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死刑 の商品レビュー

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28件のお客様レビュー

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2024/03/18

自分は死刑反対派であるのだが、でも死刑賛成派の意見もわかる部分はある。それどころかちょっと前までは死刑制度自体しょうがないものだと思っていた。 知れば知るほどに死刑制度を現在の日本で運用できるものではないと感じ、死刑制度反対に傾いてきている。じゃあ、完璧に運用できるとしたら賛成な...

自分は死刑反対派であるのだが、でも死刑賛成派の意見もわかる部分はある。それどころかちょっと前までは死刑制度自体しょうがないものだと思っていた。 知れば知るほどに死刑制度を現在の日本で運用できるものではないと感じ、死刑制度反対に傾いてきている。じゃあ、完璧に運用できるとしたら賛成なのか、と聞かれるとそれもそれで何とも言いにくい。 賛成とも反対ともはっきりと答えることが出来ず、どちらかと言うと反対というスタンスだ。 森達也のこの死刑制度をめぐる本は、そんな自分の死刑感情に近いものを感じた。 自分の勝手な印象で森達也は死刑制度は絶対反対だろうな、なんて思っていたのだが、思っている以上に死刑制度はどうしたらいいか自分はわからない、という曖昧な意見で始まっており驚いた。 本書は一貫してずっとこの死刑制度の問題をどうしていいかわからない、というスタンスが続く。本書の終わりに明確に死刑賛成、死刑反対という答えが出るかというとそうでもない。 だが、この曖昧さこそが重要なのでは、と感じた。 はっきりと答えが出ないからこそ考えなければいけない問題だ。 それを廃止の理由にするわけではないのだが、世界的に死刑は廃止の方向に動いている。死刑存置するなら死刑で生じるさまざまな問題をクリアして適切に運用できるようにするべきだ。 だが現在の日本は、そういった問題に目を瞑っている。 更に死刑を極端にクローズドの状態にし過ぎだとも思う。臭いものに蓋をする精神なのかもしれないが、ここまで目につかないようにするのはさすがに異常だと自分は思う。 本書は死刑について考える際の入門書として適切な一冊だと思う。 死刑賛成、反対どちらにしても、多くの人に今一度考えてもらいたいと思う。

Posted byブクログ

2024/03/17

人を殺したのだから殺されても仕方ない。犯してはならない一線を超えた人は、残忍で救いようがない。刑務所でご飯を食べさせ、大した社会貢献もせず(ときには反省することもなく)生かしておくことに意味はあるのか、自分の税金がそんな人のために使われるのは嫌だと今まで漠然と感じていた。 実際...

人を殺したのだから殺されても仕方ない。犯してはならない一線を超えた人は、残忍で救いようがない。刑務所でご飯を食べさせ、大した社会貢献もせず(ときには反省することもなく)生かしておくことに意味はあるのか、自分の税金がそんな人のために使われるのは嫌だと今まで漠然と感じていた。 実際にはどんな経緯で拘置所に入り、どんな手続きの上で死刑が決まり執行されていくのか、 それが一般に公開されていないことに疑問も持たず、むしろ見なくて良いものと感じていたことの異様さ、危うさに気づいた。 森達也は死刑制度の存知・反対に対して中立の立場で取材を進めているように書いているけど、反対派への取材量のほうが多いことに対して若干違和感をもった。 人間が同じ人間の誰かの生死を決める権利はない。 死刑になったとしても残された遺族の気持ちが晴れることは永久にない。死刑が犯罪の抑止にはならない。 だとすると何のための死刑なのか、意味がないようにも思った。 時間をかけて考えを深めてもきっと結論は出ないけど、一人一人がちゃんと死刑の実態を知ること、考えを巡らせる必要はあると思う。 色んな人に読んで、まず考えてみてほしいと思った。

Posted byブクログ

2024/01/27

著者が持つ結論に調和する論理だけを並べる本とは違って足で得た情報を全部提示した上で読者に考えさせるという点でとても誠実

Posted byブクログ

2023/08/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

エッセイに分類していいのか?著者が「死刑」について考え、悩み、いろんな人に会って話を聞き、自分は死刑制度を存置すべきと考えるのか、廃止すべきと考えるのか、結論を出そうとする(最後にちゃんと出します)、そういうロードムービーです。 実は…熊谷達也さんと勘違いして、他の方のブログで文庫の表紙をちらっと目にして「へー、あの作家さん、こんなのも描くんだ」と思って即購入。別人やないかい!(笑)。 とはいえ、この頃平野敬一郎さんの「死刑について」など、死刑に関する本をかなり読んで、いろんな方向から考えたかったのでとても参考になり、興味深かった。実際に死刑に携わった元刑務官や、死刑囚の人や、存置派の人、廃止派の人、いろんな人から話を聞いている。ただそのインタビューをつづったものというよりは、そのたびに揺れ動く自分の気持ちや、矛盾を突き詰めて考えていて、死刑制度の難しさがより切迫した感じで伝わってくる。 強調しているというよりは、自然と強調されるようになっているのが、存置派であろうが廃止派であろうが、何もせずに日本の現状を維持している以上は、私たち国民一人一人が、死刑制度を存続させているシステムの一部になっているということだ。 受け止め方は人それぞれだと思うが、私の印象としては、3分の2くらいまで、死刑廃止派になりそうな方向に気持ちが持っていかれるのだが、そのあと、2歳の孫を殺され、そのために孫の母親(自分の娘)家族がめちゃくちゃにされてしまった老人が出てきて、迷いなく「犯人を許せない、命をもってつぐなってほしい、同じ空気を吸っているだけで嫌なんだ」とストレートに語るところで、多くの読者がやはり存置派に引き戻されそうになる。と思う。 そうなのだ、冷静に考えたら死刑制度は国家による殺人であり、成熟した社会においてはなくすべきだと多くの人が思うのだが、廃止できないのはやはり、「もし自分の大切な人が殺されたら、犯人を死刑にしたいと思うだろう」と考えてしまうからなのだ。 この部分はやはり、涙なくして読めないし、こころがねじれそうになる。 最後はきちんと、著者は自分の結論を出す。 そのシンプルな根拠は、シンプルゆえに説得力があると私は思った。その思いは、切なかった。私も理解したいと思った。

Posted byブクログ

2023/06/10

『U相模原に現れた世界の憂鬱な断面』、『A』に続いて森達也の本は3冊目である。 死刑に関しては青木理著『絞首刑』を読んだことから問題意識を持っていたが、本書はそれを深めてくれる良書であった。 「分からない」ところから始めて取材を通して思索を重ねる。その間の揺れ動く気持ちをも書き付...

『U相模原に現れた世界の憂鬱な断面』、『A』に続いて森達也の本は3冊目である。 死刑に関しては青木理著『絞首刑』を読んだことから問題意識を持っていたが、本書はそれを深めてくれる良書であった。 「分からない」ところから始めて取材を通して思索を重ねる。その間の揺れ動く気持ちをも書き付けることで思索の旅に読者を引き摺り込むのが森達也の手法だが、本書はそれが存分に発揮されている。 テーマは死刑存廃問題。存置派は被害者の応報感情を、廃止派は論理的矛盾を主張するが、これはいわば感情と論理の戦いであり、交わることはない。森達也はそれを止揚して「殺したくない」「救いたい」という「本能」を結論とする。 しかし、思う。存置派の応報感情も同根ではないか。被害者は犯人を殺したいと思うが、手をかけるのは本能的に抵抗がある。ゆえに被害者に代わって国が死刑を執行する。つまり人を殺めることへの本能的忌避感から、被害者は存置、第三者は廃止と主張するというのが死刑存廃問題の構造ではないか。 ここまで考えてくると、死刑制度の核にあるのは被害者の応報感情であることが分かる。つまり、制度の核に感情を置くという歪さが問題の本質なのだ。 釈尊は「いかなる動物なら殺しても良いか」との弟子からの問いに「殺す心を殺せば良いのだ」と答えた。この言葉は詭弁でも逃避でもない。「いかなる犯罪者なら殺しても良いのか」と問われても同じことを言ったに違いない。

Posted byブクログ

2022/09/19

作者の視点が私と同じ、何も考えていなかったところから始まっているのがいい。 私は本を読みながら、作者はいろいろ取材しながら少しずつ知っていく。 何を知っていくのかは問題だけど、とりあえず死刑という字面だけで、知ったような気になっていた自分を知った。 どんな犯罪人でも、国が殺して...

作者の視点が私と同じ、何も考えていなかったところから始まっているのがいい。 私は本を読みながら、作者はいろいろ取材しながら少しずつ知っていく。 何を知っていくのかは問題だけど、とりあえず死刑という字面だけで、知ったような気になっていた自分を知った。 どんな犯罪人でも、国が殺してはならないと思った。 被害者遺族の思いは決して否定しない。 ただ殺してならないと感じている。

Posted byブクログ

2022/07/16

罪とは罰とは命とは。 死刑の議論は、いつも「賛成か」「反対か」の二項対立ばかり。 しかも、ほとんどの人はその実態を知らない制度。 多くの当事者の声を聞き、論理だけではなく、情緒の問題にまで踏み込んで考えます。 確定死刑囚の元少年との面会も描かれます。 死刑制度の本質に迫ります。

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2021/09/21

重い 冤罪がいちばん怖い リアルタイムで読むべきだな このてのテーマに関わらないでのほほんと暮らしたい

Posted byブクログ

2021/07/31

「死刑」について、一般の人は深く考えたことはないだろう。もちろん、私もその一人。 この一冊を読んだところで、死刑に賛成だの、反対だの、自分なりの判断さえも下せないが、とにかくいま日本で私たちがさして考えない中で存在している死刑制度について、少し知っても、そして考えても、議論しても...

「死刑」について、一般の人は深く考えたことはないだろう。もちろん、私もその一人。 この一冊を読んだところで、死刑に賛成だの、反対だの、自分なりの判断さえも下せないが、とにかくいま日本で私たちがさして考えない中で存在している死刑制度について、少し知っても、そして考えても、議論してもいいのでは。

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2021/03/12

森さんは答えを出す あらゆることを考え、見て(少なくとも見ようとして)答えを出す でもそれは森さんの答え この本を読んで僕はどう考えるか? それをこの本は突きつけてくる

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