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永山則夫 の商品レビュー

4.4

23件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    9

  3. 3つ

    1

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2017/05/29

殺人者を写したモノにしては、あまりにも”いい”写真が気になっていた永山則夫さん。その理由が分かった。

Posted byブクログ

2016/11/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

死刑から 15 年、犯行から 44 年を経た 2012 年に発見された鑑定記録。一審の中で二度目に行われた石川義博氏の精神鑑定の生の録音テープ百時間分。そこから描き出される永山則夫の生涯。 当初、二ヶ月は要すると言って始めた鑑定が九ヶ月に伸び、石川氏と永山の間に信頼関係ができたと思え、永山の実像にかなり迫ったと思える鑑定書ができる。しかし、それを読んだ永山は「自分の鑑定じゃないみたいだ」と言った。それは全身全霊を注ぎ込んできた石川に衝撃であり、先駆者であった犯罪精神医学をすっぱり辞めるほどのものであった。 しかし、死刑執行後、遺品の中に石川鑑定があった。そこには永山がこの鑑定を何度も読み返した記録があった。そのことを石川が知ったのは、2008 年。永山から話を聞き続けたことの意味を実感できた時であった。 石川鑑定は、一審の裁判官を驚かせ、死刑は無理じゃないかと言わしめる説得力があったが、裁判の結論は鑑定とは関係なく決まっていた。しかし、二審で死刑が覆されたのには、石川鑑定の存在があった。

Posted byブクログ

2016/10/31

永山の生い立ちに同情しすぎてまず泣いた。そして最後のセツ姉さんとの手紙のやりとりに号泣。永山がドストエフスキーに影響を受けているとは知らなかった。罪と罰、最後まで読んでいればこんな事件を起こさなかったのだろうか……。殺人は何があってもしてはいけないことだけれど、この罪を彼一人に帰...

永山の生い立ちに同情しすぎてまず泣いた。そして最後のセツ姉さんとの手紙のやりとりに号泣。永山がドストエフスキーに影響を受けているとは知らなかった。罪と罰、最後まで読んでいればこんな事件を起こさなかったのだろうか……。殺人は何があってもしてはいけないことだけれど、この罪を彼一人に帰するのはあまりに酷。永山と真摯に向き合った石川医師と、闇に埋もれていた石川鑑定に光を当てた作者に拍手、です。

Posted byブクログ

2014/10/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

話題の書である。今さら永山則夫と思ったが、当時の雰囲気のみの記憶でしかない。力作である。誠意が感じられる。が、やはり4人を射殺した事実は重い。

Posted byブクログ

2014/03/10

被告だけではなく鑑定人にもドラマがあった。 PTSDの概念を精神鑑定に持ち込み、また家族力動に深く切り込んだ、異色な大作として名高い石川鑑定。その鑑定を、母子関係や兄弟関係に焦点を当てて分かりやすくまとめられている点も評価できるが、それ以上に、本件以降石川医師が犯罪精神医学の表舞...

被告だけではなく鑑定人にもドラマがあった。 PTSDの概念を精神鑑定に持ち込み、また家族力動に深く切り込んだ、異色な大作として名高い石川鑑定。その鑑定を、母子関係や兄弟関係に焦点を当てて分かりやすくまとめられている点も評価できるが、それ以上に、本件以降石川医師が犯罪精神医学の表舞台から姿を消した経緯や、永山の処刑後15年(鑑定から約40年)を経たラストに至るまでの鑑定人をめぐる描写が、静かだが強く心に残る。

Posted byブクログ

2014/02/18

<「永山事件」の精神鑑定に当たった医師が録音したテープから浮かび上がる、犯人の像> 昭和43年の秋、日本中を震撼させる、1つの連続射殺事件が起きた。 事件には奇妙な特徴がいくつかあった。 22口径という殺傷能力がさほど高くない拳銃が使われていること。1ヶ月足らずの短い期間に、東...

<「永山事件」の精神鑑定に当たった医師が録音したテープから浮かび上がる、犯人の像> 昭和43年の秋、日本中を震撼させる、1つの連続射殺事件が起きた。 事件には奇妙な特徴がいくつかあった。 22口径という殺傷能力がさほど高くない拳銃が使われていること。1ヶ月足らずの短い期間に、東京・京都・函館・名古屋という広範囲の地域で、4件の事件が起きていること。被害者は互いに面識がなく、共通点も見つからないこと。金品が残されているケースと金目の物をすべて奪うケースが混在していること。 凶悪犯か、愉快犯か。警察の総力を挙げた捜査にも関わらず、犯人は杳として知れず、4件の後はぷっつりと犯行が止んだ。 半年後、事件は急展開を迎える。半ば自首のように現れたその犯人は、永山則夫。19歳の少年だった。 本書は、この永山事件の背景を知る手掛かりとなる膨大な録音テープが発見されたことから生まれた。本書の著者は元々、永山事件の取材をしていた(『死刑の基準-「永山裁判」が遺したもの』(2009年))。日記を読み進めるうち、この事件の精神鑑定に当たった石川義博医師が、永山を相手に生育歴に関するインタビューを行っていたことが判明する。これらが録音されていたことを著者は突き止める。100時間を超えるテープを石川医師から託された著者は、丁寧に聞き取り、書き起こしていく。 浮かび上がる事件像は、「貧困と無知が引き起こした犯罪」という通り一遍の言葉からは抜け落ちてしまう、1人の少年の姿を鮮やかに描き出していた。 非常に吸引力の強い本である。 テープの内容に沿って物語は進む。 石川医師は、会話を通じて、永山の幼時の記憶を徐々に解きほぐしていく。 幼い則夫少年がどのように育ち、そしてついに犯罪に手を染めることになったか、読者もまた追体験していくことになる。 則夫の家は、子だくさんの上、父は博打打ちだった。元々、母親に十分な愛情を掛けられることもなかった則夫は、一度は厳寒の網走に兄姉とともに「捨てられ」、一冬、子どもだけで過ごしたことすらある。どうにかこうにか生き延び、やがて青森にいた母と再び暮らすことになるが、学校には馴染めず仕舞いだった。その後、社会に出てからも同じ場所で長く勤めることが出来ず、出奔を繰り返す。兄弟とも関わりはあるが、極めて冷淡なものだった。 本書を読み進めて行くと、永山の生来の性格もあったのだろうが、そこに生育歴が加わり、人との関係をうまく結ぶことが出来なくなったのではないかと思えてくる。 親はなくとも子は育つ、と言う。だが苛酷な環境で育つ子どもは、やはりどこか、「育ちきれない」部分を抱えてしまうのではないか。 一方で、この母を責めることも躊躇われる。母は貧困から抜け出す術があることに思い及ばぬほど困窮していた。母自身もまた、ネグレクトと言ってもよいほどの幼少期を送っていた。 この物語の主人公は永山だが、石川医師の物語もまたある。石川医師は、この事件の鑑定に関わったことで、それまでの人生の舵取りを大きく変える選択をすることになる。 それは1つには、この物語が、「理解ある人物との出会いで、かたくなな心がほどけ、更正・再生した人間の物語」というような、単純な図式を辿らなかったからともいえる。 永山は結局のところ、人との関係を結べるようになったのか? 裁判が大きな騒ぎとなっていく中、石川医師は大きな落胆を覚えることになる。その後、犯罪精神医学の現場を去り、臨床へと向かっていく。 これはまた、本書のもう一つの山場でもある。 永山は決して知能が低かったのではなかった。 本を読み、特にドストエフスキーに傾倒し、四男である自らを『カラマーゾフの兄弟』に登場するスメルジャコフになぞらえている。事件前の最後の出奔の前には、『罪と罰』を読んでいた。ラスコーリニコフが老婆を殺したところまで読み、本を置いてきてしまったことを、永山は残念に思っていた。 彼が『罪と罰』を最後まで読んでいたら罪を犯さなかった、というほど、ことは単純ではないだろう。だが、もしもこうした本のことを語り合う友人や家族がいたならば、あるいは違った結末があった、かもしれない。 最初の犯罪に手を染めるまでの彼は、何者かに対する恨みを腹の中にためながらもどこか怯えた子どものようでもある。 亡くなった被害者が複数いる以上、軽々しいことは言えない。 だが、断罪することが、最良の、あるいは唯一の道だったのか。 そして、人が社会生活を営めるか社会から外れていくか、その境界はそれほど確たるものではないのではないか。 その問いが残る。 著者の熱意を感じさせる労作である。

Posted byブクログ

2013/10/23

事実は小説よりも面白い。このような悲惨な事件を扱ったドキュメンタリーを面白いなどと言っては誠に申し訳ないのだけれど、これまで読んだどんなミステリーやサスペンスよりも面白かった。 世の中の様々な事物を我々は類型化する。個々の事物をそれぞれ固有のものとしていちいち判断していてはオー...

事実は小説よりも面白い。このような悲惨な事件を扱ったドキュメンタリーを面白いなどと言っては誠に申し訳ないのだけれど、これまで読んだどんなミステリーやサスペンスよりも面白かった。 世の中の様々な事物を我々は類型化する。個々の事物をそれぞれ固有のものとしていちいち判断していてはオーバーフローしてしまうからだ。事件についても同様で、一定の基準を設け類型化し断じ処理する。そこには個別の特有の事情や状況は勘案されない。 ひとつの犯罪が起きる前には、それを犯すに至るまでの犯罪者の人生全てがある。そこに至る理由や原因を本当に知ろうとするならばその人生全てを検証しなければならない。本作はそれをしようとした医師が残した鑑定結果と面談の録音テープをもとに、永山則夫が犯行を犯すまでの19年の人生のみならず、永山の母の人生までも再現した物語だ。そこに書かれた事実はどんな小説よりも面白いのだ。 本書によって死刑制度の是非を云々できるとは思わないし、遺族の報復としての刑罰はあって当然とも思うが、犯罪を類型化したり、判例に当てはめたり、世論や報道のある種多数決で裁いたりすることの危険性は十分に感じられた。

Posted byブクログ

2013/10/16

「あの時あの一言があったら。誰かと出会えていれば」ー 少年事件においてはそんな些細なきっかけひとつで、犯罪を犯すかどうかの彼岸と此岸は薄い紙一枚隔てたところにあるという。 人間の人格形成においては家族、もしくはそれに代わる者の愛情が必要不可欠である。 人との触れ合い、絆といったも...

「あの時あの一言があったら。誰かと出会えていれば」ー 少年事件においてはそんな些細なきっかけひとつで、犯罪を犯すかどうかの彼岸と此岸は薄い紙一枚隔てたところにあるという。 人間の人格形成においては家族、もしくはそれに代わる者の愛情が必要不可欠である。 人との触れ合い、絆といったものから、想像力やコミュニケーションを学んでいく幼少期に愛情を受けるべき家族から無視され虐待されたとしたら? 貧乏だからって親に見捨てられたからといって立派に育っている人もいる。確かにそれだけで犯罪を犯す理由にはならない。でも人として最低限の愛情に触れることなく成長した人間の哀しさはかくもと絶句するのみ。 世の中が悪い、学校教育が悪い、など叫ぶ前に全ての根幹は「家族の愛情」にあるのだと痛感させられる。 「心の闇」などという便利な常套句で片付けられてきた数々の事件も、その熾火にあるのは家族の問題であるのかも知れない。

Posted byブクログ

2013/09/08

永山則夫のイメージが全く別のものになりました。 彼のたどってきた道を、両親や兄弟の生き様にまで入り込むことで、さらに深く知ることができたと感じます。 檻の中で精神的発達をとげたであろうことは 彼の手紙を通してうかがい知ることができます。 賀川乙彦『宣告』を読んでもそう思いました...

永山則夫のイメージが全く別のものになりました。 彼のたどってきた道を、両親や兄弟の生き様にまで入り込むことで、さらに深く知ることができたと感じます。 檻の中で精神的発達をとげたであろうことは 彼の手紙を通してうかがい知ることができます。 賀川乙彦『宣告』を読んでもそう思いましたが 手紙とは、伝えたいことだけでなく、 書いた人の心の成長・変化を知ることができるのだと、 思いました。目頭が熱くなりました。 死刑という制度については もっともっと論議されなければいけない…。

Posted byブクログ

2013/08/25

犯罪は様々な要因が複雑に絡み合って生まれるのであるが、犯罪までに至らなかった要因はたった一人でも良いから自分を認めてくれる存在やほんの些細な一言であるのかもしれない。いま日本の社会は、いじめや児童虐待があとを絶たない。 人と人との絆がどんどん断ち切られているのだが、本来自らの手で...

犯罪は様々な要因が複雑に絡み合って生まれるのであるが、犯罪までに至らなかった要因はたった一人でも良いから自分を認めてくれる存在やほんの些細な一言であるのかもしれない。いま日本の社会は、いじめや児童虐待があとを絶たない。 人と人との絆がどんどん断ち切られているのだが、本来自らの手であるいはコミニティで支えあっていかなければならない局面でも、金銭で第三者のサービスを受けることによって解決する風潮が止まるところを知らない。このようなぎすぎすした社会にあってありふれた言い方だが、もう一度家族の有難味を考えよう。

Posted byブクログ