戦争を加速させてしまう――その皮肉と悲しさが、強烈な余韻として残りました。 *** 短編ながら、それぞれが時間SFならではの発想と、深い倫理的問いを内包したアンソロジーであり、特に「努力」は今読んでもなお鋭く、心に刺さる一編でした。
Posted by
SF。時間SF。短編集。 書籍初収録の作品集。 「地獄堕ちの朝」「努力」は苦手。 他5作品はまずまず楽しめた。 特に好みだったのは以下2作品。 ロバート・F・ヤング「真鍮の都」 千夜一夜物語。ファンタジー寄り。著者らしくロマンティック。 L・スプレイグ・ディ・キャンプ「恐竜狩...
SF。時間SF。短編集。 書籍初収録の作品集。 「地獄堕ちの朝」「努力」は苦手。 他5作品はまずまず楽しめた。 特に好みだったのは以下2作品。 ロバート・F・ヤング「真鍮の都」 千夜一夜物語。ファンタジー寄り。著者らしくロマンティック。 L・スプレイグ・ディ・キャンプ「恐竜狩り」 時間SFと恐竜の設定となると、こうなるよね…という定番のストーリー。恐竜が好きなので、設定だけで好き。
Posted by
本書は時間SFの7作を収録したアンソロジーです。 収録された作家は、「たんぽぽ娘」で有名なロバート・F・ヤングやマイケル・ムアコック、シルヴァーバーグ、フリッツ・ライバーと、見知った顔がちらほら。 とはいえ、以前読んだ、同じく時間SFアンソロジーの「ここがウィネトカなら、きみはジ...
本書は時間SFの7作を収録したアンソロジーです。 収録された作家は、「たんぽぽ娘」で有名なロバート・F・ヤングやマイケル・ムアコック、シルヴァーバーグ、フリッツ・ライバーと、見知った顔がちらほら。 とはいえ、以前読んだ、同じく時間SFアンソロジーの「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」と比べると、小ぶりな感じは否めません。ヤングの「真鍮の都」は「ええぇ…」というオチでしたし、ムアコックの「時を生きる種族」は視点は面白いものの、なんだか小さくまとまった印象。シルヴァーバーグの「マグワンプ4」は、お手軽なテンポで嫌いではないですが、だからといって傑作でもない。 そんな作品の中で、唯一いい作品だと思えたのは、T・L・シャーレッドの「努力」。編者の中村融氏も、本アンソロジーの核と位置づけた作品なだけあって、読み応えはなかなかのものでした。余韻の残るラストがとても好きです。 ▼収録作 ・ロバート・F・ヤング「真鍮の都」 ・マイケル・ムアコック「時を生きる種族」 ・L・スプレイグ・ディ・キャンプ「恐竜狩り」 ・ロバート・シルヴァーバーグ「マグワンプ4」 ・フリッツ・ライバー「地獄堕ちの朝」 ・ミルドレッド・クリンガーマン「緑のベルベットの外套を買った日」 ・T・L・シャーレッド「努力」
Posted by
全体的にゆるめぬるめのほのぼのしたSFだった。『地獄落ちの朝』からの三篇は良い。が、『緑のベルベッドの外套~』はロマンティックSFのほうではよかったのでは、と思ったり。でもこの話好き。『たんぽぽ娘』好きな人ならきっと好きなはず。『地獄落ち~』はまさにアル中の幻覚。そういう生っぽさ...
全体的にゆるめぬるめのほのぼのしたSFだった。『地獄落ちの朝』からの三篇は良い。が、『緑のベルベッドの外套~』はロマンティックSFのほうではよかったのでは、と思ったり。でもこの話好き。『たんぽぽ娘』好きな人ならきっと好きなはず。『地獄落ち~』はまさにアル中の幻覚。そういう生っぽさがよかった。
Posted by
『真鍮の都』(ロバート・F・ヤング)…レトロでロマンティックな一篇。テンポよく読ませてくれた。ちょっとオチに文句の1つ2つ付けたくもなるが、「しょうがないよ、ヤングだもん」とつぶやけば納得。 『時を生きる種族』(マイケル・ムアコック)…そんな馬鹿なと思いつつも、時間というものに関...
『真鍮の都』(ロバート・F・ヤング)…レトロでロマンティックな一篇。テンポよく読ませてくれた。ちょっとオチに文句の1つ2つ付けたくもなるが、「しょうがないよ、ヤングだもん」とつぶやけば納得。 『時を生きる種族』(マイケル・ムアコック)…そんな馬鹿なと思いつつも、時間というものに関する斬新な発想が面白い。でも一箇所ミスがあるのが残念。時間の概念がないのに、「これで何日かは保つ」という台詞はおかしいよね? 『恐竜狩り』(L・スプレイグ・ディ・キャンプ)…古典的な恐竜ハンターもの。なんで金持ちは大型動物のハンティングにそこまでこだわるのかね? 『マグワンプ4』(ロバート・シルヴァーバーグ)…タイムトラベルものに人種間戦争を絡めたピリッと面白い一作。 『地獄堕ちの朝』(フリッツ・ライバー)…ダークで幻想的な作品。映像で見てみたい。 『緑のベルベットの外套を買った日』(ミルドレッド・クリンガーマン)…一冊の本を通して時間を越えた愛が芽生える、ロマンティックな作品。甘ったるいけど案外嫌いじゃない。 『努力』(T・L・シャーレッド)…ドラえもんのポケットにありそうな道具、それがもし現実に発明されたら…?という硬派な作品。前半の雰囲気は好み。
Posted by
時間SFは大好物!ワクワクして読み出したんだけど…、これはちょっと…。 まず冒頭のヤング「真鍮の都」がほとんどまったく面白くない。解説に「出来がいい」と書いてあったのは見間違いか?と見直してしまったほど。一つ一つの展開があきれるほど安っぽい。これは好みの問題ではないと思う。 ...
時間SFは大好物!ワクワクして読み出したんだけど…、これはちょっと…。 まず冒頭のヤング「真鍮の都」がほとんどまったく面白くない。解説に「出来がいい」と書いてあったのは見間違いか?と見直してしまったほど。一つ一つの展開があきれるほど安っぽい。これは好みの問題ではないと思う。 今回の目玉らしいシャーレッド「努力」も、展開に説得力がなくて、解説の言うような「傑作」とはとても思えなかった。楽しめたのは「緑のベルベットの外套を買った日」のみ。他はどれもアラばかり目についてしまった。残念。
Posted by
分かりやすいタイムトラベルもの「恐竜狩り」は、単純に楽しめた。他の作品は、それぞれ一ひねりある味わい深い作品。ファンタスティックとサブタイトルがついているが、じっくりと味わってじわりとよさが分かるもの多い。
Posted by
「真鍮の都」 『たんぽぽ娘』のロバートFヤングが描く時を超えたラブロマンス。 鉄板のハッピーエンドが嬉しい。 「時を生きる種族」 表題作の割にはどうでしょう。 「恐竜狩り」 面白いね、語り口が。 「マグワンプ4」 昭和34年発表と考えたら凄いかな? 「地獄落ちの朝」 唯一意味不明...
「真鍮の都」 『たんぽぽ娘』のロバートFヤングが描く時を超えたラブロマンス。 鉄板のハッピーエンドが嬉しい。 「時を生きる種族」 表題作の割にはどうでしょう。 「恐竜狩り」 面白いね、語り口が。 「マグワンプ4」 昭和34年発表と考えたら凄いかな? 「地獄落ちの朝」 唯一意味不明。 「緑のベルベットの外套を買った日」 いいね。こういうの大好き。暖か~い、柔らか~い時間SF。 「努力」 な~んと昭和22年の作品。でも作中に『あんなのを見たのはベン・ハー以来だ。いやベン・ハーよりもいい。』と言うセリフが有る。ベン・ハーって昭和34年の映画じゃなかったっけ。 些細な事が気になってすいません。時代を考えても凄い作品です。当時の人類、現在の人類、そして未来の人類に向かって警告するSF、突拍子もない設定だけれど説得力も有る。これ1作を知っただけでも読む値打ちあり。 概ね昭和30年代のSFだけれど、小手先の技巧に走っていない素朴な味わいがいいね。言い換えればストーリー性で勝負!良い読み物でした。
Posted by
ヤング『たんぽぽ娘』(河出書房新社)のあとがきにある 「真鍮の都」を読むために購入。 「緑のベルベットの外套を買った日」は、 マシスンの「ある日どこかで」 「恐竜狩り」は、 ブラッドペリの「サウンド・オブ・サンダー」 「マグワンプ4」は、 『世にも奇妙な物語』の・・・タイトル忘...
ヤング『たんぽぽ娘』(河出書房新社)のあとがきにある 「真鍮の都」を読むために購入。 「緑のベルベットの外套を買った日」は、 マシスンの「ある日どこかで」 「恐竜狩り」は、 ブラッドペリの「サウンド・オブ・サンダー」 「マグワンプ4」は、 『世にも奇妙な物語』の・・・タイトル忘れた をちょっと思いださせる。 そして、(「緑の・・・」「真鍮の・・・」の流れが好みでも) この本を読んでの一番の収穫は「努力」 一発屋と呼ばれてもいい。 こんな物語をひとつでも書き上げたい。
Posted by
楽しみだった SFアンソロジー 千夜一夜物語を下敷にした「真鍮の都(ロバート・F・ヤング)」はハッピーエンドだし、ファンタスティックな作品。ハードさとは無縁だが楽しい作品。 表題作「時を生きる種族(マイケル・ムアコック)」は気合いがはいってるのわかるが、内容がイメージし...
楽しみだった SFアンソロジー 千夜一夜物語を下敷にした「真鍮の都(ロバート・F・ヤング)」はハッピーエンドだし、ファンタスティックな作品。ハードさとは無縁だが楽しい作品。 表題作「時を生きる種族(マイケル・ムアコック)」は気合いがはいってるのわかるが、内容がイメージしにくく少しがっかり。 ファンキーな「恐竜狩り(L・スプレイグ・ディ・キャンプ)」 は楽しい感じがあるけど、おもしろくはない。パターンとしては、冒頭のヤング作品に似たハッピーエンドものなんだがね。 哀れな主人公「マグワンプ4(ロバート・シルヴァーバーグ)」 もサッパリ。 「地獄堕ちの朝(フリッツ・ライバー)」に至っては読む気が起こらない。 「緑のベルベットの外套を買った日(ミルドレッド・クリンガーマン)」 、「努力(T・L・シャーレッド)」ともイマイチで読み飛ばし感が先行。いいタイトルだし、いい短編集だと思うけれど、玉石混交かな。R.F.ヤング作品が読めたことが良かった。宇宙クジラへのつなぎだね。
Posted by
- 1
- 2
