ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた の商品レビュー
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さすがにため息が出た。いったいあと何枚変えばいいんだろう、これ以上買い続けて、あの演奏にたどり着くのだろうか……。他にも欲しいレコードはたくさんあるのに、どうして「はずれ」(=最終回の演奏ではないもの)のレコードばかり増えていくのだろう。(p.70) 僕の感動ぶりに、お兄さんも友人も喜んでくれた。このときの光景は、今でも鮮明に脳裏に焼きついている。ターンテーブルが周り、アームの針がリバッティのレコード盤をしっかりと刻んでいた。(中略)そしてようやく自宅で聴く「本物」の演奏。あの最終回の音楽と寸分たりとも違わない、「同一」の演奏。感無量とはこのことだ。何年も探し続けた物が、ついに見つかった達成感。自分のなかにできていた「型」にぴったりと一致する満足感。音楽が全身に浸透し、そこからエネルギーが湧いてくる感じだった。(pp.72-73) 「ウルトラセブン」の最終回で初めてあの音楽を聴いてから、それがシューマンのピアノ協奏曲であり、演奏がカラヤン指揮、リバッティのピアノによる1948年録音のものであることがわかるまでに、じつに7年が経過していた。そしてこの7年で、僕はすっかり感覚で理解していた。 「クラシック音楽は、同じ曲でも演奏によってまったく違う表情になる。そして、同じ演奏者でも同じ演奏は二度とない」(p.74) 「でもご安心ください。このお話は遠い遠い未来の物語なのです。え?なぜって?我々人類は今、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいませんから(狙われた街)」子供も大人も関係ない、すべての人類に対する強烈な皮肉、メッセージである。(p.135)
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積読本をかたづけようシリーズ。 発売は2013年。 7歳のときに『ウルトラセブン』最終回に衝撃を受けた著者が、最終回で使われていた曲を探し求める。 中学生のときにテレビから流れてきたことでそれが「シューマンのピアノ協奏曲」だと知り、LPを購入するが、自分が聴いた最終...
積読本をかたづけようシリーズ。 発売は2013年。 7歳のときに『ウルトラセブン』最終回に衝撃を受けた著者が、最終回で使われていた曲を探し求める。 中学生のときにテレビから流れてきたことでそれが「シューマンのピアノ協奏曲」だと知り、LPを購入するが、自分が聴いた最終回のあの曲とは違う。3枚の「シューマンのピアノ協奏曲」を買って聴き比べるがどれも微妙に違う。 中学3年、友人宅でカラヤン/リパティ盤であることを突き止める。最終回から7年経っていた。 いや〜、これ、本当にいい話だよね。 7歳の子が一生懸命、最終回のあの曲を探す。当時はネットもないし、ビデオも手が出せない時代。再放送をテープに録音し何度も聴き、おこづかいを貯めて買った3枚のLPを何度も聴く。そのなかで彼は「クラシック音楽は、同じ曲でも演奏によってまったく違う表情になる。そして、同じ演奏者でも同じ演奏は二度とない」という本質を理解していく。 彼は大人になって音楽ライターとなり、『ウルトラセブン』の音楽を担当した冬木透氏にインタビューする機会を得て、「アンヌの衝撃とダンの苦悩を表現するにはリパティ盤の「切実感」でなければいけなかった」と選択理由を聞くことができる。冬木氏の想いはちゃんと当時の小学生に届いていたのだ。 今だったらネットを活用して「この曲いいね」「シューマンのピアノ協奏曲だよ」「YouTube で聞いてみる〜」で終わってしまう話なんだけど、それってむしろ不幸なのかも。 探し続けた7年間がなければ著者は音楽ライターになることもなかったはず。(ちなみに彼にリパティ盤を聴かせてくれた友人の兄は元『レコード芸術』の編集長になっている。) 後半では、カラヤン、リパティのプロフィールを紹介しつつ、なぜあの演奏になったのか、別の盤とはどう違うのか、8種類のシューマンのピアノ協奏曲を聞き比べている。 たしかに冒頭の演奏は人によってだいぶ表現が違うので、私のような素人にも違いがわかりやすい。クラシック入門としてもよい本だと思う。
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‹内容紹介より› 衝撃の最終回。モロボシ・ダンの告白シーンになぜ「あの曲」が使われたのかーー「音楽」を切り口に、ウルトラセブンを読み解いた快作! ーー感動で身体が痺れた。自分にとってウルトラセブンは永遠となった。そしてこの日は自分にとって、クラシック音楽への扉が開かれた日ともなったのだったーー。 ーーーー イベント企画で使う本、ということで読みましたが、そもそもウルトラセブンをきちんと見たことが無かったこと、そして取り上げられているクラシック音楽を一度も効いたことが無いこと、などからこの本の主張をしっかりと受け止めることができませんでした。 多少ピアノをやっていたので、引用されている譜面からぼんやりと曲調は想像できましたが、きちんと音源にあたってみないと確認できない部分もあり、そしてそこまでの手間をかけよう、という気にもなりませんでした……。 ただ、おなじ曲でも演者や識者によって全く別の顔を見せる、ということは私も実感として持っており、その部分では大いに共感できました。 著者がウルトラセブンの最終回に流れた「カラヤン/リパッティ盤」のピアノ協奏曲(シューマン作曲)に強い感銘を受けたこと、そしてウルトラセブンのもつメッセージ性に心を打たれたことはとても印象深く読み取るkとができました。
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ウルトラセブンは、ちゃんと見たことがないものの、佐野史郎さんが出演していた「私が愛したウルトラセブン」(いま調べると1993年のNHKドラマだそうだ)が印象に残っていたり、「機動警察パトレイバー」の「星から来た女」がウルトラセブンのオマージュとなっていたりで、以前からひっかかりを...
ウルトラセブンは、ちゃんと見たことがないものの、佐野史郎さんが出演していた「私が愛したウルトラセブン」(いま調べると1993年のNHKドラマだそうだ)が印象に残っていたり、「機動警察パトレイバー」の「星から来た女」がウルトラセブンのオマージュとなっていたりで、以前からひっかかりを感じる作品であり、音楽とどういうつながりが?と興味を持ち手に取ってみれば、最終話の印象的なシーンでシューマンのピアノ協奏曲イ短調が使われた、とある。書名には一切出てこないが、シューマンのピアノ協奏曲が本書の主役である。 初めて最終話でこの曲を聴いた作者が、なんという曲なのか、そしてどのピアニスト・指揮者・オーケストラによる演奏なのかを突き止めていく様子はわくわくするし、その過程でクラシック音楽の醍醐味である、同じ曲なのにピアニスト・指揮者・オーケストラが異なると別の曲のようになる、ということが分かりやすく伝わってくる。 後半にはウルトラセブンシリーズのうち、印象的な回のあらすじ・音楽の使われ方がまとめられており、実際にウルトラセブンを見たくなった。
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「シューマン ピアノ協奏曲」-こう聞くと「クラシックなんて関係ない」と思う方も多いでしょうが、この曲は現役音大生(特に女性)よりも男性の方がなじみ深いかもしれません。「ウルトラセブン」の最終回で主人公がとうとう自分がセブンだと告白するという、TV史に残る名シーンで使われているから...
「シューマン ピアノ協奏曲」-こう聞くと「クラシックなんて関係ない」と思う方も多いでしょうが、この曲は現役音大生(特に女性)よりも男性の方がなじみ深いかもしれません。「ウルトラセブン」の最終回で主人公がとうとう自分がセブンだと告白するという、TV史に残る名シーンで使われているからです。この本は「あのシーンのあの曲はなに?」と必死に探した著者の軌跡。似たようなことをした覚えのある方、いらっしゃるのでは・・・。本の中で同じ曲でもいろいろな演奏家のCDを演奏時間(=テンポの速さ)で比較するあたり、学生時代にこのような時間をもってもいいかも。O職員のオススメから
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自分は著者より数歳若いのですが、あのピアノから始まる曲はなんなんだろうか、とやはりずっと思っていました。リパッティであると知ったのは相当後で、実際にCDを買えたのは最初にTVで見てから20年以上経ってからの事でした。 冬木先生の話が読めたのがとても良かった。
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これは実際に映像を見ながら読むべき本だ。 もともとセブンは大人でも耐えうるドラマということが一般的らしいが、音楽の影響も大きいのだろう。 クラシックの面白さとウルトラセブンの面白さが実感できる一冊。 また見たい…
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シューマンのピアノコンチェルトを聴くと、どうしても「ウルトラセブン」の最終回を思い出してしまうが、まさか、ここまでマニアックな分析本が出るとは。素晴らしい。
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筆者の興味に任せて書いた本だと思うけど、特に最終話について書かれた第一章はウルトラセブンとシューマンのピアノコンチェルトとリパッティの物語が最終回の終盤さながらに重層的に繋がってなかなか面白い。その後の章はつけたしみたいではあるが。
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日経書評を読んでから読みたくて堪らなかった本です。 この本は「ウルトラセブン」最終回に使われた音楽がシューマンのピアノ協奏曲、カラヤン指揮リパッティのピアノ演奏であると判明するまでの少年の執念、それを入口としたクラシック音楽への素晴らしさが描かれています。 何に共感したかと言うと...
日経書評を読んでから読みたくて堪らなかった本です。 この本は「ウルトラセブン」最終回に使われた音楽がシューマンのピアノ協奏曲、カラヤン指揮リパッティのピアノ演奏であると判明するまでの少年の執念、それを入口としたクラシック音楽への素晴らしさが描かれています。 何に共感したかと言うと私もほぼ同じ思いを抱いたからなんです。 最終回のドラマチックな音楽は一体なんだろう?との思いはずっと持ってました。ただ作者の様に執念を持っていた訳ではなく、またカセットテープに最終回を録音すると言う発想もなく、漫然と探していました。 随分大人になってからラフマニノフのピアコン2番が好きな曲となり、派生して有名なピアノ協奏曲を順番に聞いているうちに発見しました。 判明した時は確かに嬉しかったです。本作者ほどドラマティックじゃないですけど。この本は同じ曲でも指揮者、演奏者によって曲想が全然違う顔になる事を実感を持って説明しています。クラシックファンなら誰でも通る道ですが、作者は全部ウルトラセブンで経験したところが凄い。 作者が名作であると思う話を音楽と共に紹介していますが、実相寺昭雄監督作品、金城哲夫脚本作品を選んでいるところも興味深い。 実相寺監督はウルトラマンでもスカイドン、ジャミラ、シーボーズ等で変わった演出をしていて、ウルトラセブンでも癖のある映像を残して私もお気に入りの監督です。金城哲夫氏はNHKで特集されたり1冊の本になっているほど異種族・異民族との共生に拘った人です。 クラシックファンもウルトラセブンファンも唸らせる最高の1冊だと思います。
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