こんな夜更けにバナナかよ の商品レビュー
金曜ロードショーでやっていた映画が途中から観ただけでもすごく面白かったので、原作があると知って読んでみた。 これは障害者やその取り巻く環境や人を、ただの美談に仕立て上げたものではない。一人の鹿野靖明という人物が、剥き出しで現実と取っ組み合いながら、ボランティアと自分を曝け出しあい...
金曜ロードショーでやっていた映画が途中から観ただけでもすごく面白かったので、原作があると知って読んでみた。 これは障害者やその取り巻く環境や人を、ただの美談に仕立て上げたものではない。一人の鹿野靖明という人物が、剥き出しで現実と取っ組み合いながら、ボランティアと自分を曝け出しあいながら、必死になって生きてきた記録。著者自身がボランティアの一員となって数年間過ごし、鹿野さんと生身でぶつかっている。 障害者福祉について、またボランティアをすることについて、日頃自分がいかに何も考えていかということに思い知らされた。映画化されなければ自分がこの本を手に取ることもこの分野に興味を持つことも無かったわけで。「障害者を障害者たらしめているのはその人自身ではなく社会そのもの」という言葉には、社会の物理的な障壁や制度的な面もそうだけど、悲しいことに健常者と呼ばれる人たちの「無関心」も大いに要因になってしまっているのだと気付いた。 著者自身、この本を完成させるまでに長くかかったと言っているが、参考文献の多さにも、著者がたくさん勉強をしながら悩みながら書き上げたものということが分かる。各章の最後に註がまとめて載っていて、そこがすごく勉強になった。 途中出てきた小山内美智子さんの著書も何冊か是非読んでみたい。
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作者がこの本を書き上げるのにたくさん迷ったように、私も感想を書くのをとても迷う。言葉で伝えるのがいかに難しいか。 筋ジスと共に生き続けた鹿野さんという障害者と、ボランティア達という健常者、助け助けられ、求め求められ、いつの間にかそれぞれの人の人生で生きる鹿野さんの存在力。綺麗事...
作者がこの本を書き上げるのにたくさん迷ったように、私も感想を書くのをとても迷う。言葉で伝えるのがいかに難しいか。 筋ジスと共に生き続けた鹿野さんという障害者と、ボランティア達という健常者、助け助けられ、求め求められ、いつの間にかそれぞれの人の人生で生きる鹿野さんの存在力。綺麗事だけでなく、社会制度や障害者運動の歴史を知り、人と人とが関わるとは何なのか考えさせられる。
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このへんてこなタイトルの映画を最初に観ていた。筋ジストロフィーのために24時間介助を必要としながら、ボランティアたちに媚びることなく精力的に自分の生活を生きようとする主人公と、それに振り回される周りのスタッフを描いたドキュメンタリー。2時間の映画では描き切れなかったことがこの原...
このへんてこなタイトルの映画を最初に観ていた。筋ジストロフィーのために24時間介助を必要としながら、ボランティアたちに媚びることなく精力的に自分の生活を生きようとする主人公と、それに振り回される周りのスタッフを描いたドキュメンタリー。2時間の映画では描き切れなかったことがこの原作では様々に語られていた。決して短くはない本だし、内容も複雑で重い。映画の中ではわがままさが強調されていたように思うけど、この原作を読んで主人公の鹿野氏に対しては尊敬の念が深まった。でもこのような人が身近にいたら、自分もボランティアとしてうまく接することができるかどうかは自信がない。
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ずーっと読みたいと思っていて、でも重そうなテーマに尻込みしていました。 やっと手に取ることができたのは、最近ドキュメンタリーを観るのがマイブームということと、自分自身が入院するという想像もしていない状況に陥ったからだと思います。 読む前は、重度障害者の破天荒な生き様を描いた作品だ...
ずーっと読みたいと思っていて、でも重そうなテーマに尻込みしていました。 やっと手に取ることができたのは、最近ドキュメンタリーを観るのがマイブームということと、自分自身が入院するという想像もしていない状況に陥ったからだと思います。 読む前は、重度障害者の破天荒な生き様を描いた作品だと思ってました。あながち違うとも言えないんですが笑、なんでしょう、◯◯を描いた作品です、と一言では言い切ることが難しい作品でした。 障害者を取り巻く福祉や、ボランティアのあり方、そして重い障害を負って生きること。 生きるってなんなんでしょう。生を全うするってなんなんでしょう。 読んだ後にそんな疑問を自分に問うてしまう作品でした。
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時間が経ってからもう一度読みたい。 ボランティアの人たちの人生模様?みたいなものが描かれていて印象的。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
タイトルからずっと気になってたけど、重そうだなぁと思ってなかなか読めずにいた。 読み始めると思ったよりすらすら読めた。 いろんな人の人生を盛り込みすぎて慣れるまで読みにくいけど、面白かった。 「ぼくは日本の福祉を変えたい。それがぼくの欲望」(p15) このために命を捧げたことが本当にすごいと思う。 理想だけでは現実は変えられなくて、人と人とのぶつかり合いがあってやっと現実が動いていくんだというのがよくわかった。 でもやっぱりそこにはカリスマが必要。 そしてカリスマを支える名もない人たちも必要。
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筋ジストロフィーで日常のほとんどに介助が必要な鹿野氏が送る「自立生活」の軌跡をまとめた本です。 映画も良かったのですが、こちらはもっと濃厚で、リアリティがあり、その分こちらも色々と考えさせられます。 一人の障がい者の奮闘記を超えて、人と人の関わりとか、生きることについて、自然と...
筋ジストロフィーで日常のほとんどに介助が必要な鹿野氏が送る「自立生活」の軌跡をまとめた本です。 映画も良かったのですが、こちらはもっと濃厚で、リアリティがあり、その分こちらも色々と考えさせられます。 一人の障がい者の奮闘記を超えて、人と人の関わりとか、生きることについて、自然と読者に投げ掛けられるような印象です。 鹿野氏ほど濃厚に人生を歩んでいる人はなかなかいないかもしれません。 あつかましさをもつ。 他者と対話をする。 どちらも、鹿野さんはやむを得ず身に付けたものですが、障害の有無に関わらず必要なことだと思いました。 時々読み返したいです。
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筋ジストロフィーの鹿野氏とボランティアの生活を、取材したノンフィクション。 映画を見てから原作を読んだ。 映画を見た後に残った「何故こんな大変な事をボランティアでやるのか」という疑問に対して、著者も同じことを思って、数々のボランティアにインタビューしている。 はっきりとした答えは...
筋ジストロフィーの鹿野氏とボランティアの生活を、取材したノンフィクション。 映画を見てから原作を読んだ。 映画を見た後に残った「何故こんな大変な事をボランティアでやるのか」という疑問に対して、著者も同じことを思って、数々のボランティアにインタビューしている。 はっきりとした答えはないけれど、ボランティアがボランティアをする個々の理由や動機からその秘密が覗ける一冊。 映画は鹿野氏にスポットを当てているけれど、原作はむしろボランティアにスポットを当ててあり、読み応えのある一冊。 映画とは別の切り口として楽しめる。
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映画化されることになって知りました。手元に来たのはもう随分前になりますが、ようやく読了。 ここまで手に取るのに時間がかかったのは、やはりテーマの重さ。タイトルも、帯に印刷されている映画の告知、大泉洋さん、高畑充希さん、三浦春馬さん!、の醸し出す雰囲気は楽しそう、明るい雰囲気です...
映画化されることになって知りました。手元に来たのはもう随分前になりますが、ようやく読了。 ここまで手に取るのに時間がかかったのは、やはりテーマの重さ。タイトルも、帯に印刷されている映画の告知、大泉洋さん、高畑充希さん、三浦春馬さん!、の醸し出す雰囲気は楽しそう、明るい雰囲気ですが。 それと、公開後に流れてきた、某国の首相と主演2人の3ショット写真。あれでげんなりしたこともあります。 しかし、実際読んでみて考えをあらためました。 文庫版の山田太一さんのあとがきの言葉が、私の感じたこと、多くの読者が感じたであろうことを的確に表していますので、ご紹介。 (重度身体障害者とボランティアの物語、というとよくあるやつ、と思うかもしれないけど、)「それは間違いです。これはまったく、よくある本ではない。凄い本です。めったにない本。多くの通念をゆさぶり、人が人と生きることの可能性に思いがけない切り口で深入りして行く見事な本です。」 本当に、凄い、これにつきます。 この原作を読んでから、動画配信サイトで映画も観ました。よく作られていたとは思います。文章ではイメージできなかったことも映像で知ることができ、映画は映画でよいと思います。 しかし、映画だけしか観ていない方は、ぜひ、この原作を。映画だけみて分かった気にならないでほしい。 映画を観ていない方はぜひ、この原作から入って欲しいと思います。 折しも、優生思想を、生命の選別を公言してやまない政治家、ALSの女性の嘱託殺人事件を機に起こってきた安易な安楽死容認の議論など、人の生命をないがしろにするこの時期に、この書籍に出会えたのは、本当に良かったと思う。 ぜひ、多くの人に読んで欲しい。
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題名で映画からのノベライズ版に興味があったのが、きっかけだったが、図書館にあったのが、こちらだったので、読み始めた。 これだけの障害があるにもかかわらず、個性的で、図太い生き様が素晴らしかった。 分厚本の半ばで、何度か読破することを諦めそうになったが、登場人物の飾らぬ言葉に先を進...
題名で映画からのノベライズ版に興味があったのが、きっかけだったが、図書館にあったのが、こちらだったので、読み始めた。 これだけの障害があるにもかかわらず、個性的で、図太い生き様が素晴らしかった。 分厚本の半ばで、何度か読破することを諦めそうになったが、登場人物の飾らぬ言葉に先を進ませられた。 どのような境遇に陥っても、諦めずに、生きることに貪欲でありたい。
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