タタール人の砂漠 の商品レビュー
ある国のある若者が士官学校を卒業し,将校として国境の砦に赴任する.砦はまったく辺鄙なところで,人生の楽しみというものがないが,若者はその血潮をたぎらせる戦いを夢見て砦での生活に埋没する.何十年もの時間が経ち,国境の向こうの砂漠から,ついに砦に向けて敵がやってくるが,そのとき既に若...
ある国のある若者が士官学校を卒業し,将校として国境の砦に赴任する.砦はまったく辺鄙なところで,人生の楽しみというものがないが,若者はその血潮をたぎらせる戦いを夢見て砦での生活に埋没する.何十年もの時間が経ち,国境の向こうの砂漠から,ついに砦に向けて敵がやってくるが,そのとき既に若者は老いており,敵と刃を交えることなく,むなしくその生涯を終える. 畢竟,本書は人生の寓話である.多くの人間は,夢をただ待つだけの消極的な人生を過ごし,そして夢はやってくることなく,あるいはやってきたとしてもそのときには自分は既にあまりにも老いており,それをつかむことはできない.夢をつかむためには,自分から打って出ないといけないのだ.
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ある男性の「人生」を描いた本。最初から最後まで特段大きな事件などはなく、自分が期待していたものをひたすら待って時が過ぎていく。現代の一般的な人間の生活にもあてはめて考えることができる小説だと感じられた。世界的な古典であり、当時からしたら名著だったかもしれないが、ストーリー自体が単...
ある男性の「人生」を描いた本。最初から最後まで特段大きな事件などはなく、自分が期待していたものをひたすら待って時が過ぎていく。現代の一般的な人間の生活にもあてはめて考えることができる小説だと感じられた。世界的な古典であり、当時からしたら名著だったかもしれないが、ストーリー自体が単調であることなどから自分の琴線を震わされるものではなかった。
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ストーリーは単純で、辺境の砦に仕える兵士が戦を待ち侘びるのみ。しかしこの話の味は、登場人物たちが待ち続けることに慣れてしまう様の描写にある。 士官学校を卒業し、砦での着任初日から「何か違う、街に帰りたい」と感じるが、4ヶ月は残るよう丸め込まれる。嫌々過ごすうちに砦の単調な生活に馴...
ストーリーは単純で、辺境の砦に仕える兵士が戦を待ち侘びるのみ。しかしこの話の味は、登場人物たちが待ち続けることに慣れてしまう様の描写にある。 士官学校を卒業し、砦での着任初日から「何か違う、街に帰りたい」と感じるが、4ヶ月は残るよう丸め込まれる。嫌々過ごすうちに砦の単調な生活に馴染み、街の人との繋がりも薄くなる。「いつかタタール人が砂漠を越えて攻めてくるのではないか」、「命をかけた活躍の場があるのではないか」という淡い期待を胸に待つうちに、気付けば2年、10年、30年経ち、そして老いてしまう。 若いうちは目前の長い人生と輝かしい将来への期待から、多少の寄り道など些細なことに思える。暫くすると、費やした時間を無駄に出来ず、決断を遅らせる。ある日訪れるチャンスに際して、抜け目ない同僚は自分を出し抜いて砦を去る。残された人生は長くなく、もう街には戻れないと気付いた時、微かな希望を胸に日々を暮らすようになる。
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辺境の砦に着任した将校が主人公。特別な事件は何も起きない。毎日が同じ繰り返しの中を、「いつかは何かが起きる」とただ安穏と無為に待ち続け、いつしか青春は終わり取り返しがつかなくなる。その様子を延々と綴った小説。 途中途中、作者の「こんな風にして過ぎ去って戻らない青春に気づかない」と...
辺境の砦に着任した将校が主人公。特別な事件は何も起きない。毎日が同じ繰り返しの中を、「いつかは何かが起きる」とただ安穏と無為に待ち続け、いつしか青春は終わり取り返しがつかなくなる。その様子を延々と綴った小説。 途中途中、作者の「こんな風にして過ぎ去って戻らない青春に気づかない」というグサリと刺さるコメントが挿入される。 とにかく主人公の無意味だった人生についての話。何も起きない小説だけれど、胸が痛む。
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不条理とも異なる精神の長い旅を描いた小説。唯一の希望であり、絶望の象徴でもある砂漠に飲まれてゆく軍人にとって砂漠に見出した絶望が徐々に唯一の希望へと変化してゆく。
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とても哲学的です。自分はここには長くいないんだから、すぐにでも出て行けるんだから・・・という考えに対する皮肉
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人生について。僕たちはつまらない毎日を生きている。砂漠の向こうから来る何かを待ちながら。そうしてる間にも、時は僕たちから遁走し続け、気づけば人生は取り返しのつかないものになってしまっているのだ。
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岩波文庫その2。 カフカの再来と言われるイタリア文学の鬼才ブッツァーティの代表作、だそうです。 孤独で希望のない話。 でも、相対的に言って人生とはこんなものなのかもしれない、 と考えてしまうのも事実。そんな私35歳。 10代20代の若者が読めば、大半の人間はなんとつまらない小説だ...
岩波文庫その2。 カフカの再来と言われるイタリア文学の鬼才ブッツァーティの代表作、だそうです。 孤独で希望のない話。 でも、相対的に言って人生とはこんなものなのかもしれない、 と考えてしまうのも事実。そんな私35歳。 10代20代の若者が読めば、大半の人間はなんとつまらない小説だと思うんじゃないでしょうか。 あとがきに訳者が「主人公は人生そのものを具象化したものだ」と書いていて、たしかにそうかも知れないなーと思いました。 いや、でも主人公のようにはなりたくないし、もっと時間を大切にせねばと改めて感じ、身が引き締まる思いです(笑)。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
不安と期待の象徴としての砂漠、慣性と不易さに満ち満ちた砂漠。それはとりもなおさず人生そのものとして置き換わり、砂漠という特異な生活環境にもかかわらず主人公ドローゴ・ジョヴァンニの人生は普遍性を帯びて伝わってくる。 気になったのは、砦にいる者と町にいる者の意識の違い。最後にドローゴに対して「老人はお気楽なものだ」というような言葉が向けられるが、戦争を望んでいたドローゴには不本意の言葉だったはず。しかし裏を返せば街において戦争とはそれだけ切迫したものなんじゃないかと(解釈が恣意的すぎるかしら)。だとすれば、町と砦の意識の違いはなぜ起きたろう。慣性に満ちた退屈な(ここでいう砦における)日常では、人は(戦争といった)破局すら望んで憚らない? たとえば砂漠ではなく都会、日常に引き寄せて東京ならどうか。都市にある商業や施設は日々入れ替わり変化を遂げる。だから私たちは退屈さを感じていないのかも。だけどその変化自体に慣れきって、やっぱり退屈さを感じてしまった時はどうなるか。私たちは心のどこかで破局を望んでいないか。
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読みにくい文章。まるで外国語の教材のテキストのよう。 前半部分は、退屈な内容とあいまって読むのが苦痛なレベル。 後半からは盛り上がってきて、夢中になった。 最後はもはや圧巻。
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