永山則夫 の商品レビュー
自分自身が納得するためには、自分の言葉で自分の体験したこと、心に映ったこと、目に映った事を整理していかなければならない。だから、石川医師は永山に語らせたのだ。 人が努力をしようと意欲を出すこと、つまり、努力のエネルギー源は、愛情とか褒められるとか尊重されるとか、そういうものがな...
自分自身が納得するためには、自分の言葉で自分の体験したこと、心に映ったこと、目に映った事を整理していかなければならない。だから、石川医師は永山に語らせたのだ。 人が努力をしようと意欲を出すこと、つまり、努力のエネルギー源は、愛情とか褒められるとか尊重されるとか、そういうものがなければ続かない。母親的な優しさとか保護とか愛情があってそれで自信や安心感を得てやる気、努力する力が出てくる。そういう基盤があっての努力だったら実りがあるが、元がないと努力というのは多くの場合、疲れ、くたびれ果て、さらに悪くなるという方向にしか向かわないことが多い 石川医師だけに語った真実。それは、石川医師がカウンセリングの手法で鑑定したからだろう。ただ、それは、そもそも患者の心を治療するためのものだった。だから永山はこの石川医師との面談を重ねることによって、真実を語ると同時に、不幸にも、また、幸いにも、自分の夢を持つことになってしまった。悲しいことに。鑑定は、278日間に及んだ。 ただ、石川医師は、これを機に精神鑑定は絶対にやらないときめた。反論も対話もできず治療にも結びつかないからと。
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請求記号:289.1-HOR https://opac.iuhw.ac.jp/Akasaka/opac/Holding_list?rgtn=2M020305 <平島奈津子先生コメント> 本書は、世間を震撼させた連続射殺事件の犯人(犯行当時、未成年だった永山則夫)の鑑定記録と丹念...
請求記号:289.1-HOR https://opac.iuhw.ac.jp/Akasaka/opac/Holding_list?rgtn=2M020305 <平島奈津子先生コメント> 本書は、世間を震撼させた連続射殺事件の犯人(犯行当時、未成年だった永山則夫)の鑑定記録と丹念な取材によって、事件の背後にあった孤独な少年の心の軌跡を描いたものです。鑑定医と永山少年(青年)との心の交流の、その結末を知った時、私は、精神療法家として心を揺さぶられる思いがしました。折に触れて、繰り返し読むたびに教えられることがある本です。 <BOOKデータ> 連続射殺犯・永山則夫。犯行の原因は貧困とされてきたが、精神鑑定を担当した医師から100時間を超す肉声テープを託された著者は、これに真っ向から挑む。そこには、父の放蕩、母の育児放棄、兄からの虐待といった家族の荒涼とした風景が録音されていた。少年の心の闇を解き明かす、衝撃のノンフィクション。
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堀川惠子さんのノンフィクションには毎回深い学びがある。 前半部分をよんでる時は、永山則夫の置かれた環境に、このような状況に追い込まれた子どもがいたという事実に言葉を失った。 でも、読み進めるうちに読んでいるのが苦しくなった。永山則夫の過酷な状況に心は痛むけれど、彼のあま...
堀川惠子さんのノンフィクションには毎回深い学びがある。 前半部分をよんでる時は、永山則夫の置かれた環境に、このような状況に追い込まれた子どもがいたという事実に言葉を失った。 でも、読み進めるうちに読んでいるのが苦しくなった。永山則夫の過酷な状況に心は痛むけれど、彼のあまりの被害妄想に、かすかないら立ちをも正直なところ覚えた。 でも、それでも読み進めていくと、彼のしてしまったことは人として許されないことだけれど、でも彼もまたこの社会の犠牲者だったのではないかと思った。 ある弁護士 「少年事件を担当すれば誰でも気がつくこと、それはあまりに偶然が左右するということです。あの時この人と出会っていれば、この一言があればということがすごく多いのです。成長期の不利益条件は誰もが抱えていて、うまくいけば乗り越えられるし、運が悪ければ外れっ放しになる。 永山則夫の家庭環境はひどいものだった。だからこそ、なおさらに「あの時、あの出逢いがあったから」 そういう人が必要だった。でも、彼にはなかった。彼自身が誰かに相談するという術をもってなかった。 そして、著者の言葉にその通りだと思った。 ”人間として生きていくための基盤となる家族、そして、その絆を失った人たちへの第三者のまなざしこそ、取り返しのつかない犯罪への一歩を止める何にも替え難い力になることを確信しました。 多くの犠牲の上にやっと光が当てられた事実が、今なお苦しみを抱える親や子どもたち、彼らを見守り支える人たち、そして罪を犯すまでに到ってしまった少年たちに向き合うすべての人々に役立てられることを祈っています。”
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死刑囚・永山則夫の精神鑑定を行った医師が残した録音テープを基に、連続射殺事件の真相を追う。母親に捨てられ、兄たちから疎まれ虐げられる凄絶な生い立ち。心に負った傷が彼を犯罪に追い立てた。人間を人間たらしめているのは心であって、その心が健全に育つためには愛情を注がれる必要があるのだ...
死刑囚・永山則夫の精神鑑定を行った医師が残した録音テープを基に、連続射殺事件の真相を追う。母親に捨てられ、兄たちから疎まれ虐げられる凄絶な生い立ち。心に負った傷が彼を犯罪に追い立てた。人間を人間たらしめているのは心であって、その心が健全に育つためには愛情を注がれる必要があるのだろう。彼は確かに罪を犯した。しかし、本来与えられるべき愛情を与えられなかった彼もまた、被害者といえるのかもしれない。 次第に人間らしい感情に目覚め、獄中で小説を書き、遺族への償いを続け、支援する女性と結婚までした永山であるが、逮捕から二十八年目で処刑される。 それにしても「心」の問題は取り扱いが難しい。著者の「応報的な刑罰を科すばかりではなく、加害者を事件に向かわせた根本的な問題にもっと向き合うべき」との主張は尤もであるが、だからといって被害者遺族の感情まで蔑ろには出来ないだろう。そもそも我々は、何のために人を裁くのか。
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19歳の連続射殺犯、永山則夫の精神鑑定記録。 当初は、貧困ゆえの金目当ての犯行と決めつけられていたが、この鑑定によって見えてきたのは全く違う永山の心の動きだ。 貧困、母親のネグレクト、兄弟からの暴力や無関心。そこから生まれる人間不信や孤独感。 結局は家族の問題が、一人の子供を歪ん...
19歳の連続射殺犯、永山則夫の精神鑑定記録。 当初は、貧困ゆえの金目当ての犯行と決めつけられていたが、この鑑定によって見えてきたのは全く違う永山の心の動きだ。 貧困、母親のネグレクト、兄弟からの暴力や無関心。そこから生まれる人間不信や孤独感。 結局は家族の問題が、一人の子供を歪んだ人間にしてしまった。 どんなに貧しくても、どんなに家庭環境が悪くても、皆が皆犯罪者になるとは限らない。でも、きっとどこかに一線がある。 その一線の目の前で、自分自身の力や、誰かのほんのちょっとした優しさで、踏みとどまることができるか、できないか。 決して永山が特殊な人間だとは思わない。 犯罪が起こったとき、その動機を皆が納得しやすいものに求めがちだけれど、人の心の中はもっと奥深い。裁判のための鑑定というよりも、永山にとっては自分を見つめなおすカウンセリングになったのだろう。
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皮膚科で待っているとき、何気なく手に取り、読み始めたらおもしろくてとまらなくなった本。医院に頼みこんで貸してもらい、家で少しずつ読んだ。 私はどうしても被害者のことを考えてしまうので、子どもを殺された遺族が永山の印税による慰藉を受け取らなかったというエピソードに胸が痛くなった。...
皮膚科で待っているとき、何気なく手に取り、読み始めたらおもしろくてとまらなくなった本。医院に頼みこんで貸してもらい、家で少しずつ読んだ。 私はどうしても被害者のことを考えてしまうので、子どもを殺された遺族が永山の印税による慰藉を受け取らなかったというエピソードに胸が痛くなった。 それから、2審で無期懲役が出たとき、あの子が死刑にならないのであれば私が殺してやりたいと言った遺族の言葉もちゃんと書いてあるところが、この本を書いた堀川惠子さんの公平なところだと思った。 永山本人が死刑を望んでいるのであれば、逆に無期懲役にして、本を書かせてどんどん印税稼がせて、遺族への慰藉にあてさせる方がよかったんじゃない・・・・?と思った。 歴史の教科書に出てきた尼港事件が出てきて、背筋がぞっとした。 永山の母は尼港事件の数少ない生存者の一人らしい。 裁判がけっこう恣意的なものだということも分かった。 まず判決ありきの裁判ってあるのね。 死刑にするために、科学的な石川鑑定を全面否定するなんて暴挙としか思えないけど、検察側があくまで子どもを殺された遺族の立場に立っているのだと考えれば、むしろ石川鑑定なんてない方がいいと思うだろうな。 兄弟へのあてつけのために函館と名古屋での殺人を犯したらしいけど、そんなあてつけのためにわが子や最愛の夫を殺されたらたまったもんじゃない。 だけど、石川医師の長い時間をかけた鑑定を経て、永山は確かに(カウンセリング)治療の効果を得ていた。 人が変われるのであれば、永山もいつかは子どもを殺された親の気持ちも分かるようになっただろうか?
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・「永山事件」。自分の年代にはあまり馴染みのなかった連続殺人事件。永山則夫の精神鑑定が行われたが、結局、死刑になった。本書は、二回目に行われ、黙殺された精神鑑定の詳細な記録。 ・当時は「貧困と無知がなさしめた」という解釈が、いつものごとくマスコミによって紋切型の垂れ流しで報道さ...
・「永山事件」。自分の年代にはあまり馴染みのなかった連続殺人事件。永山則夫の精神鑑定が行われたが、結局、死刑になった。本書は、二回目に行われ、黙殺された精神鑑定の詳細な記録。 ・当時は「貧困と無知がなさしめた」という解釈が、いつものごとくマスコミによって紋切型の垂れ流しで報道されたらしい。しかし、ほとんどカウンセリングとも言える担当医との対話で少しずつ明らかになったのは、そんな単純なものではなかった。 ・永山則夫の、あまりにも悲惨な人生に、読んでて辛くなった。少し夢見が悪くなったぐらい、マヂで。 ・担当医の真摯な姿勢により、心を開いて記述を行った永山は、しかし、最後にその鑑定結果を否定してしまう。ショックを受けた担当医は、本件後、精神鑑定を行わなくなってしまう。だが、永山は...。それまでが比較的淡々と永山の証言が記述されているだけに、終盤での展開はちょっと目頭が熱くなるドラマチックな盛り上がりを見せる。 ・もし自分が殺された側の遺族だったらどう感じるのだろう。全く想像できないが、やはり極刑を望むんじゃないだろうか。 ・札幌市の図書館に「岩波」キーワードで登録している入荷アラートで知った。速攻での予約だったのですぐに読めたが、2013/05/10時点で後ろに33人の予約待ち。
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一審では、無期懲役。二審では、死刑。その判決では、石川医師の精神鑑定書が全く無視されていた。 石川医師は鑑定書作成にあたって、100時間を超えるインタビューを行い、テープに録音していた。 永山則夫は親、兄弟からの虐待を受けていた。母親からの虐待の連鎖が見られる。 親、兄弟を...
一審では、無期懲役。二審では、死刑。その判決では、石川医師の精神鑑定書が全く無視されていた。 石川医師は鑑定書作成にあたって、100時間を超えるインタビューを行い、テープに録音していた。 永山則夫は親、兄弟からの虐待を受けていた。母親からの虐待の連鎖が見られる。 親、兄弟を困らせてやろうとした殺人のように感じられるが、なぜ殺人なのか? ドストエフスキーの影響というが、後付ではないのか。
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1968年に起きた19歳の少年による連続射殺事件。犯人・永山 則夫の裁判は一審で死刑、二審で無期、最高裁差し戻し審で 死刑確定。 犯行動機は貧困が原因の金銭目当て。しかし、永山本人は動機に ついては詳しく語ることなく1997年8月1日、東京拘置所で刑場で 命を終わられた。19歳...
1968年に起きた19歳の少年による連続射殺事件。犯人・永山 則夫の裁判は一審で死刑、二審で無期、最高裁差し戻し審で 死刑確定。 犯行動機は貧困が原因の金銭目当て。しかし、永山本人は動機に ついては詳しく語ることなく1997年8月1日、東京拘置所で刑場で 命を終わられた。19歳だった少年は48歳になっていた。 永山裁判について調査しているうちに、著者が出会ったのが精神 鑑定書である。一審の際にも精神鑑定が行われていたが、その 内容は警察や検察の取調調書をなぞっただけ。そして、二審まで に行われたのが本書が取り上げる石川鑑定だ。 白羽の矢が立ったのは八王子医療刑務所で受刑者の治療に あたっていた石川義博医師。しかし、石川医師も当初は鑑定を 断っている。 それの石川医師の心を動かしたのは最初の鑑定書にあった 一文だった。永山が極度の貧困の中で育ち、その育成歴が 犯行に走った原因でもあるとは触れられいるものの内容の 分析がなされていない。 「影響は少なくない」。そう書かれた部分を石川医師は赤線で 囲む。「なぜ、とりあげないのか」との書き込みを添えて。 8か月に及ぶ永山との面接は、鑑定よりもカウンセリングの手法 が取られた。その録音テープは永山亡き後も石川医師の手元に 保存されていた。 苦悶の叫びだった。それまで誰にも心の内を明かさなっか永山が、 徐々に石川医師に対して自分の気持ちを語っていく。自分を無視 し続けた母のこと、母に代わって長屋なの面倒を見てくれた長女 のこと、末の弟を蔑んで来た兄たちのこと。 金目当ての犯行ではなかった。東京と京都の事件は恐怖から、 函館と名古屋の事件は自分を顧みなかった母と兄弟に対する 「当てつけ」だった。 だからと言って、人を殺めていいことにはならないが肉親の愛情 や社会的関係を作り上げられなかった人間の哀しみが詰まって いる。 二審は石川鑑定によって「精神的に成熟していない」とされたこと もあったのか、一審の死刑判決から無期懲役の判決が出た。 だが、最高裁差し戻し審では石川鑑定は無視され死刑判決。以降、 この鑑定書が世に出ることはなかった。 それは、4人を殺害した犯人に死刑以外の判決を下すことに躊躇 した司法の判断もあったろう。永山自身が「自分の鑑定じゃない みたいだ」と言ったこともあるのだろう。石川医師が永山の鑑定後、 鑑定医を辞め、マスコミにも一切出なかったこともあるのだろう。 今回、詳細な取材に基づきこの事件に新たな光を当てた著者の 力作である。圧倒的な事実とは、本書のようなことを言うのだろう。 尚、石川医師は開業医として心を患った人たちの治療にあたって いる。その机の上には鑑定の最終日に撮影した永山則夫の写真 がカードケースに入れられ飾られている。裏側には、「おふくろは 3回、俺を捨てた」と永山に言われた母の写真が入れられている。
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事件当時小学生だった自分に、永山の記憶は無い。 あまりに過酷な幼少時代に、胸が痛くなった。 誰か一人でも親身に話す相手がいたらと思わずにいられない。では自分だったら、こんな少年が目の前にいたら寄り添う得るだろうか? たぶん出来ないだろう。 本のページが少なくなるころ、度々涙がにじ...
事件当時小学生だった自分に、永山の記憶は無い。 あまりに過酷な幼少時代に、胸が痛くなった。 誰か一人でも親身に話す相手がいたらと思わずにいられない。では自分だったら、こんな少年が目の前にいたら寄り添う得るだろうか? たぶん出来ないだろう。 本のページが少なくなるころ、度々涙がにじんだ。 遺族の気持ちを思えば、死刑は致し方ない。でも、それだけでは犯罪抑止にはならないような気もする。難しい。
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