すばらしい新世界 の商品レビュー
ディストピア小説であるため、オーウェルの『1984年』とどうしても比較してしまいます。その比較が先立つためか、陰惨な印象はあまりなくて、文字通り「すばらしい新世界」…かもしれない、とちょっとくらいは思わせる社会が形成されています。 ハクスリーも執筆当時から未来を見つめて、こんな...
ディストピア小説であるため、オーウェルの『1984年』とどうしても比較してしまいます。その比較が先立つためか、陰惨な印象はあまりなくて、文字通り「すばらしい新世界」…かもしれない、とちょっとくらいは思わせる社会が形成されています。 ハクスリーも執筆当時から未来を見つめて、こんな社会は嫌だ、と思いながら書き進めたのだと思いますし、特定の潮流に対する風刺や批判を込めているのだと想像はできるのですが、やや突飛な設定も含まれるせいか、コメディのような雰囲気も漂ってきます。 そのため、比較的軽い気持ちで読める、カジュアルなディストピア小説だというのが私感です。 クライマックス付近で突然始まる、シェイクスピアを軸にした文学討論会みたいなくだりは、なんだか辟易してしまいますが、それを割引いても「楽しめる」作品だと思います。
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一昨年初めて読んで、昨年再読。二度目の方が堪能できた。回数を経るごとに新しい発見がある。本物の作品とはそういうものだ。 http://sessendo.blogspot.jp/2015/02/blog-post_52.html
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『幸せってなんだろう?』と考えさせられた一冊です。 生活的な豊かさが幸せにつながるものではないのではないかと。。 生活が豊かになるよう、より良い生活に向けて昼夜問わずひたすら仕事に邁進している私たち日本人。 これだけあくせく働いて、果たして豊かさに近いているのだろうか?? 私は...
『幸せってなんだろう?』と考えさせられた一冊です。 生活的な豊かさが幸せにつながるものではないのではないかと。。 生活が豊かになるよう、より良い生活に向けて昼夜問わずひたすら仕事に邁進している私たち日本人。 これだけあくせく働いて、果たして豊かさに近いているのだろうか?? 私は…否、ちっとも豊かになってないよ!と思ってしまいました。 考える時間が奪われ、大事なものをどんどん失っているのでは…と。。 私の思考に大きな影響を与えた一冊です。 日本では昭和初期の時代に書かれた本書。 試験管ベビー、触感映画(フィーリ)、ドラッグ(ソーマ)など、所々にまさに現代で実現されている。もはやSFではなくなりつつあり、とても衝撃的です。
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二十世紀を代表するディストピア小説のうちの一つ。刊行が1932年で、最後についてる「著者による新版への前書き」が1946年。ちっとも古びてないです、まるで今現在とこれからのことを風刺しているようで恐ろしくもありおぞましくもあり。もちろんディストピアSFとしておもしろく読める。光文...
二十世紀を代表するディストピア小説のうちの一つ。刊行が1932年で、最後についてる「著者による新版への前書き」が1946年。ちっとも古びてないです、まるで今現在とこれからのことを風刺しているようで恐ろしくもありおぞましくもあり。もちろんディストピアSFとしておもしろく読める。光文社古典新訳の楽しみの一つ・充実の解説あとがきを読んだらもっと、ハクスリー読んでみたくなった。
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出産も遺伝子操作、教育も完全統制、感情も薬物統制された社会に、とある事件によって未開の地で育ったひとが入り込んで苦悩する物語。 こういうSFの場合、例え未開であっても人間的なシャカイデあるほうが素晴らしい、という結論になりがちですが、前半の完成された社会構造と、ソーマという薬物...
出産も遺伝子操作、教育も完全統制、感情も薬物統制された社会に、とある事件によって未開の地で育ったひとが入り込んで苦悩する物語。 こういうSFの場合、例え未開であっても人間的なシャカイデあるほうが素晴らしい、という結論になりがちですが、前半の完成された社会構造と、ソーマという薬物を読んでると、なんだかそういう社会のほうが幸せじゃないのかなねえ、て気分になる俺はきっと疲れてます。
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「ディストピア小説」と言うジャンルだそうだ。ユートピア小説の反意語で、このジャンルを代表する傑作らしい。 1932年の作品だと思えば凄い想像力なんだろう。西暦2540年のロンドン、世界は人口をコントロールし、子供は試験管(この小説では『壜』)で作り、更に遺伝子操作と睡眠療法で画一...
「ディストピア小説」と言うジャンルだそうだ。ユートピア小説の反意語で、このジャンルを代表する傑作らしい。 1932年の作品だと思えば凄い想像力なんだろう。西暦2540年のロンドン、世界は人口をコントロールし、子供は試験管(この小説では『壜』)で作り、更に遺伝子操作と睡眠療法で画一化された人格を形成し、労働者階級・知的生産階級・統制者階級にあらかじめ決められた人生を生きることが義務付けられる。(まさしくベルトコンベアーに乗せて!) 当時としては最先端の知識を駆使して描いているんだろうけど、描写が一々アナログな表現で却ってそれが面白い。 庶民の交通機関はヘリコプターが巾を利かし、空にはロケットが飛び交い、神は否定され、家族は否定され、快楽は肯定され(勿論フリーセックス!)、皆が合成麻薬を使用し、クラブ(ディスコ?)には人工楽器に依る合成音楽が流れる。しかししながら踊るダンスは社交ダンスのようであり、流れる音楽はスィングジャズのようであり、生演奏の楽器はサキソフォンならぬセクサフォンであり、映画は3Dを飛び越えて触感映画になっている。妙にチグハグだ。 あぁ、「すばらしい新世界」! ところが、この新世界は穴だらけで統制が執れていない地区が未開地区として残っており、そこは自然世界を生きるほとんど原住民さながらの人々が残っている。また極端な設定だ。 ある偶然から未開地区に残された新世界の女が子供を産み、成長した子供が新世界に連れてこられるが全く順応出来ないのが後半の主題。 16章から18章にかけての世界統制官と未開地区から来た青年との対話が当時における鋭い文明批判になっているんだろけど、シェイクスピアからの引用が多く、日本人には(私には)ピンと来ない。「ブラックアウト」「オールクリア」を読んだ時も思ったんだけど、英国人はホントにシェイクスピアが好きだね。 最後は新世界に順応出来ない青年がロンドンを脱出するが、日常生活を見世物にされ(自分を鞭で打ったり、セックスを否定したり、文明と対比させるにしても、ちょっとエキセントリックすぎるのでは)笑いものにされ自死してしまう処で終わり。あぁ、悲しい「すばらしい新世界」!
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言うまでもなく、ディストピア小説の傑作。ハクスリーの洞察は、この本が書かれたのが1930年代であることを考えると、やはり驚異的である。マルクス、ウェーバー、フロイトあたりの思想のエッセンスが散りばめられている。いわゆるフォード主義の極致としてのユートピアであるところの新世界を描く...
言うまでもなく、ディストピア小説の傑作。ハクスリーの洞察は、この本が書かれたのが1930年代であることを考えると、やはり驚異的である。マルクス、ウェーバー、フロイトあたりの思想のエッセンスが散りばめられている。いわゆるフォード主義の極致としてのユートピアであるところの新世界を描くことによって、フォード主義的な消費励行とウェーバー的官僚社会のゆきつく無思考と快楽の世界を批判的に描いている。スタビリティという「至高の善」に、世界統制官自身も没入することによって、そのイデオロギー装置は(実際にはあり得ないが)完全無欠となり、すべての人は幸福のうちに生・権力に従う。 フーコーはもはや存在しないと思う。生・権力による葛藤は、もはやバーナードやヘルムホルツなど一部の人たちだけのもの。イデオロギー装置は完全で、悩むことなどソーマによって打ち消される。
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主な内容はフォーディズム批判なのだが、その批判の本質はポストフォーディズムにも当てはまっていると思う。 世界統制官によるパターナリズムを、われわれはどう受け止めるのか。 完全な充足のなかで、わざわざ自由を、自分で選択する重責を求める意味は何か。「生かす権力」が、我々のまわりを包み...
主な内容はフォーディズム批判なのだが、その批判の本質はポストフォーディズムにも当てはまっていると思う。 世界統制官によるパターナリズムを、われわれはどう受け止めるのか。 完全な充足のなかで、わざわざ自由を、自分で選択する重責を求める意味は何か。「生かす権力」が、我々のまわりを包みつつある。そういった「パンとサーカス」をどう受け止めるのか。 労力を込めたものに、価値が宿る。そのことを忘れてないか。
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すばらしい「社会」だ。だが、そんなに羨ましくはない世界である。 悩まず、苦しまず、悲しまず。ただ楽しさだけを追い求められる未来。こんな素敵な全体主義というのは、実際どうなんだろう。少なくとも『1984年』よりはましではあるが。 新世界の人びとは、社会の維持だけが目的となってい...
すばらしい「社会」だ。だが、そんなに羨ましくはない世界である。 悩まず、苦しまず、悲しまず。ただ楽しさだけを追い求められる未来。こんな素敵な全体主義というのは、実際どうなんだろう。少なくとも『1984年』よりはましではあるが。 新世界の人びとは、社会の維持だけが目的となっている。しかも合理的に。ここにある非人間性を指摘して批判するのは簡単だ。シェイクスピアを持ち出せばよいわけだから。それに社会の維持は生物の本能でしょう。まあ、この世界は極端すぎるけど。 でも真に恐ろしいのは、そこではない。怖いのは画一化だ。違和感を違和感だと言えない恐怖。他人と違うことが当たり前でない恐怖。 みんな同じでいいじゃないか。すばらしい新世界へようこそ! ...私は嫌ですけどね。
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今らしい訳で、前世紀に書かれたとは思えなく読みやすい。古典を読むのが楽しくなりますね。 シェイクスピアの引用や対比がしつこく感じたが、ユートピアである新世界は生々しい怖さを感じさせる。
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