人間の性はなぜ奇妙に進化したのか の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
頭のいい人が書いた本と素直に思える。各章の最後にまとめがかいてあるのでそこを見れば中身を振り返ることができるよく構成された本。ヒトの進化という全てが明らかになっていない分野なので最終的な答えが出ないのは仕方ないが、男女の社会的な役割など現在ポリコレやジェンダー論で取り扱われている分野にたいして、生物としてそもそもどういう違いがあってそこから社会での役割が違うという基本を教えてくれる。それを把握せずにジェンターとかフェミとか男女どちらも語ってはいけないと思わせてくれる。 ch1 人間以外が奇妙な性を持つのではなく、人間が奇妙である。カマキリや蜘蛛が性的共食いするのは、彼らの生物学的、生態学的要因による。人間はその必要はないからそうしない。類人猿ですら人間とは違う。とすると人間ならではの行為が性を奇妙にしたのではないか?人間の場合、セックスに必要だから火や言語を使い始めたのではないか? ch2 男の方が子育てに関与しづらく他の雌に目移りするのは生物学的には正しいという話。妊娠のように身体に負担がかからないしその点において養育の投資が少ないし他の雌に種をまける。また必ずしも自分の子であると実感できないのでばら蒔いて確率をあげるという戦略をとっていたからである。男性はこのように平行して雌を探すが、女性は現在のパートナーに満足しない場合、より良い雄を求める傾向があり性差がみられる。 ch3 授乳など女性にしか出来ないと思われる行為も男ができないことはない。しかし量が少ないので難しい。動物は目的にたいして進化するのでなく既存の生物からたまたま適応していくため、不利な制約が残ったままそれと折り合いつけながら進化していく必要がある。そのため理論上はできる、すればいいのにと思われることでも、必要なものだけ変えればいいわけでもないのでコストが高い。産卵のほうが雌雄間の子育ての負担などは公平だがいまさら胎内育成から卵生にするのは厳しい。 ch4 雌が排卵を隠すようになったことで、しの雌の子供が自分の子であると確信は持てないが可能性があると雄が考えるようになった。別の雄の子供を殺すという遺伝子的損失を防ぐためにそうして雌は自分の子供を守るようになった。互いの遺伝子継承を守るために相手を固定できることが性の楽しみにつながったということか? ch5 ニューギニアの部族の例から考えると、男は自分の力量がすごいと誇示して多数の女相手に子孫を残す方が良いと考えている、女は逆に自分とその子供を扶養するのがよい男と考えている。この対立はアメリカや日本でも見られ、仮に扶養してると思われる夫婦でも男は女にくらべて育児家事へ割かれる時間は少ない。この利害対立が男は役に立たないというような意見が生まれる理由だろう。 ch6 閉経というヒトの雌に特有の現象を見てみると、妊娠・出産という命がけの行為を身体にガタがくる高齢の時にするよりも、自分の子供がそれらを行い、育児にリソースを割く方が生存戦略としては効率的である。雄にこれがないのはこれまで見てきたように妊娠出産育児にさくリソースが少ないからである。閉経とはあるいみ防衛機構なのだろう。こうして若い世代を補助するというのは育児だけでなく、文字など知識伝承の手段がない時はその生き字引っぷりが高齢者の存在意義であったことを踏まえるとその高齢者が属するコミュニティ全体を守る役割もあり、直接的にも間接的にも子孫を守るという機構と考えられる。 ch7 セックスアピールの項目として、顔の美醜、女性の脂肪、男の筋肉の3つが挙げられる。そしてその理由としてランナウェイ淘汰モデル説、ハンディキャップ説、正直さの宣伝説の3つがあげられる。どれか1つの説によって全てが説明つくわけではなくもしかしたら各項目がそれぞれ別の説に該当するのかもしれない。異性を惹き付け、同性よりも上にたつという動物的な側面をヒトもやはり受け継いでいる。男性器のサイズのようにシグナルとしての意味があるのか無いのかわからないものもある。こうした身近なものですら理由がわからないのがこの分野の困難さと魅力であるとして終わる。
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第3章 ダヤクオオコウモリとあるのは 標準和名ダヤクフルーツコウモリ(Dyacopterus spadiceus) 1994年の報告は Francis, C. M., Anthony, E. L. P., Brunton, J. A. & Kunz, T. H. Lac...
第3章 ダヤクオオコウモリとあるのは 標準和名ダヤクフルーツコウモリ(Dyacopterus spadiceus) 1994年の報告は Francis, C. M., Anthony, E. L. P., Brunton, J. A. & Kunz, T. H. Lactation in male fruit bats. Nature 367, 691–692 (1994) 第3章が面白かった人は おっぱいの進化史 (生物ミステリー)浦島匡,並木美砂子, 福田健二 ISBN-13 : 978-4774186795 もどうぞ。 第5章 151ページの熱量の話は「キロ」カロリーのはず。 訳者あとがきに読書案内あり。
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性にまつわる行為を様々な視点で切り取って、ホモサピエンスとそれ以外の動物で比較するというアプローチがとても面白かった。
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妊娠初期であまりに悪阻がひどく、ニンゲンの体ってバグだらけなのではないか、妊娠中こんなに大変で、お産も重くて(現代のテクノロジーでも死ぬことあるし)、なのに新生児は激弱で、いったいどうなってるんだ、そしてそんな大変な産後に、なんで授乳くらい男がやらないのだと憤っていたので、その疑...
妊娠初期であまりに悪阻がひどく、ニンゲンの体ってバグだらけなのではないか、妊娠中こんなに大変で、お産も重くて(現代のテクノロジーでも死ぬことあるし)、なのに新生児は激弱で、いったいどうなってるんだ、そしてそんな大変な産後に、なんで授乳くらい男がやらないのだと憤っていたので、その疑問が解決しそうな本書を手に取った。 ニンゲン含めいくつかの動物がオスとメスの利害の対立の中でどう進化していったのか、というところが大変面白かった。妊娠するまでは性差を如実に感じる機会がなかったので、進化論を知ることで男性の立場や、よく起こる男女の対立について、客観的に考えるためのひとつの拠り所を得た気がする。 哺乳類の中ではまだマシな地位を確立した人間の女性、というところにやや慰められながら?、機能的には男も授乳できるらしいからトライする?と夫に提案している。 (既にその兆候はあるが)いち女性として、今後子育てに協力的でない男性が淘汰されるのを願うばかりである。
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面白かった。特に最初の方の章が良かった。 蜘蛛とかカマキリとか性交の間、もしくは終わった後雌に雄が食べられる話はもう繁殖することに特化していて合理的だと思った。 男は何の役に立つのか?の章でもそうだけどこんな感じで論じられると今の世の中の価値観とか無理あるなとか思ってくる。いろん...
面白かった。特に最初の方の章が良かった。 蜘蛛とかカマキリとか性交の間、もしくは終わった後雌に雄が食べられる話はもう繁殖することに特化していて合理的だと思った。 男は何の役に立つのか?の章でもそうだけどこんな感じで論じられると今の世の中の価値観とか無理あるなとか思ってくる。いろんな分野から見ると考え方変わってくるなぁ。中野信子さんの不倫と併せて読むと面白いと思う。
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男性と女性の姓のせめぎあいを、進化生物学の立場から解き明かす一冊。 最近は男性の子育てへの参加が奨励されるフシがあるけれども、生物学的にはおかしいよね。 男性と女性で身体的機能も目的意識も本質的には違うんだから。 ロジカルな考え方でそれを立証していてしっくりときた。
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主なテーマとして 女性の乳汁分泌 隠された排卵 社会における男性の役割 閉経 について書いてあった。 隠された排卵と閉経の話はとても興味深く、楽しく読めた。ページ数も200ページほどなので比較的読みやすい。
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特に心に残った話 「なぜ、セックスは楽しいのか?」 こんなことを考えたこともなかったので、すごく勉強になった。 答えなんて人それぞれだし、楽しいだけじゃないよ! と言う意見もあると思うが、一応、進化生物学とやらの視点からの答えを導き出している。 章だけ読むという...
特に心に残った話 「なぜ、セックスは楽しいのか?」 こんなことを考えたこともなかったので、すごく勉強になった。 答えなんて人それぞれだし、楽しいだけじゃないよ! と言う意見もあると思うが、一応、進化生物学とやらの視点からの答えを導き出している。 章だけ読むというより、最初から順に読んでいくほうが理解が深まると思うので、興味がある方は是非読んでみてほしい!
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「銃・病原体・鉄」の作者の本で、著作の中ではかなり読み易い方だと思います。 様々な生物学的特徴が、異性間のゲーム理論的な戦略によって説明できるのが面白いです。 根拠、論理展開が明示されている良本だと思います。 以下面白かった所を列挙 異性間の戦略を決める要素 ・どちらが胚に対...
「銃・病原体・鉄」の作者の本で、著作の中ではかなり読み易い方だと思います。 様々な生物学的特徴が、異性間のゲーム理論的な戦略によって説明できるのが面白いです。 根拠、論理展開が明示されている良本だと思います。 以下面白かった所を列挙 異性間の戦略を決める要素 ・どちらが胚に対して大きな投資義務をもっていたか ・子育ての選択により別の繁殖機会を失うかどうか ・自分が親である事を確信できるか なぜセックスを楽しむのか? ・排卵を隠すシステム →(系統樹の分析)父性を攪乱により子殺しを防ぎ、結果的に乱婚から父親を家にとどまらせる一夫一妻制を可能にした 少なくうめば、たくさん育つ ・女性の閉経システム →出産や妊娠により死ぬと、子供がある程度育つ前に死んでしまう。つまり遺伝子を残せない →したがって子供を高齢で産むメリットをデメリットが上回る
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進化論をベースとした科学的視点での考察は勉強になったものの、ストレートな答えになっているか、というともやもやしているところもあり、めっちゃいい本とも言えない。
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