ロスト・ケア の商品レビュー
43人という大量殺人をした犯人。 ただ、その43人の被害者は、本人・その家族共に介護に苦しむ人ばかり。 犯人は、殺人では無く「ロスト・ケア」と介護の一貫だと主張する。 十分な介護を受けることのできない現代の状況。 被害者遺族は怒りではなく救いを感じているが、それを口に出来ないも...
43人という大量殺人をした犯人。 ただ、その43人の被害者は、本人・その家族共に介護に苦しむ人ばかり。 犯人は、殺人では無く「ロスト・ケア」と介護の一貫だと主張する。 十分な介護を受けることのできない現代の状況。 被害者遺族は怒りではなく救いを感じているが、それを口に出来ないもどかしさ。本当の善悪。 しっかりとミステリーの要素もあり、深いし考えさせられる良い作品だった。
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社会派ミステリー小説。介護をテーマにし社会問題となった事件をモデルにしたフィクション。介護に追い詰められていく人々・介護を儲けの手段とし不正にも手を染める…経営者。老いた肉親の介護の為、精神的にも肉体的にもそして経済的にも、追い詰められた人々を救うべき行われた殺人『ロスト・ケア』なぜ43人もの人間を殺めたのか?、本来なら手助けになるはずの介護保険・行政・役所…十分なケアが受けられない介護の現場の現状を、身を持って体験する介護企業に勤める従業員が犯した犯罪を暴く検察官。 だがその検察官の肉親は安全地帯といわれる富裕層向けの老人ホームで24時間の完全介護される、老後に格差がある現実。医療が進み《人が死なないなんて、こんなに絶望的なことはない!》家族が介護の負担を押し付けられる国の現実をフィクションとした作品。老後社会の家族介護の現状を訴えるのだが、具体的な殺人方法・身動き出来ない老人に毒物を注入するシーンなど有り、読後感はあまり良くない。
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第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。 2011年12月、ある男が起こした32件の殺人と1件の傷害事件に対して死刑判決が言い渡されようとしていた。しかし前代未聞の被害者数であるにも関わらず、その場の空気はどこか普通とは違っていた。彼に殺された被害者遺族の表情にあったの...
第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。 2011年12月、ある男が起こした32件の殺人と1件の傷害事件に対して死刑判決が言い渡されようとしていた。しかし前代未聞の被害者数であるにも関わらず、その場の空気はどこか普通とは違っていた。彼に殺された被害者遺族の表情にあったのは、決して恨みや憎しみではなかったのである。「私は彼に救われた――」。彼に実の母親を殺された羽田洋子はそう思っていた。 ミステリーでありながら、高齢者問題や介護の実態を、最後まで生々しく描いた作品である。同様のテーマを扱った作品では他に「七十歳死亡法案、可決」を読んだが、あちらが最終章で無理矢理ポジティブな方向にガラッと雰囲気が変わったのに対し、こちらは最後まで決して綺麗ごとではすまない現実を描ききっている。誰かに負担や犠牲を強いらなければいけない程の要介護高齢者・32人を”ロスト・ケア”と称して殺し続けてきた被告人。しかし彼に要介護者を殺されたことによって、実際に介護から解放され、生きる希望をとりもどせた多数の家族や関係者達がいるのも事実。検事である大友のように、だからといってそんなことが許されるはずがないというのが当然であるはずなのに、被告人や介護事業で金儲けを考える登場人物たちの言い分が全く理解できないわけでもない。金銭的に十分な余裕があったり、もしくは介護しなければならない身内がもういない等、自分は絶対にその立場にはならないという安全地帯にいる人間と、実際にもうそうなってしまっている人、これからそうなることが確実な人間との間には、考え方に絶対的に差があると思うし、この本に対する感想も違ってくるだろう。この先自分が彼のような存在を望んでしまうかもしれないことを100%は否定できないということや、現時点でも遺族と同じように彼に対してそれ程憎しみや怒りが沸いていないことが怖い。
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日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。ミステリとしては、「この人がいかにも犯人!」ってのがあからさますぎて、逆に違うというのがすぐに分かってしまうのですが。読みどころはそこじゃないなあ。 これはきっと、誰にとっても他人事ではない問題。あまりに凄絶な介護の現実が描かれていて、恐ろし...
日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。ミステリとしては、「この人がいかにも犯人!」ってのがあからさますぎて、逆に違うというのがすぐに分かってしまうのですが。読みどころはそこじゃないなあ。 これはきっと、誰にとっても他人事ではない問題。あまりに凄絶な介護の現実が描かれていて、恐ろしいやら悲しいやら。「安全地帯」に立つことのできる人なんてほんの少数、いつ誰がこの地獄に陥ってもおかしくない状態だと思います。 その中で起こった「ロスト・ケア事件」。称賛されるべきものではないにせよ、たしかにこれは「救い」なのかもしれません。正義と偽善の境界がひどく揺らぐ気がしました。
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以前に介護職についていたため 分かる部分が多かったです。 すらすらと読めました。 よく市長さんとかが長寿の皆さんに 「これからも長生きしてくださいね」と いってる姿が、敬老の日ニュースとかであるけど いつも白けた気持ちで見ていました。 そりゃあ、立場上そういうコメントがふさわし...
以前に介護職についていたため 分かる部分が多かったです。 すらすらと読めました。 よく市長さんとかが長寿の皆さんに 「これからも長生きしてくださいね」と いってる姿が、敬老の日ニュースとかであるけど いつも白けた気持ちで見ていました。 そりゃあ、立場上そういうコメントがふさわしいだろうけどね・・ テレビのコメンテーターなんかは 偽善的なことしか言いませんが 痴呆のかたの介護は壮絶です。 自宅介護なんて、簡単なことではないです。
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自宅で寝たきり状態の老人42人を殺害した男が、なぜ殺害に至ったのか。。。ミステリーを通り越して、現代社会の問題を提起したとても良い作品で、とても考えさせられました! 現在は施設で専門家によって介護を受けことができるが、それはほんの一握り。お金持ちでなければ、利用ができないのは私...
自宅で寝たきり状態の老人42人を殺害した男が、なぜ殺害に至ったのか。。。ミステリーを通り越して、現代社会の問題を提起したとても良い作品で、とても考えさせられました! 現在は施設で専門家によって介護を受けことができるが、それはほんの一握り。お金持ちでなければ、利用ができないのは私も実感しています。普通の仕事して普通の家庭持ちだと、とてもじゃないけれど施設で介護してもらうことは難しい。しかし、自宅での介護となれば身内である分、感情的になってしまうことも。。。介護する人間が疲れ果てて倒れてしまうということも、身の回りで起きている現実…。「ロスト・ケア」。人を殺める事はいけない、しかしその選択をしてしまうほどの精神的な苦痛を知る者は多いのではと感じました。 多くの人に読んで貰いたいなぁーと思いました(^-^)
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正直読むのがしんどかった。 私も呆けた父親を階段から突き落としてやろうかと何度か思った。 犯罪を犯す前にと思い施設に入れた。 死んだときには「やれやれ」と思った。 どうしても犯人が悪とは思えない。 もし、自分が呆けて動けなくなったら迷わず注射して欲しいと思う。
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老人介護を主軸にしたミステリー。 介護の辛さの描き方に目新しさはないけれど、そのどん詰まり感はよくわかる。親が死んでくれてほっとする、という感情が露悪的なものとしてではなく想像できてしまう私は、まだ本格的な介護を経験していないうちから、なんて奴だ!と自分のことが空恐ろしくなっ...
老人介護を主軸にしたミステリー。 介護の辛さの描き方に目新しさはないけれど、そのどん詰まり感はよくわかる。親が死んでくれてほっとする、という感情が露悪的なものとしてではなく想像できてしまう私は、まだ本格的な介護を経験していないうちから、なんて奴だ!と自分のことが空恐ろしくなったり、いや、未経験だからなおさらなのかも、と思ったり。 介護保険の「改正」の酷さは、ホームヘルパーとして働いている友だちがよくこぼしているので、知っているつもりではいたけれど、そっか、こういうことだったのか・・と愕然。ある時期、町に老人介護施設が急増して、それは老人が増えているのだから需要があるためなんだろう、と単純に考えていたのが、介護ビジネスの起業を促す国の方針が根底にあり、(それはホントに必要だから、だよね)ある程度商売として利益をあげるようになった時点で制度としての梯子をはずす、という非情さ、というより、無軌道ぶり。 全く、それはないでしょう~~!とあきれてしまった。 ミステリーとしての意外性、統計から見つけてしまえる「事件」、なぜ人を殺していけないかの問いに対するキリスト教的な見解、など面白く読めたところも多々あり、介護の話は辛かったけど読めてよかったと思う。 ただ・・・ 作中で、認知症が進んで全く別の人格になってしまった親の介護の辛さ、が語られていたけれど、(それはもちろん、とてもとても切ないものだと予想できるけれど)私の場合は、老いとともに、うん、この人は元々こういう いい加減な、OR 依怙地な ところがあったよね、というところが増幅されて表れるのを見る辛さ、というものを感じているので、それも少しは織り交ぜてほしかったかなぁ、なんて。 親の介護が終わっても(つまり亡くなっても、ということだよね、当然)その次には、自分の配偶者、あるいは自分自身の老いが待ち構えているわけで、その意味では、終わりはない、逃れられないという点もよく書かれていたと思う。 人間、死ぬときには誰かの世話になってしまうのだから、せめて国のフォローだけは血の通った優しいものであってほしい。 介護予備軍としても、被介護予備軍としても切実に思う。
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推理小説としてはにやりとさせられる。介護保険制度の問題点も指摘している。統計学を知らないので途中に出てくる数字のマジックはよくわからないがなんとなくつじつまが合っているように思えて良い。
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▼いろいろと考えさせられる話でした。介護問題、どうしていいのか、全然わかりません。 ▼殺人はいけないことはわかっているけど、もし私も洋子と同じ立場で『ロスト・ケア殺人』されたとしたら、きっと「救われた」と言うと思います。親に介護が必要になれば、もちろん献身的に尽くすつもりだけど、精神的にも肉体的にもボロボロになることが容易に想像できます。もしかしたら早い段階で親のことを嫌いなってしまうかもしれません。私を大事に育ててくれた親のことを嫌いになりたくはないです。 ▼そして私が要介護になってしまったら、人の手を煩わせてしまう老後なら私はいらないかも。そこまでして長生きししたくないと思っているから。かといって自ら命を絶つ勇気もない。「もう十分生きたから殺してくれていいよ」と家族に言っちゃうかも。家族の負担を少しでも早く軽くしてあげたいと思うから。 ▼施設に入って、専門家にお任せできればいいけれど、私にはその金銭的な余裕はない。将来どうしたらいいんだろう?とストーリーそっちのけで、そんなことばかり考えながら暗澹たる気持ちになります。 ▼早く介護ロボットみたいなシステムが一般化しないかなぁ。感情を持たずに淡々とお世話をしてくれるロボットがいい。でもそのシステムが使える人はやっぱりお金持ちの“安全地帯”にいる人たちだけなんだろうな。 ▼医療が発達して、少々体が不自由になっても長生きできてしまう世の中になったと思う。そうやって長生きして、本当に幸せなんだろうか?本人にも周囲にも…。
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